診療案内

総合診療内科

内科 内科全般の幅広い医療

内科全般について、例えば風邪、肺炎、ゼンソク、COPD(肺気腫や慢性気管支炎)などの呼吸器疾患、心不全、不整脈、狭心症・心筋梗塞などの循環器疾患、腹痛、胃潰瘍、ピロリ菌感染過敏性腸症候群B型やC型ウイルス性肝炎、胆石、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変などの消化器疾患、薬物乱用頭痛、脳梗塞や脳出血後遺症、認知症(認知症のある初診患者さんの診療はいたしておりません。認知症の方には専門医療機関への受診をお勧めしています。なお、認知症発症以前より当院に通院されている方が認知症を発症した場合、ご希望により引き続き当院で診療いたします)などの神経疾患、骨粗鬆症、サブクリニカルクッシング症候群、原発性アルドステロン症などの代謝内分泌疾患、貧血、腎臓や前立腺疾患、帯状疱疹風しん、デング熱(デング熱診療ガイドライン)などの感染症、リウマチ性多発筋痛症、RS3PE症候群などのリウマチ性疾患、複数の病気を抱える方に対しても、適切な診断・治療・アドバイスをします。様々な疾患の原因・診断・治療の十分な説明はもちろんのこと、体質や生活習慣等をふまえ、より健康的な暮らしができるようお手伝いします。 病気のことだけでなく、健康上の些細な心配事でも遠慮なくお尋ねください。
不明な点があれば情報端末を使いその場で調べることもできます。
皆様方に安心して信頼される“かかりつけ医”を目指し、地域に根付いた医療に貢献していきたいと考えています。

過敏性腸症候群について


各駅停車症候群

2011年12月13日の産経新聞に「『トイレに行かせて』江ノ電バス運転手が乗客残しファミレスへ」といった見出しの記事が掲載されました。「申し訳ないのですが、トイレに行かせて下さい」とアナウンスし、エンジンを切り車輪に輪留めをかけて、バス停前のファミレスに駆け込んだ」との内容です。この記事に鬼気迫るものを感じた方は、私同様各駅停車症候群だと思います。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome;IBS)とは、大腸・小腸に器質的異常(ガン、潰瘍や腸炎など視覚的に判別できるような形態的な異常)がないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常、腹痛、腹部膨満感や腹部不快感などの症状を呈する症候群で、症状の発現や増悪にストレスが密接に関係しています。ストレス社会の現代においてIBSの罹患率は増加の一途を辿っています。IBSは良性疾患であり生命的予後良好(寿命は健常者と変わらない)ですが、生活の質(quality of life;QOL)を害するため,苦痛を感じ医療機関を受診すると病気とみなされます。

IBSの成因、病態生理

IBSの成因は不明です。ただ、消化管運動異常、内臓知覚過敏、心理的負荷の3つの要素が複雑に絡み合って、病態を形成しています。そのため、最近では、これらの病態を説明する考え方として、「脳-腸相関」(下図、アステラス製薬ホームページより転載)という概念が提唱されています。

脳−腸相関

IBSの頻度

IBSは、最も頻度の高い消化器疾患の一つで、日本の有病率は10〜20%に達するといわれています。つまり、少なくとも日本に約1,200万人の患者さんがいると推定されています。とあるIBSの講演会で、講師が参加者の医師達に、IBS症状の有無を尋ねたところ、私を含め約半数の医師が挙手しました。IBSが如何にありふれた疾患であること、また、医師が大きな精神的ストレスを抱えていることを示唆しているようです。IBSの男女比は男:女=1:1.6で、有病率は20〜30歳代で高く、加齢とともに減少します。約50%の患者さんでは35歳前に発症し、50歳以上の初発患者は10%程度しかいません。日本では、特に受験期にIBSを発症する人が多いようです。当院でも中高生の患者さんが増えています。病型として下痢型、便秘型、混合型および分類不能型がありますが、下痢型は男性に多く、便秘型は女性に多く見られます。軽症は70%、中等症は25%、重症は5%程度です。男性に多い下痢型IBSは急に大便を催す上、下痢便のため一歩遅れると便失禁しかねません。そのため、トイレのない電車に長時間乗れず、各駅停車症候群と呼ばれています。

IBSの症状

IBSは、腹部症状(腹痛、腹部不快感、腹部膨満感、腹鳴など)を伴った下痢や便秘が続き、ストレスによって症状が出現したり、増強したりします。患者さんの多くはそれら腸症状のみならず、嘔気・嘔吐、食欲不振などの他の消化器症状、心悸亢進、四肢冷感、発汗、顔面紅潮、肩こり、頭痛などの自律神経失調症状や不安感、不眠、無気力、緊張感、全身倦怠感などの精神神経症状などを訴えることもあります。
 IBSは、器質的疾患ではなく機能的疾患ですから、大腸がんや炎症性疾患でみられるような血便や体重減少、発熱はみられません。また、ストレス負荷により症状が発現・増悪しますので、睡眠中やリラックス状態の時には症状は出ません
 また、IBSには同様の機能性消化管障害として、顎関節症、機能性ディスペプシア、胃食道逆流症、機能性直腸肛門痛などが高率に合併します。また、うつ病、不安障害、パニック障害,心臓神経症、線維筋痛症、慢性疲労症候群なども併存することが多いです。  IBSでは精神的ストレスが増悪因子になっていても、患者自身が必ずしもストレスを自覚しているとは限りません。腹部症状と、試験や仕事など生活上のエピソードとの因果関係を具体的に確認する必要があります。  また、IBS患者のライフスタイルは健常者よりも不規則な食生活を送り,睡眠も不規則なことが多いようです。

IBSの診断

 IBSの診断基準に関しては、世界的にはRomeV診断基準(2006年)がグローバルスタンダードとして使用されています。
 IBSは、RomeV基準において「過去3ヵ月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、

1、排便によって症状が軽減する、
2、発症時に排便頻度の変化がある、
3、発症時に便形状(外観)の変化がある(軟便・水様便になったり、硬便や兎糞状になったりする)(下図)

ブリストル便形状スケール

の3つのうち2つ以上の症状を伴うもの」と定義されています。
 下痢や便秘、腹痛等は、日常診療において頻繁に遭遇する消化器症状ですが、その原因と病態は多種多様です。その多くが急性、一過性の疾患ですが、IBSでは病悩期間が3ヶ月以上と慢性の経過を辿ります。しかし、慢性の器質的疾患も存在しますから、

1、理由のない体重減少がない
2、血便がない
3、夜間に腹痛や下痢で目が覚めない
4、50歳未満

という点を確認することが重要です。

腸炎後IBS

腸炎に罹患してから3〜6か月後にIBSを発症する症例が10%前後あります。腸炎後にIBSが発症した場合には、臨床像がやや異なる面があるので,腸炎後IBSと称しています。腸炎後IBSのリスク要因は腸炎の罹患期間、重症度、女性、若年者などです。乳酸菌製剤による治療が有効な場合が多いようです。
 自験例として東南アジアに海外旅行に行き、現地で下痢になり、帰国後も半年以上IBS症状が持続した女性がいました。

IBSの検査

 IBSと推察される患者さんに対して、大腸がん、感染性腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、甲状腺機能異常症など器質的疾患を除外するための尿検査や血液検査、便潜血検査、便細菌検査、便虫卵検査など非侵襲的な検査を実施します。直腸指診で直腸がんも否定します。もし、それらの検査で異常があればIBS以外の疾患が考えられるので、大腸内視鏡検査など精密検査を勧めます。
 簡単な検査で異常がなければ、IBSとして治療を開始し、この治療に反応すれば治療を継続し、反応しなければ器質的疾患を疑って消化管精密検査を実施するという「診断的治療」を行います。
 IBSは問診だけでも診断可能な疾患ですが、ある程度の検査は実施した方が患者は安心します。患者は「自分はガンなどの重篤な疾患ではないか」と疑って来院するケースが多いので、検査をして器質的疾患の可能性を否定すると、安心してIBSに対する治療に専念し、治療効果も上がります。

IBSの治療

IBSの治療には、食事指導、生活習慣是正に加え、薬物療法として高分子重合体、消化管機能調整薬、乳酸菌製剤、抗コリン薬、下剤、セロトニン5-HT3受容体拮抗薬、漢方薬、抗うつ薬、抗不安薬などがありますが、かなり奏功します。また、心理療法、精神療法などもあります。軽症、中等症、重症に分類した「心身症診断・治療ガイドライン(2006)」が作成されており、詳細は割愛します。いずれにしても、QOLが改善、症状をセルフコントロールでき、社会生活上も適応できれば治療のゴールとなります。
 患者に対して、ライフスタイルの是正を含めた生活指導や内科的治療を行っても症状が改善しない場合があります。上述の如くIBSではうつ病,不安障害なども合併している症例がしばしば見られますが、患者は身体症状を前面に訴え(仮面うつ病、心身症)、精神症状がカムフラージュされているからです。このような患者に対して抗うつ剤や、抗不安剤などにより心理面の治療を行って精神症状が改善すると、患者は便通異常や腹痛、腹部不快感が多少残存していても「具合がよくなった」と自覚的に改善されることが多いのです。
 治療を成功させるためには、良好な患者-治療者関係を築くことが大切です。そのためには、患者の苦痛を傾聴し,受容すること、検査結果を丁寧に説明し、IBSの病態生理をわかりやすく解説すること、IBSは機能性疾患であり予後良好であること理解させること、などにより精神的ストレス→IBS→精神的ストレスといった悪循環から解放することも重要です。

当院でのB型及びC型ウイルス性肝炎の診療について


この数年のウイルス性肝炎治療法の進歩は目を見張るものがあり、知識量が爆発的に増大、非常に複雑化しています。患者さんにとって最も適切な肝炎治療を行うためには、生半可な知識ではダメで、非常に高度な専門性が必要になっています。大学院時代C型肝炎ウイルスの研究に携わり、ある程度基礎知識のある私も、年々複雑化する内容を完全に把握するのが困難になりました。都内に二つしかない「肝疾患診療連携拠点病院」の一つ(もう一つは国家公務員共済組合連合会虎ノ門病院)である武蔵野赤十字病院消化器科泉並木部長のお話では「非常に複雑なため専門医でも常に勉強していないと正確な診断、判断を下すことが出来ない。」程だそうです。
B型やC型のウイルス性慢性肝炎における新知見をまとめてみると、

1、外来種の遺伝子型AのB型肝炎ウイルスが日本に蔓延化、成人感染のB型肝炎の約10%が慢性化するようになった。
2、B型肝炎ウイルスは稀ではあるが、尿、唾液、鼻汁、汗、涙などでも感染しうることが明らかになった。
3、成人発症のB型急性肝炎が慢性化せず完全に治癒したと考えられていた場合も、実際にはB型肝炎ウイルス遺伝子は生体内に遺残、免疫抑制剤や抗癌剤投与時で 再活性化し、重篤な肝炎を再発する可能性のあることが明らかとなった。
以上の詳細は、「B型肝炎の 疾患概念のパラダイムシフト〜是非、B型肝炎ワクチンを接種して下さい!」を御参照下さい。
4、B型肝炎治療では、従来の肝庇護剤、インターフェロンに加え、経口剤である核酸アナログ(ラミブジン、アデホビル、テノホビル、エンタカビル)という肝臓癌を予防する薬を使用できるようになった。
5、C型肝炎に対するインターフェロン治療は、経口の抗ウイルス剤を併用することにより著効例が著しく増加、かなり確率で完治するようになった。
6、C型肝炎治療において、完治させうる経口剤の抗ウイルス剤が続々と上梓された。その著効率はきわめて高く(95〜99%!)C型肝炎は副作用の強いインターフェロンを使用しなくとも飲み薬で治せる時代になってきた。そのため副作用でインターフェロンを使用できなかった患者さんも完治のための治療を受けることが出来るようになった。さらに、肝硬変や高齢のためインターフェロンを使用できなくなった患者さんにも治療の適応が広がった。
7、これらC型肝炎に対する経口治療の新薬は事前に遺伝子検査を受けることにより、有効か無効か判るようになった。無効なものを投与すると薬剤耐性化が広がり、その後の治療をむしろ難しくするため事前に遺伝子検査が必須になりつつある。
8、次々と有効性の高い新薬が開発されるため、患者さんによっては有効率の低い治療をすぐに始めるより、むしろより有効な新薬の開発を待って治療を始めた方が よいと判断される場合(治療待機)も出てきた。つまり、現時点では、治療しないことが最適な判断と考えられる場合もあるようになった。
9、肝臓移植が行われるようになった。
10、行政的には東京都では「B型・C型肝炎治療医療費助成制度」「東京都肝炎ウイルス重症化予防推進事業(精密検査費用の助成)」という医療費助成を行っており、積極的に活用すべきである。
11、東京都では肝炎診療ネットワークを構築、「肝疾患診療連携拠点病院」や「幹事医療機関」(都内12医療機関)、「肝臓専門医療機関」を指定、医療費助成の受けられる医療機関が限定されるようなった。
 

以上のような状況のため、当院ではB型またはC型ウイルス性肝炎の方を発見した場合、その方にとって最も適切な治療法を判断するため、必ず、武蔵野赤十字病院を含めた肝臓専門医療機関の受診をお勧めしています。当院でウイルス性肝炎の診療を行うのは肝臓専門医療機関で指示され、連携して治療を行う場合に限定しています。

原発性胆汁性肝硬変について


 代表的な自己免疫性肝疾患に自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis;以下AIH)と原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis;以下PBC)があります。開院後7年余りの間に当院でも、両者を合わせると10人近く発見された難病で、注意深く観察すると時々見つかる病気です。とくにPBCは国の特定疾患治療研究事業の56対象疾患の一つで、検査代、診察代、薬代など診療にかかわるすべての費用が公費負担となります。ですから、正しく診断し、公費負担の申請手続き方法を指導することは患者さんにとって大きなメリットです。現在AIHは10,000人程度、PBCは57,000人程度日本にいると推計されています。ということは人口約17万人の三鷹市内だけで90人程度自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変の方がいることになります。診断されていない方もまだ多数いるでしょうから、実際にはもっと多いはずです。ここでは、頻度の多いPBCついてお話します。
 免疫とは人間が病原体、ガン細胞などヒトにとって有害なものから身を守るための体の中の仕組みです。そのため免疫システムは自己と非自己=病原体などの異物を明確に区別し、非自己のみを攻撃排除するようになっています。どのようにして免疫システムが無数にある非自己と自己を判別しているのか、その仕組みを解明したのが日本人で始めてノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士です。
 自己免疫性疾患とはその免疫システムが間違って自己を攻撃することによって発症する病気です。自己免疫性疾患の中で最も有名なのが関節リウマチです。関節リウマチは、免疫が自分の関節を攻撃する病気で、関節が破壊され変形します。一方、自己免疫性肝炎は自分自身の肝細胞を、原発性胆汁性肝硬変は肝臓の中にある自分自身の胆管(胆汁を肝臓から腸管に流し出すための管)を攻撃、破壊する病気です。ちなみに、便の主成分は本来白色ですが、腸管に排出された胆汁の黄色に染まりあのような色になって排泄されています。
 PBCは末期には胆汁が体の外に排泄できなくなるため、体内に胆汁が逆流、黄疸(黄疸で皮膚が黄色になるのは、胆汁が黄色いためです)をきたし、ついには肝臓病の終焉状態である肝硬変となります。PBCが発見された1950年当時、このような肝硬変の患者さんが端緒となって発見された疾患であったため、原発性胆汁性肝硬変と名付けられました。
 PBCの特長を列記すると、
1. 男女比は1:9で圧倒的に女性に多い。
2. 20〜80歳代まで幅広く発症するが、40〜60歳代に圧倒的に多く発症する。まとめると、患者の多くは中年女性で発症する。下図(難病情報センターホームページより転載)を参照して下さい。

