2019/07/26 
「令和元年7月25日岡山市で開催された第60回日本人間ドック学会学術大会に参加してきました。」

 令和元年7月25日一般財団法人淳風会健康管理センター長井上和彦大会長のもとホテルグランヴィア岡山、岡山コンベンションセンター、岡山県医師会館、ANAクラウンプラザホテル岡山を会場に開催された第60回日本人間ドック学会学術大会に参加してきました。会場が岡山で遠いため水曜日の午前診療後、午後の休診を利用し、前泊する予定でホテルも早々と予約していました。その後、医師会の公務が水曜日の夜7時30分に急遽決まりましたが、ホテルも予約、事前登録済の学会参加費が返金されないことを知っていたため公務を欠席するつもりでいました。しかし、公務の内容が非常に重要なものだったため、副会長としては(私事ですが先月末の三鷹市医師会役員改選で副会長を拝命しました)欠席するわけにはいかないと判断、対策を検討した結果、ホテルをキャンセル、水曜日の夜10時東京発の寝台車サンライズ瀬戸を利用することにしました。この電車に乗れば翌朝6時30分頃には岡山に着くことができます。切符を買い替え参加してきました。ただ、ホテル代2万円(会場のANAクラウンプラザホテル岡山)が返金されなかったのは痛手でした。通常1か月近く前にキャンセルすれば当然全額返金されます。しかし、今回このホテルが学会会場で人気となっていたため、2か月前に早割で予約していました。売り手市場だったため全額キャンセル料として取られてしまいました。サンライズ瀬戸に乗車する方法は昨年11月香川県高松市で開催された第12回日本禁煙学会でも使っています。詳しくは2018/11/15院長コラム「2018年11月11日かがわ国際会議場で開催された第12回日本禁煙学会学術総会に参加してきました。寝台車デビューです。」をご参照下さい。
 さて、今回の大会テーマは「Beside You働く世代の健康増進をめざして!」です。糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病やメンタルヘルスへの対応とともに悪性疾患対策が人間ドックの大きな目的ですが、井上大会長は日本で初めて胃がんリスク層別化検査であるABC検査(胃がんリスク検査(ABC検査)として三鷹市でも実施されています。)を実践された方ということもあり、がん対策をテーマにしたシンポジウム、特別企画が多かったように思います。私自身、がん関連のセッションを中心に参加、初日の25日聞きたいセッションが集中していたこともあり、1日のみ参加してきました。今回注目していたセッションは特別講演「リキッドバイオプシーの社会実装に向けての期待と課題」「線虫がん検査N-NOSEの発明と実用化」です。いずれもわずかな血液や尿サンプルで多種類のがんを一度に早期発見できるという夢のような技術革新です。当院の健診でも従来オプション検査として様々な腫瘍マーカーが採用されています。これは血液検査でがんを発見しようとするものです。しかし、残念ながら早期がんでの陽性率は10%程度のため、これらの検査で運よく早期がんを発見できる方もいますが、発見されても進行がんとなっている方が大半でした。しかし、詳細は割愛しますが、上記の二つの技術は早期がんの段階で陽性となる上、がん種の特定も可能で、転移の有無、抗がん剤の有効性まで非常に正確に判断できるという技術です。特に線虫がん検査はマスメディアでもしばしば取り上げられ、来年に実用化されるところまで来ています。当院でもできるだけ早急に採用したいと考え、準備を始めていきます。

2019/07/15 
「令和元年7月11日から12日まで国立京都国際会館で開催された第51回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。」

 令和元年7月11日から12日まで京都大学医学研究科臨床創成医学分野教授横出正之大会長のもと国立京都国際会館を会場に開催された第51回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。本学会は脂質異常症分野の医療従事者が一堂に会して開催される学会です。今回の大会テーマは「チームで取り組む!一生すこやかに血管を保つために」です。いつも診療が気になり最も聞きたい演題のある1日のみ参加することが多いのですが、今回クリニックを二日連続休診にして開会式から閉会式までどっぷりと脂塗れ!(^^)! になってきました。最近ますます公私共々多忙で帰宅は連日深夜です。こんなとき、思いっきり自分の興味のある分野を勉強するのは、知的欲求が満たされ本当にストレス発散になります。
 本大会では日本産業衛生学会との合同シンポジウム「働く世代の動脈硬化性疾患(脳・心疾患、過労死)の予防〜健康寿命延伸を目指して〜」が産業医講習会として認定されており、認定産業医更新のための単位も獲得できて助かりました。
 さて、初日はシンポジウム「積極的脂質低下療法の新たなエビデンス」「CKDと動脈硬化」、ランチョンセミナー「脂質異常症」、診断技術向上セミナー「脳卒中・循環器病対策基本法成立を受けて:動脈硬化予防戦略に必須な画像診断 2 虚血性心疾患に必須な画像診断」「一般医科における早期動脈硬化予防策」、先述の産業医講習会、二日目は日本血管生物医学会との合同シンポジウム「臓器障害としての動脈硬化症と血管炎症」、シンポジウム「脂質異常症難病のすべてがわかる!」、ランチョンセミナー「高TG血症」、シンポジウム「血管病理と心血管イメージング」「家族性高コレステロール血症の諸問題について」を拝聴しました。その中で今後の診療に活かせる重要な点をお話しします。
 やはり、今回も議論の的となったのは残余リスクの問題です。日本動脈硬化学会では、脂質異常症診断基準で「高コレステロール血症(LDLコレステロール)」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド血症」の3種類の脂質を取り上げています当院ホームページ「脂質代謝内科」のページをご参照下さい)が、その中でもLDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールを中心に語られています。しかし、悪玉コレステロールをしっかり減らしても動脈硬化性疾患(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳血栓、末梢動脈疾患、大動脈瘤、大動脈解離など動脈硬化が原因で発症する病気)は完全に防げません。2〜4割程度減るのみです。また、家族性高コレステロール血症(同じく当院ホームページ「脂質代謝内科」のページ、「脂質異常症の原因」の欄、「家族性高コレステロール血症について」の段落をご参照下さい)等一部の特殊な場合を除くと、LDLコレステロールの値とこれらの疾患の発症率は必ずしも比例しません。例えば心筋梗塞を発症された方が必ずLDLコレステロール値が高いとは限らず、むしろトリグリセライドが高く、HDLが低い方に多いことが明らかになっています。そもそも3種類の脂質が標的になっているわけですが、単純にそのうちの一つ、LDLコレステロールをして、すべてを説明できるはずがありません。そのため、日本動脈硬化学会が発表した「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」では、nonHDLコレステロール(総コレステロール−HDLコレステロール)という概念も導入されています。総コレステロール=LDLコレステロール+HDLコレステロール+トリグリセライド/5の関係性があるため、nonHDLコレステロールはHDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセライドによって規定される数値、それらを反映した数値となります。ですので、LDLコレステロール値単独より、より動脈硬化性疾患発症との相関性が強くなっています。この問題に答えを出しつつあるのがすでに当院ホームページでもすでに取り上げている超悪玉コレステロールといわれるsmall dense LDL(以後sd LDLと略す)コレステロールです。詳しくは当院ホームページ「脂質代謝内科」のページ、「動脈硬化危険因子」の欄、「small dense LDL超悪玉コレステロールについて」の段落をご参照下さい。sd LDLコレステロールはLDLコレステロールの中で小型(LDLの中で平均粒子直径25.5nm以下、比重1.044〜1.063g/mlの分画をsd LDL、他方、直径25.5nm以上、比重1.019〜1.044の分画をlarge buoyant LDLと呼びます)で動脈硬化惹起性の強い(@sd LDLは肝臓で回収されにくいため通常のLDLと比べ血中に滞留しやすい(2日対5日)、A小型のため血管壁内に侵入しやすい、B酸化されやすい。酸化変性したコレステロールは血管壁内に存在する白血球の一種であるマクロファージに貪食され壁内に蓄積していきます。CビタミンEなどの抗酸化物質の保護を受けにくい等の特徴があるため、通常のLDLと比べ動脈硬化を引き起こす作用が3倍も強力です)コレステロール分画です。トリグリセライド自身は、LDLコレステロールのように直接血管壁に入り込み、動脈硬化を引き起こすことはありません。にもかかわらずトリグリセライドは動脈硬化性疾患の危険因子となっています。これはトリグリセライドがLDLコレステロールを小型化する、すなわちsd LDL化するためです。HDLコレステロールとトリグリセライドは逆相関することが分かっています。すなわち、HDLコレステロールが低いとトリグリセライド値が上昇、結果としてsd LDLコレステロールが増加、動脈硬化が惹起されます。このように考えるとsd LDLコレステロールは単独で高トリグリセライド血症と低HDLコレステロール血症を反映していることになります。
 また、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームはLDLコレステロールをsd LDL化するため、動脈硬化の危険因子となっています。こう考えるとsd LDLコレステロールは単独で高トリグリセライド血症と低HDLコレステロール血症のみならず、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームによる動脈硬化をも反映していることになり、一元的に説明可能となります。今後は、sd LDLコレステロールが脂質異常症診断基準の主たる検査項目なる可能性があります。
 ただ、現時点で最も問題なのは、sd LDLコレステロール測定方法はデンカ生研により開発されているにも関わらず、いまだ保険収載となっていないことです。シンポジウム「積極的脂質低下療法の新たなエビデンス」の演者の一人でこのsd LDLコレステロール測定系開発者である海老名総合病院糖尿病センター平野勉先生の御話では、現在保険収載に向けたデータ収集を行っていますが、後2〜3年必要とのことでした。そのため上述の当院ホームぺージ「small dense LDL超悪玉コレステロールについて」の段落に記載しましたように、当院では数年前より保険外診療となりますが7,000円でsd LDLコレステロール検査を実施しています。
 では、このように自身のsd LDLコレステロール値を知るためには、保険収載になるまで3年待つか、7,000円払って自費で今すぐ測定するしかないのでしょうか。いえ、直接sd LDLコレステロール値を図らずとも、その値を推測する方法があります。もちろん大雑把ではありますが、トリグリセライドが増えると減り、HDLコレステロールが減ると増えるnonHDLコレステロールもその一つです。
 当院ホームページ「脂質代謝内科」のページ、「脂質異常症の原因」の欄、「家族性高コレステロール血症について」の段落で、水溶性の血液に溶けにくいコレステロールは、水溶性のアポリポ蛋白と結合、リポ蛋白という球形の舟に乗って血液中を移動するとご説明しました。肝臓はコレステロールを生成しますが、一方で余分なコレステロールの回収もします。肝臓がコレステロールを回収するとき肝臓表面LDL受容体はLDLリポ蛋白のアポリポ蛋白であるB-100を認識して回収します。LDL受容体の不具合でLDLコレステロールを回収できなくなり、高コレステロール血症となる病気が家族性高コレステロール血症です。sd LDLであろうと、large buoyant LDLであろうとLDL一つに存在するアポリポ蛋白B-100は一つのため、同じLDLコレステロール値であってもsd LDLの含まれる割合が多いと、一つ一つのLDL粒子が小さく数の多い分だけアポリポ蛋白B-100の量が多くなります。すなわちアポリポ蛋白B-100はsd LDLの量と比例しますから、アポリポ蛋白B-100を測定すればsd LDLの量を推測できることになります。しかし、B-100はLDLのみならずIDL、VLDLにも含まれ、肝臓で回収されるときに認識されます。また、アポリポ蛋白BにはB-100以外にB-48があり、B-48はカイロミクロン、カイロミクロンレムナントに含まれます。保険で簡単にアポリポ蛋白Bを測定できますが、残念ながらB-100とB-48を合わせた合計、アポリポ蛋白Bとして測定しています。そのため、アポリポ蛋白B測定でsd LDL量を正確に知ることはできませんが、ある程度推測することができます。男性基準値は73〜109、女性は66〜101mg/dLですが、110以上の場合sd LDLの増加を疑います。
 同様の考えとして、LDLコレステロールに含まれるsd LDLコレステロールの比率が増加していくと、アポ蛋白B/LDLコレステロール比が増加していくため、>0.85の場合、sd LDLが増加していると推測できます。
 今後は今回得られた知見を診療に活かしていきたいと思います。

2019/07/05 
「当院を御利用下さった方が2019年6月27日2万人に達しました!」

 当院は昨年11月で開院11周年を迎え、現在12年目に突入しています。その間、御病気の方のみならず、健康診断、人間ドックを目的として受診された方が、先日6月27日2万人に達しました。1万人に達したのは開院5年余りの2013年1月22日です(2013/01/22院長コラム「当院を御利用下さった方が1万人に達しました。」をご参照下さい)。この数は延べ人数ではなくあくまでも個々人の数です。持病のため毎週毎月通院されている方もいれば、年に1回だけ健診で受診される方もいます。受診者の方は必ずしも地元の三鷹市民とは限らず、西は長野県から東は千葉県までいらっしゃいます。別荘にお住まいでそこから通院される方も多くなってきました。欧米、東南アジア、中国などに赴任中で、帰国の都度、持病の治療で定期的に受診される方も最近は非常に多いです。三鷹市の人口が18万人強程度であることを思うと本当にたくさんの方に御利用頂けたことと深謝いたしております。2万人の方を診察してきた経験は私にとって大きな自信と財産であり、また誇りでもあります。
 年々来院者増加のためお待たせする時間が長くなってきました。そのため、昨年から本年にかけ土曜日の2診体制、乳腺外来の新設などスタッフの充実を図り、だいぶ待ち時間が減っております。また、詳細はお話しできませんが、より効率的な診療が出来るよう現在施設拡張の準備中です。創立理念のもとスタッフ一同で工夫し、当院を信頼し来院して下さる方をできるだけ多く診療できるよう、患者さん、私達スタッフで協力し合っていければ幸いです。御協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

2019/04/30 
「平成31年4月27日から29日まで名古屋国際会議場を中心に開催された第30回日本医学会総会2019中部に参加してきました。

 平成31年4月27日から29日まで名古屋大学名誉教授齋藤英彦会頭のもと名古屋国際会議場を中心に開催された第30回日本医学会総会2019中部に参加してきました。本学会は4年に1回、関東、中部、関西地区等を会場として日本のあらゆる分野の医学会が一堂に会して開催される学会です。ですからその規模はすべての学会の中で最大です。
 本学会では産業医講習会も多数開催されるため、認定産業医更新のための単位数を一度に多く得ることができます。そういったこともあり毎回できるだけ参加するようにしています。特に今回は黄金週間休みと重なり、診療を休まず、4月27日土曜日の診療後に出発、参加してきました。
 今回の学会では、産業医講習会として「有機溶剤中毒の新たな展開」「がんと就労:治療との両立」「面接指導の実際」「粉じん作業職場等にかかる職場巡視と安全衛生関係法令」を聴講しましたが、その他昨今注目されている分野「AIとICTはどこまで医療を変えるか〜人工知能が切り開く未来医療」「フレイルと人参栄養」「がん・難病の予防療法はどこまで可能か?」「肺がん治療のパラダイムシフト」などなどを聴講しました。少し残念だったのは、ノーベル医学生理学賞受賞者「本庶佑」「山中伸弥」両先生の講演を拝聴できなかったことです。
 癌治療に関して、最近、分子標的薬、本庶佑先生らの研究が端緒になり開発された免疫チェックポイント阻害剤などが次々と上梓され、様々な癌の予後が著しく改善していますが、今回肺がん治療を例にどの程度、どのように改善しているか全体像を理解することができました。私は普段、がん治療を行っているわけではないので、その分野の理解度は素人に毛が生えた程度です。その分野の専門家のお話を伺い、がん治療がパラダイムシフトを起こしていることを実感することができました。これからの時代、ガンはHIV感染症、非結核性抗酸菌症、一昔前のC型慢性肝炎等の感染症のように天寿までうまく付き合っていくような慢性疾患に変貌しそうです。

2018/12/04 
「常時SSL化(https化)について」

 近年、インターネットの利用が多様化し、第三者による盗聴やデータ改ざんなどのリスクが年々高まっています。日本国内のみならず世界でトップシェアのブラウザである「Google Chrome」を開発したGoogleは、セキュリティ強化を優先事項として掲げており、常時SSL化(httpsサイト)を推奨してきました。
 個人情報やクレジットカード情報などの重要なデータを、 サーバーとPC間で安全に通信するため、インターネット 上でデータを暗号化して送受信する仕組みのことを SSL(Secure Sockets Layer)といいます。 このSSLをサイト全体に適応することでセキュリティを強 化し、サイトの信頼性向上を図ることを「常時SSL化」 といいます。 「常時SSL化」されたサイトは、Google Chrome等 のブラウザによって、「http://」ではなく、「https://」と 表示され、セキュリティが強化されたサイトとして認識さ れるようになります(左図)。付加される「s」はsecurityの「s」です。
 今回、2018年7月にリリースされた「Chrome 68」より、「httpサイト」というだけで警告を表示するアップデート(仕様変更)が行われました(右図)。
 Googleは、今後も警告を強めるアップデートを行うことを発表しており、各サイトが「httpサイト」から「httpsサイト」へバージョンアップする必要性が高まっています。
 GoogleはSSL化されたwebサイトを優遇しているため、検索順位に影響を与える可能性もあります。このような状況を鑑み当院では、12月1日常時SSL化としました。
(当院ホームページ管理会社、エンパワーヘルスケア株式会社資料を改変して掲載しました)

