高尿酸血症とは、なんらかの原因により血清尿酸値が7.0mg/dlを超えた状態です。尿酸は細胞の中にある遺伝子(DNA)やエネルギー物質などが新陳代謝される過程で出てくる老廃物です。本来、尿として体外に排泄されるため尿酸と名づけられました。時々尿で調べる検査と勘違いされている方がいますが、血液検査です。しかし、なんらかの理由で血液中の尿酸値が過剰になり7.0mg/dlを超えると溶けきれなくなり、針状に結晶化します。結晶化した尿酸塩は、体の至る所に沈着し、下記のごときさまざまな病気を引き起こします。
- 関節に沈着し痛風関節炎(いわゆる痛風)を引き起こす
- 尿から排泄される途中で結晶化し、尿路結石となる
- 腎臓そのものに沈着し、腎機能低下(「痛風腎」と呼びます)を引き起こす
- 高尿酸血症では高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を合併することが多く、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める
ここで何よりも強調したいのは、高尿酸血症、痛風は、ただ足が痛くなる病気と軽く考えないで欲しいことです。高尿酸血症の合併症として痛風が余りに有名なため、血清尿酸値が高いのを放置してもただ足が痛くなるだけと勘違いしている方が余りにも多いのです。違います。尿酸が高いのを放置すると痛風腎から慢性腎臓病を発症、透析になったり心筋梗塞や脳梗塞を併発したりする方がたくさんいるのです。そして今このことが世界中で問題になっているのです。高尿酸血症、痛風は全身疾患なので内科の私が拝見しているのです。
高尿酸血症、痛風は、以前はまれな病気で、明治時代に日本を訪れたドイツ人医師、ベルツは、「日本人は痛風にならない。」との記録を残しているほどです。そして、たいていの痛風患者は飽食だったため、「ぜいたく病」などと言われていました。しかし、大東亜戦争後、食生活の欧米化、肉類などの動物性蛋白や飲酒量の増加、運動不足や過食による体型の肥満化に伴い罹患率は増加の一途をたどり、最近の統計では成人男性の4~5人に1人が高尿酸血症です。また、全痛風患者のうち、女性の占める割合はたったの1.5%程度で、痛風患者100人のうち男性は98人以上と圧倒的に男性に多い病気です。これは、女性ホルモンに尿酸排泄促進作用があるため、一般に女性は男性より尿酸値が低いためです。(下図、帝人ファーマホームページより転載)
ところで、血液中の尿酸値が過剰になる仕組みは大きく四つに分かれます。一つは尿酸が体内で多量に産生され、血液中にあふれている場合(尿酸産生過剰型)、二つ目は、尿酸産生量は普通ですが、尿酸の腎臓から排泄が悪く血液中に残りあふれている場合(尿酸腎排泄低下型)、そして三つ目が最近発見された「腎外排泄低下型」、そして四つ目がそれらの「混合型」です。従来尿酸は専ら腎臓から尿中に排泄されると考えられていました。しかし、最近の研究で尿酸は腸管から糞便中に排泄されることが明らかになりました。さらに、この「腎外排泄型」が、日本人の場合約8割と圧倒的に多いことも明らかになっています。各々先天的な体質に加え、下記のような生活習慣、病態で尿酸値は増加します。
血清尿酸値が増加する生活習慣、病態 |
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アルコール過剰摂取 肥満 尿酸の原料となるプリン体が多量に含まれている食事の過剰摂取(下表を参照) 運動負荷(無酸素運動など無理な運動) 脱水症~水分摂取不足 腎機能障害の持病 利尿剤などの薬物 |
100g当たりのプリン体含有量(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版) | |
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極めて多い(300mg~) | 鶏レバー、マイワシ干物、イサキ白子、あんこう肝酒蒸し |
多い(200~300mg) | 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、 マアジ干物、秋刀魚干物 |
少ない(50~100mg) | うなぎ、ワカサギ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛タン マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、ツミレ、 ホウレンソウ、カリフラワー |
極めて少ない(~50mg) | コンビーフ、魚肉ソーセージ、かまぼこ、焼ちくわ、 さつま揚げ、数の子、すじこ、ウィンナーソーセージ、 豆腐、牛乳、チーズ、バター、鶏卵、とうもろこし、 ジャガイモ、サツマイモ、米飯、パン、うどん、そば、果物、 キャベツ、トマト、にんじん、ダイコン、白菜、海藻類 |