男女別無症候性と症候性PBC

3. 自覚症状を伴うのは患者の約30%程度で、残り70%は無症状(無症候性PBCと呼ぶ)である。自覚症状は皮膚掻痒感(胆汁の流れが滞ることにより血中に逆流してきた胆汁が皮膚を刺激するため)である。
4. 血液検査で、血清IgM、胆道系酵素のALP、γ-GT、総コレステロールが上昇する。一方、AST、ALTの上昇は軽度にとどまる。
5. PBCに特異的な抗ミトコンドリア抗体が陽性となる。
となります。
 このうち、4のうち、AST、ALT、γ-GT、総コレステロールは三鷹市民健康診査の検査項目に含まれています。ですから、三鷹市民健康診査を受診すると、性別、年齢、AST、ALT、γ-GT、総コレステオロール値からPBCの可能性のある方を拾い上げることができます。実際、当院で発見されたPBC患者の多くが、三鷹市民健康診査が端緒でした。
 γ-GTは飲酒によって増加します(例外的に飲酒しても上昇しない方が存在します)。また、飲酒習慣のある方はメタボや肥満の方が多いため総コレステロール値も高い方が多いです。換言すると、飲酒習慣がないにもかかわらず、γ-GT、総コレステロール値高値の場合、積極的にPBCを疑い、高ミトコンドリア抗体、血清IgMなどの追加採血を進言しています。
 治療にはウルソデオキシコール酸やベザフィブラートが有効で、検査データが改善されるとともに、生命予後も改善します。無症候性PBCの方は、一般人と寿命は変わらず、天寿を全うします。一方、症候性PBCは徐々に進行、肝硬変に至り、肝不全や合併する食道静脈瘤の破裂が死因となることが多いです。そのため、末期のPBCの方に対しては肝移植が行われることもあります。無症候性PBCの方の一部は症候性PBCに移行しますので、無症候性PBCの方も定期的に検査を受ける必要があります。
 AIHもPBCも同じ発症機序の自己免疫性疾患ですから、両者が合併(PBC-AIHオーバーラップ症候群)することもあります。また、肝臓以外の自己免疫性疾患、例えば関節リウマチ、シェーグレン症候群、慢性甲状腺炎(橋本病)、CREST症候群などがPBCの約20〜30%に合併します。
 ところで、上記の如くPBCの約70%は無症状です。無症候性PBCの方は、一般人と寿命は変わらず、天寿を全うします。こういった方々に原発性胆汁性“肝硬変”といった病名を付けることは問題です。歴史上、この病気のため肝硬変に至った方が端緒となり発見されたため、当初付けられた病名「原発性胆汁性肝硬変」が現在まで変わりなく使用されてきました。しかし、現在、ほとんど健常人とかわらないくらい健康なPBC患者のいることが明らかになり、さらにそういった方の方がむしろ多いことも明らかになっています。にもかかわらず、未だにそういった方々に“肝硬変”の病名を使用しています。
 私自身、三鷹市民健康診査でPBCを疑ったとき、患者さんに「まったく無症状かもしれませんが、検査データから『原発性胆汁性肝硬変』という病気が疑われますので、追加で採血してはどうでしょうか?」と進言すると、皆一様に「肝硬変ですか!」と驚かれます。そのため、毎回原発性胆汁性肝硬変の歴史的な背景などをお話し、肝硬変でない方にも肝硬変という病名を使用していることをご説明しています。でないと、患者さんは検査結果が出るまでの間、不安な気持ちで数日間を過ごさなければならないからです。原発性胆汁性肝硬変という病名はPBC患者像の実態と乖離しており、すでに「原発性胆汁性胆管炎」といった病名に改めようといった議論がなされています。

薬物乱用頭痛について


 外来診療をしていて最近しばしば見かけるのが「薬物乱用頭痛」(Medication overuse headaches, MOH、別名リバウンド頭痛)です。薬物乱用頭痛とは、鎮痛薬を過剰服用することで、逆に頭痛の頻度が増え、連日のように頭痛が起こるようになる病態です。患者さん自身は、頭痛薬の飲み過ぎが原因と理解していないため、漫然と頭痛薬を服用し続ける傾向があります。典型的には、中等度から重度の片頭痛や緊張性頭痛ため頭痛薬を過剰摂取し発生することが多いようです。市販の鎮痛薬が容易に入手可能なことも一因と思われます。頭痛持ちの方は極軽度の頭痛時や、さらにはイベントの前に予防的に服用したり、必要以上に過剰服用したりする傾向があります。
 薬物乱用頭痛の有病率は、人口の1〜2%とされ、頭痛の中では緊張型頭痛、片頭痛に次いで3番目に多く、世界中で問題になっています。頭痛の罹病期間は約平均18年と長く、成人だけでなく小児や思春期においても見られます。典型的には中年女性の罹患率が高い傾向にあります。
 乱用の原因となる薬物は、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)等の鎮痛薬、エルゴタミン製剤(片頭痛治療薬、ジヒデルゴット(R))、トリプタン製剤(片頭痛治療薬、イミグラン(R)、ゾーミック(R)、レルパックス(R)、マクサルト(R)、アマージ(R))、オピオイド(麻薬様物質)などが挙げられます。最も多いのは市販の鎮痛薬を乱用しているケースですが、近年はトリプタン製剤の処方量が増えていることに加え、下記の如く、トリプタン製剤が他剤に比べ少ない服用回数でMOHを発症することより、トリプタンによるMOHが増えています。

MOHに至るまでの鎮痛剤平均使用回数

 一般に、鎮痛薬を月に10〜15日以上、3ヶ月間以上継続的に内服している場合、乱用と判断します。
 MOHの原因についてはまだはっきりとは解明されていません。頭痛薬過剰服用に伴い痛みに対する感受性が過敏になる、つまり痛みの閾値が下がってしまうことが原因ではないかと考えられています。しかし、関節リウマチの患者さんも大量に鎮痛薬を使用しますが、薬物乱用頭痛は起きません。よって、片頭痛や緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛の発症要因となっている可能性があります。
 薬物乱用頭痛の治療の原則は、以下の3点です。
1. 原因薬物の断薬
2. 原因薬物中止後に起こる頭痛(反跳頭痛)に対する治療
3. 予防薬の投与
 当然ですが、まずは乱用の原因となった薬物の断薬です。徐々に減量するより即刻断薬する方が有効なようです。しかし、そのことにより薬物離脱症状〜リバウンド頭痛(反跳頭痛)が2〜10日間悪化します。典型的には約2ヶ月間離脱症状が持続しますが、その後は、頭痛の頻度や強度が以前より著しく軽減します。リバウンド頭痛に対して当該鎮痛剤を再服用すると頭痛は軽減しますから、反跳頭痛緩和の施策を講じなければ、過剰服薬行動を再強化しかねません。さりとて、反跳頭痛緩和の施策が過剰になればまた薬物乱用頭痛を招きかねません。このような理由で、リバウンド頭痛の軽減に、私は漢方薬(呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散等)を使用します。漢方薬の詳細はまた別の機会にお話しますが一つだけ。西洋薬は、同じ病気の同じ症状に対して万人に同じ薬を処方します。しかし、漢方薬は患者の体質や病期(初期なのか治癒期なのか)等で使用する薬が異なります。ですから、同じ薬物乱用頭痛でも患者さんにより使用する漢方薬が異なります。この見極めが肝心なのです。ピタッとはまると面白いように効きますが、外れると「まったく効かなかった。」と言われかねません。

 頭痛予防薬として、抗うつ薬、抗てんかん薬、ステロイドホルモン、トリプタン製剤、消炎鎮痛剤等を投与します。MOH治療の成功率は70%程度といわれていますが、約40%の患者が再発しています。治療終了後1年以内の再発が最も多く、その後、再発リスクは減少していくため、頭痛薬使用頻度(月10日以内)、鎮痛剤の功罪についての患者教育の徹底が再発防止策となります。治療が成功するか否かは、患者さんの意識改革や忍耐力ですが、医師の話に耳を傾け、断薬を勧めるその言葉を信じてもらえるか否かは、やはり、医師と患者間の信頼関係の構築に掛かっています。

RS3PE症候群について


高齢化社会になり増加してきたとはいえ、従来その罹患率(1年間に発症する患者の割合)は10万人当たり1.5人程度で、三鷹市の人口を18万程度とすると、三鷹市内で1年に3人程度しか発症しない病気です。ですからその発症原因など十分に解明されておらず、不明な点も多々ある病気ですが現在までの知見を纏めると、

病気の概念

1985年にMcCartyらが、1.予後の良い(Remitting)、2.リウマチ因子陰性(Seronegative)、3.対称性(Symmetrical)、4.手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎(Synovitis With Pitting Edema)等の特徴を表す言葉の頭文字をとって、RS3PEの概念を提唱しました。発生頻度については、本邦では50歳以上の0.09%に認められたとの報告があります。現在、適当な日本語の病名がないため、日本リウマチ学会などで検討されています。ときに前立腺癌、胃癌、大腸癌、悪性リンパ腫、白血病の初期症状として出現する場合があります(腫瘍随伴性RS3PE)。その場合、発熱、全身倦怠感などの全身症状が強く、治療抵抗性の場合が多いようです。

臨床症状

比較的急な発症で,対称性の滑膜炎による末梢関節痛,両側手背・足背の圧痕を残す浮腫(ボクシンググローブハンドと呼ばれることもあります)が特徴です。RS3PE症候群27例の報告では、関節炎の部位は、中手指節関節 81.5%、近位指節間関節70.4%、手首55.5%、肩48%、肘11.1%、膝33.3%、足首25.9%でした。炎症に伴う全身倦怠感や微熱、体重減少を認めることもあります。

検査所見

炎症を反映して赤沈が亢進、CRPが上昇します。リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体や抗核抗体は陰性、一部の症例で白血球が増加したり、補体が高値となったりします。血清VEGF(血管内皮増殖因子)が著明に増加、それによる関節周囲の血管透過性亢進が浮腫の原因と考えられています。

診断・鑑別診断

確立した診断基準はまだありません。McCartyらの推奨する診断基準は、以下の4項目すべてを満たすものとしています。
1、急性発症する左右対称性の四肢末端部の関節炎
2、手背及び足背の圧痕性浮腫
3、50歳以上の高齢者
4、リウマトイド因子陰性
関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症の亜型とする意見もあり、その鑑別が重要です。
各々特徴を纏めると、

  関節リウマチ リウマチ性多発筋痛症 RS3PE症候群
発症年齢 20〜60 50< 50<
性差 女>男 女>男 女<男
末梢関節炎 ++ −〜+ ++
骨びらん
筋痛 −〜+ ++ −〜+
手足の浮腫 −〜+ −〜+ ++
炎症反応 ++++
リウマチ因子 ++
ステロイド反応性 ++++
発症様式 緩徐突然発症突然発症
予後 慢性経過 再燃率20〜50% 予後良好、再燃まれ

治療

副腎皮質ステロイドに対して反応性は良好。通常プレドニゾロン10〜15mgから開始し漸減していきます。症状が消失、炎症反応が正常化すると薬を中止しますが、再燃はまれです。

アレルギー科

アレルギー科

アレルギーの病気は、増加傾向にあり、国民の30%以上が何らかのアレルギーの病気を持っていると言われています。アレルギー疾患とは、原因物質が同じでも、人によって、あるいは同じ人でもその時によって、眼や鼻、耳、皮膚、気管・気管支、胃腸などに、いろいろな症状を起こしてくる病気です。当クリニックでの対象アレルギー疾患はアレルギー性鼻炎や花粉症、口腔アレルギー症候群、蕁麻疹、気管支喘息などです。なお、アトピー性皮膚炎は皮膚科の受診をお勧めしています。
当院では治療により仕事や生活に支障をきたさないよう眠気のない治療薬の組み合わせ、また、これから妊娠予定の方、妊娠中の方、授乳中の方への安全な投薬も行っています。妊婦の方、授乳婦の方もお気軽にご相談下さい。

アレルゲン検査について


アレルゲンについて

  アレルギー疾患において最も有効な治療方法は、原因となるアレルギー物質、すなわち抗原(アレルギーを引き起こす抗原をとくにアレルゲンと呼びます)から回避することです。スギ花粉症の薬を服用すると眠気などの副反応が出現する可能性がありますが、マスクやメガネを着用し、花粉の侵入を防ぐ方法に副作用はなく、最も安全な治療法〜予防法といえます。とくに妊婦など薬の胎児への影響を心配される方には最適な方法です。また、抗原回避は、当たり前ですが最も廉価な治療法でもあります。
 アレルギー性疾患のうち、例えば花粉症では、草花や樹木の種類によって花粉飛散時期が異なるので、アレルゲン(草花や樹木の種類)を同定することで、マスクやメガネの着用時期を適切に判断することができます。
後述のようにアレルギー反応の中で急性かつ重篤な病態であるアナフィラキシーの原因として最も多いのが食物アレルギーです。ですから食物アレルゲンを同定、除去食を摂取することで未然にアナフィラキシーを予防することも可能になります。

アレルゲン検査について

  アレルゲン同定検査としては、採血により特異的IgE抗体を測定する方法と、被検者の皮膚に小さな傷を付け直接抗原液を滴下する皮内反応があります。後者は、特異性は高いのですが、手技が煩雑な上、既に抗アレルギー薬(ケミカルメディエーター遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬、Th2サイトカイン阻害薬)を服用していると、皮内反応が抑制され偽陰性となるため、当院ではもっぱら採血により特異的IgE抗体を測定する方法で行っています。当院では下表リンクのごときアレルゲンについて検査可能です。なお、検査料金ですが、1項目1,100円ですが保険が使えるため3割負担の方で330円となります。ただ、初診料、採血料、免疫学的検査判断料に加え、同時にアレルギー状態の指標である総IgE量、好酸球数等も一緒に測定するため、合計金額は、3割負担の方でおおよそ2,070円+330円×項目数(最大13項目まで)、と比較的高額な血液検査です。しかし、最近、13項目の料金で、下記のごとき代表的な吸入系アレルゲン18項目と食餌系アレルゲン18項目、合計36項目を少量の血液で一度に測定できる検査が開発されました(Viewアレルギー、(c)Phadia K.K.)。アレルゲンについて思い当たるものがなく見当の付かない場合、スクリーニングとして利用するとよいでしょう。
検査可能なアレルゲンの種類
>>詳しくはこちら

アナフィラキシー補助治療剤「エピペン®」について


アナフィラキシーとアナフィラキシー・ショック

 学校医として新入生の健康調査票を通読していると、最近何らかのアレルギー疾患を有する生徒の多いことに驚かされます。アレルギー反応の中で急性かつ全身性の重篤な病態がアナフィラキシーです。
 具体的には原因物質に曝露後数分から2時間程度の間に、不安感、無力感、動悸、胸苦しさ、眼瞼浮腫、めまい、流涙、鼻閉、鼻汁、くしゃみ、口唇、舌の痒み、喉の閉塞感、咳、吐き気、腹痛、下痢、四肢冷感、蕁麻疹、皮膚の紅潮、痒み、失禁などの症状が出ます。特に全身に広がる蕁麻疹が初発症状のことが多いです。症状発症後は30分間のうちに急激に悪化、ときに血圧が低下、顔面蒼白、呼吸困難、呼吸音がゼーゼー、意識障害が出現、アナフィラキシー・ショックという危篤状態になることもあります。