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2018/11/17 
「エレベータ内にビル案内板を設置しました。」

ビルオーナーに依頼し、当院の入居する三鷹第一ビルのエレベータ内にビル案内板を設置して頂きました(左図、右図)。当院は2階と4階に入居していますが、2階は診療部門で4階は事務部門です。これまで、エレベータ内の各階ボタンのところにテプラで表示するのみでしたが、これで大分判りやすくなりました。

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2018/11/15 
「2018年11月12日平成30年度三鷹市医師会地域ケア会議で三鷹市の災害時の医療救護対策について発表しました。」(その1)

 小生は現在三鷹市医師会防災救急対策担当理事を拝命していますが、平成30年度三鷹市医師会地域ケア会議で「災害時の医療救護所の役割など」をテーマに講演を依頼され、2018年11月12日昼、三鷹市医師会館で講演してきました。そのため、午後の外来を14時30分まで休診にしました。ご迷惑をお掛けしてすいません。そもそも「三鷹市医師会地域ケア会議」とは、三鷹市の委託事業として実施しているもので、在宅ケアの推進を目的に、関係機関の活動紹介、情報交流、研修、事例検討などを通して、医師会員を含む関係機関等の職員の相互連携ならびに在宅ケアにかかる知識等のスキルアップを目的に実施するものです。なお、講演の骨子は下図の如くです。

スライド1〜3(下図)

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2018/11/15 
「2018年11月12日平成30年度三鷹市医師会地域ケア会議で三鷹市の災害時の医療救護対策について発表しました。」(その2)

スライド4〜6(下図)

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2018/11/15 
「2018年11月12日平成30年度三鷹市医師会地域ケア会議で三鷹市の災害時の医療救護対策について発表しました。」(その3)

スライド7〜9(下図)

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2018/11/15 
「2018年11月12日平成30年度三鷹市医師会地域ケア会議で三鷹市の災害時の医療救護対策について発表しました。」(その4)

スライド10〜12(下図)

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2018/11/15 
「2018年11月12日平成30年度三鷹市医師会地域ケア会議で三鷹市の災害時の医療救護対策について発表しました。」(その5)

スライド13〜15(下図)

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2018/11/15 
「2018年11月12日平成30年度三鷹市医師会地域ケア会議で三鷹市の災害時の医療救護対策について発表しました。」(その6)

スライド16〜18(下図)

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2018/11/15 
「2018年11月11日かがわ国際会議場で開催された第12回日本禁煙学会学術総会に参加してきました。寝台車デビューです。」(その1)

 2018年11月10日(土)から11日(日)にかけて、久米川啓香川県医師会会長を大会長として、かがわ国際会議場とサンポートホール高松を会場に開催された第12回日本禁煙学会学術総会に11日日曜日1日だけ参加してきました。前日10日土曜日、多摩地区医師会懇話会(都下の全地区医師会が一堂に会して交流を深める会)が新宿京王プラザホテルで18時から開催されましたが、三鷹市医師会理事の小生も参加していました。特に今回は、交流の深いお隣の武蔵野市医師会が幹事であったため、参加がマストとなっていました。これまで懇話会では、三鷹市医師会理事同士が同じテーブルに着座していましたが、今回初めて、近隣の他地区医師会の中で同じような役職(小生の場合、防災救急対策)の理事が一つのテーブルを囲むようになっており、各地区での災害時医療について意見交換するこができて大変有意義でした。
 さて、他の先生方の中には二次会に参加された方もいらっしゃいましたが、私はその後、どのようにして翌日、会場の香川県高松市に辿り着いたかというと、22時東京駅発翌11日朝7時27分松駅着の寝台特急サンライズ瀬戸(左図)を利用しました(実際は、一つ前の列車が鹿を撥ね、15分遅れで到着)。懇話会が21時過ぎに終了、すぐに中央線に乗り、東京駅に向かい無事22時の電車に乗ることができました。中図は私が利用したB寝台一人用個室ですが、寝台車に乗車したのは生まれて初めてです。今回の学会会場は、高松駅徒歩3分の場所のため、非常に効率よく学会に参加することができました。右図は高松駅構内にあったうどん屋で、ここで到着後朝食を摂りました。うどん屋の後方に見えるタワーのような建物がかがわ国際会議場/サンポートホール高松です。

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2018/11/15 
「2018年11月11日かがわ国際会議場で開催された第12回日本禁煙学会学術総会に参加してきました。寝台車デビューです。」(その2)

 左図は会議場から瀬戸内海を眺める景色。中図は瀬戸大橋を渡る直前の児島駅、右図が瀬戸大橋からの景色です。
 閑話休題。今回の学会テーマは「草の根projectが無煙社会を創る 四国が動く 日本が動く」です。学会では、「東京都受動喫煙防止条例」「COPDの認知度向上の問題」「喫煙と石綿肺癌」「電子タバコ」などについて学びました。今後これらの知見を順次ホームページに反映させ、より一層禁煙活動を強めます。

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2018/11/03 
院長コラム「平成30年度高山小学校避難所体験会報告」(その1)

 防災救急対策担当理事の松慶太です。平素より三鷹市医師会活動にご協力頂きありがとうございます。
 ご存知のように三鷹市医師会では、震度6弱以上の地震が発生した場合、各診療所を閉鎖、災害時医療救護所で医療活動を行うことになっておりますが、毎年市民の防災力向上を目的に三鷹市では市内7住区に於いて三鷹市総合防災訓練を開催しています。本年も第六小学校(連雀住区)、第四小(駅前)、第六中(東部)、第五中(新川中原)、井口小(西部)、井の頭コミセン(井の頭)羽沢小(大沢)で開催され、多数の先生方に参加していただきました。改めて御礼申し上げます。
 さて、市内7住区には33か所の一次避難所(三鷹市ホームページで「避難所」で検索、ご確認下さい)が設置されております。よって、市内7住区には平均して5ヶ所足らず(33/7=4.7)の一次避難所が設置されていることになります。そのうち各住区毎に1ヶ所の避難所に災害時医療救護所(合計7か所)が設置されます。そのため三鷹市総合防災訓練の会場が災害時医療救護所設置予定の一次避難所となるのは各住区各々5年に1回程度しかありません。
 そのような背景下、東部地区の災害時医療救護所が設置される高山小一次避難所では、例年、「避難所運営連絡協議会」が中心となり総合防災訓練とは別に、独自の防災訓練を実施しており、今回で5回目となります(左図「平成30年度高山小避難所体験会」)。今年は折しも3日前に、北海道胆振地方を震源とする最大震度7の地震が発生、現時点で死者42人に達しています。例年以上に多くの住民が参加していました。昨年に続き、本年も災害時医療救護所運営者である医師会に協力要請があり、高山小災害時医療救護所に配属されている11人の先生方に参加をお願いしたところ、浅見泰宏、石川尉子、古川秋生、山本薫、山本美香子先生が参加してくれました(右図「高山小避難所体験会参加医師会員」)。11人の中にはご高齢の先生や準会員の先生方もいらっしゃいますので、実質、高山小災害時医療救護所に配属されている正会員の先生方、ほとんどが参加してくれました。改めて御礼申し上げます。

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2018/11/03 
院長コラム「平成30年度高山小学校避難所体験会報告」(その2)

 さて、訓練内容ですが、左図「平成30年度高山小避難所体験会計画書タイムスケジュール」に従い進行します。準備段階で、職員室の鍵の場所、災害時備蓄倉庫、医薬品保管庫の確認を行いました(中図「災害時備蓄倉庫医薬品保管庫」)。医師会担当の「医療救護所」のセッションでは、実際の災害時医療救護所の場所を使用し、まず、右図「大災害発生時には災害時医療救護所を設置します及びSTART式トリアージ」の資料を配布、「三鷹市の災害時医療体制」と「START式トリアージ」について先生方に説明して頂きました(7分)。

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2018/11/03 
院長コラム「平成30年度高山小学校避難所体験会報告」(その3)

その後、参加者に模擬患者用ゼッケンを首から掛けてもらい、模擬患者に見立てトリアージを行いました(5分)(左図「トリアージ訓練」)。症例は右図「傷病表示」の如き23例です。

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2018/11/03 
院長コラム「平成30年度高山小学校避難所体験会報告」(その4)

災害時医療救護所では一般に左図「 災害時医療救護所における患者の流れ」の如く傷病者を流していきますが、高山小学校では右図「高山小学校災害時非難救護所患者の流れ」の如く傷病者を受け入れることが事前に決まっています。トリアージ後、緑に分類された方は受付をして振り分け外来、診察室へと誘導します。赤、黄色に分類された方は、黄色、赤、黒の待機場所に誘導し、外科、歯科、内科、産科、薬局などのブースを案内しました(5分)。誘導が終わったらゼッケンを回収、この段取りを4班に分かれた住民に繰り返し実施しました。
 今回の訓練が非常に有意義だったのは、総合防災訓練と異なり、実際の災害時医療救護所設置場所を使用し、実際にそこに配属されている先生方だけで訓練が行われたことです。このような訓練は私が防災救急対策担当理事となって初めてです。かねがね申し上げていますが、三鷹市総合防災訓練は市民ための訓練で、我々災害時医療を提供する側にとっては必ずしも十分な訓練とはなっていません。しかし、今回の訓練は我々医師会員にとっても大変良い訓練機会となりました。今後もこのような訓練が7住区の災害時医療救護所で展開されるよう働きかけていきたいと思います。
 また、三鷹市役所の関連部署の部長以下多数のスタッフが参加しており、市民のみなら三鷹市に対しても三鷹市医師会の存在意義をアピールする良い機会となりました。
 なお、末筆ですが、前防災救急対策担当理事の高山俊政先生も飛び入りで参加されました。今後もこのように多くの先生方のご参加を希望します(以上は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」平成30年11月号より、改変転載したものです)

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2018/10/30 
「クリニックの入居するビルに帯看板と掲示板が設置されました。」

 当院の入居するビルには、当院の帯看板(左図のように横長のメインの看板)はなく袖看板(左図のビル左側から突き出た丸い看板)、立て看板(左図の右下にある白く四角い看板)、2階の窓ガラスに貼られたカッティングシートしかありませんでした。
 袖看板は、小さな円形で、ビル2階の位置にあり、歩道を歩く通行人の視野に入りません。意識的に見上げなければ視野に入らない位置にあります。さらに、字数の関係から端折って「高松クリニック」と表記されています。以上にように視認性が低いです。
 また、立て看板は目線の位置にあるのですが、駅側から歩道を歩いてくると、ビルの柱の陰になり、視野に入らず通り過ぎてしまう方もしばしばです。道路を挟んで反対側の歩道からは字が小さくて読めません。
 さらに、2階窓のカッティングシートは、2階のため直下の歩道を歩く方の視野には全く入りません。道路を隔てて反対側の歩道を歩く方の視野には入るのですが、左図のように窓ガラスにプライバシーフィルムが施されてあり、太陽光が反射するため大変見難く、とくに高齢者には書いてある文字が読み難いです。
 そのためか、開院して11年近く経つのに、「ここにクリニックがあったことに気づきませんでした」と未だに近所にお住いの方から言われることがあります。そのため、ビルオーナーと交渉、ようやく左図の如き帯看板を設置することができました。夜には、帯看板のバックライトが点灯、明るく光ります。そのため、夜は一層視認性が高く、当院の認知度が一層高まるのは間違いないと確信しました。
 さらに、今回、右図の如く1階自動扉のガラスに、クリニックのお知らせ、掲示板を示すカッティングシートを貼りました。これまで、ただガラスにペタペタとポスターを貼るだけでしたが、今後は認知度がかなり高くなり、皆様に様々な情報をより解りやすくお伝えすることができると思います。当院の前を歩かれるとき、一度足を止めてご覧になって下さい。
 それから、帯看板を見ていただけると分かりますが、ホームページ同様、当院のシンボルカラー、茶色が基本です。

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2018/10/26 
「2018年10月24日第3回井の頭乳腺疾患研究会で「三鷹市乳がん検診の実態について」と題して発表しました。」(その1)

平成30年度10月24日杏林大学医学部付属病院外来棟10階第1会議室で開催された第3回井の頭乳腺疾患研究会(左図)で「三鷹市乳がん検診の実態について」と題して発表してきました。内容はスライド1〜10(中図、スライド1、右図、スライド2)の通りです。今回スライドにデータをまとめることにより、様々な点に気づくことができました。これらの知見を来年度の三鷹市乳がん検診に活かしてい行きたいと思います。

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2018/10/26 
「2018年10月24日第3回井の頭乳腺疾患研究会で「三鷹市乳がん検診の実態について」と題して発表しました。」(その2)

左図、スライド3、中図、スライド4、右図、スライド5

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2018/10/26 
「2018年10月24日第3回井の頭乳腺疾患研究会で「三鷹市乳がん検診の実態について」と題して発表しました。」(その3)

左図、スライド6、中図、スライド7、右図、スライド8

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2018/10/26 
「2018年10月24日第3回井の頭乳腺疾患研究会で「三鷹市乳がん検診の実態について」と題して発表しました。」(その4)

左図、スライド9、中図、スライド10

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2018/10/15 
「2018年10月7日から8日まで開催された第39回日本肥満学会に参加してきました。」

 神戸大学大学院医学研究科内科学講座糖尿病・内分泌内科学部門教授小川渉大会長のもと神戸国際会議場及び神戸ポートピアホテルで2018年10月7日から8日まで開催された第39回日本肥満学会に参加してきました。7日日曜日早朝出発、一泊二日で参加してきました。今回のテーマは「肥満症学−新たなステージへ−」です。本学会では「神戸宣言2018」が発表されました。
 日本肥満学会は2000年に「新しい肥満の判定と肥満症の診断基準」を発表、以来、肥満に関連する健康障害を合併し、医学的に減量を必要とする肥満症(obesity disease)を、BMIで規定される肥満(obesity)と明確に区別して治療・管理の対象とすることを提案してきました。
 一方で、肥満がもたらす健康障害は多岐にわたることから、その予防・治療にはさまざまな専門家の協力が必要となります。そこで日本医学会連合の呼びかけの下、肥満症に関連する23学会によるワーキンググループが結成され、肥満症の撲滅を目指し、領域を超えて協働することが合意され、第39回日本肥満学会の初日に行われた合同特別プログラムにおいて、ワーキンググループ・グループ長の春日雅人先生(朝日生命成人病研究所所長)により、その決意が「神戸宣言2018」として発表されました。今回の学会の演題も、領域横断的な内容になっていました。
 肥満症には、「糖尿病・耐糖能異常」「腎臓病」「高血圧」「心筋梗塞、狭心症」「脳梗塞」「脂質異常症」「脂肪肝」など11の疾患が関連します。それ以外にもがんや脳血管性認知症、筋肉量減少など多くの病気との関連が指摘されています。フレイルやサルコペニアなど筋肉量減少に配慮が必要な高齢者の肥満症、薬物療法や外科治療が選択肢となる高度肥満症、家庭や学校と改善に取り組む小児肥満症、肥満症治療薬の開発など、肥満症の治療・予防方法には幅広い選択肢があります。ワーキンググループは来年4月をめどに、まとめを出す方針です。ワーキンググループに属する23学会は次の通りです。日本肥満学会、日本内科学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本呼吸器学会、日本肝臓学会、日本腎臓学会、日本外科学会、日本整形外科学会、日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本病態栄養学会、日本体力医学会、日本癌学会、日本疫学会、日本老年医学会、日本脳卒中学会、日本肥満症治療学会、日本臨床栄養学会、日本痛風・核酸代謝学会、日本総合病院精神医学会。
 ちなみにその全文と解説は下図の如くです。

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2018/10/04 
「忙中閑あり。ここはどこでしょう?」

2018年9月17日の院長コラム「2018年9月14日から16日まで旭川で開催された第41回日本高血圧学会総会に参加してきました。」で北海道旭川市訪問を報告しました。その折、お伝えし忘れたことです。最終日飛行機の出発時間まで時間があったので、タクシーを飛ばし、下図の場所に記念撮影に行ってきました。ここはどこだかわかりますか。ヒントは日本で一番歌の上手い歌手の聖地です。

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2018/09/17 
「2018年9月14日から16日まで旭川で開催された第41回日本高血圧学会総会に参加してきました。」