アナフィラキシーの徴候と症状出現頻度[海外データ]

皮膚症状
 じん麻疹、血管性浮腫
 皮膚紅湖
 発疹のないかゆみ
90%
85〜90%
45〜55%
2〜5%
呼吸器症状
 呼吸器困難、喘鳴
 喉頭浮腫
 鼻炎
40〜60%
45〜50%
50〜60%
12〜20%
めまい、失神、血圧低下 30〜35%
腹部症状
 嘔気、下痢、腹痛
25〜30%
その他
 頭痛
 胸痛

5〜8%
4〜6%
方法:過去に報告されたデータ(14文献、1,865症例)に基づいて著者が作成(各症状の割合は推定値)
Joint Task Force on Prectice Parameters:J Allergy Clin Immunol 115(3 Suppl 2):s483,2005より改変

アナフィラキシーの原因(ファイザーホームページより) アナフィラキシー・ショックは日本で年間5,000〜6,000人発生しているといわれ、そのうち死亡例は50〜70人程度います。
 アナフィラキシーの原因としては右図(ファイザーホームページより転載)のごとく食物が原因となっている場合が最も多いです。そのほか薬剤やハチ毒が原因の場合が多数見られます。死亡例の原因としては薬剤が最も多く、よくニュースで耳にするようにスズメバチなどの蜂毒が次に多いです。アナフィラキシーはさまざまな抗原物質に対する血液中に存在する特異的IgE依存的に発現するため、事前に特異的IgEを測定し、アレルギー体質の有無を調べておくことも可能です。
 食物アレルギーのうち原因食物として最も多く約40%を占めるのが鶏卵です。鶏卵アレルギーの多くは乳幼児期に発症、成長とともに耐性を獲得、アレルギーは寛解する傾向にありますがまれに成人まで持続する方もいます。小麦は鶏卵、牛乳とともに食物アレルギーの3大原因食物となっています。2010年には「茶のしずく石鹸」に含まれた小麦成分により多数の方がアナフィラキシーを発症していたことが報道されました。また、小麦は食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として最も頻度が多いです。食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、特定の食物を摂取した後、運動負荷が加わることにより発症するアナフィラキシーです。小学生などが給食でエビフライ(小麦とエビ両方が含まれる)を食べた後、昼休みに校庭で運動をしてショック死した事故をニュースなどでご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。このようにエビやカニなどの甲殻類アレルギーも小麦に次ぐ食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として知られています。ピーナッツ(落花生)アレルギーは最近増加傾向にあり、そのほかのナッツ類のアレルギーを同時に持つことが多いです。鶏卵のように加齢に伴い改善する傾向が少なく一度発症すると重篤化しやすい傾向があります。このように重篤なアナフィラキシー・ショックを来しやすい原因食物である卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生を含む加工食品に関しては、食品衛生法上表示が義務付けられており、確認の上購入することをお勧めします。
 薬剤アレルギーの中には、薬剤そのものに対するアレルギーではなく、卵白などを原料とするため取り除けなかった鶏卵成分のため食物アレルギーを発症してしまうものもあります。下記は鶏卵や牛乳成分が含まれる可能性のある薬剤です。鶏卵や牛乳アレルギーのある方には当然投与禁忌となっています。

  含有成分 商品名 薬効分類
鶏卵 リゾチーム塩酸塩(塩化リゾチーム) ノイチーム®、アクディーム®、レフトーゼ®、スカノーゼリン®、エリチーム®、エンリゾシロップ®、ミタチーム®、リチーム®、リフラップ®、リゾティア点眼液®、ムコゾーム点眼液® 消炎酵素
牛乳 タンニン酸アルブミン タンナルビンなど 止瀉剤、整腸剤
乳酸菌製剤 ラックビーR散、コレポリーR散、エンテロノンR散、エントモール散 整腸剤
カゼイン ミルマグ錠 制酸剤、緩下剤
メデマイシンカプセル マクロライド系抗生物質製剤
エマベリンLカプセル 高血圧・狭心症治療剤
ラコール、エンシュア・H、エンシュア・リキッド、アミノレバンEN配合散 経腸または経口栄養剤
このうち塩化リゾチームは市販の総合感冒薬にも配合されており、鶏卵アレルギーのある方は十分注意してください。

アナフィラキシーの初期治療

 アナフィラキシーの初期治療としては、アレルギー反応の初期段階を抑制する働きのあるエピネフリンを筋肉注射することが最も有効です。エピネフリンは注射後数分で効果を発現、さらに気道を拡張させることによって呼吸困難を改善、心拍出量を増加させることによって低血圧をも改善します。
 アナフィラキシーでは抗原物質に曝露後分単位で発症、分単位でショック状態に陥る可能性があるため、アナフィラキシー・ショックの治療は時間との争いになることが多いです。死亡例において、アナフィラキシー発現から心停止までの時間は、薬剤で5分、蜂毒で15分、食物でも30分程度です(下図、ファイザーホームページより転載)。

アレルゲンによる心停止発現までの時間

実際、アナフィラキシー・ショックが発症し30分以内にエピネフリンを投与できればほとんど救命できますが、30分を過ぎると救命率が低下していきます。ですからアナフィラキシー発症後医療機関を受診していたら間に合わない場合もあります。とくに林野庁職員は山奥で働いているのでスズメバチに刺された後30分以内に医療機関を受診することができず、死亡事故が相次いでいました。そのため1995年から林野庁職員を対象としてエピネフリン自己注射薬注射器一式を携帯することが認められるようになしました。さらに2003年から蜂毒によるアナフィラキシー補助治療剤として、2005年から食物アレルギーや薬物アレルギーによるアナフィラキシー補助治療剤として自己注射が認可されました。しかし、保険適用はなく1本12,000〜15,000円を全額自己負担しなければならない上、有効期限が1年程度のためたとえ未使用でも毎年買い替えなければならず患者負担の重さが問題となっていました。しかし、ようやく2011年9月より保険適用となり安価に入手できるようになりました。

アナフィラキシー補助治療剤「エピペン®」について

 エピネフリンは同じ注射薬であるインスリンと違い何時何時急に必要になるか事前に分からないため、注射針、容器、薬液が一体となった携帯型自動注射器「エピペン®」として商品化されています。
 エピペンの携行が推奨される方としては、

  1. 過去に何度もアナフィラキシーの既往のある方、微量の抗原物質でもアナフィラキシーが誘発される方、ショックを誘発させやすい食物アレルギーの方(ピーナッツ、ナッツ、魚介、牛乳、そば、卵、小麦など)
  2. 喘息を合併している方
  3. 非選択性β遮断薬(高血圧、狭心症、不整脈などの薬の一種)を服用中の方(エピネフリンが効きにくい方)
  4. 医療機関から離れた地域に居住している方、修学旅行や海外旅行時
  5. 蜂刺傷後約20%の方が再刺傷によりアナフィラキシー・ショックを起こす危険性が高くなることが分かっています。林業、養蜂業などに従事する方で過去に蜂刺傷の既往のある方は携帯すべきです。

 以前は、注射は医療行為ですから、一部インスリンのように自己注射が認められているもの以外本人か保護者以外の者が注射した場合医師法違反に問われる可能性がありました。しかし、2008年文部科学省は、本人に代わって教職員がエピペンを打つことは医師法に違反しないとする初めての見解を示しています。食物が原因のアナフィラキシーは学童に多く、毎年20,000人程度います。2010年にはアナフィラキシー・ショックを発症した児童に対し学校側が保護者から預かっていたエピペンを使用せず救急車を要請、駆けつけた母親がエピペンを注射し危うく一命をとりとめるという事例も起きています。エピペンが保険適用となり、携行する児童生徒が急激に増加しており、今後は教職員もその使用方法に精通しておく必要性に迫られそうです。
 このようにエピペン注射は医師不在のもと自己判断で注射しなければなりません。ですから使用方法とともに注射のタイミングを理解しておく必要があります。

アナフィラキシー重症度(グレード)別症状と対応方法
グレード 1 2 3
皮膚症状 赤み・じんま疹 部分的、散在性 全身性  
かゆみ 軽度のかゆみ 強いかゆみ  
粘膜症状 口唇、目、顔の腫れ 口唇、瞼(まぶた)の腫れ 顔全体の腫れ  
口、喉の違和感 口、喉のかゆみ、違和感 飲み込みづらい 喉や胸が強く締めつけられる、声枯れ
消化器症状 腹痛 弱い腹痛(がまんできる) 明らかな腹痛 強い腹痛(がまんできない)
嘔吐・下痢 嘔気、単回の嘔吐、下痢 複数回の嘔吐、下痢 繰り返す嘔吐、下痢
呼吸器症状 鼻みず、鼻づまり、くしゃみ あり    
咳(せき) 弱く連続しない咳 時々連続する咳、咳き込み 強い咳き込み、犬の遠吠え様の咳
喘鳴、呼吸困難   聴診器で聞こえる弱い喘鳴 明らかな喘鳴、呼吸困難、チアノーゼ
全身症状 血圧低下     あり
意識状態 やや元気がない 明らかに元気がない、横になりたがる ぐったり、意識低下〜消失、失禁
※上記対応は基本原則で最小限の方法である。状況に合せて現場で臨機応変に対応することが求められる。
※症状は一例であり、その他の症状で判断に迷う場合は中等症以上の対応を行う。
(H Sampson:Pediatrics.2003:111:1601-8.を独立行政法人国立病院機構相模原病院改変)

 上表のごとくアナフィラキシー重症度は分類されますが、グレード2でエピペン使用を考慮し、グレード3では速やかに注射する必要があります。
 その覚え方としてABCD法則というのがあります。下図(ファイザーホームページより転載)のように、全身のじん麻疹に加え、A:喉頭浮腫〜喉が腫れ、息が詰まる感じ、B:喘息〜呼吸音がゼーゼー、ヒーヒーいって呼吸困難に、C:ショック〜血圧低下による顔面蒼白、D:下痢、腹痛、嘔吐、などを認めた場合、迷わずエピペンを使用します。

アナフィラキシーのABCD法則

 従来、その強力な交感神経刺激作用により心肺蘇生に使用されるエピネフリン注射薬である「ボスミン注1mg®」は、薬事法上劇薬に分類されるほど使い方によっては命にかかわる副作用を持つ薬品です。「エピペン®」では1本0.3mgとエピネフリン含有量を減じているため大事故につながる可能性は少なくなっています。しかし、それでも、ある種の向精神薬(ブチロフェノン系、フェノチアジン系)、α遮断薬、動脈硬化症患者、甲状腺機能亢進症患者、糖尿病患者、心室頻拍症等の重症不整脈患者、精神神経症患者等では禁忌〜原則使用禁忌となっています。なお、エピペンは0.15mgと0.3mgの2剤型が用意されています。0.01mg/kgが標準的な投与量のため、0.15mgタイプでも、体重15kg以上でないと過量になってしまいます。ただし、原則ですので、例えば体重14kgの小児に食物アレルギーによるアナフィラキシーの既往があれば、救命を最優先し投与することも可能です。一度ご相談下さい。エピペン乱用は事故に繋がりかねないため、処方に際し患者さんにしっかりと使用方法について説明、理解させる必要があります。そのため、エピペンを処方する医師も一定の講習を受講し、登録をした医師しか処方できません。エピペンを希望される患者さんは、エピペン処方登録医を受診して下さい(当然当院はエピペン処方登録医です)。
 なお、当院は医薬分業していますが、多くの薬局はエピペンの在庫を置いていないため取り寄せになることが多く、処方箋を持参してもすぐに薬は手に入りません。希望される方はそれを見越して早めに受診するようにして下さい。
 なお、エピペンを注射後は必ずすぐに入院施設のある病院を受診して下さい。エピペン注射はあくまでもアナフィラキシーの初期治療、補助的治療で症状を緩和するためのものです。たとえエピペン注射により病状が改善しても、アナフィラキシー・ショックの中には二峰性の経過をたどるものがしばしば見られます。すなわち一度症状が改善しても8〜24時間以内に再びショック症状が現れることがあるのです。ですから1〜2日間の経過観察入院が必要になる場合が多いです。たとえエピペン注射で症状が改善しても、必ず医療機関を受診して下さい。

口腔アレルギー症候群(OAS)について

口腔アレルギー症候群とは

 口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome;OAS)とは、食物、中でも果実を食べた後15分以内に、食べ物が直接接触した口唇、舌、口や喉の粘膜が痒くなったり、ヒリヒリしたり、腫れたりするアレルギーです。口や喉だけでなく、顔が痒くなったり、目や鼻に花粉症のような症状が出たり、咳、呼吸苦など喘息症状が出たりすることもあります。また、下痢、腹痛といった胃腸症状、さらにはアナフィラキシー・ショックが発症することも報告されています。花粉症の人が口腔アレルギー症候群を引き起こしやすいのは、花粉と果物や野菜に含まれるアレルゲンに交差抗原性(アレルゲンに共通の物質が含まれていること)があるためです。原因となる花粉と食物は下記の如くです。

花粉 花粉と関連のある食物
ブナ目・カバノキ科・シラカンバ属の白樺、ハンノキ属のハンノキ、オオバヤシャブシ リンゴ、モモ、サクランボ、洋ナシ、ナシ、スモモ、アンズ、イチゴ、ウメ、ビワ、アーモンド(以上バラ科)、ニンジン、セロリ、パセリ(以上セリ科)、ヘーゼルナッツ、ピーナッツ、ブラジルナッツ、ココナッツ、クルミ、馬鈴薯、キウイ
スギ・ヒノキ科のスギ・ヒノキ トマト
イネ科のカモガヤ・マグサ・オオアワガエリ 小麦、トウモロコシ、キビ、アワ、ヒエ(以上イネ科)、トマト、馬鈴薯、なす、ピーマン、トウガラシ、シシトウ(以上ナス科)、メロン、スイカ(以上ウリ科)、オレンジ、セロリ、バナナ
キク科・ブタクサ属のブタクサ メロン、スイカ、カンタローブ、ズッキーニ、キュウリ、カボチャ(以上ウリ科)、バナナ
キク科・ヨモギ属のヨモギ ニンジン、セロリ、パセリ(以上セリ科)、リンゴ、ピーナッツ、キウイ

皮膚病診療VOL・22 NO・10 2000 oral allergy syndrome 池澤 善郎を改変

 北海道に多いシラカバ花粉症では30〜50%の患者さんが、リンゴやサクランボ等のバラ科の果実を食べるとOASを起こすことが知られています。また、キウイ、メロン等のように花粉症がなくともOASがみられる場合もあります。成人では花粉症に続いてOASを発症する場合が多いですが、年少児では原因食物の多食によって発症するようです。
 花粉症の増加とともに最近OASの方も増加しています。

口腔アレルギー症候群の検査や治療

原因花粉や食物、果物等について血液検査にてアレルギー体質の有無を調べることができます。しかし、実際に症状があるにもかかわらず検出できないこともあります。遺伝性が報告されているので、血縁家族に同様の症状のある方はOASの可能性が高いです。治療法としては、まず、原因と考えられる食べ物の摂取を避けることです。そうすれば、まったく症状は出ません。誤って摂取し、OASの症状が出た場合、軽ければ経過観察でもかまいませんが、症状が強いようなら抗アレルギー薬や副腎皮質ステロイド薬を内服します。喘息発作、アナフィラキシー症状があれば必ず医療機関を受診して下さい。

ラテックスアレルギー

 ラテックス(天然ゴムそのものではなく、ゴムの中に含まれる蛋白質)は、バナナ、キウイ、栗、アボガド、胡桃、トマト、パパイヤ、グレープフルーツ、馬鈴薯、メロン、イチジク、ピーナッツと共通抗原があるので、OASのある人は、ラテックスアレルギーも併発(ラテックス−フルーツ症候群)しやすいです。医療従事者は職業上ゴム手袋を用いる場合が多いため、アレルギーを持つ者が多いです。アトピー性皮膚炎があると合併しやすく、多くは接触性皮膚炎の症状ですが、ときにアナフィラキシーを起こすこともあります。

禁煙外来

喫煙と禁煙の相克

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喫煙により寿命が7年短くなり、病気を患う期間が5年長くなります。結局、健康寿命(健康で過ごせる寿命)が10年短くなります。喫煙は肺気腫・慢性気管支炎の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の直接的な原因のみならず、肺がん、喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなど多くのがんの危険因子であり、気管支喘息、狭心症、心筋梗塞(3倍に)、高血圧、動脈硬化(上段の動画は、喫煙により人体の中心を貫く大動脈が動脈硬化に陥り、黄色いコレステロールにより閉塞する様子を表現したオーストラリア政府製作によるテレビCMです)、閉塞性動脈硬化症、認知症、うつ病(2倍に。タバコでストレス発散はできません。むしろ溜まります。)、脳血栓、脳塞栓、脳動脈瘤、クモ膜下出血(3〜4倍に)(下段の動画は、喫煙により脳出血を発症する様子を表現したオーストラリア政府製作によるテレビCMです)、老年期認知症、弱視、黄斑変性、胃潰瘍、骨粗鬆症、早期閉経、不妊症、流産、早産、乳幼児突然死症候群、インフルエンザ、肺結核、中耳炎、歯周病、糖尿病(2倍に)、勃起不全、精子減少症、掌蹠膿疱症、肌荒れ、シミなどの発症因子、悪化因子(喫煙者特有の顔貌をスモーカーズフェイスといいますが、下記画像はイギリスBBCの記事からの引用です。双子の一方が喫煙した場合、その顔貌が如何に違ったものになるかを示しています)となることが分っています。ちなみに、声もスモーカーズボイスといってしわがれただみ声になります。







何よりも問題なのは受動喫煙により愛する家族、妻(愛情が冷めた妻であっても)や子供の肺を真っ黒にさせ、タバコの害を周囲にまき散らすことです。下図の左から2番目の肺の写真を御覧下さい。たとえ自身が喫煙者でなくとも配偶者が喫煙者だとあれくらい肺にススやタールが沈着します。喫煙している方のほとんどがその事実を知り、半数以上の方が禁煙したいと思っているにもかかわらず、止められないでいます。それはタバコに含まれるニコチンに依存性があるからです。図のようにニコチンの依存性は覚せい剤とまったく同じ薬理作用によるものです。タバコを止められないこと=ニコチン依存症は、覚せい剤中毒とまったく同じ仕組みです。
タバコを止められないでいる方、とくに既に大量かつ長期間吸い続けている方ほど、「今更禁煙しても、どうせ手遅れだろうから禁煙しない。」といった理屈を持ち出します。下図(「いい禁煙」ノバルディス社ホームページより)は、禁煙のメリット、禁煙による体の変化を示しています。

禁煙のメリット

このような体の変化は、むしろ大量かつ長期間喫煙している人ほど強く自覚します。当たり前ですが、喫煙量が多く、喫煙期間の長い人ほど体に悪影響が及んでいますから、むしろそういった人ほど、禁煙によるメリット、体調の快復を実感しやすいのです。

この依存症を克服するため、禁煙補助薬による治療が、2006年4月より健康保険の適応となりました。治療は一定の条件(1、ニコチン依存症であること、2、1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上、3、直ちに禁煙することを希望していること、など)を満たした方ならどなたでも受けることができます。通院期間と費用(健康保険の自己負担額が3割の場合)は、禁煙補助薬としてニコチンパッチ(商品名ニコチネルTTS)を貼付した場合は10週間で約12,000円(1ヶ月あたり約4,000円)、バレニクリン(商品名チャンピックス)の内服の場合は12週間で約19,000円(1ヶ月あたり6,000円、両剤とも持病の有無、種類、当院通院の有無により多少増減します)です。詳細はこちらをご参照下さい。

ほとんどの喫煙者が毎月タバコ代に1万円以上つぎ込んでいますから、禁煙外来を受診するとむしろお金が貯まることになります。下図は1日1箱400円のタバコを吸うと仮定してどのくらいお金が節約できるかを計算した図です(ファイザーホームページより)。既に20年の喫煙歴のある方は、300万円近いお金をつぎ込んでいるのです。300万円使って挙句の果てに体はボロボロ。これからもこの生活を続け、JTにお金を貢ぎ続けていくつもりでしょうか。タバコを止めたいと思っている方は是非挑戦して下さい。

1日1箱400円のタバコを吸うと仮定してどのくらいお金が節約できるかを計算した図

統計によれば、禁煙補助薬を使わなかった場合、禁煙1年後の禁煙率が8%程度なのに対し、薬局でニコチン製剤を自分で購入し使用した場合が20%、禁煙外来に通って禁煙した場合が30〜35%、さらに加えて心理指導を受けた場合が50〜55%になっています。よって当院ではニコチン依存症について十分理解を深めて頂くように、初診時、ニコチン依存症スクリーニングテスト、ニコチン依存症についての説明などに時間を多く割いています。そのため、初回診療は毎週月曜日、火曜日、木曜日、金曜日の午後の診療のみで行っており、必ず予約が必要です。2回目以降は曜日、時間の制限はありません。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)について

上述のようにタバコはさまざまな病気を引き起こしますが、今最も危惧されているのが慢性閉塞性肺疾患(略してCOPD)の急増です。これは以前「肺気腫」「慢性気管支炎」と呼ばれていたものの総称で、喫煙により肺や気管支がボロボロに痛んでしまった状態です。慢性的な咳や痰、労作時の呼吸苦(階段や坂道を上がったりするとき、息苦しくて同年輩の人についていけない)、一度風邪を引くとなかなか咳が止まらないなどの症状が現れます。現れたときは相当進行していると考えて下さい。写真はタバコによる肺の変化を示しています。亡くなられ病理解剖された方の本物の肺です。喫煙本数と期間が増すに従い肺がススやタールで真っ黒になっていくのがよく解ります。恐ろしいことにたとえ自身がタバコを吸わなくとも配偶者が喫煙者である場合、副流煙による間接喫煙のためやはりススやタールが沈着しています。

喫煙者におこる肺の変化の肺割面付き



すすけて真っ黒になった肺や気管支はもう元には戻りません!さらに肺は年齢とともに年々老化していくためいくら禁煙しても徐々に肺の機能は低下していきます。そのため最後に酸素吸入が必要になります。酸素吸入で何とかなっているうちはまだましです。酸素を吸って二酸化炭素を吐くのが呼吸です。足りない酸素は酸素吸入で補えても、吐けない二酸化炭素を抜き出す方法はありません。ですから、最後は二酸化炭素中毒になるわけです。もちろん禁煙により肺機能が低下するスピードを遅らせることは可能です。
呼吸ができないことほど辛いことはありません。痛みのひどい病気はモルヒネを使えばなんとでもなります。しかし息苦しいのを治す薬はありません。鼻と口を閉じて限界まで息止めをしてみて下さい。その苦しさが死ぬまで毎日朝から晩まで続くのです。COPDの最期は生き地獄です。COPDは医者の私が最もなりたくない病気なのです。
COPDが怖いのは、1、多少症状を和らげる薬はあるが根本療法がないこと、2、加齢が加わるためたとえ禁煙しても病気が進行していくこと、3、タバコを吸わなければ発病せず、禁煙すれば改善することを患者が理解していても、ニコチン依存症になっているため、喫煙し続けることが多いことです。
COPDは予防しかないのです。慢性の咳・痰があり、労作時呼吸苦を自覚する方、お願いですから今すぐ禁煙して下さい。
喫煙率の高い日本では、10%近い有病率ではないか推測されています。40歳以上で10年以上の喫煙歴がある場合、COPDに罹患している可能性があります。上述のごとく自覚症状が出ている方は、既にかなり進行している状態です。早期発見するためにはスパイロメトリー(肺機能検査)が必須です。当院では禁煙外来を希望し来院された方で、上記の条件に該当する場合は必ずスパイロメトリーの検査を受けていただきます。

自由診療コーナー

自由診療コーナー

※表示料金は全て税込価格です。

健康保険は使えませんが、希望により下記のようなお薬を、一律2,820円(当院で内服治療中でない方はさらに処方せん料680円がかかります)の料金で処方箋を発行しています。当院は医薬分業しているため処方箋を発行するだけです。その処方箋を薬局にお持ちいただきお薬を購入していただきます。薬局の指定はありません。自由診療のためお薬代に定価はなく、薬局により料金は異なります。

  • 保険診療対象外の方への禁煙補助薬(ニコチンパッチ、チャンピックスなど)
  • 男性型脱毛症(プロペシア)
  • 勃起不全(バイアグラ、レビトラ、シアリスなど)
  • 高山病予防薬(ダイアモックス)
  • 保険診療対象外の方へのヘリコバクターピロリ除菌薬
  • 保険診療対象外の方へのインフルエンザ治療薬(新型インフルエンザ用)

以下のお薬は、自院で調剤しお薬の現物をお渡ししています。

  • 放射性ヨウ素による放射線被曝予防薬(ヨウ化カリウム丸50mg)
価格=2,720円+760円+1丸当り50円の金額(例えば10丸購入した場合、2,720円+760円+500円=3,980円となります)。また、お薬と一緒に使い方説明書をお渡ししています。
なお、ヨウ化カリウムの放射線被曝予防の意義については、院長コラム「放射性ヨウ素による放射線被曝のヨウ化カリウムによる予防」をご参照下さい。

以下は院内での注射になります。

  • にんにく注射ベーシック(ビタミンB1単剤、静脈注射、所用時間3分程度)
    〜1回2,000円(午後診療時間)、2,400円(午前診療時間)
  • にんにく注射マルチビタミン点滴(ビタミンB1、B2、B6、B12、C配合、点滴、所要時間20分程度)
    〜1回3,500円(午後診療時間)、4,000円(午前診療時間)

にんにく注射について

にんにく注射とは

 にんにく注射とは、平石クリニックの平石貴久院長により命名されたビタミンB1を主成分とする静脈注射です。にんにく注射といっても、実際にニンニクのエキスが入っているわけではありません。注射をすると鼻の奥でニンニクのような香りがしてくるため名付けられました。

にんにく注射とは

 実際のニンニクには、ビタミンB1はあまり多くなく、むしろ、B6が豊富です。ニンニク臭のもとになる物質はアリシンといい、ビタミンB1と結合するとB1の吸収を高める効果があります。ですから、ビタミンB1の豊富な豚肉とニンニクを一緒に食べるとB1が効率よく吸収されます。ややこしい話ですが、ビタミンB1が主成分のにんにく注射には本物のニンニクは入ってなく、本物のニンニクにもビタミンB1はそれほど多く含まれませんが、B1の吸収を高めニンニク臭のもとになるアリシンが入っているのです。このアリシンとビタミンB1を事前に結合させ、B1の吸収を高め、体内での効果持続時間を延ばした薬剤が「アリナミン®」です。アリナミン®を注射すると、血中でアリシンの代謝産物硫化アリルが遊離し、ニンニク臭を感じるのです。

にんにく注射とは にんにく注射は、有名スポーツ選手(朝青龍、清原和博、丸山茂樹など)や芸能人(SMAPのキムタク、浜崎あゆみなど)に愛好者が多く、メディアでも取り上げられ広くその効能が知られるようになりました。ビタミンB1は、1910年日本人の鈴木梅太郎博士が米糠から発見しました。糖質エネルギー代謝、アミノ酸代謝、アルコール分解、神経伝達に必須の物質です。ですから、いくら食事をしっかりと摂取しても、ビタミンB1が不足するとそれら栄養分を分解し体内で必要なエネルギーを取り出せません。さらにはそれらの栄養分は脂肪に変換され蓄積、肥満になってしまいます。また、B1は筋肉の疲労物質である乳酸を除去する働きがあるため、不足すると疲れやすくなります。ビタミンB1は、アルコール多飲、炭水化物過食(とくに白米、インスタント食品、清涼飲料水の多飲)、妊娠・授乳中(母乳に分泌されるため)、甲状腺機能亢進症、強い労作・運動(筋肉がもっぱら糖質をエネルギー源とするため)、体力を奪うような病気(がん、感染症、肝不全など)、高齢者(利用率の低下)で不足しがちです。白米食に偏りがちなわが国において、ビタミンB1欠乏による脚気は、かつて結核と並ぶ二大国民病でした。私も子供の頃は、白米に黄色のビタミン強化米を混ぜ合わせて食していたことを覚えています。
 脳などの中枢神経、心臓、胃腸を含めた筋肉は、エネルギー源として糖質を大量消費するため、真っ先に欠乏症状をきたしやすい臓器です。B1が欠乏してくると、全身倦怠感、食思不振、手足のしびれ、むくみ、動悸、体重減少、易興奮性、集中力低下、頭痛、不眠などの症状が出ます。さらに高度の欠乏症になると脚気に至ります。
 ビタミンB1は、食品としては豚肉、ハム、焼豚、ベーコン、たらこ、ウナギ(蒲焼)、小麦胚芽、玄米、ナッツ類、豆類、レバーなどに多く含まれます。ただし、加熱にて失活するので調理法を工夫する必要があります。にんにく注射は手っ取り早い方法ではありますが、これらの食品を積極的に摂取することが基本であることを忘れないで下さい。
 ビタミンB1が著しく欠乏し、脚気衝心などを発病していれば保険診療となりますが、それ以外の場合は保険外診療となります。保険外診療は自由診療のため、注射料は医療機関により異なり1,000〜5,000円程度のようです。ただ、後述の如く医療機関により中身が異なるので、一概に1,000円が安く、5,000円が高いとはいえません。当院ではにんにく注射ベーシック(ビタミンB1単剤)が1回2,000円、B1に加えB2、B6、B12、ビタミンCを配合させた点滴が3,500円です。市販の栄養ドリンク剤で高価なものが3,000〜4,000円(ユンケルスター4,078円、リポビタンエース3,159円)することを考えれば、それほど高価とは思えません。