 旭川医科大学内科学講座循環・呼吸・神経病態内科学分野教授長谷川直幸大会長のもと旭川市民文化会館と星野リゾートOMO7旭川を会場に2018年9月14日から16日まで開催された第41回日本高血圧学会総会(下図)に参加してきました。2018/09/14院長コラム「2018年9月13日三鷹駅周辺住民協議会の健康セミナーで「尿のトラブル」について講演してきました。」でご報告したように9月13日午後、講演の演者となっていたので、旭川は遠方ですが前乗りできず、14日早起きし7時50分羽田発の飛行機で参加しました。今回、17日月曜日が敬老の日で祭日のため、16日日曜日の最終プログラムまで3日間みっちり聴講、日頃疑問に思うも答えを出せずにいた課題を演者にぶつけ、一つ一つ不明な点をクリアにすることができました。プログラムも充実、非常に勉強になりました。後ほどポイントを解説します。
 実は、13年前にも旭川医大第1内科教授菊池健次郎大会長のもと第28回大会が旭川の全く同じ会場(その当時、星野リゾートOMO7旭川は買収される前で旭川グランドホテルでした)で開催されています。13年前この大会において「健診における高血圧治療ガイドライン2004に準拠した高血圧診断支援コンピュータシステムについて」との演題名で発表したため、記憶に残る学会でした。よって、今回旭川は2度目の訪問です。
 さて、ご存知のように、10日前の9月6日最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生、41人の方が亡くなっています。今回の地震で大きな問題となったのが大規模停電です。復旧後も電力供給が不足しているため現在も2割の節電が要請(引き続き節電は要請されていますが、18日には数値目標は解除されるとのこと)されています。高血圧学会も開催か中止かの判断を迫られましたが、自粛するより節電に配慮しながら開催する方が復興にも寄与するとの判断で開催となりました。もちろん、旭川が震源地から遠く、震度4程度の揺れで停電以外ほとんど被害がなく、開催に支障をきたさなかったこともあります。しかし、何よりも、多くの観光客が旅行をキャンセル、大打撃を受ける地元経済復興の一助となるよう願っての開催だと思います。節電について事前に学会からメールがあり、懐中電灯持参をお願いされました。また、旅行会社から、食材が揃わないためホテルのビュッフェ形式の朝食を提供できず、1,500円を現地で返金するとの連絡もありました(宿泊したちょうどその日から朝食の提供が再開、朝食をとることができました。もっとも朝食がなくとも、早朝開催されるモーニングセミナーに参加、提供されるサンドイッチで朝食を済ませるつもりでしたので気にはなりませんでしたが)。波乱含みの学会でしたが先述の如く、プラグラムは大変充実したものでした。聴講した内容を、復習も兼ねて拾い上げてみます。
 まず、薬剤による二次性高血圧について、従来から知られている非ステロイド系消炎鎮痛剤、甘草・グリチルリチン、糖質コルチコイド、造血薬、免疫抑制剤、女性ホルモン関連薬に加え、新薬であるがん治療薬の分子標的薬、抗うつ薬や神経痛治療薬のSNRIなども血圧を上昇させるため、留意が必要とのことでした。昨今がん治療が進歩、抗がん剤を服用しながら「がんと共存する」方も珍しくなく、注意する必要があります。
 高血圧管理指標は、従来高血圧は診察を担当する医師が測定する血圧(通常診察室血圧)が唯一の指標でしたが、白衣効果が問題となり、現在では、待合室にある自動血圧、自宅で自己測定する家庭血圧(起床時と就寝前)、24時間自由行動下血圧(ABPM;ambulatory blood pressure monitoring)などが指標となっています。さらに、最近は患者さんを一人静かな環境下において自動診察室血圧計により複数回測定した血圧をAOBP(Automated Office Blood Pressure)と定義、特にカナダでは積極的に活用しています。ただ、その理由として家庭血圧計が日本ほど普及していない事情があるようで、日本におけるその有効性、意義などは、現時点では不明で国内ではほとんど普及していません。
 夜間高血圧について、当院でも実施するABPM検査により睡眠中の血圧をモニタリングすることができるようになりました。睡眠時の血圧は起床時に比して10から20% 程度低下するのが通常ですが、夜間降圧が消失(non-dipper)したり、さらには昇圧(riser)したりすると心血管イベントの危険因子となることが報告されています。夜間血圧を規定する主要な因子の一つが食塩感受性で、ナトリウム排泄を夜間まで持ち越すことがその背景です。その他大動脈硬化も夜間血圧を高める因子ですが、最も強く夜間血圧を規定するのは夜間頻尿とそれに起因する睡眠分断とのことでした。また、夜間高血圧、とくにriser パターンは認知機能障害と強く関連、多発ラクナなどの脳小血管病とも相関していました。
 血圧変動について、血圧は常に変動しますが、そのほとんどは生理的に必要な変動です。しかし、それが病的になった時、心血管イベントを誘発することが証明されています。血圧変動をとらえる方法としては、診察室血圧を用いた受診間変動、家庭血圧を用いた日間変動、ABPM を用いた短期血圧変動、血圧日内変動、モーニングサージ、食後低血圧などがあり、いずれも非生理的な場合は心血管イベントの危険因子となっています。変動は血圧値の標準偏差SD≧8mmHgの場合、「変動が大きい」と判断されるとの意見でした。SD≧8を計算するのは大変ですが、簡便な方法として家庭血圧の最大値と最初値の差が30mgHg以上(通常は15mgHg以下)あれば、SD≧8mgHgに相当、「変動が大きい」と判断できるとのことでした。
 水銀血圧計廃棄に伴う代替血圧計につて。血圧測定の標準は、これまで100年にわたり水銀血圧計を用いた聴診法でした。しかし「水銀に関する水俣条約」の発効に伴い、我が国では 2021年以降、水銀血圧計の製造・輸出入が禁止されます。そのため、高血圧学会でもステートメントを発表、「水銀血圧計は、通常の取扱いでは、ほとんど環境負荷なく高精度な血圧測定が可能であることから、現在使用している水銀血圧計について直ちに廃棄・交換を行う必要はない」こと、ならびに「水俣条約など社会環境の変化も鑑み、実地診療では今後、新規に水銀血圧圧計等の導入を行わないことを推奨する」ことを述べています。そのため、次期高血圧治療ガイドライン (JSH 2019) でも、水銀血圧計を用いない血圧測定方法が前提となる見込みです。現在、電子血圧計の進化と普及によって、水銀血圧計がなくとも実地臨床にはほとんど影響はなくなっています。特に手動の電子圧力柱血圧計は、水銀柱を模した液晶の圧力柱を見ながら測定者が聴診法で血圧値を判定するため、水銀血圧計と操作感覚がほぼ同一で、水銀血圧計の代替品として十分な信頼性を持つと考えられます。当院でも、水銀血圧計を全面的に廃棄、手動式電子圧力柱血圧計への買い替えを進めます。
 高血圧患者の10%近くを占める原発性アルドステロン症のup-to-dateを勉強してきました。奥アマゾンの先住民にヤノマミ族がいます。彼らは食塩(塩化ナトリウム)のない生活をしています。24時間尿中ナトリウム排泄量は食塩換算でたったの0.08gと極端に低値です(塩は汗からも失われるため実際には0.08g以上の塩分を摂取しています)。一方、現在の日本人の平均塩分摂取量は男性11.0g、女性9.2g(平成27年度国民健康・栄養調査)です。しかし、ヤノマミ族の血液中ナトリウ濃度は正常で、平均血圧は96/61mgHgしかありませんでした。しかも、加齢による血圧上昇もなく!心血管病も発症しません。重たい荷物を持ってジャングルを歩き回るほど体力があり、健壮です。そのように極端に少ない塩分摂取にも関わらず低ナトリウム血症を来さないのは、レニン―アルドステロン系が活性化、アルドステロンが大量に分泌され、尿中にナトリウムが捨てられないようにしているためです。ならば、逆にアルドステロンが過剰に分泌される病気、原発性アルドステロン症も、厳格な食塩制限を実施すれば正常域まで血圧を下げられる可能性があるのではないかと思いました。実際、当院に通う原発性アルドステロン症の患者さんを見ていると、汗から塩分が失われる(1,000ccの発汗で約2g程度の食塩が排泄されます)夏になると血圧が低下する印象があります。この点を質問してみたところ、演者、座長の先生とも厳格な食塩制限の重要性を強調されました。さらに、 最近、認識を新たにするアルドステロン症の病理診断(腫瘍性か非腫瘍性か)の動向も知ることができました。
 では、肝心な減塩療法について、滋賀医科大アジア疫学研究センターの上島弘嗣特任教授のお話は大変参考になりました。学会の食塩摂取量の目標は1日6g未満ですが、世界保健機関では1日5g未満を推奨しています。しかし、実態は先述の通りです。疫学調査では、減塩していると回答した人とそうでない人の食塩摂取量の差はわずか1日1g程度しかありませんでした。先生は、若い頃から高血圧があり、減塩を必要としていましたが、4年前までは1日6g 未満を達成できていなかったそうです。栄養と血圧に関する国際共同研究(INTERMAP)から、日常の食塩摂取量の約半量は料理に加える調味料とそれに含まれる食塩からであること分かり、現状の食塩摂取量を半減するには、少なくとも、家庭で料理するものには、原則、一切の食塩および食塩を含む調味料を使用しないこととし、食塩無添加食を2014年3月から実践しています。結果、2018年3月末で満4年が経過しましたが、リバウンドすることなく、家庭での食塩無添加食を続けています。奥様は、食べる前に塩胡椒を振ったり、醤油を掛けたりして同じ料理を食べています。食塩無添加食を始め3ヶ月を過ぎる頃から、日々楽しく美味しく料理ができ食べられるようになったそうです。禁煙に慣れるまで3か月必要なのと似ています。基本は素材のうま味を生かすことで、調味料でごまかすことではないとのこと。食塩の入っていない香辛料、酢、ショウガ、玉ねぎ等はよく使うようにしたところ、24時間蓄尿による食塩摂取量は3g 台に保たれ、結果として、収縮期血圧は130mmHg 未満になり、降圧薬は半減、体重の増加もないとのことです。「日本高血圧協会」のホームページに開始から現在までの記録が公表されています。百聞は一見に如かず、是非ご覧になって下さい。
 今回得られた知見を、当院ホームページの「高血圧内科」の欄に反映、日々の診療に活かしていきたいと思います。

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2018/09/14 
「2018年9月8日『平成30年度東京都医師会災害対策医療講習会〜東京オリンピック・パラリンピックに備えて〜』に参加してきました。」

 2018年9月8日土曜日神田駿河台にある東京都医師会館で開催された「平成30年度東京都医師会災害対策医療講習会〜東京オリンピック・パラリンピックに備えて〜」に参加してきました。プログラムは、

1、東京オリンピック・パラリンピックのリスクいついて
2、東京オリンピック・パラリンピックの医療体制
3、想定される,EKGテロと最低限の決まりごと
4、爆傷と銃創
5、熱中症
6、外国人が持ち込む感染症
7、下痢・嘔吐 発熱とサーベイランス
8、バックアップ機関と緊急連絡先

といった内容です。
 2012年のロンドンオリンピックには、204か国、10,568人の、同パラリンピックには164か国、4,237人の選手が参加、観客数はそれぞれ821万人と278万人だったそうです。東京オリンピックはそれ以上の規模になるといわれています。そしてオリンピックイベント関連だけで1,330件の救急出動件数があったそうです。東京オリンピックはロンドン以上の猛暑ですから、救急出動件数もさらに増加することが予想されています。
 一方、1972年のミュンヘンオリンピック、1966年アトランタ、2008年北京、2012年ロンドンではテロ事案が発生しており、東京オリンピックもテロの標的となる可能性があります。
 さらに、東京五輪では都内8か所がパブリックビューイング会場の候補となっていますが、その一つが井の頭公園で、東京オリンピックは都心の出来事、余所事ではなく、三鷹にとっても私事で、まさに今回の講習会のような備えが必要と思われます。
政府の音頭で、東京五輪開催までの2年間、このような講演会が今後次々と開催されることでしょう。三鷹市医師会防災救急対策担当理事でかつ三鷹市災害利用コーディネータを拝命する小職としては、今後も積極的に参加するつもりです。

2018/09/14 
「2018年9月13日三鷹駅周辺住民協議会の健康セミナーで「尿のトラブル」について講演してきました。」(その1)

 三鷹駅周辺住民協議会では定期的に健康セミナーを開催していますが、2018年9月13日午後1時30分から3時30分まで三鷹駅前コミセンで「尿のトラブル」について講演してきました。同セミナーでは2008年9月13日「メタボってな〜に?」と題して講演したので、ちょうど10年ぶりの講演です。上述のような開催時間のため、当日は午後の診療を2時から4時まで休診としました。皆様にご不便、ご迷惑をお掛けしましたことお詫び申し上げます。折角休診までして講演してきたのに、ホームページや外来待合室で告知し忘れてしまいました。残念。ただ、100人近くいたのではないでしょうか、会場には座りきれないほどの方が来場しており、入れなかったかもしれません。
 講演では、腎臓の機能、役割をご説明した後、主題である下部尿路(左図)の病気について解説しました。正常な尿の特性(中図)と対比しながら男性にありがちな尿のトラブル(右図)(つづく)、

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2018/09/14 
「2018年9月13日三鷹駅周辺住民協議会の健康セミナーで「尿のトラブル」について講演してきました。」(その2)

女性にありがちな尿のトラブル(左図)について説明、その代表的な原因疾患である前立腺肥大症(中図)、過活動膀胱(右図)について解説しました。

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2018/09/14 
「2018年9月13日三鷹駅周辺住民協議会の健康セミナーで「尿のトラブル」について講演してきました。」(その3)

また、2時間と講演時間が長かったため、下部尿路における他の重要な疾患(前立腺がん、膀胱がん、膀胱炎、夜間頻尿)(左図)(中図)(右図)についても解説しました。

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2018/09/09 
「平成30年度三鷹消防署救急活動訓練効果確認参加報告 −地上30メートル、はしご車に乗ってきました−」(その1)

 7月20日三鷹消防署防災教室にて平成30年度三鷹消防署救急活動訓練効果確認が開催されました。これは、救急隊員の技術向上を目的として救急活動訓練実施に際し、医療機関を代表して視察、気付いた点などを指摘するものです。
 別紙の「進行予定表」(左図)に従い別紙の如き「訓練想定」(中図)「会場図」(右図)のもと各隊の活動を視察しました。

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2018/09/09 
「平成30年度三鷹消防署救急活動訓練効果確認参加報告 −地上30メートル、はしご車に乗ってきました−」(その2)

 例年、救急隊員の冷静沈着、かつ迅速滑らかな動きに感心させられます。日々このような訓練によって救急!活動は成り立っていることを改めて認識させられます。
 今年は訓練視察の後、三鷹消防署に新たに導入された高さ30mまで届くはしご車(写真1〜4)(左図、中図、右図、その3の左図)の視察(続く)、

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2018/09/09 
「平成30年度三鷹消防署救急活動訓練効果確認参加報告 −地上30メートル、はしご車に乗ってきました−」(その3)

(続き)試乗もしてきました。最大長30mまで上がると、富士山は霞んで見えませんでしたが、三鷹の地から遥か遠くスカイツリーを眺めることができました。このはしご車は1台1億五千万円するそうです。防災救急対策担当理事の数少ない役得でした。(以上は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」平成30年9月号に掲載された記事を転載してものです)

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2018/09/02 
「2018年8月30日から31日まで開催された第59回日本人間ドック学会学術大会に参加してきました。内視鏡室設置の準備中です。」

 新潟大学大学院生活習慣病予防検査医学講座教授加藤公則大会長のもと朱鷺メッセ(新潟コンベンションセンター)で2018年8月30日から31日まで開催された第59回日本人間ドック学会学術大会に参加してきました。29日水曜日の診療後出発、二泊三日で参加してきました。今回のテーマは「人が『人らしく』生きるために〜健康長寿に寄与できる人間ドックを目指して〜」です。大会長の加藤教授は新潟大学の出身ですが、同大学の第一内科に入局、その後退局、一般社団法人新潟県労働衛生医学協会(健診機関)に就職しました。現在も同協会の職員ですが、同協会が新潟大学大学院に上記寄付講座を開設、その教授に就任しています。私が学生時代はこのような仕組みはありませんでしたが、昨今は、産学連携の考えで、このような寄附講座が増えています。
 さて、今回、学会に参加した目的はいくつかありますが、その一つはもちろん認定医の単位を取得することです。さらに、かねてより、上部消化管(食道、胃、十二指腸)検査として、内視鏡検査の必要性を痛感していましたが、現在の施設には内視鏡室を設置するスペースがありません。現在当院が入居する5階建のビルの1階には歯科医院が、2と4階に当院が、3階と5階には各々一般企業が入居しています。2階が診療スペースで、4階が事務室、スタッフ休憩室、ロッカー室、院長室等です。2007年11月1日当院が開院したときは、2階だけでした。しかし、5年近くを経た頃診療スペースが手狭になり、2012年8月頃4階を追加で賃貸、先述のように非診療部門を4階へ移動させ、2階の空いたスペースにマンモグラフィ(乳房レントゲン)検査室、婦人科診察室、女性専用更衣室等を新設しました(2012/11/23院長コラム「クリニック拡張工事が始まります。」をご参照下さい)。さらに、開院8年近くが経ちまた手狭になったため、2015年8月近隣のワンルームマンションを賃貸、会議室兼倉庫として利用しています(2015/08/03「パシフィコ横浜で開催された第56回日本人間ドック学会学術大会に7月30日参加してきました。いろいろ忙しくてお疲れモードです。」をご参照下さい)。
 今年11月で開院丸11年となりますが、上記のように内視鏡室新設は必須と判断しています。しかし、現在場所がありません。しかし、希望するような新しい場所、移転先が何時見つかるか分かりません。これはやはり縁、運だと思っています。ですから、その縁を逃がさないためにも、いつでも内視鏡検査を始められる準備をしておくべきだと考え、今回人間ドック学会で、各健診施設における内視鏡検査室の実態、運営法などを情報収集しました。実際内視鏡を始める場合、内視鏡専門医を招聘します。最新の環境、機器で内視鏡検査が行えるよう内視鏡室を設計する必要があります。私が内視鏡検査をしていた30年前にはなかったデジタル内視鏡、経鼻内視鏡、ハイビジョンスコープ、拡大内視鏡、狭帯域光観察内視鏡等続々と新しい技術が開発されています。これらの新技術の特性を十分理解した上で、内視鏡室を設置したいと考えております。1年以内に内視鏡室を新設する予定です。内視鏡室設置の折は、是非ご利用いただければ幸いです。