にんにく注射Q&A

Q1. にんにく注射はどのクリニックでも同じ成分ですか?
A. 違います。どこのクリニックでも、ニンニク臭の元になるビタミンB1製剤を主成分としています。B1製剤単剤をにんにく注射と称しているクリニックもあれば、平石式のように、ビタミンB1に加え、B2、B6、B12、Cなどを配合したものまであります。当院では、B1製剤単剤(にんにく注射ベーシック)と、B1に加え湿疹、口角炎、口内炎、結膜炎に有効とされるB2やB6、神経痛に有効なB12、さらに風邪、肝斑、雀卵斑にも有効なビタミンCを配合した点滴(にんにく注射マルチビタミン)を用意しています。当院のにんにく注射にはニンニク125個分のビタミンB1、8個分のB6が含有されています。
Q2. どのようなときに注射すればよいのですか?
A. 上記のような効果があるため、
  1. 疲れが溜まっていても仕事を休めない方
  2. 睡眠が十分なのに全然疲れがとれない方
  3. 肌荒れ、しみ、小じわ、抜け毛、頭皮のフケが気になる方
  4. 夏バテで体力減退気味の方
  5. 風邪の初期
  6. 冷え症で体力が弱く、よく風邪をひく方やなかなか体調が元に戻らない方
  7. お酒を飲み過ぎる方、二日酔いの方、肝臓が弱っている方
  8. 肩凝りがひどい方、緊張型頭痛の方、腰痛の方
  9. 口内炎がなかなか治らない方
  10. 眼精疲労の方
  11. 激しい運動の後で疲れが残っている方
などが良い適応です。
Q3. 飲み薬ではなく、静脈注射するのはなぜですか?
A. 飲み薬の場合、内服し効果が発現するまで、消化吸収の過程が必要なため、静脈注射のような速効性は期待できません。また、胃腸が弱っていると、例えば下痢のときなど、吸収性が低下するため思ったほど効果が出ない場合があります。その点、静脈注射の場合、血流に乗り全身くまなく成分が行き渡ります。即効性と高い効果が期待できます。
Q4. 健康保険は使えないのですか?
A. にんにく注射に使用されているビタミンB1製剤などすべての配合物は薬価収載され、厚生労働省から保険診療における使用を正式に認可された製剤です。例えばビタミンB1には、
  1. ビタミンB1欠乏症の予防及び治療
  2. ビタミンB1の需要が増大し食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患,甲状腺機能亢進症,妊産婦,授乳婦,激しい肉体労働時等)
  3. ウェルニッケ脳炎
  4. 脚気衝心
  5. 以下の疾患のうちビタミンB1の欠乏又は代謝障害が関与すると推定される場合:神経痛,筋肉痛・関節痛,末梢神経炎・末梢神経麻痺,心筋代謝障害、便秘等の胃腸運動機能障害、術後腸管麻痺
のような適応があります。ただし、投与量は保険診療において制限された量に限定されます。疲れだけでは保険は適応されず自由診療となります。
Q5. 注射にはどのくらい時間が掛かりますか?
A. 当院を一度も受診されたことのない方の場合、問診票を記載していただくため、30分程度掛かります。2回目以降は、受付、注射、会計を含めて10から15分程度です。昼休みなどちょっと時間の空いた時にも注射できます。
Q6. 副作用はありますか?
A. にんにく注射に使用される配合剤は水溶性ビタミンのため、打ち過ぎても尿からら排出されるだけで、体内蓄積による副作用はありません。一方、ビタミンA、D、E、Kは脂溶性ビタミンのため過剰投与により中毒を起こす危険性があります。骨粗鬆症でビタミンDを服用されている方は過剰投与にご注意下さい。副作用が絶対ないと断言できる薬などありえませんから、極稀にはアレルギー反応、薬疹、悪心嘔吐など消化器症状がありえます。当然ですが、ニンニク臭が嫌いな方は気持ち悪くなるかもしれませんので注射しないことをお勧めします。
また、静脈注射のため、血管痛を訴える方が稀にいます。ゆっくり注射すると血管痛は軽減〜消失するので、血管痛を感じる場合申し出て下さい。時間をかけゆっくりと注射します。血管が敏感で、ゆっくり注射しても非常に強い血管痛を感じる方は注射しないことをお勧めします。
Q7. 注射後、汗や吐息がニンニク臭くなることはありませんか?
A. ありません。ニンニク臭の素となる硫化アリルは揮発性がないので、注射をした本人が鼻の奥でニンニク臭を感じるだけです。それも、15〜20分程度で消えます。
Q8. 注射の効果はどのくらい持続するのですか?
A. 一般に3日から1週間程度持続します。配合されているのは水溶性ビタミンのため体内に蓄積できず、効果は長期間持続しません。
Q9. どのくらいのペースで、にんにく注射を打つとよいのですか?
A. とくに決まりはなく、疲労感のあるときなど不定期に打ってかまいません。定期的に打つ場合、1週間から2週間に1回くらいのが一般的ですが、疲れの溜まりやすい方やスポーツをされている方は週2〜3回打ってかまいません。効果は数日しか持続しませんから。
Q10. 子供や高齢者でも打てますか?
A. 特に年齢制限はありません。ただし、当院は内科であって小児科ではないため、成人と体重差のない12歳以上としています。
Q11. 妊娠中や授乳中も打てますか?
A. 妊娠中や授乳中、ビタミンB群は不足しがちなため、むしろ投与は推奨されています。ですから、検査結果でB1不足が認められた場合、治療目的で保険診療として注射します。上述のごとく、ビタミンB群は水溶性のため過剰分は尿中に排泄され、中毒を起こしません。しかし、ビタミンB1が不足していない妊婦に、ビタミンB1を大量投与した場合の影響について十分なデータはなく、当院としては妊娠中の注射はお勧めしません。授乳中に関しては問題なく注射できます。

予防接種

ワクチン・ギャップについて


皆さんは「ワクチン・ギャップ」という言葉をご存知でしょうか。これは、日本ではワクチン副反応への危惧から予防接種行政が著しく停滞、世界保健機関WHOが勧告するワクチンが予防接種法の対象となっておらず、先進諸国と比べて公的に接種するワクチンの種類が極端に少なくなっていることを指す言葉です。たとえば、はしか(麻疹)、風疹、ムンプス(おたふく風邪)など、海外から日本はそれらの流行地!とみなされています。最近も日本で麻疹に感染した子供が、渡航先の米国内で周囲の人を感染させ、「はしか輸出国」という不名誉な批判を受けました。日本は接種できるワクチンの種類も少なければ、接種率も極端に低いワクチン後進国なのです。昨今の風疹大流行1995年以前は、男児が風疹ワクチンの接種対象者になっていなかったことが主因です。
確かにワクチンは完全無欠な万能薬ではなく、副反応がありえます。不幸にもワクチンの副反応と思われる重篤な障害〜後遺症に苦しんでいる方がいるのも事実です。にもかかわらず、ワクチンの有用性が喧伝されているのは、総合的に判断して利点が欠点に勝っているからです。種痘により天然痘で死ぬはずの何十万人、何千万人が救われたのは疑いようがありません。「羹に懲りて膾を吹く」が如く、不幸にもワクチン副反応で亡くなられた数人の命が、救われるべき数十〜数千人の命を道連れにしているのが今の日本です。その原因は、1、行政が副反応に関連した訴訟などを危惧し、ワクチン推奨、義務化に対し腰が引けている、2、現在ワクチンの実施主体となっている地方自治体により公費負担制度が異なり、「必ず接種するもの」というメッセージ伝わっていない、3、医療従事者間でもワクチンに対する統一した見解、認識が確立しておらず、その説明内容が異なるため、接種対象者に不安を抱かせている、4、ネット上、ワクチン不要論、害悪論、懐疑論が流布されているが、専門家である医療従事者が積極的に否定するアクションを起こしていない、5、ワクチンを製造するのは製薬メーカーであり、金儲けのためワクチンを売っているのであろうという利用者の先入観、固定観念がある、ことなどです。
当院では、ワクチンが接種者個人のみならず、地域社会communityを守るための医療技術であることを積極的に訴えていきたいと考えています。

予防接種


予防接種は予約 0422-70-1037 が必要なものもあります。

予防接種の中には、水痘(水ぼうそう)、麻しん風しん混合ワクチン、水痘(帯状疱疹)ワクチン、子宮頸がんワクチン、インフルエンザワクチン等のように費用助成制度のあるものがあります。詳しくは三鷹市ホームページの予防接種の項をご覧下さい。

急告!風疹の大流行を受け、三鷹市で先天性風しん症候群対策予防接種費用助成事業が急遽決定、2013年4月15日から開始になりました。対象者は、19歳以上の三鷹市民で、妊娠を予定または希望している女性です。2015年3月20日までが助成期限です。2014年度から予防接種に先立ち、まず、抗体検査(血液検査、風しんに対する免疫の有無を調べる)を実施、免疫が不十分であった場合のみ予防接種を実施、その費用の一部を助成することになりました。風しん抗体検査は自己負担なく無料です。
詳細は市報または三鷹市ホームページを御覧下さい。都内では、ほとんど〜全部の自治体で同様の費用助成が始まっているようです。お住まいの自治体にお問い合わせ下さい。
なお、風しんワクチンには単体ワクチンと、麻しんワクチンと混合した麻しん風しんワクチン(MRワクチン)があます。風しんワクチンの代わりにMRワクチンを接種した場合、麻疹(はしか)にまで免疫が得られることと、費用が高くなる(1,447円→5,000円)こと以外違いは無く、単体ワクチン同様風疹に対する免疫が得られます。
風しんワクチンの詳細については、「風疹と先天性風疹症候群について」を御参照下さい。

ワクチンの種類
接種回数
価格
(不)A型肝炎 2〜3回 8,110円
(不)B型肝炎 3回 5,400円
(生)水痘(水ぼうそう)・帯状疱疹 1回 8,110円
(生)麻しん(はしか) 1回 5,400円
(生)風しん(三日ばしか) 1回 5,400円
(生)麻しん風しん混合(MR) 1回 8,640円
(生)ムンプス(おたふくかぜ) 1回 5,400円
(不)成人用肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP) 1回 8,110円
(不)子宮頸がん予防(HPV)ワクチン
  (サーバリックス、ガーダシル)
3回 17,490円
(不)破傷風(トキソイド) 1回 3,290円
(不)インフルエンザワクチン 1〜2回 3,900円

注.ワクチンの種類の前の「(不)」は不活化ワクチンを、「(生)」は生ワクチンを意味します。不活化ワクチンは死ワクチンとも呼ばれ、ホルマリン処理などで死んだウイルスや細菌を使用したもの、細菌の産生する毒素を不活性化したもの、ウイルスの感染防御に関係した一部分を使用したものなどがあります。一方、生ワクチンは生きている細菌やウイルスの病原性を弱くしてワクチンとして使用するもので、弱毒生ワクチンともいわれます。生ワクチンは生きているため接種後体内で増殖、実際に感染するため、少量でも、すなわち1回接種でも強く長時間持続する免疫が獲得できるという利点がありますが、感染に伴う副反応が出現しやすく、毒性復帰により本物の病気の様な症状が出ることもあります。逆に、不活化ワクチンは副反応の危険性は低いですが、免疫を獲得しにくく獲得しても長時間持続しない場合が多いです。そのため、3回の接種が必要なワクチンもあります。
 日本では各種ワクチンの接種間隔に関して厳密な規則があり、生ワクチン接種後は4週間以上あけ、不活化ワクチン接種後は1週間以上間隔を空けることになっています。しかし、こういった規則は欧米にはなく、その影響もあり、日本でも現在は「医師が必要と認めた場合には,同時に接種を行うことができる。」(予防接種ガイドライン)ことになっています。海外渡航などで接種を急がれている場合は、お申し出下さい。

B型肝炎の疾患概念のパラダイムシフト〜是非、B型肝炎ワクチンを接種して下さい!

ウイルス肝炎について

 肝炎ウイルス感染が原因で起こる肝臓の炎症をウイルス肝炎といいますが、急激に発症するものを急性肝炎、6ヶ月以上炎症が持続しているものを慢性肝炎と呼びます。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、E型まで現在5種類が発見されています。各々の特徴は下表を御覧下さい。
 

急性ウイルス肝炎各型の特徴

 急性ウイルス肝炎は、基本的に予後良好な病気です。しかし、1〜2%の患者さんが劇症肝炎という重篤な状態に陥ります。激症化した場合、50%以上の方が亡くなります。
 A型とE型肝炎は表の如く急性肝炎の感染形態しか取らず、慢性化することはありません。よって、激症化しなければ、後遺症もなく完治します。とくにE型はインド、ミャンマー等の熱帯、亜熱帯に蔓延するもので日本ではほとんど見られません。D型は少し特殊でB型肝炎とセットでしか感染しないので臨床上大きな問題になりません。一方、B型とC型は、急性肝炎として完治することもありますが一部は慢性化し、一旦慢性化(持続感染)すると簡単には治癒せず、高率に肝硬変、肝臓癌を発症するため臨床上重要です。上表の如くA型やE型の感染経路は糞口感染で腸管より排泄されたウイルスが水や食べ物を介し口から腸管内に侵入することで発症します。一方、B型やC型は経皮感染で、ウイルスに汚染された血液が皮膚防御バリアを突破し体内に侵入しなければ感染しません。現在問題になっているB型肝炎訴訟は、幼少期の予防接種やツベルクリン検査で注射器を連続使用した結果、感染している患児の血液が他の子供の体内に入り、B型肝炎が集団発生したことによるものです。

B型とC型肝炎の違いについて

 以上の如く、B型肝炎とC型肝炎は臨床上の類似点がありますが、異なった点もあります。B型肝炎は3歳以上で感染すると上記の如き激症化例を除けば一過性感染となり、その後は完治、HBs抗体を獲得し、風疹や麻疹(はしか)のように終生免疫が成立します。しかし、出生時に母子感染すると高率に慢性化、後々肝硬変、肝癌発症のリスクを背負うことになります。これは、3歳未満の小児では免疫が未発達なため、体内に侵入してきたB型肝炎ウイルス(以下、HBV)を排除できず、ウイルスが肝臓に棲み着いてしまうためです。胃のピロリ菌と同じです(「健診スクエア」のページ「ピロリ菌、ペプシノゲン法とABC検診〜胃癌は早期発見の時代から予防する時代になりました!」を御参照下さい)。
 しかし、国のB型肝炎母子感染防止事業として、現在既にHBVキャリア(保菌者、持続感染者)妊婦の出産におけるワクチン等の予防法が確立しており、95%以上の確率で感染を予防できるようになっています。そのため、現在日本のHBVキャリア率は0.9%程度まで低下しています。
 一方、C型肝炎はB型と異なり、どの年代においても一旦感染すると60〜80%程度が慢性化します。すなわち、成人感染において唯一慢性化する肝炎ウイルスです。そして約20年後肝硬変へ進展、高率に肝癌を発症します。また、現在C型肝炎にはB型肝炎のようなワクチンがありません。そのため日本のキャリア率はHBVより高く1〜2%と推定されています。ですから、日本におけるウイルス肝炎の主役はHBVからC型肝炎ウイルス(HCV)に取って代わられたと考えられていました。しかし、近年インターフェロンなどの治療法が格段に進歩、高率に完治できるようになっています。一方、B型肝炎はC型ほど治療成績が良くなく、なかなか完治しないのが現状です。

B型肝炎の疾患概念におけるパラダイムシフト

 上述の如き知見がこれまでのB型肝炎に対する考え方でした。近年これらの考え方を改めなければならないような知見が集約されてきました。
 HBVは経皮感染ですが、具体的には、性行為、消毒不十分な医療器具による観血的医療行為(現在、こういった医療器具はすべて使い捨てになっているため、御安心下さい)、鍼治療、刺青、ピアスの穴開け、剃刀や歯ブラシの共用、麻薬や覚醒剤等の注射器の回し打ち等です。性行為を除けば普通に生活している方が感染することはほとんどありません。新婚旅行から帰って数ヶ月間の潜伏期を経てB型急性肝炎を発症したケースを「ハネムーン肝炎」と呼びますが今でもまれに見かけます。上述のごとくたとえ急性肝炎を発症しても、激症化せず、また、免疫抑制剤や抗癌剤による治療中、後天性免疫不全症候群(AIDS)のように免疫力が低下した特殊な状態でもなければ慢性化することもなく、予後良好で完治していました。
 最近、HBVは遺伝子配列の違いからさらにA〜Hの8遺伝子型に分類されることが明らかになりました。このようにHBVの予後良好なのは従来日本に蔓延していた遺伝子型B、Cの特徴でした。一方、欧米、アジア、アフリカに多い遺伝子型Aは20〜30%の確率で慢性化、持続感染することがわかってきました。そして2000年頃から従来ほとんど見られなかった外来種の遺伝子型Aが性感染症として日本で蔓延してきました。結果、従来の「B型肝炎の場合、思春期以降の感染は一過性感染で、慢性化せずその後は完治する」といった考え方は通用せず、「昨今B型肝炎は成人感染でも約10%は慢性化し、持続感染することがある」と改めなければならなくなりました。下図の「急性肝炎」から「キャリア(保菌者)」への10%の表示がそのことを示しています。遺伝子型Aの蔓延はさらに広がっているため、B型急性肝炎が慢性化する確率はさらに増加しています。

感染年齢によるB型肝炎の経過の違い
(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎情報センターホームページより転載)

 次に、上述の如くB型肝炎は3歳未満で感染した場合、キャリア化する確率が高いわけですが、この持続感染の感染経路は専ら母子感染と考えられていました。しかし、最近の研究では、父子感染も珍しくないことが明らかになってきました。具体的にはHBVキャリアの父親の子供は約25%がHBVに感染し、約10%が持続感染していることが報告されています。HBVの母子感染予防が確立された現在、父子感染によるHBVキャリア発生数は母子感染と同程度ではないかと推定されているほどです。母子感染はおもに出産時、新生児が産道出血に暴露されるために起こります。一方、父子感染は何らかの理由、例えば父子の傷口と傷口が触れ合う、鼻出血、歯肉出血時の歯ブラシの共用、噛み付き、口移しの食事等による血液感染に加え、尿、唾液、鼻汁、汗、涙等からHBVが検出され、実際感染源となっている可能性が報告されています。成人を対象とする介護施設等の共同生活の場では、常識的な生活習慣を守っていれば感染する危険性は低いと報告されていますが、体液暴露や身体的接触が多いと推定される保育所では、実際数%のHBV感染率が報告されています。とくに、3歳未満児が通う保育園では、園児同志の水平感染によりその多くがHBVキャリア化しており、看過できない状況です。HBe抗原(血液中のHBV量が多いことを示す血液検査マーカー)陽性の園児が通う場合、保育園はHBV感染の機会となりうるため、HBVワクチン接種をすべきであると報告されています。一方、HBVキャリアであることを理由に、入所、入園、入学を拒否することはHBV保菌者の人権にも関わるため、難しい問題になっています。
 本小論において、「B型肝炎の場合、思春期以降の感染は、激症化しなければ一過性感染で、慢性化せずその後は後遺症も残さず完治する。」さらには「完治すると風疹や麻疹(はしか)のように終生免疫が成立する。」とまで再々述べてきました。実際、約20年前には「B型肝炎の治癒を表す血清マーカー、HBs抗体陽性は、激症化することもなくB型肝炎が完治した証であり、今後二度とHBV感染することもなく、未だHBV未感染の者より安心でいられる。」とまで学生に講義をしていました。しかし、この常識を覆す知見が集約されてきています。上表「急性ウイルス肝炎各型の特徴」中、「ウイルスの特徴」の欄に各肝炎ウイルスの遺伝情報を担う核酸の種類が記載されています。HBV以外はすべてRNAですが、唯一HBVのみヒトと同じDNAが遺伝子媒体となっています。この特徴のため、HBVは一旦感染すると、従来一過性感染として完治したと思われていた患者の肝細胞のヒト遺伝子中にわずかに組み込まれて残存していることが明らかになったのです。これは、HBV抗体陽性でB型肝炎完治後と思われていた生体肝移植ドナー(臓器提供者)の肝臓を移植されたレシピエント(臓器受容者)のほとんどが、その後HBVに感染してしまったことが端緒となり明らかになりました。ドナー血液中にはHBVを見つからなかったことより、HBVはドナーの肝細胞に潜んでいたようです。移植のためレシピエントは免疫抑制剤を投与されており、このためわずかに潜んでいたHBVが再活性化し、顕在化したのでした。同様、B型肝炎一過性感染の既往者が、その後関節リウマチや悪性腫瘍に罹患、治療目的で免疫抑制剤や抗癌剤を投与中に、B型急性肝炎を発症する症例が報告されるようになりました。しかも、このような症例では免疫力が極端に低下していることもあり、HBV再活性化による肝炎は重症化しやすいことが報告されています。このように一旦治癒したB型肝炎感染既往者から新たに肝炎を発症した場合、de novo肝炎と呼びます。結局、HBVに一旦感染すると、急性肝炎の一過性感染のであれ、慢性化した持続感染のであれ、ヒトはHBV遺伝子を生体から完全に排除することはできず、ときとして再活性化による重篤な肝炎を再発しかねないということが明らかになりました。
 以上のごときB型肝炎の特徴をまとめると、下記のようになります。とくに赤字の部分は新しい知見です。

1、3歳以上のHBV初感染では急性ウイルス肝炎を発症、激症化しなければ基本的に予後良好で完治するが、B型は肝炎ウイルスの中で激症肝炎発症率が最も高く、さらに、激症化した場合、他のウイルス肝炎より、救命率が低い。
2、C型肝炎同様持続感染(キャリア化)した場合、肝硬変に進展、肝臓癌を併発しやすい。
3、B型肝炎はC型と違い既にワクチンが開発され予防法が確立している。しかし、一旦、感染し持続感染するとC型と異なりインターフェロン療法等が効きにくく完治しにくい。
4、3歳以上の初感染では、従来慢性化することなく完治していたが、最近外国に多く慢性化率の高い遺伝子型亜型Aが輸入、性感染症として日本国内に蔓延したため、HBV成人感染でも約10%の人が持続感染し慢性化、肝硬変、肝臓癌のリスクを負うことになった。
5、HBV母子感染は予防法の確立や国のB型肝炎母子感染防止事業により95%以上減少したが、一方、口移しの食事、尿、唾液、鼻汁、汗、涙等の関与が推定される父子感染の存在が明らかになった。また、体液暴露や身体的接触が多い保育所では数%の確率で水平感染し、3歳未満では持続感染による慢性化も報告されている。
6、3歳以上のHBV初感染では急性ウイルス肝炎を発症、激症化しなければ予後良好で後遺症も残さず完治し、終生免疫が成立すると考えられていたが、実際には、一旦HBVに感染すると、急性肝炎の一過性感染のであれ、慢性化した持続感染のであれ、ヒトはHBV遺伝子を生体から完全に排除することはできず、免疫抑制剤や抗癌剤投与時にときとして再活性化による重篤な肝炎を再発しかねないということが明らかになった。

B型肝炎ワクチンをユニバーサルワクチンに

 上述のごときHBVに関する知見の集積により、HBV感染予防の重要性がますます高まっています。そのため、1992年WHOはすべての出生児にHBワクチンを接種することを推奨しました。それを受け2011年までに世界193ヵ国中、実に179ヵ国で小児全員に対するHBワクチン接種が定期接種化されています。一方、現在、日本でHBワクチンに公費負担があるのは、上述のB型肝炎母子感染防止事業の対象者のみです。その他、医療従事者等の希望者に対して実施される場合は任意接種(セレクティブ・ワクチン)であって定期接種ワクチン(ユニバーサル・ワクチン)になっていません。(「診療案内」のページ中「予防接種」の欄の「子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて」の段落中「子宮頸がんと予防ワクチン」のアニメのChapter3「予防接種とワクチン」を御覧下さい。)日本は、世界179ヵ国に入れないほどワクチン後進国なのです。この理由は、「ワクチン・ギャップについて」の段落でご説明したとおりです。国民が皆HBワクチンを受ければ、保育園等集団生活の場で、HBVキャリアの者を意識する必要もなくなります。医療従事者である私自身は、既にHBワクチン接種を終えていますが、家族は未実施です。これ以上リスクを犯して定期接種化を待つことはできません。これを機に、家族全員にHBワクチンを接種しました。

帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について
〜今、帯状疱疹は予防する時代です!

はしかのようなもの

 「はしかのようなもの」という慣用句があります。この意味は、「誰もが一度は通る道」「誰もが若い時期に経験すること、失敗」を比喩したものです。この慣用句の成り立ちは、はしか(麻疹)という病気が、ほとんどの人にとって生涯一度だけ感染、発病する病気だからです。このように一度ある種の病気に罹ると二度とその病気にならないことを、医学用語で「終生免疫」「二度なし現象」と呼び、私が医学生の頃は、麻疹、風疹(三日はしか)、ムンプス(おたふく風邪、流行性耳下腺炎)、水疱瘡(水ぼうそう、水痘)などは一度感染し発病すると二度と罹らないと教わりました。この理由は、一度ある種の病気に感染、発病すると、その病気に対する抗体(その病気に対する抵抗力を司る血液中に存在する物質です)等が作られ、その病気に抵抗力を持つようになり、その抵抗力が一生涯に渡って維持され続けるためです。これを、免疫を獲得したと表現していました。
 しかし、最近この考え方は間違っていたことが判ってきました。すなわち、全ての病気において一度獲得した免疫は一生涯続くことはなく、暫くすると抵抗力は低下し、また、同じ病気に感染、発病するようになってしまいます。しかし、抵抗力が完全になくなる前にその病気に再び感染する(菌に触れる)と表面上は発病することなく再び抵抗力が復活(ブースター効果と呼びます)、免疫を獲得します。すなわち、予防接種を受けたのと同じような効果です。これを生涯何度となく繰り返すため、抵抗力が維持され二度と発病することなく一生涯を終えるわけです。つまり、表面的には最初の感染、発病しか認識されず、その後の感染は発病を伴わないため感染したことに気付かず、多くの方は「はしかは子供のときに罹ったきりでその後は、はしかに罹ったことはない。」と認識しているのです。
 ここで、「感染」と「発病」を区別して考えて下さい。感染とは病原体が体表面に定着、さらに、体に進入し増殖する状態です。しかし、体に菌が取り付いたからといって必ず症状が出るわけではありません(症状を伴う感染を「顕性感染」と呼ぶのに対し、症状を伴わない感染を「不顕性感染」と呼びます)。例えば誰でも大腸には無数の大腸菌が感染(365日感染しているため「常在菌」と呼びます)していますが、通常なんら症状はありません。さらに、ビフィズス菌や乳酸菌のように善玉菌と称し、有害物質産生菌の発育を抑制し、便通などを改善させる人体に有益な菌さえいます。ですから感染は必ずしも悪いことではないのです。感染し、何らかの症状を発症した場合が「発病」で単なる「感染」を「感染症」と呼ぶようになります。
 ごくまれに麻疹に二度罹った方にお会いすることがあります。これは幼少児に罹患、しかし、その後、偶然にも麻疹の患者に接する機会がなく、ほとんど免疫がなくなってしまった後、久しぶりに麻疹に感染したため、発病してしまったわけです。世の中に麻疹に罹患する子供が多かった時代、このような現象はごく稀でしたが、予防接種が励行されるようになり麻疹患者数が減少、昨今、麻疹ウイルスにさらされる機会が減ったため、稀なケースではなくなってきました。実際、平成19年から20年にかけて、10代から20代の若者の間で麻疹が大流行したことは記憶に新しいところです。

水疱瘡(水ぼうそう)と帯状疱疹

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水疱瘡

ヘルペスウィルス
ヘルペスウィルス

 水疱瘡(水ぼうそう、水痘、右図)はヘルペスウイルスの一種である水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)(右図)による感染症です。このウイルスによる感染症は麻疹、風疹、ムンプスとはだいぶ違った経過をたどります。麻疹や風疹などに罹るとごくまれに脳炎を合併、死亡することもありますが、ほとんどの場合完治し体内からウイルスは駆除されます。

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水痘帯状疱疹ウイルスVZVに初感染し水疱瘡を発症、しかし、抵抗力の源である抗体が誘導されると約1週間程度で水疱は痂皮(かさぶた)になって治癒しますがウイルスは体内から駆除されません。脊髄と体表を継ぐ脊髄後根神経節や三叉神経節に潜伏、感染し続けます(右動画)。獲得した免疫力により閉じ込められ冬眠させられた状態になります。その後成人になり30〜40年を経て徐々に抗体価が低下、ストレスや疲労、心労、加齢、抗癌剤や副腎皮質ホルモンなどの免疫抑制剤の使用、日射などの刺激で免疫力が低下すると、冬眠していたウイルスが再活性化(回帰感染)、末梢神経に沿ってウイルスが体表面に到達、水疱を形成、帯状疱疹を発症させます。ですから50〜70歳代に多く発症します。帯状疱疹が発症したときは宿主の免疫力が低下した状態ですから、学生時代、「帯状疱疹患者では癌を疑え」と講義を受けたのを記憶しています。VZVが冬眠する神経節は脊椎の数だけ左右一対存在します(その他、頭部では三叉神経節等もあります)。

dermatomes正面
dermatomes正面

ヘルペスウィルス
右T9皮膚分節帯状疱疹
それらの神経節が支配する領域、皮膚分節(右図)は人間みな共通です。複数の神経節に冬眠するVZVが偶然同時に覚醒することはまずないため、帯状疱疹は左右一方の皮膚分節の範囲に限局して水疱を形成(右図は右T9皮膚分節の帯状疱疹です)します。全身の皮膚分節の中で胸背部に発症する頻度が最も多く(下図)、このように胸背部に発症すると体を半周だけ帯を巻いたように見えるため帯状疱疹と呼ばれるようになりました。