2018/07/29 
「東京ドームで巨人vs中日戦を観戦してきました。」

 昨年6月5日の院長コラム「くじ運は絶好調。今度は東京ドーム巨人戦、1塁側エキサイトシート3人分が当選しました。」で巨人戦チケットをくじでゲットしたことを報告しましたが、今年も同じくじに申し込んだところ、何とまたしても当選、忙中閑あり本日昨年同様のメンバー三女、四女とエキサイトシート(リンク先のG12の席が今回観戦した席です)で観戦してきました。
 実は別口の東京ドーム野球観戦を申し込んだところ、そちらも当選、8月末に巨人阪神戦を観戦予定です。ただ、今回のエキサイトシートほど迫力のある席ではありませんが。
 四女はスポーツ観戦が好きなため、野球のルールをかなり理解していますが、三女は全く理解していません。娘曰く、サッカーに比べてルールが複雑で難しいとのこと。確かに、子どもの頃野球をやらない世代からすると複雑かもしれません。私が子どもの頃は、スポーツと言えば野球で、野球のルールを知らない子どもなどいませんでしたが。
 しかし、上の子も東京ドームのスケール感には、今回も感動したようで、次回阪神戦も参加表明しています。
 試合に先立ち、上原浩治選手の100勝100セーブ100ホールドの記念セレモニーがありました(下図)。試合は残念ながら、9対2で巨人の惨敗。昨年も巨人の敗戦。次回阪神戦に期待します。

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2018/07/14 
「2018年7月11日から13日まで大阪国際会議場で開催された第50回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。」

2018年7月11日から13日まで日本動脈硬化学会理事長でりんくう総合医療センター病院長の山下静也大会長のもと大阪国際会議場で開催された第50回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。11日午後の新幹線で大阪に向かい、12日、13日と二日間しっかり聴講してきました。今回、プログラムが大変充実しており、拝聴したい講演が複数の会場で重なり、全部聞けず大変残念でした。
具体的には、トリグリセリド(TG、中性脂肪)、レムナントなどの残余リスクの問題、スタチン不耐に対する対応、当院でも使用を初めたPCSK9阻害薬の可能性、FMDなど動脈硬化評価法、NAFLD/NASHと動脈硬化症の関わり、動脈硬化の画像イメージング、Lp(a)の新知見、心血管疾患における再生医療・細胞治療、家族性高コレステロール血症研究の展望、原発性脂質異常症の診断治療のbrush upなど新しい知見をしっかり勉強することができました。これらの知見をホームページで公開するとともに、明日からの診療に活かしていきたいと思います。

2018/07/09 
「7月3日三鷹産業プラザで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク2018で司会を務めました。」

 平成30年7月3日三鷹産業プラザで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク2018(下図)で司会を務めました。平成27年7月にも同研究会で司会を務め、「サブクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の一例」という演題名で症例発表したことを院長コラムでご報告(2015/08/02院長コラム「7月29日吉祥寺第一ホテルで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク-2015-で『サブクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の一例』という演題名で症例発表してきました。」)しましたが、今回は司会だけで発表はしていません。この会は、武蔵野赤十字病院内分泌代謝科の杉山徹部長を中心に、症例ベースに内分泌や代謝性疾患について勉強する会です。本年が5度目の開催で、当初より会の世話人になっています。
 今回の症例は、「病診連携により強化インスリン療法を離脱できた高齢2型糖尿病の一例」と「著明な低カリウム血症により診断に至った正常血圧の原発性アルドステロン症の一例」です。演題名のごとく当院でも正常血圧にも関わらず原発性アルドステロン症であった症例を多数経験しています。たとえ血圧値が正常でも、アルドステロン過剰による傷害性ため臓器障害、動脈硬化が進展します。ですから、正しく原発性アルドステロン症と診断することは大切です。原発性アルドステロン症については、「高血圧内科」のページの「本態性高血圧か二次性高血圧かの鑑別診断」の欄をご参照下さい。

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2018/07/07 
「診療所の中心で愛をさけぶ」

 まずもって、青春恋愛小説の名作「世界の中心で愛をさけぶ」の著者、片山恭一氏、並びにファンの方々に大変失礼なタイトルとなったことを深謝します。
 さて、永く医者をしているといろいろな患者さん出会います。先日、診察室で真っ赤な口紅を塗った患者さんから頬にキスをされる、しかも両手で顔を押さえ付けられながらという初めての経験をしました。私生活でも妻を含め、顔を押さえ付けられながらキスをされたことはありません。押さえつけながらしたことはあっても。この患者さん、認知症ではないので少々困っています。
 その患者さんとの出会いは今から10年くらい前、開業して間もないころです。当時75歳のAさんは、数年前先生が他界され閉院となった自宅近くのB医院に通っていました。B医院は当院から徒歩15分ほどでさほど遠くない距離にあります。医者の言うことはほとんど聞かず、マシンガンのように一方的に自身の話ををするAさんに嫌気が差したB先生は、門前のC薬局に連絡、「うまいこと言ってどこか別の医院に通わせることはできないか。」と相談、依頼したそうです。C薬局は市内に2店舗あります。そこでもう一店舗の近くに開業して間もない当院に白羽の矢を立てました。患者さんのご自宅がB医院と当院の間に位置し、通うのに都合が良かったこともあります。また、開業したてで患者さんも少なく、ゆっくり話を聞いて貰えると読んでC薬局は「よく話を聞いてくれるいい先生が開業したから、そちらかに通ってみてはどうですか。」と勧め、当院に通い始めました。確かに当時のホームページには「ご自身のみならずご家族のことでも、何でもご相談下さい。」と書いていたように記憶しています。以上は、C薬局から直接聞いた話です。
 初診で来院した折、型通り持病の糖尿病、高血圧について問診した後、患者さんから「先生は何でも話を聞いてくれるのですか?」と尋ねられ、「ええ、どうぞ。」とお答えしたところ、「昔都心に住み相当な資産(数億とお話ししていました)があったが、夫が連絡保証人になり、全財産を失ったこと。そのため、三鷹に都落ちし(三鷹在住の方々に申し訳ありませんが、ご本人の言葉です)借家住まいになったこと、今では服を買うお金がなく、既存の服を手作りでリフォームし着ていること、娘はフランス在住で年1回しか帰国しないこと、夫のせいで全財産がなくなったが姑の面倒を最後までみて看取ったこと」など様々なお話を来院する都度伺いました。さらに、私の大学時代の同級生から贈られ、院内に掲示した北九州市門司港の写真を切っ掛けに、互いに北九州市出身であることが分かり、なお一層私に強い親近感を抱くようになりました。
 通院を始めて数年は病気と身の上話が半々といった診察でしたが、数年前夫が他界、独居となってからは、診察室での会話のほとんどが身の上話のようになっていきました。1か月分の処方をしても来院するのは2か月後といった有様で、血糖検査HbA1cが基準値の2倍、10近くなることも。その都度注意をしていましたが、「お金がなくて大変なの。食事にも困っているの。ここは遠いから歩いて通院するのが大変なの。」との返事でした(確かに徒歩10分ほどの距離があり、外出時はシルバーカーを押しながら歩くADLの方です)。ただ、一見すると来院時はいつも小奇麗な身なりで、レンズが紫色の色付き眼鏡をし、メイクもバッチリ、生活に困っているようにも見えません。
 愛を注ぐ相手がいなくなったためか、診察に入ると固く私の手を握って会話するようになりました。1、2年前からは「私は先生が何でも話をしていいよって言ったから、なんでも話したの。話を聞いてもらいたくて来ているの。体を大事にするのよ。先生が倒れたら話を聞いてくれる人がいなくなるから困るの。」といって肩や背中を擦ってくれるようになりました。スウェーデン式タクティールケアでスキンシップの大切さを理解していましたから、当初さほど気にはなりませんでした。しかし、1年くらい前から「いいこ、いいこ。」といった感じで髪の薄い頭を撫でられるようになり、さすがに気恥ずかしく感じるようになりました。経緯を当院看護師も十分承知しており、Aさんが来院すると、看護師は皆ニコニコ?ニタニタ?クスクス?と笑うようになっていきました。その間認知症を考え、HDS-Rを実施しましたが満点で、やはり認知症というより、個性的な性格だけのようでした。
 そして2週間前です。今回3か月ぶりの来院で血糖値が悪化しており、きちんと薬を飲み、薬がなくなる前に来院するようお話し、久しぶりの採血検尿をお願いしました。ちなみにAさんのマシンガントークに対抗し、当方の伝えたいことを話す術は、とにかく相手お構いなしに自分の伝えたいことをしゃべり続けることです。「静かにして下さい。」「話すのを止めて下さい。」等と言ってはいけません。相手を慮ってひとしきりお話を聞いた後の区切りの良いところで自分の話を始めるのがマナーですが、遠慮は無用、相手の会話に重ねて話を始めます。先方も負けずに話し続けますが、根気比べ、当方が話を止めなければいずれ先方が諦め、私だけの話になります。
 いつものように頭をなでなでして、シルバーカーを押しながら採血コーナーに歩く後ろ姿に、「ところで、いつもの湿布は必要ですか?」とお声を掛けたところ、その優しさが彼女の心の琴線に触れたようで、両手で押していたシルバーカーを投げ捨て、小走りで私のもとに駆け寄り、私の顔をしっかり両の手で固定、左の頬に接吻をし「有難うね。有難うね。頑張るのよ。」と言いました。一部始終を見ていた看護師、臨床検査技師もさすがに目が点になっていました。頬へのキスも驚きですが、私としてはシルバーカーを投げ捨て小走りで駆け寄る様に「えっ。走れるの?」とそちらの方が驚きでした。自分の幻覚でないはないかと、その場にいた二人に「今、見た?確かに走っていたよね?」と尋ねると二人「え、見ました。確かに走っていました!」と目を丸くして笑っています。「次は、口かなあ?それはさすがに困るよ。どうしよう?」とスタッフに話しかけると「Aさん、とにかく先生のことが好きで好きで仕方がないんです。」と女心を解説、「次回来院時はマスクをしておくといいですよ。」とアドバイスをくれました。
 現在、当院のホームページから「ご自身のみならずご家族のことでも、何でもご相談下さい。」との文面は削除しています。しかし、「患者さんが安心して治療に専念していただけるように、まずは信頼関係が重要と考えております。」と変わらず記載しています。信頼関係の究極の姿は、患者さんに愛されることなのでしょうか。
(本文は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」平成30年7月号に掲載したものを改変して転載しました)

2018/06/26 
「ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)」

 6月16日から17日まで第9回日本プライマリケア学会に参加、性感染症に関する知識を集中的にbrush upして来たことを報告しましたが、早速、初めて経験する性感染症の症例を診断しました。最も、今回性交渉で感染したか否かは定かではありませんが。
 患者さんは長期休暇を取得、4か月間インドの安宿に滞在していた方です。渡航前から当院で高血圧の治療を受けていました。帰国後、2か月以上経て降圧剤の処方を受けるため久しぶりに来院されました。旅行中の様子を伺うと、予想通り不衛生な環境のため下痢が続いた上、毎日毎食カレーでさすがに食傷気味になり、滞在中に10kg体重が減ったそうです。しかし、帰国後は元気になり5kg回復したとのことでした。久しぶりの来院のため定期の血液検査実施しました。結果、白血球の中の好酸球が22%(以前の値は2%)と著しく増加していることを指摘しました。
 白血球にはいろいろな種類がありますが、そのうち好酸球という白血球が増加する病態として、

1、アレルギー性疾患:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、じん麻疹、薬剤アレルギー、アレルギー性鼻炎(花粉症)
2、膠原病・血管炎症候群:アレルギー性肉芽腫性血管炎、皮膚筋炎、
3、好酸球増加症候群、好酸球性肉芽腫、PIE症候群。Löffler症候群、
4、皮膚疾患:天疱瘡、痒疹、多形滲出性紅斑、
5、血液疾患:慢性好酸球性白血病、慢性骨髄性白血病、Hodgkinリンパ腫、
6、寄生虫疾患、
7、射線照射後、
8、悪性腫瘍の転移、

 等が挙げられます。このうち最も頻度が多いのはアレルギー性疾患です。日常診療の中で、好酸球増多症を見た場合、そのほとんどがアレルギー疾患、とりわけ喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎と言っても過言ではありません。
 しかし、今回、アレルギー性疾患の持病がなかったこと、前値が2%だったこと、インドで下痢をしていたことなどから、寄生虫疾患を真っ先に疑いました。そして、再度よくよくお話を聞くと、帰国後も下痢が続いているとのことでした(早く言って欲しかった!)。ご本人曰く、「今回、何だか下痢の直りが悪くて。いつもだったら放っておいても治るのですが。」とのことでした。寄生虫感染が疑われることを説明、早速便の提出を指示、虫卵検査を行うことにしました。
 便検査の結果、左図の如くランブル鞭毛虫のオーシスト(接合子嚢)を発見、ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)と診断しました。本疾患は、感染症法の5類感染症(全医療機関が診断後7日以内に最寄り保健所に届け出の義務がある)となっているため、早々に東京都多摩府中保健所へ届け出を行いました。臨床症状、感染経路、治療方針などに関しては、東京都感染症マニュアルの「ジアルジア症」を転記します(右図)。
 ご存知の方も多いことと思いますが、成田空港等を経て帰国するとき、空港の検疫所で発熱や下痢などの症状がある場合、申告するように求めれらます。インドからの帰国で下痢症状があると、検便検査を無料で実施してくれるようです。この方はおそらく無申告のまま検疫所を通過したのだと思います。下図のマニュアルの如く下痢便の取り扱いが不適切(トイレの後の手洗い等)な場合、帰国後家族への二次感染の可能性もあります。インドなど衛生環境に問題のある国(厚生労働省検疫所ホームページ国別情報:インド)へ旅行中、発熱、下痢などの症状があった場合、面倒臭がらず検疫所で申告しなければならないことを明記します。

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2018/06/17 
「6月16日と17日、三重県総合文化センターで開催された第9回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加してきました。」

 平成30年6月16日と17日、三重大学大学院医学系研究科家庭医療学・医学部附属病院総合診療科教授竹村洋典大会長のもと、三重県総合文化センターで開催された第9回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加してきました。16日土曜の診療後、書類などの残業を片付けた後、午後3時前にクリニックを出発、三重県津市まで行きました。津市に到着したのは19時近くで、初日は懇親会に参加したのみでした。翌日朝から、教育講演「エビデンスに基づいたワクチン接種のために〜Annual evidence up-to-date 2018」、シンポジウム「総合診療医が知っておきたい性感染症診療のリアル」、「医と薬の連携・協働 今さら聞けない頭の中―診断・処方―」等を拝聴し、15時には三重を出発、帰京しました。
 教育講演でも性感染症の一つとして、子宮頸癌の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(詳しくは「予防接種」のページの「子宮頸がんHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて」をご参照下さい)が話題になっていましたが、性感染症に関するシンポジウムでも、昨今急増する梅毒(下図)、HIV感染症の問題が俎上に上がっていました。私自身、2016/10/30の院長コラム「梅毒」で約15年ぶりに梅毒患者を診療したことをご報告しました。その後さらにもう一人梅毒患者を診断しています。最も印象に残った話は、演者の一人、医療法人太融寺町谷口医院谷口恭院長の「総合診療医が”偶然”発見する性感染症」と題する講演です。性交渉の後、尿道痛や帯下(おりもの)異常といった性器の症状があれば患者自身が性感染症を疑い来院してきますから、正しい診断に辿り着くのは難しくありません。しかし、それら性感染症特有の症状がなく、例えば、発熱、リンパ節腫脹、皮疹、咽頭痛、皮膚掻痒感等といった非特異的な症状のみの場合、性感染症を疑わず、診断が付き難い場合が少なくないとのお話しでした。先生は、「ニキビが治り難いと病院を何件も回った症例=HIV(ヒト免疫不全ウイルス、いわゆるAIDSウイルス)感染症」、「皮疹で皮膚科を通院中に倦怠感が生じた症例=急性HBV(B型肝炎ウイルス)感染症」(詳しくは「予防接種」のページの「B型肝炎の疾患概念のパラダイムシフト〜是非、B型肝炎ワクチンを接種して下さい!」をご参照下さい)、「長引く咽頭不快感=淋菌性咽頭炎」、「副腎ステロイド軟膏を使っても治らない皮疹=梅毒」、「長引く外陰部の掻痒(尖圭コンジローマ)」等の症例を提示、「“いきなり”性感染症」と命名していました。総合診療医が身に着けるべき診断ノウハウであり、大変勉強になりました。明日からの診療に活かしたいと思います。
 野村病院の野村幸史院長も本学会にご参加されており、帰りの津駅でばったりお会いしました。