帯状疱疹発生部位別頻度
帯状疱疹発生部位別頻度

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このような特徴を持った病気は他にないので視診で比較的簡単に診断できます。帯状疱疹は発症数日前に皮膚分節の領域に違和感や痛みが先行することが多いです。その後強い痛みとともに水疱が出現、約3週間後痂皮(かさぶた)を形成、痛みも消失、帯状疱疹の多くが自然治癒します(右動画)。
 しかし、時として帯状疱疹は重症化し、入院治療が必要になることもあります。汎発性帯状疱疹といってVZVに感染したリンパ球が全身にまわり、全身に水痘様の水疱が散発する場合があります。また、複発性帯状疱疹といって同時に2箇所以上の皮膚分節に帯状疱疹が発生する場合もあり、これらの多くは免疫不全に伴って発症しますが、特に基礎疾患のない方に発症することもあります。さらに、顔面神経膝神経節のウイルスが再活性化した場合、外耳道、耳介周辺に水疱を生じ、浮腫んだ顔面神経が圧迫され顔面神経麻痺を合併することがあり、ビ○た○のような顔貌になります。加え、難聴や味覚障害を伴うこともあります(Ramsay Hunt症候群)。上述したように、帯状疱疹では皮疹が出現する3〜5日前から発症部位に痛みや感覚異常を自覚することがあります。しかし、この時点でVZVに対する十分な免疫が誘導されると、ウイルスは神経に沿って皮膚まで到達できず、疼痛だけで皮疹を伴わない帯状疱疹〜無発疹性帯状疱疹(zoster sine herpete)を発症します。皮疹を伴わない場合、VZVの再活性化〜帯状疱疹と診断するのは難しく、原因不明の顔面神経麻痺、すなわちベル麻痺(特発性片側性末梢性顔面神経麻痺)の中に少なからず無発疹性帯状疱疹が存在すると考えられています。
 また、三叉神経第1枝の領域(額、目の上)に発症した場合、視神経が障害され角膜炎、網膜炎、視神経炎、急性網膜壊死により最悪失明することもあります。陰部の帯状疱疹では、膀胱の動きが阻害され尿閉をきたすこともあります。さらに、帯状疱疹は約7%の方で再発、膠原病などの持病があると再発しやすいようです。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹急性期痛と神経痛 帯状疱疹の皮膚病変が消失、発症後3ヶ月経過しても皮膚分節に疼痛が残存する場合があり、帯状疱疹の後遺症として帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。
 帯状疱疹の皮疹が出現しているときの急性期痛と皮疹が消失した後も残存する帯状疱疹後神経痛ではその発生機序が異なります。急性期痛は神経の炎症による痛みで、帯状疱疹後神経痛は神経の不可逆的損傷が原因の神経因性疼痛です(右図)。温度感覚の異常や皮膚を軽く触れただけでも痛みと感じる場合(異痛症といいます)、神経が損傷されている可能性が高く、帯状疱疹後神経痛の後遺症が残る可能性が高くなります。
 その痛みの程度はごく軽度のものから、夜眠れないほど激しいものまでさまざまで、焼けるような痛み、刺すような痛み、電気が走るような痛み、締め付けるような痛みとしてしばしば表現されます。不可逆的に神経が損傷しているため痛みが完全に消失しない患者もおり、その場合薬物により痛みを軽減させるしかありません。60歳以上の方では帯状疱疹発症6ヵ月後でも約1割の方に帯状疱疹後神経痛が合併します。
 60歳以上、皮膚病変が重症、急性期痛が重症、異痛症がある、糖尿病患者、免疫不全の基礎疾患などの危険因子があると帯状疱疹後神経痛が出現しやすくなります。
 現在帯状疱疹に有効な抗ヘルペスウイルス薬が開発、使用されていますがその治療の目的は、帯状疱疹の疼痛を和らげ皮疹の治癒を早めるとともに重症化を防ぎ顔面神経麻痺などの合併症を発症させないことと帯状疱疹後神経痛の後遺症が残らないようにすることです。そのためには速やかに診断し、できるだけ早期に抗ヘルペスウイルス薬を投与することが最も重要です。抗ヘルペスウイルス薬はヘルペスウイルスの増殖を抑制する薬剤であってウイルス量を減らす薬剤ではありません。そのためウイルスが増殖している早期に投与しなければ効果がありません。皮疹出現後72時間以内の投与が望まれます。投与後効果が発現するのには2〜3日を要します。

帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、顔面神経麻痺の予防〜帯状疱疹予防ワクチン

 平均寿命まで生きると平均3人に一人が生涯に一度は帯状疱疹を経験するありふれた病気です。
水痘が流行した年に帯状疱疹が減少し、水痘が流行しない年は帯状疱疹が増加することが報告されています。また、帯状疱疹は水痘の流行しない夏に多く、流行する冬に少ない傾向があります。水痘が夏に少ないのは、子供たちが集う学校が夏休みのため、隔離期間となっているためです。
 水痘患者の90%以上が5歳未満であるのたに対し、帯状疱疹は10歳代で若干多く発症、30歳代で最も少なく、50〜70歳代で急増します。これは、30歳代が子育て世代のため水痘に罹患した小児に接する機会が多いためではないかと考えられています。実際、子供が水痘に罹患すると、母親がたとえ水痘を発病しなくともVZV抗体価が上昇することが知られています。
 人口動態の高齢化に伴い帯状疱疹が年々増加しているのは当然ですが、それに加え高齢者での発症率そのものも増加しています。やはり、水痘患児に接する機会が減少しているのが原因かもしれません。
米国では水痘ワクチンが定期接種として導入されると水痘患者数は激減しましたが、それと反比例するように、帯状疱疹患者数は倍増しています。
 これらの事実は、上段で述べたように、1.一度獲得した水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫は一生涯続くことはなく、暫くすると低下してくること、2.免疫力が完全になくなる前にウイルスに触れると表面上は発病することなく再び免疫力が復活(ブースター効果と呼びます)すること、3.水痘帯状疱疹ウイルスの場合、免疫力が低下してくるともう一度水痘罹るのではなく、体内に既に潜伏しているウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症させることを示しています。
 日本、欧米では水痘ワクチン接種によって、水痘既往歴のある者においても、免疫賦活効果があることが報告されています。そのため、水痘ワクチンは、水痘既往歴のない者のみならず、水痘既往があっても水痘再感染の可能性の高い者、具体的には白血病患者、悪性腫瘍患者、免疫抑制剤投与中の者等も接種対象者に加えられています。しかし、日本では水痘ワクチンはあくまでも水痘予防が目的です。
 しかし、2005年米国で60歳以上の成人に水痘ワクチンを接種すると帯状疱疹が約半減、帯状疱疹後神経痛もその発症率が約3分の1に低下、発症してもその重症度が6割以上減少したことが発表されました。ワクチン以外に帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛を予防する代替療法がないため、今日日本以外の国では水痘ワクチンは帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛の標準的予防方法となっています。治療薬である抗ヘルペスウイルス薬アシクロビルは水疱が50%痂疲化する日数を1.5日早める程度の効果しかありません。帯状疱疹がありふれた病気で、かつ、時として重症化、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺などの後遺症を残す可能性があることを考慮すれば、日本でも水痘ワクチンの適応に帯状疱疹の予防が追加されることが望まれます。
 当院では、予防接種が元より保険適応がなく自費診療であることを踏まえ、国に先立ち帯状疱疹の予防目的に水痘ワクチンを接種することにしました。しかし、あくまでもワクチン添付文書に記載されているように水痘の予防を名目として接種していただきます。というのも、添付文書に従った適正使用でなければ国の「医薬品副作用被害救済制度」の適用を受けられないからです。水痘の既往歴がない方は言うに及ばず、50歳以上の方は積極的に接種していただきたいのですが、とくに、帯状疱疹や原因不明の顔面神経麻痺の既往歴のある方、糖尿病、膠原病、ネフローゼ症候群、気管支喘息、ガン等の持病のある方、副腎皮質ホルモン等の免疫抑制剤を投薬されている方、日頃小児に接する機会の少ない方等には特に推奨します。価格は8,110円ですが、接種後約11年たっても抗体が維持されていることが確認されており、単純計算では1年当たり740円です。毎年接種しなければならないインフルエンザワクチンと比較してもが費用効果対比の高い割安なワクチンです。

2016年3月厚生労働省は水痘ワクチンの適応に、「50歳以上の帯状疱疹の予防」を追加承認しました

 当院が帯状疱疹ワクチン接種を開始した2013年2月から遅れること3年、厚生労働省は2016年3月「50歳以上の帯状疱疹の予防」の効能効果を水痘ワクチンに追加承認しました。

風疹と先天性風疹症候群について

風疹について

 昨今都内を含め全国的に風疹が大流行しています。なぜこのような大流行が発生したのでしょうか。
 まず、ウイルス感染の基本的な仕組みについて当院ホームページの「帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について〜今、帯状疱疹は予防する時代です!」の中の●はしかのようなものの段落をお読み下さい。
 御一読いただいたことを前提にお話しすると、麻疹同様風疹の流行も、皮肉なことですが、世の中から風疹患者が減り接触する機会が少なくなったため、風疹ワクチン接種者や風疹感染既往者が一度獲得した免疫を維持できず、抗体価が自然減少し、ついには風疹に対する抵抗力がなくなり再感染するようになってしまったのが主因です。さらに加えて風疹の場合、1995年以前は先天性風疹症候群の危険はないからと、男児は予防接種の対象者になっていませんでした。そのため、最近の患者の8割近くが男性で、20〜40歳代がほとんどです。2011年の調査では、20代男性の10%、30〜50代男性の20%が風疹に対する免疫を持っていませんでした。
 風疹は風疹ウイルスによって起きる感染症で、俗に「三日はしか」と呼ばれています。1976、1982、1987、1992、1997年に流行がありましたが、ワクチン定期接種後はほとんど流行がありませんでした。しかし、上述のごとく昨今大流行しています。
【臨床症状】
 感染は経気道的に侵入したウイルスが鼻粘膜〜気道に局所的な感染を起こして増殖した後、局所リンパ組織〜全身へと広がり、発疹を生じさせます(図参照)。感染力は麻疹、水痘ほど強くはありません。

 潜伏期は14〜21日で、全身倦怠感、頭痛、咽頭痛、鼻汁、咳嗽などの上気道炎症状、リンパ節腫脹(とくに耳介後部、後頭部、頚部)の後に発熱(微熱〜無熱のことも多い)、発疹がみられます。発疹は顔から出始め、次第に頸→体幹→四肢へと広がります。性状は小さな鮮紅色の丘疹で時に出血斑やそう痒を伴います。発熱と発疹は2〜3日で消失し軽快しますが、リンパ節腫脹は数週間持続します。
 学校保健法上第二種の伝染病に分類され、紅斑性の発疹が消失するまで出席停止となります。
【合併症】
 血小板減少性紫斑病が3,000〜5,000人に1人程度発症します。関節炎が成人女性を中心に5〜30%みられます。急性脳炎は4,000〜6,000人に1人発症しますが、それらは重篤なものは少なく予後良好です。風疹は基本的に予後良好で自然治癒する病気です。ただし、先天性風疹症候群に注意する必要があります。これに関しては後述します。
【治療・予防】
 特異的な治療法は無く対症療法が中心です。感染経路は飛沫感染で、発症前後1週間ウイルスを排泄しています。
 予防は、未罹患者に対し風疹ワクチンの接種です。

風疹ワクチンについて

 風疹ワクチンは生ワクチンです(上記「ワクチンの種類」の表の下に書かれている注釈、解説文をお読み下さい)。そのため1回の接種で抗体陽転率は91〜98%と高率です。しかし、完全ではありませんので、先進国では2回接種しほぼ100%の免疫獲得を目指す国も多いです。日本でも2006年より2回の定期接種が行われています。
 ワクチンの副作用としては、すべてのワクチンに共通の副反応であるアナフィラキシーショック、じんま疹、接種部位の腫脹、疼痛に加え、風疹ワクチン特有の急性血小板減少性紫斑病、プチ風疹症状である発疹、紅斑、リンパ節腫脹、発熱などがありますが、いずれも軽微で予後良好です。

 ワクチン副作用が心配な方は、接種の前に現在の抗体価を測定し、不足していた場合(HI法で16倍以下)にのみ追加接種することも可能です。しかし、抗体が十分残っている方に予防接種を行っても何ら害はなく、追加接種によりブースター効果でさらに抗体価の増加も期待できるので、面倒な方は抗体価を調べることなくいきなり予防接種しても構いません。
 生ワクチンは生きているので被接種者の体内で増殖します。これまで妊婦が風疹ワクチンを接種して、胎児に障害が出たという報告は一例もありません。しかし、理論的には絶対にないとは言えません。ですから、妊婦は接種できません。そのため、接種前1ヶ月前と接種後2ヶ月間は妊娠を避けることになっています。生理中か生理直後に来院すれば、妊娠していないのは確実ですから、このような時期にワクチン接種するのが最適です。
 なお、風疹ワクチンの詳細については、国立感染症研究所のホームページに一般の方向けのQ&Aが掲載されています。御参照下さい。

先天性風疹症候群について

 ご存知の方も多いと思いますが、妊婦が妊娠初期に風疹に罹患すると、先天性風疹症候群といって、先天性白内障、難聴、先天性心疾患、発達障害などの先天異常が高い確率で胎児に出現します。妊娠1ヶ月以内なら50%以上、妊娠2ヶ月以内なら20〜30%、妊娠3ヶ月以内なら約5%出現します。そのため、接種前1ヶ月前と接種後2ヶ月間は妊娠を避けることになっています。20〜40歳代の男性の配偶者は年齢的に妊孕性が高いため、先天性風疹症候群には十分注意する必要があります。夫が風疹に感染、キャリアとなり家庭内で妻に風疹をうつす例もあり、妊娠希望の女性とその夫は、妊娠前に予防接種することをお勧めします。

肺炎球菌ワクチンについて

肺炎について

 戦後減少していた肺炎は、高齢化社会になり増加に転じ、最近30年間は増加の一途を辿っています。2011年には脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)を追い抜き、日本における死因の第3位になりました(図、「日本における死因別にみた死亡率の年次推移」をご参照下さい)。日本人の10人に1人は肺炎で亡くなっているのです。

 肺炎による死者の95%以上は高齢者、つまり65歳以上の方です(図、「肺炎の年齢階級別死亡率」をご参照下さい)。

 御存知ことと思いますが、いわゆる肺炎は細菌やウイルスなどの病原菌による肺の感染症です。重症化すると肺組織が壊れ、呼吸が出来なくなり死に至る怖い病気です。
 肺に感染する原因菌のうち、最も多いのが肺炎球菌で約4割を占めます(図、「市中肺炎の原因菌割合」(日本呼吸器学会編「成人市中肺炎診療ガイドラインより」をご参照下さい。)。


特に冬期のインフルエンザシーズンでは約55%にもなります。

 肺炎の予防法は、

1、適度な運動、バランスの良い食事、十分な睡眠などにより日頃から免疫力を高め、風邪を引かないようにする。
2、禁煙し、タバコで気管気管支や肺が傷つくのを防ぐ。
3、マスク着用、うがい、手洗いなどを励行し、病原体が体内に入り込むのを防ぐ。
4、歯と歯茎磨きを励行する。口腔内の雑菌を減らすとともに歯茎磨きにより誤嚥しにくくなることが解っています。
5、肺炎になりやすい持病(糖尿病、気管支喘息などの呼吸器疾患、心不全、アルコール依存症、肝硬変などの慢性肝疾患、腎不全やネフローゼ症候群などの腎臓病、血液疾患など)のある方はその治療をしっかりと行うことが大切です。
6、肺炎球菌感染を予防するワクチンを接種する。

などです。

肺炎球菌ワクチンについて

 この肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP®)は一度接種すると4年後で90%、5年後でも76%抗体価が維持されます。ですから接種は5年に一度でかまわず、インフルエンザワクチンのように毎年接種する必要はありません。5年間をおけば何回でも接種できます。毎年接種が必要なインフルエンザワクチンが当院で3,900円なのに対し、5年間有効な肺炎球菌ワクチンは8,110円で接種できます。1年当り1,600円程度ですから、大変費用対効果の高いワクチンといえます。肺炎はインフルエンザのように明確な季節性はなく、1年中発生しますし、5年間効果が持続しますから特に推奨される接種時期は無く、季節にこだわらず接種できます。
 その予防効果は75歳以上の方に接種すると肺炎罹患率が約6割減少、半分以下になります。さらに肺炎による入院率も約6割減少します。とくに免疫力が低下して肺炎に罹患しやすい糖尿病患者では84%も肺炎球菌感染症が減少します。心不全など心臓病患者、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患COPD患者では約70%肺炎球菌感染症が減少します。
 ですから、このワクチンは、

1、高齢者(65歳以上の方)
2、2〜64歳で下記の慢性疾患やリスクを有する
  慢性心不全(うっ血性心不全、心筋症など)
  慢性呼吸器疾患(COPDなど)
  糖尿病
  アルコール中毒
  慢性肝疾患(肝硬変など)
3、摘脾を受けた方、脾機能不全
5、養護老人ホームや長期療養施設などの居住者
6、易感染性患者
  HIV感染者や、白血病、ホジキン病、多発性骨髄腫、全身性の悪性腫瘍、慢性腎不全、
  ネフローゼ症候群、移植などの患者のように長期免疫抑制療法を受けている
  副腎皮質ステロイドの全身投与を長期間受けている