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2018/06/03 
「今年もくじ運は絶好調。東京ドーム巨人戦、1塁側エキサイトシート3人分が当選しました。」

 2017/06/05院長コラム「くじ運は絶好調。今度は東京ドーム巨人戦、1塁側エキサイトシート3人分が当選しました。」でご報告したように幸運にも野球観戦チケットをゲットしました。その折、お話ししたように当選確率はかなり高いと踏み、今年も二匹目のドジョウを狙い申し込んでみたところ、なんと、再び当選しました!このシートは応援グッズ付きで、また、ジャイアンツのTシャツ、タオルなどがクローゼットに溜まりそうです。大学受験の次女は参加できませんが、昨年参加し、臨場感(下図、東京ドーム1塁側エキサイトシートからの眺めです。東京ドームホームページより転載)に感動、大喜びしていた三女、四女と一緒に観戦予定です。

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2018/05/25 
「麻疹(はしか)流行を考える」(その1)

 この10年麻疹(はしか)の流行がマスコミで報道されることが多くなっています。
 まず、左図は1999〜2007年の定点あたり麻しん患者報告数(麻しん、成人麻しん:18歳以上、2006年から15歳以上)です(国立感染症研究所感染症疫学センター作成厚生労働省麻しん風しん対策推進会議資料を転載)。図のよに2007〜2008年にかけて10〜20歳代の若年者を中心に麻疹が全国的に流行しました。そのため、当時、都内では日本大学、上智大学、東京工科大学、駒沢大学、和光大学などが休講になっています。この流行を機に厚労省は2008年1月から全数報告を医療機関の義務付け、正確な患者数が把握されるようになりました。
 そして2018年、今回は台湾から沖縄県に”輸入”された麻疹の流行です(中図、朝日新聞記事)。右図(国立感染症研究所発表資料)では赤線で示された2018年の麻疹累積報告数が13週目(4月第1週)から急激に増加しているのが分かります。
 昨今、何故麻疹の流行が話題となるのでしょうか。今回の流行をよい機会と捉え考察してみます。

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2018/05/25 
「麻疹(はしか)流行を考える」(その2)

日本の麻疹に関する予防接種制度の変遷を述べると、

1948年 予防接種法制定
1966年 麻疹不活化ワクチンと生ワクチンの併用療法が開始される。
1969年 併用療法が廃止になり、麻疹弱毒生ワクチン単独接種に変更になる。
1978年 麻疹ワクチン1回接種が定期化される。
1989年 麻疹生ワクチン、風疹(三日麻疹)生ワクチン、ムンプス(おたふくかぜ)生ワクチンを混合した麻疹風疹おたふくかぜ混合ワクチン(measles−mumps−rubella;MMRワクチン)が導入される。
1993年 MMRワクチン接種後のおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎症例が蓄積、MMRワクチン接種が中止となる。
2006年 ムンプスワクチンを除いた麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)が導入、従来の第1期(満1歳〜2歳未満)に加え、第2期(就学前の1年間)が開始、2回接種が定期接種化される。
2007年 10〜20歳代の若年者を中心に麻疹が流行、翌2008年まで持続し終息する。
2008年 5年間の時限付きで、第3期(中学1年生)、第4期(高校3年生)を対象として麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種が導入される。
2008年 麻疹患者発生動向調査はそれまでの小児科定点及び基幹病院定点から全医療機関に全数報告を義務付ける。

 以上のようになります。
 そもそも1978年に麻疹ワクチン接種が定期化されるまで、麻疹を予防する対策は一切なされていませんでしたから、麻疹の流行は為すがままの状態で、日本人ほぼ全員が成人するまでに必ず感染していたと推察されます。上述の如く2008年まで全数報告がなされていませんでしたから、正確な数字は不明です。しかし、左図(国立感染症研究所感染症疫学センター作成厚生労働省麻しん風しん対策推進会議資料を転載)の「麻しんによる年別死亡報告数」を見ると分かるように、2007〜2008年の流行時でさえ1〜2名しかいなかった麻疹による死亡者が1999年当時30名近くいたことから推測すると、麻疹患者数がいかに多かった容易に理解できます。そのため、「はしかのようなもの」といった慣用句まで生まれたわけです。今では死語かもしれませんが、「はしかのようなもの」とは「誰もが一度は通る道」「誰もが若い時期に経験すること、失敗」といった意味に使われる慣用句です。換言すると、麻疹はこれほどまでに感染力の強いウイルスといえます。
 しかし、1978年幼児に対する麻疹ワクチン1回接種が開始されると当然麻疹患者数は年々減少していきました。ただ、麻疹が完全に日本から撲滅されることはありませんでした。というのは、麻疹ワクチン1回接種では約95%以上の方が免疫を獲得できましたが、数%ながら十分免疫が付かない方がいたからです(primary vaccine failure;PVF)。2回接種するとそれら不十分な方もたいてい麻疹に対する免疫を獲得できます。ちなみに欧米では、2回接種が基本です。さらに、1989年導入されたMMRワクチンで髄膜炎の副反応が出現、1993年MMRワクチン接種が中止になる事態に及び、予防接種に対する不信感から、予防接種そのものを多数の親御さんが控えてしまいました。
そのため、2006年厚労省は、就学前の1年間に2回目の麻疹ワクチン接種を定期化しましたが、時すでに遅し、2007〜2008年頃、上述のように10代から20代の若者に麻疹が大流行してしまいました。この年代に流行した理由は当時、1、まったく麻疹ワクチンを接種していない者(おおよそ15〜19歳の一部)、2、1回接種はしたが免疫が獲得できなかった者(PVF)(1〜30歳のワクチン接種者の約5%)が蓄積したことに加え、3、1回接種し免疫を獲得できたが、時間の経過とともにその免疫が失われていった者(secondary vaccine failure;SVF)が多数いたためと考えられています。
 SVFとは一度獲得した免疫が時間の経過とともに記憶(免疫細胞の記憶)が薄れ、抵抗力がなくなることです。これは、当院ホームページの「予防接種」のページ、「帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について」の欄、「はしかのようなもの」の段落でお話ししたことですのでそちらもご参照下さい。ワクチン導入以前は、日本中に麻疹ウイルスが蔓延していたためほとんどの日本人は、とっとと感染しましたから、当然患者の大多数が乳幼児〜小児でした。しかし、幼児のワクチン接種導入より小児の麻疹患者数は激減しました。しかし、幼児期に接種したワクチンの効果は一生涯持続するわけではありません。一旦獲得した免疫、抵抗力も年々低下していきます。しかし、そういった時期、麻疹に感染すると、あたかも2度目のワクチン接種を受けたかの如く、免疫力が再上昇(ブースター効果といいます)します。しかし、皮肉にもワクチン導入以後麻疹患者数が激減、年々感染する機会が失われ、ブースター効果を得る機会が失われて行きました。おそらく30歳代以後はまだ麻疹に感染する機会があり、ブースター効果を得ることができのでしょう。しかし、2007年当時10〜20歳代の若者はその機会も少なく、麻疹流行を招いたようです。
 2008年から5年間時限の第3期(中学1年生)、第4期(高校3年生)麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)接種導入により、結局、1990年4月2日生まれ以後の世代、すなわち現在28歳以下の世代は、受け漏れていない限り、世界標準通り2回の麻疹ワクチン接種を実施していることになり、麻疹に対して十分な抵抗力を持っていると予想されます。しかし、実際には第3期の接種率は85.1%、第4期に至っては77.3%に留まってしまいました。ですから、現在の麻疹流行に関して、感染の危険性が高いのは29歳以上(第3期または4期の接種を打ちそびれた場合19歳以上)の方と言えます。一方、1978年の幼児期の麻疹弱毒生ワクチン定期接種化以前に生まれた方、換言すると45歳以後(1972年10月1日生まれ以後)の方は、高い確率でほぼ全員が麻疹に感染、さらにブースター効果を得ている者も多いと予想されます。結局、現在、29歳(1990年4月2日生まれ以後)、2回目のワクチン未接種の場合19歳(2000年4月2日生まれ以後)〜44歳の方が現在麻疹に罹りやすい状況となっています。
 中図は今回沖縄に端を発した麻疹流行における「年齢群別接種歴別麻しん累積報告数」(国立感染症研究所発表)です。実際、ご覧になってお分かりになるように20歳前半から40歳代半ばまでに多数発生、50歳以上では全部合わせても5名しかいません。
 そもそもですが、日本は諸外国と異なり麻疹ワクチン接種回数が2006年まで1回であったため、1969年麻疹弱毒生ワクチン単独接種導入後も麻疹患者発生数が多く、麻疹「輸出」国と見なされる不名誉な状況にありました。そこで、政府は2007年、2012年までに麻しんを国内から排除(天然痘のように撲滅ではありません。排除とは、国外で感染した者が国内で発症する場合を除き、麻疹診断例が一年間に人口100万人当たり一例未満であり、かつ、ウイルスの伝播が継続しない状態にあることをいいます)することを目標に掲げました。その結果、2015年3月27日、WHO西太平洋事務局により日本は「麻疹排除状態にある」と認定されました。そのため、換言すると現在、日本で麻疹が流行する場合、今回のように流行国から「輸入」される場合がほとんどです。右図は世界各国の麻疹症例発生数です。今回の沖縄での流行も中華民国の方がタイに旅行したとき麻疹に感染、10日間の潜伏期の間に沖縄に来日、そこで麻疹を発症、感染が広がりました。

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2018/05/25 
「麻疹(はしか)流行を考える」(その3)

 現在麻疹ワクチンが不足しています。限られた量のワクチンを最大限有効利用するため、国立感染症研究所感染症疫学センターは、左図(ページ1)、中図(ページ2)の如き指針を提示しています。これはあくまでもワクチン不足の状況下での対応です。
 ワクチン供給量が十分な場合、右図の如き日本環境感染学会から発表されている「麻疹・風疹・流行性耳下腺炎・水痘ワクチン接種のフローチャート(医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版)」が参考になります。

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2018/05/09 
「平成30年度(2018−2019シーズン)インフルエンザワクチン株が決定しました。」

 平成30年度(2018−2019シーズン)インフルエンザワクチン株が決定しました。平成27年度以降、それまでの3価から4価に変更になりましたが、今年も例年通り下記のようなA型2種、B型2種を混ぜわせた4価のワクチンです。

<A 型株>
A/シンガポール/GP1908/2015(IVR−180)(H1N1)pdm09
A/シンガポール/INFIMH−16−0019/2016(IVR−186)(H3N2)
<B 型株>
B/プーケット/3073/2013(山形系統)
B/メリーランド/15/2016(NYMC BX−69A)(ビクトリア系統)

 ご存知の方も多いかと思いますが、A型患者数の方がB型より多いのが例年ですが、昨シーズンはB型が大流行、B型とA型の患者数ほぼ同じ程度でした。そういったこともあり、例年通りA型2種、B型2種を混ぜることになっています。昨年はインフルエンザワクチンが不足し混乱しましたが、今シーズンに関しては少なくとも現時点でそのような情報はありません。
 インフルエンザワクチンの接種開始は例年通り10月1日を予定しています。時期が近づきましたら改めて広報します。

2018/04/30 
「麻疹(はしか)が沖縄県で流行していますが、ワクチンが不足しています。」

 メディア報道でご存知の方も多いと思いますが、台湾から持ち込まれた麻疹(はしか)が沖縄県で流行しています。さらに沖縄を旅行した愛知県の方が帰宅後麻疹を発症しました。当院へも麻疹ワクチンの問い合わせが来ていますが、現在麻疹ワクチンは全国的に不足しており、入荷の見通しが立っていません。そのため、当院では麻疹ワクチンの代わりに麻疹ワクチンと風疹ワクチンを混合した麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の接種を希望者にはお勧めしています。MRワクチンに関しては少なくとも現時点では問題なく入荷します。麻しん単体ワクチンの代わりMRワクチンを接種した場合、風疹(三日はしか)にまで免疫が得られることと、費用が高くなる(5,400→8,640円)こと以外違いはなく、単体ワクチン同様麻疹に対する免疫が得られます。麻しんワクチンに関しては引き続き入荷できるよう計らいます。

2018/04/28 
「今度は振り込め詐欺で情緒不安定、不眠症に。許せません!」

 2012/12/10院長コラム「振り込め詐欺が引き金となった発作性心房細動。許せません!」で、通院患者さんのところに振り込め詐欺の電話がかかり、それが引き金となり発作性心房細動を発症した患者さんのことをご報告しました。不幸中の幸い、この方は電話を怪しみ実際には振り込まず、金銭的被害はありませんでした。
 しかし、今回、高血圧、高脂血症で通院中の方が振り込め詐欺に遭い、実際に数百万を振り込み、詐取されてしまいました。その落ち込み様は相当なもので、憔悴しきっていす。
 先日来院された折、いつも闊達な方から暗い顔で「最近眠れないので入眠剤を処方してもらえませんか。」と依頼されました。私が「珍しいですね。どうかされましたか?」と尋ねすると、「実は先日振り込め詐欺の電話が掛かり、数百万を振り込んでしまい落ち込んでいます。布団に入っても怖くて寝られないんです。預金は二つの銀行に預けていたのですが、幸い一方の〇〇銀行の行員が気付き、金額が大き過ぎると振り込まさせてもらえませんでした。その御蔭で被害は半分で済んだのですが、それでも数百万円を振り込んでしまいました。思い出すと怖くて寝られなくなってしまうんです。」とのことでした。振り込め詐欺犯、許せません。
 通院患者さんで振り込め詐欺の金銭的被害に遭われた方は、開院間もないころ被害に遭った方以来二人目です!こんな身近に二人も被害者が出るとは。昨今、如何に振り込め詐欺が横行しているかを示唆しています。調べてみると下図(警視庁ホームページより転載)の如くオレオレ詐欺を筆頭に振り込め詐欺は増加の一途を辿っています。
 ちなみに今回初めて知ったのですが、警視庁ホームページによれば「「特殊詐欺」とは、面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺をいい、振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺)及び振り込め詐欺以外の特殊詐欺(金融商品等取引名目の特殊詐欺、ギャンブル必勝情報提供名目の特殊詐欺、異性との交際あっせん名目の特殊詐欺及びその他の特殊詐欺)を総称したものを言います。」だそうです。これら特殊詐欺の被害に遭わないための対策は警視庁ホームページのここに詳しく記載されています。是非ご一読下さい。
上述の院長コラムでも書かせて頂きましたが、私は刑罰に関し死刑も含め厳罰主義者です。陪審員となった方々は、高齢者を狙い打ちする卑劣な振り込め詐欺犯に対し是非とも厳罰を下して頂ければ幸いです。

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2018/04/22 
「向精神薬に分類されていない類似薬の取り扱いについて」

 向精神薬は多剤併用制限(2014/10/13院長コラム「向精神薬多剤併用制限について」をご参照下さい)に加え、投与日数が制限(薬剤により14日、30日、または90日)されています。90日はてんかん治療目的のため、向精神薬は実質的に30日が最大投与日数となります。30日というのは法的に許可された最大投与日数であって30日分投与しなければならないわけではありません。あくまでも診察の結果、医師が一人一人の患者さんの病状を把握し投与日数を決めます。当院での考え方は、当院ホームページの「診療案内」のページ、「向精神薬」の欄をご覧下さい。薬剤投与日数を決める権限、処方権は患者さんにはなく(希望を述べる権利はあります)、医師にしか認められていません。
 一方、向精神薬と同様、睡眠薬や精神安定剤にもかかわらず、向精神薬に分類されていない薬剤があり、ここでは向精神薬類似薬と表現します。これらは、向精神薬に分類されていないため、麻薬及び向精神薬取締法の規制を受けず、投与日数制限もありません。具体的には、下記のようなものがあります。

エスゾピクロン(商品名:ルネスタ、以下同様)、、スボレキサント(ベルソムラ)、トリクロホスナトリウム(トリクロリール)、抱水クロラール(エスクレ)、フルタゾラム(コレミナール)、フルトプラゼパム(レスタス)、ブロモバレリル尿素(ブロモバレリル尿素)、メキサゾラム(メレックス)、ラメルテオン(ロゼレム)、リルマザホン塩酸塩水和物(リスミー)等。

 これらは向精神薬に分類されずとも、睡眠薬や精神安定剤であることには変わりなく、上述のような多剤併用制限を受けます。投与日数に関しも当院では向精神薬同様に扱い、30日以上処方することはなく、当院ホームページの「診療案内」のページ、「向精神薬」の欄の如く投与日数を調整します。繰り返しになりますが、薬剤投与日数を決める権限、処方権は患者さんにはなく(希望を述べる権利はあります)、医師にしか認められていません。ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。

2018/04/22 
「大腸内視鏡検査について」

 2017年度から三鷹市が実施する大腸がん検診は、単独実施のみならず、特定健康診査後期高齢者健康診査若年健康診査と一緒に500円の自己負担でヒトヘモグロビン2日法による便潜血反応検査を受けることができるように変更されました。これら健康診査には、従来無料ではありますが1日法による便潜血反応検査が付随していました。変更により、500円の自己負担は発生したものの2日法に拡大され、検査感度が上昇、便潜血反応陽性(便に血が混じっていること)を指摘する機会が多くなりました。陽性の場合、大腸の精密検査が必要になります。ちなみに、このヒトヘモグロビン法は、食道、胃、十二指腸からの出血には反応せず、あくまでも大腸からの出血に反応するように作られています。そのため、陽性者は胃内視鏡検査ではなく大腸内視鏡検査を受けていただくことになります。当院では大腸内視鏡検査を実施していません。そのため、陽性者には大腸内視鏡検査を実施する近隣の施設をご紹介しています(左図)。いずれも過去に紹介実績のある医療機関です。
 また、当院へは久我山発三鷹駅南口行きの京王バス(右図)を利用すると乗り換えなしで来院(北浦バス停下車徒歩6分)できるため、牟礼や三鷹台にお住いの方も多数通院されています。そのため、そちら方面にお住いの方には、牟礼の山本医院や三鷹台の松川内科クリニックもご紹介しています。

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2018/04/22 
「ヘパリン類似物質外用剤(ヒルドイド等)について」

当院は皮膚科ではありませんが、比較的簡単な皮膚疾患に対しては患者さんの利便性を考慮し、抗真菌外用薬(足白癬=水虫。爪白癬の治療はしていません)、抗ウイルス薬(帯状疱疹、単純疱疹=口唇ヘルペスなど)、抗菌薬(ざ瘡=にきび、膿皮症)、副腎皮質ホルモン剤(湿疹、掌蹠膿疱症、脂漏性皮膚炎=フケ症、虫刺され、薬疹、主婦湿疹等)、保湿剤(皮脂欠乏症、ドライスキン、老人性乾皮症等)をご処方しています。また、その他日焼け、蕁麻疹、凍瘡(=霜焼け)、汗疹(=あせも)、肩関節周囲炎(=肩こり)、筋肉痛、打撲痛、腰痛、関節痛、褥瘡(=床ずれ)、鶏眼(=魚の目)、掌蹠角化症(=厚い踵の角質)等の病気に対する処方もしています。
 このうち保湿剤であるヘパリン類似物質(商品名:ヒルドイド)、ヘパリンナトリウム(商品名:ヘパリンZ)が、数年前より一部雑誌やネット上で、しわ取りの「アンチエージングクリーム」として紹介され、美容目的の使用を推奨するような記事が掲載されるようになりました。そのうわさが口コミで広がり、皮膚科で化粧品クリーム代わりに処方を受ける方が急増、2017年発表された健保連の推計では、その使用量が年間93億円に達しています。健康保険はあくまでも、病気の治療に対し適応されるものですから、美容目的の使用は違法となります。2018年4月の診療報酬改定では、湿布同様処方制限の導入が検討されましたが、結局見送られ、保険診療でのヘパリン類似物質処方条件としては「疾病の治療であることが明らかであり、かつ、医師が当該保湿剤の使用が有効であると判断した場合」のみと明文化されるに留まりました。当院は内科のため保湿剤を処方目的に来院される方はいませんが、主病の内科疾患で通院、副病として保湿剤を処方している方はいます。保湿剤が今後保険適応外となり、真に病気のため保湿剤を必要としている方に被害が及ばないよう、美容目的の処方は厳に慎まなければなりません。ヘパリン類似物質やヘパリンナトリウムを主成分とする薬はすでに市販化されており、診察料や薬局での調剤料を考慮すると医療機関で処方を受けるのと費用はほとんど変わりません。美容目的の方は、ドラッグストアにてご自身で購入して下さい。

2018/04/01 
「悪い空気〜マラリア」

 先日、通院中の某患者さんから「ラバウルに行くのでマラリアの予防をしたいが、薬を処方していただけますか。」と尋ねられました。
 約30年前、私はアフリカのガーナに仕事で行ったことがあります。そのため、院内にはその当時お土産として持ち帰った絵などが飾られています。その折、やはりマラリア予防のため薬を持参しました。当時、有楽町にある東京交通会館の中にあった医療機関で買い求めて持参した記憶があったので、そのようにご説明しました。しかし、後日、東京交通会館のホームページで確認してみたところ、確かにそれらしき医院はあるのですが、女性の院長先生は後期高齢者をとうに過ぎた超高齢者(90歳以上)のようにお見受けします(間違いでしたら、大変失礼なことを申し上げすいません)。先代の院長の話がホームページに出てきますから、当時その先生から処方を受けたのかもしれません。
 いずれにしても、当時の記憶も曖昧で、自身のマラリアに関する知識もだいぶいい加減になっています。地球温暖化の昨今、デング熱が東京で流行する時代、今後マラリアが日本で流行しないとも限りません。これをよい機会と捉え、知識をbrush upしたいと思います。
 医師向けの情報としては、国立感染症研究所ホームページのマラリアの項が詳しいですが、あくまでも医師向けのため知見が中心で一般の方には不向きです。一般人が対象で、これから流行地への旅行を計画されている方向けなのは、厚生労働省検疫所ホームページのマラリアの項です。簡潔で、5分で理解できます。私の書いた文章を一読するより、ここを印刷して持参する方が実践的です。
 その他医学書を含め、以上の情報をまとめてみました。
【病因】
 ハマダラカが産卵のため吸血する際、伝播する熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形マラリアの4種の原虫がおもなマラリア病原体で、その感染により熱発作の反復とそれに持続する貧血、脾腫などを主徴とする全身感染症を引き起こします。
【疫学】
 マラリアは、結核、エイズと並ぶ世界の3大感染症の一つです。イタリア語の「悪い」mal、「空気」ariaというのがマラリア(malaria)の語源だそうです(知らなかった!)。マラリアは熱帯,亜熱帯諸国を中心に約100カ国で流行(下図、濃ゆい青がマラリア感染が発症している国や地域で、薄い青が限定的ですが、マラリア感染が発症している国や地域です。)、世界保健機構(WHO)の推計によると、年間2億1,400万人以上の罹患者と約44万人の死者が出ています(WHO、2015)。死亡者の70%は5歳未満の子どもです。重症化しやすく死亡率も高い熱帯熱マラリアは、アフリカやアジア・太平洋の熱帯地域が流行の中心ですが、三日熱マラリアは、韓国や中国といった温帯地域でも発生しています。卵形マラリアや四日熱マラリアは、熱帯熱マラリアや三日熱マラリア(各々40〜50%、40〜60%)に比べ感染者は少なく(各々国内輸入感染例の2%以下)、臨床的に問題にならないようです。日本国内での報告数は、国際化時代を反映し、熱帯地からの輸入マラリアが年間50例前後で推移しています。
【臨床症状】
 マラリアに免疫のない方が初感染した場合、発熱はほぼ必発で、原虫侵入後の潜伏期は熱帯熱マラリアで7〜12日前後、三日熱マラリアは8〜31日前後、四日熱マラリアは28〜31日前後、卵形マラリアでは11〜16日前後です。三日熱マラリアでは、感染後病原体が肝細胞の中で休眠し、1年以上、はっきりした症状もなく過ごすことがありますが、典型例では、潜伏期間の後、頭痛、倦怠感などの前駆症状を伴い悪寒、戦慄とともに39〜41℃の熱発作が出現、数時間後には大量の発汗とともに解熱します。この熱発作の間隔は、熱帯マラリアでは不定期で短く、三日熱・卵形マラリアで48時間毎、四日熱マラリアで72時間毎です。一般検査所見では血小板減少(感染赤血球による毛細血管塞栓を反映)、LDH上昇(赤血球破壊を反映)などが高頻度にみられます。貧血は、病初期にはみられませんが、この熱発作を繰り返すことにより、貧血、脾腫(網内系細胞の感染赤血球貪食を反映)が出現していきます。熱帯熱マラリア原虫が感染した赤血球は、毛細血管の豊富な臓器を中心に、血管内皮へ固着、多臓器不全を引き起こします。そのため、5〜6病日以内に適切な治療を開始しないと重症化し、疲憊、意識障害や痙攣(脳症)、腎症、代謝性アシドーシス、呼吸困難(肺水腫/ARDS)、異常出血(DIC様出血傾向)、重症貧血、黄疸、低血糖、黒水熱(高度の血色素尿症)など種々の合併症を生じ、致死的となります。
【診断】
 診断にあたっては、流行地への渡航歴がある発熱者を診たらまずマラリアを疑ってみることが最も重要です。そのためには世界的なマラリア流行状況を把握しておかなければなりません(下図)。ごくまれに、輸血(保存血、血小板、交換輸血)、針刺し事故などでも感染する(1991年以来発症なし)ので輸血歴の確認も重要です。
 診断の基本は、血液塗抹標本を染色し、光学顕微鏡で検査する形態学的診断法です。その他、迅速診断キット、PCR法なども開発されています。
 熱帯地域から帰国後の熱性疾患では、デング熱、インフルエンザ、急性肝炎、アメーバ性肝膿瘍、ウイルス性出血熱などの熱性疾患との鑑別が重要になります。
 マラリア原虫を媒介するハマダラカは、デング熱を媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカと異なり、都市環境では生息できません。アフリカやインド等の一部の国を除き、日本人が、熱帯の都市に滞在しマラリアに罹患する可能性はかなり低いようです。また、発熱以外に消化器症状が前面に出た場合は、腸チフスとの鑑別が問題となります。
【治療】
 マラリアの治療は、急性期治療と根治的治療に分かれます。様々な治療薬が開発されていますが、薬剤耐性が問題となっています。当院では診断はしますが、治療は高度医療医機関へご紹介することになるので、治療の詳細は割愛します。いずれのマラリアも早期に適切な治療を開始すれば一般に予後良好です。しかし、熱帯熱マラリアでは上述の如く5病日以内に適切な治療を開始しないと、急激に悪化したり致命的な合併症をきたす場合もあります。
 三日熱マラリアと卵形マラリアは、肝臓に休眠状態で留まるため、急性期治療後にそれらを殺滅する根治療法を行わないと、再発を繰り返します。
【予防】
 予防接種はありませんが、予防薬があります。マラリア流行地へ渡航する際は、抗マラリア薬の予防内服を行うことが望ましいとされています。マラリア予防薬は、医師の処方が必要で、渡航先の流行状況や滞在期間、活動内容などによって適応となる予防薬が異なります。厚生労働省検疫所の予防接種実施機関検索サイト日本渡航学会の国内トラベルクリニックリストで処方可能な医療機関を見つけ、ご相談下さい。予防薬を服用していても、防蚊対策は必要です。
【感染症法における取り扱い】
 全数報告対象の4類感染症に分類され、診断したら医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る義務が課せられています。

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2018/03/21 
「蕗の薹」

 「ふきのとう」と聞き1970年代に活躍したフォークグループを想起される方は、私と同じ世代の方かもしれません。本日はそちらではなく、本物の「蕗の薹」(By Kropsoq - photo taken by Kropsoq, CC)(左図)のお話です。
 先日、某患者さんからたくさんの蕗の薹を頂きました。その方は三鷹市内にお住まいですが、もともと農業をしていたので今でも少し畑があり、時々季節のものをお裾分けしてくれます。三鷹には今でもあちらこちらに畑が点在しています。グーグルマップの航空写真で三鷹市全体を見ると文字通り点在しているのがよく分かります。
 ご自身は元気な方ですが、亡くなられたご尊父の主治医だった縁で、たまにご自身が具合の悪いとき当院を受診されています。もう20年以上のお付き合いになります。
 私は季節の野菜や山菜が大好き、好物です。素材の味そのままにシンプルに食すのが好きです。嫌いな方などいませんよね。いつか畑をやりたいと思っています。現在多忙でとても無理ですが。
 千葉に別荘があり、子ども達が小さい頃はその庭(というより、広い空き地、雑木林)や近所の空き地で蕗、蕗の薹、多羅の芽、土筆、野蒜を摘んで食することもありましたが、最近全く行くことができません。そんな折、たくさんの蕗の薹を頂きました。それはそれはたくさん頂きました。家内にお願いし、早速、天麩羅(右図)にしてもらいました。ちなみに頂いた蕗の薹はこの4倍くらいはあります。ですから100個くらいありました。ちなみに、原稿の執筆に際し、「蕗の薹」はどうやって数えるのだろうと気になり調べてみました。蕗の薹の助数詞は「個」「本」でよいようです。ですから、100個と表現しました。
 食いしん坊の娘達がいくら食べても余るくらい大量だったので、深夜に帰宅しても心行くまで蕗の薹を食することができ、大満足で一日締めくくりました。

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2018/02/25 
「飛蚊症」(その1)

二日前より、左眼の眼前に糸状の物が見えるようになりました(左図)。眼球を動かすとその紐も同じように動きます。これが世にいう飛蚊症かと思いましたが、蚊というより紐状で、目に睫毛が入ったように思えます。異物感もなく、しつこく見えるので睫毛ではなさそう。眼科を受診した方がよいと判断しました。
 しかし、当院は月曜日から土曜日まで連日診療しているため、受診する時間がなかなか取れません。さらに、当院は予約制。多い日は1日80人以上の予約が入っていることもあり、突然休診にすることもできません。ところが、2月22日木曜日、23日金曜日と米子市で開催される第51回日本痛風・核酸代謝学会総会に参加するため臨時休診にしていました。飛行機に乗る時間を変更、急遽某眼科を受診しました。
 診察の結果は「生理的飛蚊症」。要は加齢による飛蚊症とのことでした。先生から、診察直後に開口一番「老人性」の一言。私、まだ50歳代で高齢者に非ず、「老人性」との表現は不適切、「加齢性」なら納得ですが。「某医院を受診したら『老化、老人性』と言われた。」と憤慨する70歳代、80歳代の患者さんに時々お会いしますが、少々その気持ちが理解できた気分です。「飛蚊症」の病名、眼科疾患ではありますが、頻繁に耳にします。折角の機会なので勉強してみました。
【定義】飛蚊症とは、視野内に蚊のような物体が飛んで見える現象のこと。硝子体(中図「眼の構造」(Copyright:Santen Pharmaceutical Co.,Ltd))中にある物体(浮遊した細胞、混濁、出血など)が網膜に影を落とすことにより起こる内視現象です。眼球の動きによって硝子体が動くと物体も動き,眼前を蚊が飛ぶように見えるためこのように呼ばれています。
 私の場合糸状に見えましたが、ゴマ、虫、カエルの卵、糸くず、たばこの煙状など、人により様々な見え方があるようです。
【飛蚊症の原因疾患】
1、生理的飛蚊症
 元来透明でゲル状の硝子体は加齢とともに液化し可動性が増していきます。これに伴い生じた生理的な硝子体の混濁が飛蚊症として自覚されるようになります。

2、後部硝子体剝離
 硝子体の液化が進行すると硝子体は虚脱、硝子体ゲルを包んでいる後部硝子体膜が網膜から剥離、ゲルが前方(水晶体方向)に移動する現象のことです(右図「正常眼と目の加齢」(「Copyright:Santen Pharmaceutical Co.,Ltd」))。右図では眼球の下半分が正常眼で、上半分が加齢により硝子体剥離を生じた眼球です。硝子体と視神経乳頭は円形(眼球の上下を結ぶ円周)に強く癒着しているため、後部硝子体剥離を生じた場合、視神経乳頭縁に一致する後部硝子体膜は線維成分の濃い環状の白色組織「グリア環」を形成、その陰を飛蚊症として自覚します。これは加齢に伴う生理的な変化で病的意義はなく治療対象とはなりません。60歳代で43%、70歳代で71%、80歳代で85%に認められるそうです。しかし、後部硝子体剝離が進行する過程で、網膜硝子体癒着が強い部分を牽引、硝子体出血、網膜裂孔・網膜剝離(下記)が生じると眼科治療が必要になります。
 後部硝子体剥離は急に生じることが多いため、飛蚊症も突然自覚することが多いようです。また、強度近視眼、眼球の外傷歴、硝子体注射歴がある場合、硝子体液化の進行が早く後部硝子体剥離が比較的若い時期に生じやすく、また硝子体混濁の程度も強いため、飛蚊症になりやすいようです。

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2018/02/25 
「飛蚊症」(その2)

3、硝子体出血(左図「硝子体出血」(「Copyright:Santen Pharmaceutical Co.,Ltd」))
 硝子体に出血した血液塊の影を飛蚊症として自覚します。糖尿病網膜症、網膜裂孔(後述)、裂孔原性網膜剝離(後述)、後部硝子体剝離(先述、中図「後部硝子体剥離に伴う硝子体出血」「Copyright:Santen Pharmaceutical Co.,Ltd」)、網膜静脈分枝閉塞症、加齢黄斑変性、ぶどう膜炎、血液疾患などで生じます。

4、裂孔原性網膜剝離・網膜裂孔(右図「裂孔原性網膜剝離」(「Copyright:Santen Pharmaceutical Co.,Ltd」))
 網膜裂孔を通し、硝子体腔に網膜色素細胞の湧出が起こり、飛蚊症を生じます。また、裂孔形成時に網膜血管の破綻を伴えば硝子体出血を生じ、先述のごとくやはり飛蚊症の原因となります。