 以上のような病態の方に推奨されています(日本呼吸器学会「成人市中肺炎診療ガイドライン
 肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌以外が原因の肺炎には効果がありません。ですから、完全に肺炎を予防できるわけではなく、日頃から上述のような肺炎予防法を励行する必要があります。
 成人用ニューモバックスNPと小児向け肺炎球菌ワクチンであるプレべナー®とはまったく別物です。ニューモバックスNPを小児に接種しても、抗体は獲得できません。間違いないようにお願いします。
 なお、インフルエンザは肺炎の引き金になりますから、冬期においてはインフルエンザワクチンの接種も肺炎予防には重要です。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンとも不活化ワクチンですから1週間以上間隔をあけて接種するのが原則ですが、必要と認めた場合、同時接種も可能です。

肺炎球菌ワクチン接種費用の公費助成について

平成26年10月1日以降は国の定期接種(B類疾病、高齢者インフルエンザワクチンと同じ扱い)となり、4,000円余りを市が助成するので5,000円の自己負担で接種できます。
ただし、対象者は当該年度中に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方で、過去に肺炎球菌ワクチンを接種したことのない方です。この制度は平成30年度で廃止予定(平成31年度以降は65歳になる方のみが対象となります)のため、対象者の方はこれが助成を受けられる最後の機会となります。希望者は生年月日、住所を確認できる健康保険証等を持参し、直接ご来院下さい。詳細は三鷹市ホームページを御覧下さい。

子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて

子宮頸がんについて

子宮頸がんと予防ワクチンについて

予防接種とワクチン

以上に関して下記動画(グラクソ・スミスクライン株式会社ホームページより)を御覧下さい。

[子宮頸がんと予防ワクチン]

※圧縮ファイルを解凍し、「子宮頸がんと予防ワクチン」と書かれたファイルをダブルクリックすると、子宮頸がんと予防ワクチンのアニメーションが開始されます。


現在日本で使用できるHPVワクチンは、2種類あります。サーバリックス®という2価ワクチン(16型、18型を標的とするので2価)とガーダシル®という4価ワクチン(6型、11型、16型、18型を標的とするので4価)です。アニメでは、2価ワクチンについて解説しています。この段落では、アニメに少し解説を加えます。そして、後段で2価ワクチンと4価ワクチンの違いについて御説明します。
発癌性HPVに感染しても、子宮頸がんを発症するのは0.1〜0.05%程度、つまり1,000〜2,000人に一人程度でしかありません。しかし、非常にありふれたウイルスであるため、日本全体で見ると毎年15,000人の方が発病し、3,500人もの方が命を失っています。ざっと子宮頸がんを患った有名人を挙げると歌手の和○ア○子、坂○泉○、森○子、渡○マ○、女優の仁○亜○子、洞○依○、大○し○ぶ、三○じ○ん○、原○晶、向○亜○、古○比○、セ○ラ・○ー○ル、漫画家の赤○た○こなど、数え上げるときりがありません。これほどありふれた病気なのです。大学時代からのファンだった歌手の松原みきさんが44歳で他界されたのは最もショックでした。
このような現実がある一方、実は、子宮頸がんは予防可能な数少ないガンなのです。ですから、子宮頸がんが増加の一途を辿る昨今、ワクチン接種の意義は増しているのです。
アニメ中、ワクチン接種後6.4年間高い抗体価が維持されるとありましたが、最新のデータでは9.4年まで抗体価が維持され、さらに持続中です。統計モデルからは、少なくとも20年以上効果が維持されると推測され、実際、被接種者においては、100%HPV16と18の感染を予防できています。しかし、HPV感染後、子宮頸がん発病に至るまで10年以上を要するため、本当にHPVワクチンが子宮頸がんを予防できるのか、実際には確認されていません。ただ、HPV16と18の感染を100%予防できているのですから、これらウイルス感染が原因の子宮頸がんを予防できるであろうと考えられています。
妊婦または妊娠している可能性のある女性は、妊娠終了まで接種を延期します。また、接種期間の途中で妊娠した場合、その後の接種は見合わせます。出産後、残りのワクチンを接種可能ですが、授乳中の接種に関する安全性は確認されていません。理論上問題はありませんので、医師との相談になります。各々のワクチンにより合計3回の接種時期は微妙に異なりますが、何らかの理由で多少接種時期がずれても最初からやり直す必要はありません。必ず都合3回接種して下さい。アニメにあったように既に性交経験があり、HPVに既に感染している可能性のある方でも、その後感染したHPVが自然排除され、さらに再感染する可能性があります。再感染を防ぐ目的からもワクチン接種する意味があり、日本産婦人科医会では45歳までの接種を推奨しています。学会では性的にactivityの高い60歳代の方の接種も報告されています。
平成24年度までは任意予防接種として実施されていましたが、平成25年4月より、小学校6年生(12歳相当)から高校1年生(16歳相当)の女子を対象者として定期予防接種になり、無料化されました。詳しくは三鷹市ホームページを御参照下さい。2価ワクチンは10歳以上、4価ワクチンは9歳以上から接種できますが、対象年齢以外の方は有料で自費になります。
なお、余談ですが、HPVを発見したドイツがん研究センターのツア・ハウゼン名誉教授は2008年度のノーベル生理学医学賞を受賞しています。
以上のごとく子宮頸がんはワクチンで予防できるガンなのです。我が家の娘たちにも対照年齢になったら予防接種を受けさせるつもりです

扁平上皮癌と腺癌

子宮頸がんにはがんになる細胞の種類により、扁平上皮癌と腺癌の2種類に分類されます。最近、腺癌が臨床上大きな問題になっています。というのは、

1、腺癌は、以前子宮頸がん全体の5%以下とわずかだったが、近年急増し20%以上に達している。
2、扁平上皮癌は子宮頸部の表面に存在するため、検診により癌細胞が発見されやすいのに対し、腺癌は表面の下の頸管腺の中に発生するため、検診で細胞採取が難しい
3、扁平上皮癌の場合、異形成上皮という前癌病変があるのに対し、腺癌では前癌病変が明らかでなく、早期診断が難しい
4、腺癌は扁平上皮癌に対し、放射線療法の感受性が低く、予後不良である。
5、そのため早期癌であっても、子宮全摘術となる場合が多く、妊娠を希望する患者のQOLを損なうことになる。

等の問題があるからです。腺癌の原因となるHPVには9種類ほどありますが、そのうちHPV18型、16型が約85%を閉めています。このように、腺癌は検診で発見されにくい子宮頸がんですから、ワクチンによって予防する意義が大きいのです。

2価と4価のHPVワクチン、どちらを接種すべきか?

上記アニメの中で説明されているように、HPVには約100種類の亜型があり、そのうち、約15種類が子宮頸がんの発生にかかわっています。
現在日本で使用できるHPVワクチンは、2種類あります。サーバリックス®という2価ワクチン(16型、18型を標的とするので2価)とガーダシル®という4価ワクチン(6型、11型、16型、18型を標的とするので4価)です。では、どちらを接種すればよいのでしょうか。非常に高価なワクチンですからしっかりと吟味する必要があります。
4価のガーダシルに追加されている標的ウイルス6型、11型HPVは尖圭コンジローマという癌ではない病気を引き起こすウイルスです。尖圭コンジローマは、性器や肛門の周囲に数mm大のイボが多発する病気で、通常自覚症状はありません。自然治癒することもありますが、ニワトリの鶏冠のようにかなり大きくなることもあり、QOLを害します。また、妊婦が尖圭コンジローマを発症していると、出産時に産道でHPVが新生児に感染(母子感染といいます)、新生児の喉にイボができる再発性呼吸器乳頭腫症を発症してしまうこともあります。しかし、最近治療薬も開発され、臨床上大きな問題になることはありません。
4価ワクチンが単に2価ワクチンに+αの効果だけを付与したものなら迷わず4価ワクチンを接種すべきでしょう。しかし、肝心な発癌性HPV16型、18型に対する抗体価は2価ワクチンの方が4価ワクチンより勝っているようです。そのため、前癌病変の予防効果、円錐切除術(前癌病変や初期の子宮頸がんに行う手術)施行人数減少効果においても2価ワクチンが4価ワクチンに勝っていることが報告されています。
後述のごとく、副反応については、2価ワクチンの方が4価ワクチンより局所の疼痛が強いようです。
まとめると、尖圭コンジローマも含めたQOL改善を期待するなら4価ワクチン、痛くてもよいから子宮頸がん予防を第一に考えるなら2価ワクチンを選択すべきでしょう。ちなみに、我が家では娘に2価ワクチンを接種しました。

男性に対するHPVワクチン接種について

以上の如く、4価ワクチンは男性にも発生する尖圭コンジローマに対して有効ですから、男性に対しても接種を検討してよいはずです。現在、欧米では男性に対しても接種されていますが、日本では男性する適応は認められていません。発癌性HPVは、子宮頸がん以外に男性にも発生する中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、食道がん、喉頭乳頭腫、鼻腔副鼻腔乳頭腫などの原因になっています。そのため、今後男性に対するワクチン開発も期待されています。

ワクチン副反応について

2013年3月8日朝日新聞に、2011年11月杉並区在住の女子中学生が2回目の2価HPVワクチン接種後、左上腕の痺れなどが出現、症状が下肢や背部まで広がり入院、1年3ヶ月ににわたり通学できない状況だったとの記事が掲載されました。その後2013年1月には通学できる状態に快復したとのことです。それ以前からも、接種後の失神などの報告があり、平成25年4月からの定期接種化に水を差すこととなりました。そのため、厚労省は定期接種化したにもかかわらず、6月14日「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛がヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン接種後に特異的に見られたことから、同副反応の発生頻度等がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」との勧告を出しました。
HPVワクチンによる主な副反応には、接種局所の発赤、腫脹、疼痛などの軽いものから、全身的な副反応としてアナフィラキシー、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、ギラン・バレー症候群、血管迷走神経反射による失神などがあります。また、杉並区の症例は、複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)と呼ばれるもので、これまで合計3例(2価ワクチンで2例、4価ワクチンで1例)報告されています。平成25年3月31日までに、2価ワクチンはのべ698万回、4価ワクチンは169万回接種されていますから、極めて稀な副反応です。3月31日時点で報告されている2価ワクチンの副反応は0.014%(うち重篤0.0013%)、4価ワクチンは0.013%(うち重篤は0.0009%)です。詳細は厚労省ホームページに掲載されているので御参照下さい。
厚生労働省では、とくに問題となっている複合性局所疼痛症候群などの副反応が出現した場合、適切な医療を提供するため、痛みセンター連絡協議会を設立、所属19医療機関(2014年7月15日現在)で診療体制を整備しています。接種後痛み、しびれ、脱力などが2〜4週間経っても持続する場合、それら医療機関をご紹介します。
全身的な副反応のうち最も多いものが失神です。局所の疼痛により血管迷走神経反射が引き起こされると、血圧低下、欠伸、嘔気、冷汗、メマイを来たし、ついには失神することがあります。一般に、HPVワクチンは他のワクチンに比べ接種時の局所疼痛が強く、また、接種対象者が、痛覚の鋭敏な思春期の女性であることが、より疼痛を強めています。失神は副反応全体のうち2価ワクチンで約60%、4価ワクチンで約40%を占めていることより、2価ワクチンの方が4価ワクチンより疼痛が強いようです。インフルエンザワクチンは高齢者に接種することが多いですが、高齢者は若年者に比べ痛覚神経が鈍化しているためあまり痛みを訴えません。血管迷走神経反射による失神はHPVワクチン液に特異的な現象ではなく、一般に針を刺したための疼痛により引き起こされるため、他の予防接種や血液検査のための採血などでも時々見られます。HPVワクチンにかわらず、予防接種による失神は、従来10代に圧倒的に多く発生していました。血管迷走神経反射による失神のメカニズムは血圧低下による脳貧血ですから、臥位でしばらく安静にさせると簡単に快復します。当院では、子宮頸がんワクチンに関しては、ベッドに寝かせて接種、状態に変化のないことを確認して帰宅させるようにしました。
 これまでも、他のワクチンの解説などにおいて再々繰り返しお話して来ましたが、まったく副反応のないワクチンなどありません。針を刺してまったく痛くない方などいませんから、何がしかの疼痛という副反応は必ず発生します。上述したように重篤な副反応もありえます。一方、子宮頸がんを予防するという大きな利点もあります。もし、娘さんをカトリックのシスターにするつもりなら、ワクチン接種は「百害あって一利なし」です。注射針に対し先端恐怖症や、注射恐怖症を持っている娘さんなら、「十害あって十利」といったところでしょう。単に注射が嫌いなだけなら、「三害あって十利」程度でしょう。まったく注射が気にならない方なら、「一害あって十利」です。このように被接種者によって、各々HPVワクチンの有用性は違うはずです。本当にご自身にとって必要なものか十分検討の上、接種して下さい。
最後に、現在使用されているHPVワクチンはすべて型の発癌性HPV感染を予防できるわけではありません。ですから、当然子宮頸がんを完全には予防できません。下図の如く日本の子宮頸がん検診受診率は悲惨なほど低いのが現状です。接種後も、子宮がん検診を定期的に受診する必要があることを再確認しておきます。

先進国の子宮頸がん検診受診率

インフルエンザワクチンQ&A

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向精神薬多剤投与制限について

平成26年度診療報酬改訂に際し、平成26年10月1日より精神科を標榜する医療機関(メンタルクリニック等)の医師以外は、1回の処方において、3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬の投与(向精神薬多剤投与)が実質的に制限されることになりました。当院は精神科を標榜していませんし、精神科専門医でもありませんので、制限の対象となります。対象となる薬剤は下表のようなものになります。

別紙「向精神薬多剤投与制限について」

そのため、平成26年10月1日以後は、厚生労働省の定める例外事例を除き、上記規定に抵触する処方はいたしません。上記向精神薬の多剤投与が必要と判断された場合、ご相談の上適切な精神科標榜の医療機関にご紹介します。

また、ときに睡眠薬のみを希望し初診される方がいます。昨今、薬物乱用が社会問題となり、先述のごとく厚労省からも厳しく指導を受けています。そのため、当院では睡眠薬等向精神薬の投与に関して、たとえ多剤でなくとも以下の如き診療方針で対応致しております。

  1. 1、初診患者さんに関しては1種類の薬剤を投与日数1週間分までしか投与しません。相当期間通院し、心身ともに問題ないことが明確になった場合のみ1週間分以上投薬します。
  2. 2、三鷹市への転入により、前医と同一処方の継続を希望される場合、前医からの紹介状を持参されなければ初診患者さんと同一の扱いとし、1種類1週間の投薬を限度とします。
  3. 3、持病にて既に長期間当院通院中の患者さんに関しては、法令に従い適宜判断、投薬日数を調整します。
  4. 4、向精神薬の違法な使用が疑われた場合、速やかに警察署を含め監督官庁に報告します。当方の事実誤認の場合もあると思いますが、あくまでも疑いとしての報告でありご理解のほど宜しくお願い申し上げます。

さらに、ときに睡眠薬を含め、御自身に対して処方された薬を、家族を含め周囲の人に譲られる方がいます。たとえば、「夫が、寝つきが悪いというので自分の睡眠薬を3錠あげた」といったお話です。これは薬事法違反となります。さらに睡眠薬の場合「麻薬及び向精神薬取締法」違反となります。御自身に対して処方された薬剤は何人たりとも譲渡できません。監督官庁への報告の対象となりますので、厳に慎んで下さい。

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