5、硝子体混濁
 ぶどう膜炎などでの炎症細胞の浸潤、中枢・眼原発悪性リンパ腫やアミロイドーシスなどでも生じます。

【まとめ】このように、飛蚊症には生理的で病的意義のないものから、眼科での治療が必要なものまで様々あり、飛蚊症を自覚したらまずは眼科受診が必要です。

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2018/02/12 
「複発性帯状疱疹」

 2月10日の土曜日午後、都心で開催される講演会に久しぶりに参加しました。以前は、ウィークデイの夜、土曜日午後、日曜日に開催される講演会は三多摩地区であろうと都心であろうと時間があれば必ずと言っていいほど参加していました。講演の内容にもよりりますが、総合臨床医を標榜する者にとって勉強して損な内容は一切ないとの考えからです。講演を聞いて、自身でその内容を吟味、取捨選択すればよいのですから、どんな内容の講演でも参加することにしていました。しかし、医師会理事としての公務、診療後開催される会議も多く、また患者さんや健診受診者が増え、連日深夜まで残業するようになり、昨今は事前に講演内容を吟味して参加するようになっています。ましてや都心での開催となるとアクセスだけでも往復2時間程度かかるわけですから、なおさらです。
 さて、今回の講演は品川プリンスホテルを会場として「帯状疱疹講演会〜水痘ワクチンという予防戦略〜」という講演会です。例えば高血圧、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病や、心疾患、脳血管障害、がんをテーマとした講演会は三多摩地区でも頻繁に開催されています。しかし、帯状疱疹をテーマとした講演会はめったにありません。今回は、一般財団法人阪大微生物病研究会と某ワクチンメーカー2社がスポンサーとなり、帯状疱疹ワクチンをテーマとした講演会でした。全国講演会のため、この分野に関する著名な講師が全国から参集、帯状疱疹に関する知識をbrush upすることができました。
 帯状疱疹ワクチンに関しては、既に2013/01/03院長コラム「帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について〜今、帯状疱疹は予防する時代です!(その1〜3)」で詳細にご説明したように、国に先駆け2013年から当院では予防接種を開始しています。その後、2016年3月厚生労働省により水痘ワクチンが正式に追加承認されています。今回そのワクチンに関する新しい知見を勉強することができ、ホームページの「帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について」の記載を改訂しました。
 たまたまですが、先週、医者になって初めて複発性帯状疱疹の患者さんを診察しました。帯状疱疹に関してあまり詳しくない方のため、上記当院ホームページの帯状疱疹の解説を一部抜粋、下記に転載します。

 「水痘帯状疱疹ウイルスVZVに初感染し水疱瘡を発症、しかし、抵抗力の源である抗体が誘導されると約1週間程度で水疱は痂皮(かさぶた)になって治癒しますがウイルスは体内から駆除されません。脊髄と体表を継ぐ脊髄後根神経節や三叉神経節に潜伏、感染し続けます。獲得した免疫力により閉じ込められ冬眠させられた状態になります。その後成人になり30〜40年を経て徐々にVZVに対する免疫力が低下、ストレスや疲労、心労、加齢、抗がん剤や副腎皮質ホルモンなどの免疫抑制剤の使用、日射などの刺激で免疫力が低下すると、冬眠していたウイルスが再活性化(回帰感染)、末梢神経に沿ってウイルスが体表面に到達、水疱を形成、帯状疱疹を発症させます。
(中略)
 それらの神経節が支配する領域、皮膚分節(左図)は人間皆共通です。複数の神経節に冬眠するVZVが偶然同時に覚醒することはまずないため、帯状疱疹は左右一方の皮膚分節の範囲に限局して水疱を形成(右図は右T9皮膚分節の帯状疱疹です)します。
(中略)
 このような特徴を持った病気は他にないので視診で比較的簡単に診断できます。
(中略)
 しかし、時として帯状疱疹は重症化し、入院治療が必要になることもあります。汎発性帯状疱疹といってVZVに感染したリンパ球が全身にまわり、全身に水痘様の水疱が散発する場合があります。また、複発性帯状疱疹といって同時に2箇所以上の皮膚分節に帯状疱疹が発生する場合もあり、これらの多くは免疫不全に伴って発症しますが、特に基礎疾患のない方に発症することもあります。

 先週診察した患者さんは、左右に跨る前胸部の痛みを訴え来院されました。その方は腎臓移植手術を受けており、高血圧など動脈硬化危険因子をお持ちの方でしたので、当初は帯状疱疹を疑わず、狭心症や呼吸器疾患を疑い早速心電図や胸部レントゲン検査を実施しました。しかし、服を脱がせて診察してみると左右胸部の皮膚分節に一致した全く同様な痛みを訴え、左側はすでに水疱が出現し始めていました。この方は腎臓移植手術後のため、免疫抑制剤を服用されており、そのため複発性帯状疱疹をきたしたのでした。まさに、教科書的な症例でした。今後も日々研鑽し、このように稀な症例にも対応できる臨床力を身に着けていきたいと思います。

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2018/01/15 
「恐縮ですが当院では対応できない患者さんです。」

 当院ホームページの「HOME」にある「新古情報」に2017年7月10日以下の如く記載させて頂きました。

最近とみに公務の会議体(東京都や三鷹市、医師会など)が多く、遅刻できない場合、診療時間を1、2時間休診することも珍しくありません。それでも間に合わない場合、予約者限定の診療にすることもあります。ですから、受診される方は極力予約されることをお勧めします。すでに予約があるにもかかわらず、休診にすることは絶対にありません。

 しかし、このお願いを反故にするトラブルが11月立て続けに起きました。
 一つ目は、11月1日水曜日、午前中の診療を予約者限定にしたときの事例です。この日は、13時30分より、三鷹市医師会長、市担当職員と来年度三鷹市乳がん検診をどのように実施するか決定する重要な会議に出席することになっていました。現在私は三鷹市医師会乳がん検診委員会の委員長を拝命しています。ですから、この会議におて三鷹市側のカウンターパートであり、三鷹市内で乳がん検診を受託する医療機関を代表する立場のため、絶対に遅刻できない状況でした。しかし、にもかかわらず既に定数以上の予約患者で溢れていたため、朝から予約患者限定の診療にしていました。
ここからは大部分が当院外来受付スタッフからの報告です。午前中、当院に高血圧で定期的に通院する井の頭住区お住いのご高齢の某患者さんから、「動悸」がするので診て欲しいと電話がありました。受付スタッフは、本日は所用のため予約者限定の診療となっていることをご説明し、近医受診を進言したそうです。動悸となればまずは心電図ですから何ら問題ない所作です。ところがその患者さんのご主人がたいそう心配され、当院の指示に従わず自己判断、自身の通院先である武蔵野赤十字病院へ車で直接連れて行ってしまいました。武蔵野赤十字病院ホームページにも大きく「当院の初診には紹介状と予約の両方が必要です。」と記載されているように、いきなり受診しても診療してもらえません。ですから、当然日赤では診療を断られました。おそらくそこで日赤の受付スタッフから助言されたのだと思いますが、ご主人が当院に電話を掛けてきて、「今すぐ紹介状を書いてFAXして欲しい。」と高圧的な態度で話されました。お願いというより「今すぐ書け。何故書けないのだ。」といった態度です。当院受付スタッフが本日は所用のため時間がなく、予約者限定診療にしている状況なので無理である旨お話ししましたが、喧嘩腰の剣幕で院長に繋げと主張されたそです。その後、知己の日赤循環器内科部長より直接当院に電話があり、当院の状況をお話ししたところ、大変申し訳なさそうに紹介状作成を依頼されました。再度ご主人より電話があり、診察室の患者さんを待たせ、受付に代わり私が電話に出ました。上述の如く甚だ身勝手な行動で、腸が煮えくり返る思いでしたが、不承不承診療を止め、取り急ぎ紹介状を作成、日赤にFAXしました。案の定、20分ほど診療が止めたこともあり、会議に間に合わなくなりました。そのため、受付スタッフに依頼、当日の予約患者さんの中で他の日に再度ご来院頂ける方を募ったところ、3、4名の方が快く受けて下さり、その日は帰って下さいました。おかげで何とか会議には遅刻することなく出席することができました。この場をお借りし、改めて深謝申し上げます。ちなみに、後日日赤より届いた報告書によれば、外来で心電図を含めいくつかの簡単な検査を実施しましたが何ら異常を認めず、投薬もなく帰宅させたとのことでした。これを老害と言わずして何と言うのでしょうか。
 ちなみにその日当院職員からも、娘が感冒のため風邪薬が欲しいと臨時受診の希望がありました。しかし、上述のような状況下、予約限定診療ということで断りました。
 問題点を整理すると、

1、外来受付スタッフに進言されたように、近医を受診、心電図、その他の検査を実施していれば、わざわざ遠くまで行って日赤を受診する必要がなかった可能性が高い。このような段取りを踏まない患者が多いため、本当に高度な医療を必要とする患者さんが適切な医療を受けられず、社会問題になっていることの認識がない。
2、日赤を受診する必要のある病状の場合、初療を行った近医の医師が紹介状を作成するため、わざわざ当院に作成を依頼する必要はなく、患者さんも長時間待たされることはなかった。
3、自身が長期間日赤に通院しているにも関わらず、日赤の「初診には紹介状と予約の両方が必要」との認識がなかった。あるいは認識があったが、ごり押しをすれば、自分の思い通りになると傲慢な考えを持っていたのかも。
4、以上のような非常識な行動が、他の患者さんの迷惑になっているとの認識がない。

ということだです。何も昼ご飯が食べたくて予約者限定にしているわけではありません。本当に困るからそうしているのです。ご理解いただければ幸いです。
 今回のエピソードで私が最も忌み嫌うのは、きちんとルールを守る方が迷惑を被り、ルール違反、非常識な行動をする方が利するような結果となったことです。具合が悪かったご本人は申し訳なさそうに次月来院されました。しかし、ご主人からは一言のご挨拶もありません。例年市民健診で来院されています。来院時、このような考えでは当院では対応=診療できない旨、はっきりとお伝えするつもりです。当日予約を変更し帰宅して下さった数名の方々が二度と同じような目に合わないように、きちんと総括することが私の責務だと思います。
 二つ目はその週の土曜日、11月4日に発生しました。11月4日の前日3日は文化の日で祝日のため休診です。また、翌週の土曜日11月11日は徳島出張のため休診になっていました(2018/01/03院長コラム「徳島市で開催された第27回日本乳癌検診学会学術総会に2017年11月10日と11日参加してきました。夜行バスデビューです。」をご参照下さい)。前日と翌週が休診のため必然的に大混雑することが明らかでした。しかし、11月4日から5日まで京都で開催される第11回日本禁煙学会学術総会に参加することになっていました。非常にスケジュールがタイトなことは分かっていましたが、最近話題の電子タバコの情報収集と「禁煙サポーター」の資格認定を受けるため「禁煙治療セミナー」を受講することになっていました。講演に間に合うように京都に到着するには、12時14分三鷹駅を出発しなければなりません。そのため、同日は予約限定診療の上、通常12時30分までの外来受付を11時30分と1時間短縮していました。上述の如く患者数がいつもより多くなる状況下、診療時間を制限すれば診察できない患者さんの数が増えるため、当日勤務の職員にお願いし、通常8時30分開始の土曜日限定の早朝外来を30分早め8時0分診療開始としていました。
 診療を開始、しばらくして当院スタッフより、「自分の娘が発熱した。もう解熱したが、インフルエンザだと登校できないので検査して欲しい。」と申し出てきました。祭日前日の11月2日時点では、そのような患者の予約はなかったように記憶していました。ですから予約外です。当日は予約者限定ですから、上述の如く水曜日も予約のないスタッフの娘さんの診療をお断りしていたので、同様にお断りしました。しかし、電子カルテの予約画面を見ると予約がされてあります。予約患者を装うため当日自身で予約を入れたようでした。これは明らかにルール違反です。さらに、公平性の観点からも同じ状況下、一方のスタッフのみ利するようなことはできませんので再度お断りしました。しかし、聞くと何と子どもをすでにクリニックに連れてきており、待合室に待たせているとのことでした。親の身勝手な行動は問題ですが、子どもには責任はありません。不承不承ですが、インフルエンザの検査を実施、診療を受け付けました。
 そんなこともあり、結局その日12時14分の電車に間に合わず、新幹線の往路切符代2万円近くがパーになりました。また、肝心の講習を受けられなければ無理をして行く意味がありません。学会事前参加費11,000円、禁煙サポーター登録費用3,000円、ホテルだ2万円余り、合計5万円余りがパーになりました。問題点を整理すると、

1、どの医療機関でも受けることのできるインフルエンザ検査を、わざわざ診療時間を制限し、予約者限定としている当院に策を弄してまで依頼する必要性はまったくなかった。
2、予約患者ではないのに予約患者のように偽装し、ルール違反をして受診させた。
3、院長の許可を得る前に行動し、断れない状況を作り受診させた。
4、その結果、現実に学会に参加できなくなった。

 本患者を診療するのに要した時間は10分足らずです。他の患者さんの診療が長引けは例え本患者がいなくとも電車に間に合わなかったかもしれません。ですから、今回のことは些末なことで大したことでないと考える方がいるかもしれません。しかし、私が問題としているのはお金でもなく、電車に間に合ったかどうかでもなく、決められらルールを守ったかどうかです。
 飲酒運転は禁止されています。それはお酒を飲んで運転すると交通事故が起こりやすいからです。では飲酒運転をして、何ら事故を起こさず無事家に辿り着けば問題ないのでしょうか。飲酒運転をしても構わないのでしょうか。事故が起きてからでは遅いのです。ですから、事故の危険性が高くなる飲酒運転そのものを禁止しています。今回も同じこと。結果として電車に間に合ったか否かではなく、その危険のある行為を禁止しているにもかかわらず、そのルールを破ったことが問題だと私は考えています。この問題は当院で月1回開催しているスタッフミーティングで俎上に載せ、職員を指導しました。
 当院を受診される患者さんや健診受診者のみならず、当院スタッフの行動にも問題があります。一人でも多くの患者さんに、私たちの理想とする医療を提供できるよう今後一層、指導力を発揮することが私に課せられた責務だと再認識しました。

2018/01/14 
「格闘技の聖地後楽園ホール初見参。プロボクシングの試合を初めて生で観戦してきました。

 先日とても楽しいことがありました。12月6日水曜日、あこがれの地、格闘技の聖地後楽園ホールに初めて赴き、プロボクシングを妻と観戦してきました。
 私は格闘技ファンです。自分ではしませんが、格闘技観戦が趣味で、大いなるストレス発散になっています。ちなみに四女も格闘技観戦が大好きです。
 観戦といっても専らTVです。開業以前、病院勤務医時代は定期的に当直がありました。仮眠室にはTVがあり、日曜日の深夜?に放送されるボクシング中継を楽しみにしていました。今でもプロボクシングや総合格闘技のTV中継は欠かさず見るようにしています。
 以前、ボクシング経験者の某患者さんからリングドクターの手伝いを依頼され、お手伝いしたことがあります。そのときの様子は、2013/06/23院長コラム「TRY-Fチャリティボクシングマッチ」、2013/08/01院長コラム「TRY-Fチャリティボクシングマッチで初めてリングドクターを務めました。」、2013/08/28「元日本J.フェザー級1位・元日本フェザー級1位・元日本J.ライト級1位TRY-F打越代表の表敬訪問を受けました。」、2013/09/22院長コラム「2013年7月15日開催のTRY-Fチャリティボクシングマッチ試合前診察風景」、2013/11/30院長コラム「12月23日開催のTRY-Fチャリティボクシングイベントにリングドクターとして参加します。」、2013/12/28院長コラム「12月23日開催されたTRY-Fチャリティボクシングイベント1周年記念大会”エレクションデイ”に参加してきました(その1)(その2)(その3)」で報告しています。
 その折、偶然にも他の通院患者さんも来場しており、リングドクターをしている私を見かけ、声を掛けてくれました。お話を伺うと、ご自身も以前ボクシングジムに通っていたそうで、その縁で後輩のプロボクサーのマネージメントを手伝っているとのことでした。そしてその日、昔マネージャーをしていた元日本チャンピオンが参加していたので応援に来たとのことでした。その方は、現在でも本業のサラリーマンの傍ら、縁のあるボクシングジムのマネージメントを夫婦でお手伝いしているとのことでした。
 その方が11月来院時、マネージメントを手伝っているフラシュ赤羽ボクシングジム主催のボクシングイベント(下図)に誘ってくれました。17時45分試合開始です。18時まで診療しているため通常参加できないのですが、12月6日はたまたま診療が午前中で終わる水曜日だったため観戦することができました。連日帰宅が24時となる中、残業を止め、妻とビール片手にボクシング観戦、「ナイスボディ」と大声を張り上げる、久々に楽しい時間を過ごし、かつ、ストレスを発散することができました。途中、招待券をくださった某患者さんが私たちの席に来てくださり、試合の見どころ、ボクシング観戦のコツなどを解説してくれました。次回は、自分でチケットを買って見に行きたいです。
 多忙のため二の足を踏んでいた私の背中お押して下さり、本当に有難うございました。

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2018/01/04 
「骨粗鬆症治療薬ビスホスホネート製剤の注射療法について」

 骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。加齢,閉経,遺伝的素因,生活習慣によるものを原発性骨粗鬆症といい、それ以外の特定の原因によるものは続発性骨粗鬆症と呼びます。
 骨強度は骨密度と骨質により決まりますが、骨密度が70%、骨質が30%程度寄与しています。骨密度は骨塩、つまり骨のカルシウム濃度です。一方骨質は、微細構造、骨代謝回転、微小骨折、石灰化などにより規定されます。
 骨粗鬆症発症危険因子としては、閉経(女性ホルモンの一つエストロゲンは骨にカルシウムを沈着させ、骨密度を高める作用があります。そのためエストロゲン分泌低下を意味する閉経では骨からカルシウムが溶出するようになります。無月経や生理不順も同様に危険因子となります)、加齢(男女とも40歳代後半から加齢とともに骨密度が低下します)、遺伝(近親者に骨粗鬆症の患者さんがいる場合、自分もなりやすくなります)、骨折既往歴(過去に骨折の既往歴のある方は、ない方に比べ骨折しやすいです)、痩身体型(痩せた方は太った方に比べ骨粗鬆症になりやすいです。体重が多い方はそれだけ骨が鍛えられているわけですから。思春期の女性の極端なダイエットは骨粗鬆症リスクを高めます)、喫煙(喫煙は腸管でのカルシウム吸収を阻害したり、エストロゲン分泌を抑制したりするためです)、過度な飲酒(過剰なアルコール摂取は、腸管でのカルシウム吸収を阻害したり、尿からのカルシウム排泄を促進します)、カルシウム摂取不足(インスタント食品などはリンを多く含み、カルシウムが吸収されにくくなります)、運動不足(運動すると骨に負荷がかかるため骨の強度が増します。一方運動不足では骨は脆くなります)などがあります。
 骨粗鬆症は、問診、脊椎エックス線像、骨密度測定結果などを総合し、左図(原発性骨粗鬆症の診断手順、「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015版」より引用)の如く診断します。詳細は「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」をご参照下さい。
 治療法も上記のガイドラインにその詳細が記載されていますが、基本は、食事療法、運動療法、薬物療法の三つです。そのうち薬物療法は中図(「骨粗鬆症治療薬の種類と作用点」ファイザーホームページより引用)のごとく纏められます。
 これらの治療薬には右図(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」から引用)の如き使用上の注意点があります。このうち、ビスホスホネート剤は骨折予防効果における有効性は明確でしたが、顎骨壊死の副作用が危惧されるため、抜歯予定のある患者さんでは抜歯前3か月程度休薬せざるをえず、使いにくい薬剤となっていました。そもそも骨粗鬆症患者さんは、当然高齢者が多く、抜歯をする機会が多いためなおさら不便です。しかし、「顎骨壊死検討委員会ポジションぺーパー2016」が発表され、「経口、静注を問わず窒素含有BP[ビスホスホネート剤のこと:引用者注]治療を受けている骨粗鬆症患者におけるONJ[顎骨壊死のこと:引用者注]発生率は0.001〜0.01%であり、一般人口集団に見られるONJ発生頻度0.001%とほぼ同様か、ごくわずかに高いと推定されている」こと、「BRONJ[ビスホスホネート製剤関連顎骨壊死のこと:引用者注]発生は感染が引き金となっており、歯科治療前に感染予防を十分に行えばBRONJ発生は減少するとの結果が示されている」こと、「論理的に判断すると、侵襲的歯科治療前のBP休薬を積極的に支持する根拠に欠ける」こと等の見解が示されてから、使いやすくなりました。
 また、同薬は吸収効率が非常に悪い薬剤で、食事の影響で吸収が阻害されます。また、咽喉頭や食道へ逆流すると粘膜傷害を引き起こします。そのため、BP製剤添付文書の「用法・用量」には「起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。なお、服用後少なくとも60分は横にならず、飲食(水を除く)及び他の薬剤の経口摂取を避けること。」と記載されています。換言すると60分座位を保てない方は服用できません。このように服用方法が複雑なため、本剤を服用するような高齢の患者さんがこの通りきちんと服薬方法を守っているか疑念が生じます。服薬後間違って何か口にしていたら、折角の薬もその効果を発揮できません。
 さらに、BP剤は発売当初、毎日服用する薬として売り出されていました。しかし、先述の如く複雑な服用方法による高齢者の負担を減らすため週1回内服する製剤が発売されました。つまり、1週間分を1日で内服するため、1月すなわち4週間に4回しか服用しなくてよくなりました。さらに、現在は月1回製剤が開発され、1か月に1度服用するだけで済むようになりました。しかし、裏を返せば、月1回の内服時に服薬後60分以内に間違って何か食べ物を口にしたら1か月分の薬がパーになります。そう考えると月1回製剤は功罪両面があるといえます。
 そこで開発されたのがBP製剤月1回注射剤(ボンビバ静注1mgシリンジ)です。高血圧などの持病で月1回通院されている方の場合、来院時に静脈注射を1本打つだけで済みます。飲み忘れることもなく、食事制限も不要なため確実に効果を発揮することができます。服薬方法を遵守できな認知症の方にも使用できます。もちろん針を刺される痛みがあり、患者さんがどの治療法を望まれるかにより、最終的には判断します。もちろん、薬物療法を行おうとも食事療法や運動療法も並行して実施する必要があります。

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2018/01/03 
「徳島市で開催された第27回日本乳癌検診学会学術総会に2017年11月10日と11日参加してきました。夜行バスデビューです。」

 報告が遅れましたが、徳島大学大学院医歯薬学研究部産科婦人科分野教授 苛原稔 大会長のもと徳島市で開催された第27回日本乳癌検診学会学術総会に2017年11月10日と11日参加してきました。ご報告が遅れたのは、例年10〜11月が繁忙期な上、12月になりインフルエンザや普通感冒が流行、多忙を極めたためです。健康診断を受診する方が最も多いのはこの頃です。お陰様で年々受診者数が増加、開院以来最も忙しかったです。さらに、インフルエンザ流行が例年より前倒しになり、11月後半に流行し始めたため一層多忙になりました。おそらく他の医療機関も同様ではないかと思います。
 そのような状況ではありましたが、今年は是が非でも本学会に参加したいと思っていました。一つ目の理由は、昨年11月4日、5日に久留米市で開催された第26回日本乳癌検診学会学術総会に参加するつもりでしたが、第92回多摩医学会講演会と日程がバッティング、参加できなかったためです。個人的には乳癌検診学会の方に参加したかったのですが、多摩医学会の特集演題「災害医療における医師会の取り組み」に三鷹市医師会防災救急対策担当理事として「熊本地震のおける東京JMAT活動報告」を発表することになり、そちらを優先せざるをえませんでした。その発表の様子は2016/11/08院長コラム「第92回多摩医学会講演会において『熊本地震のおける東京JMAT活動報告』を発表しました。」をご参照下さい。
 二つ目の理由は、現在私は三鷹市医師会の乳がん検診委員長を拝命、三鷹市から委託された乳がん検診を統括し、乳がん検診をどのように実施していくか取り纏め、三鷹市医師会を代表して三鷹市の担当者に意見を述べる立場にあります。現在乳がん検診のマンモグラフィ(乳房レントゲン撮影)実施医療機関4施設(野村病院、三鷹第一クリニック、三鷹中央病院、当院)はいずれもデジタル撮影でマンモグラフィを実施しています。にもかかわらず、医師会への画像提出(各医療機関で撮影された画像は、ダブルチェックするため医師会への提出が義務付けられています)はデジタルデータでは受け付けず、レントゲンフィルムに印刷し提出することが義務付けられています。デジカメに例えると、各医療機関ともデジカメで写真撮影しているのに、CD-ROMやUSBメモリーでの提出は受け付けず、医師会へはいちいち印画紙に印刷し提出しています。それは医師会にデジタルデータをモニターで見るための機器PACS及びマンモグラフィ読影システム(デジカメでいうところのパソコンとモニター)がないためです。この機器は500万円〜1000万円と高額なためこれまで医師会には導入されていませんでした。そのため、4医療機関から提出されたレントゲンフィルムはシャウカステン(下図)を使用し読影されていました。しかし、医師会では来年度からPACS及びマンモグラフィ読影システム導入を目指し準備を始めています。今回の学会では各社のPACS及びマンモグラフィ読影システムの情報を収集したいと考えていました。
 三つ目の理由は、市との話合いの中で現在乳がん検診で実施されている乳房視触診を来年度から廃止するか否か、検討しています。今まで実施していた触診を廃止することは、一般の方からすると健診内容が後退するように思われるかもしれませんが、そう単純な問題ではありません。今回乳癌検診学会に是が非でも参加したかったのは、乳房視触診に対する諸家の意見を広く情報収集したいと考えていたためです。その結果に関しては、改めて別の機会でお話しさせて下さい。
 さて、今回の学会開催地徳島市は遠方です。開催日は10日金曜日と11日土曜日。徳島は交通の便があまりよくないため、10日朝東京を出発すると10日午前の講演はまったく拝聴することができません。また、今年三鷹市医師会が幹事を務める多摩地区医師会懇話会(年に一度都下の地区医師会が一堂に会するイベント)が11月11日土曜日新宿京王プラザホテルで開催されるため、理事である私は16時30分京王プラザ集合となっており、昼頃徳島を飛行機で出発しなければなりませんでした。そのため、11日の学会は午前中しか参加できないことが分かっていました。そうすると結局徳島まで行って、10日の午後と11日の午前しか勉強できなことになります。これではあまりに非効率的で、先述のような情報収集もままならないのではないかと危惧していました。ですから、学会前日9日木曜日に前乗りしたいところですが、木曜日18時30分から駅前コミセンで「三鷹駅周辺・地域ケアネットワーク」のケアネット委員会が開催され、三鷹市医師会代表の委員である私は参加を要請されていました。結局前乗りは無理かと思っていましたが、乗換案内ソフトで調べると、新宿駅南口の最近完成したバスタ新宿を21時55分に出発、10日朝6時47分徳島に到着する夜行バス「ドリーム徳島号」を案内されました。これだとケアネット委員会終了後に三鷹を出発しても十分間に合います。また、10日朝から学会に参加できます。これまで一度も夜行バスに乗ったことがありません。60歳近くになり夜行バスで出張、学会に参加するのは体力的に私自身不安ですし、家族や医師会長からも心配されました。しかし、徳島ドリーム号を運行するジェイアール四国のホームページを見ると、早割で片道7,200円の運賃に2,400円の追加料金を支払うとプレミアムシートにグレードアップできます。リンク先を見ると分かりますが、フルフラットまではいかないものの156度傾斜とかなりフラットな上、座席幅70cmと広くゆったり寝られそうです。意を決し、チケットを購入、夜行バスデビューとなりました。その乗り心地はというと、座席は何も問題なかったのですが、1、生まれて初めて夜行バスの乗り興奮した、2、座席が2階建てバスの最前列だったため、急ブレーキを掛けたとき、全面に広がるフロントガラスを突き破り飛び出さないか気になった、3、列車と違い高速度道路を走っていても周期の短い微妙な揺れが絶えず体を揺さぶり落ち着かない、以上のような理由で結局熟睡できませんでした。翌日の学会は推して知るべし。今回の学会テーマは「女性ヘルスケアからみた乳癌検診」です。心身は疲れていましたが、当初の目的の「乳房視触診」のセッションの聴講、「マンモグラフィ読影システム」機器展示での情報収集に加え、「マンモグラフィと超音波検査による総合判定」「高濃度乳房(dense breast)」「遺伝性乳癌卵巣癌」「MRI、ブレストトモシンセシスなどマンモグラフィ・超音波以外のモダリティ」等最近のトピックスを勉強することができ、頑張って参加した甲斐がありました。

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2017/11/30 
「2017年11月8日ザ・リッツ・カールトン東京 アジュール フォーティーファイブで開院10周年お祝いの会を開催しました。」(その1)

 当院では忘年会、新年会、暑気払い、残暑払い、健診繁忙期前の決起集会、新入職員歓迎会など折に触れて宴会、ランチ会などを開催しています。小さなお子さんがいらっしゃる主婦の方も多数勤務しているので、夜の宴会と昼のお食事会を交互に開催するようにしています。当院は三鷹駅から徒歩圏のため、駅周辺に多数ある飲食店は至近です。それらの飲食店のオーナーや職員の方が健康診断や病気のとき来院されています。そのため飲食店の知り合いには事欠きません。院長の私が「営業」と称し、クリニックの集いは知己のお店で開催することが多いです。個人情報のため具体的に店名を申し上げることはできませんが、20店近くあると思います。
 2017/11/03院長コラム「2017年11月1日当院は開院10周年を迎えることができました。」でご報告したように2017年11月1日当院は開院10周年を迎えることができました。10周年の節目に職員内輪だけでお祝いする会を開催しました。今回は10年に1度の節目です。5周年のときは、パークハイアット東京のニューヨークグリル&バーでランチ会を開催しました(2012/12/09院長コラム「高松メディカルクリニック開院5周年記念パーティを終えて」をご参照下さい)(左図)。今回はさらに都心へ移動、11月8日水曜日ミッドタウンにあるザ・リッツ・カールトン東京のアジュール フォーティーファイブでランチ会を開催しました。水曜日午前中の診療後(同日はいつもより1時間早く11時30分で診療を終了しました。受診できなかった方、申し訳ありませんでした。)、チャーターしたワゴンタクシー3台に分乗、ミッドタウンに向かいました。事前にレストランの個室(中図)を予約していました。この個室の定員は最大17人です。当院職員は18人ですが、たまたま2人が都合で参加できず16人のとなったため、いくつかの候補の中から当院同様本年が開店10周年であるリッツカールトン東京のアジュールフォーティーファイブを選びました。
 シャンパンで乾杯後、フランス料理に舌鼓を打ちながら歓談しました。デザートは「10th Anniversary TAKAMATSU Medical Clinic」のデコレーションの入ったケーキを頂きました(右図)。

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2017/11/30 
「2017年11月8日ザ・リッツ・カールトン東京 アジュール フォーティーファイブで開院10周年お祝いの会を開催しました。」(その2)

 開院時8人だった職員は5周年時13人に、そして10周年の現在は18人になりました。皆でこれまでの10年を振り返りつつ次の10年に向けての抱負を語り合いました。院長として非常にうれしかったことは、当院での勤務歴が自身の職歴の中で最も長いという職員が非常に多かったことです(下図)。5周年の集いに参加していた職員は、ご主人の転勤、ご病気等の事情で退職された方4人を除き皆現在も勤務しています。長く勤めてくれる職員は職場の宝です。当院の掲げる経営理念「高松メディカルクリニックは、診療理念に基づく医療の提供により、患者さん、地域社会に支持され続ける医療機関になることと、適正な利潤をあげ、経営理念のもと真摯に働く職員が経済的にも精神的にも豊かな生活を送ることを目指す。」に一歩近づけたように感じました。

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2017/11/27 
「化学テロ・化学災害対策担当者養成講習会に参加してきました。」

 平成29年11月12日(日)NPO法人NBCR対策推進機構が開催する「第4回『化学テロ・化学災害対策担当者養成講習会』に参加してきました。
 普段の私を知っている当院通院患者さんからすると、「何でこんなことを勉強をしてるの?」と思われるようなテーマの講習会です。実際、その内容はというと、

1、災害と医療 ―化学災害対処の重要性―
2、最近の化学テロ・化学災害の動向
3、 化学兵器等による戦争とテロ
4、化学剤等に対する防護と除染
5、医療と消防の連携 ―消防機関の連携の在り方―
6、化学テロ・化学災害 ―治療と診断―
7、救急医療対策 ―化学テロや化学災害に如何に備えるか―

といった科目で、朝9時から夕方4時30分までびっしり講義を受け、最後に試験も
あります(左図)。講師陣には、三鷹市医師会防災講演会で毎年講師をお願いしている杏林大学教授・高度救命・救急センター長、山口芳裕先生も名を連ねていました。
 2017/06/08院長コラム「三鷹市国民保護協議会の委員に就任しました。」で報告しましたように、本年度より三鷹市医師会を代表して防災救急対策担当理事の私が三鷹市国民保護協議会の委員に就任しました。同協議会とは、「武力攻撃事態における国民の保護に関する法律(平成16年法律第112号)−いわゆる国民保護法−の施行を受け、三鷹市における国民保護計画を策定するために開催される会議」(三鷹市ホームページより転載)です。ちなみに、いわゆる国民保護法とは、「正式には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」といい、武力攻撃事態等において、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするための、国・地方公共団体等の責務、避難・救援・武力攻撃災害への対処等の措置が規定」(内閣官房国民保護ポータルサイトより転載)されている法律です。この法律、平成16年に施行されていますが、最近北朝鮮問題のため再びその重要性が増しています。武力攻撃とは我が国に対する外部からの武力攻撃をいいますが、その攻撃には通常兵器による攻撃に加え、「化学兵器」「核兵器」「生物兵器」も当然含まれます。有事のなきことを切に願っていますが、現在の北朝鮮情勢を見れば今後何か起こるか予断を許しません。万が一(おそらくそれより遥かに確率は高いでしょう)三鷹市が化学兵器、核兵器、生物兵器などによる攻撃を受けた場合、その負傷者を手当てするのは当たり前ですが医師をおいて他にありません。化学兵器による負傷者を想定する場合、真っ先に思い出されるのは、1995年発生したオウム真理教による地下鉄サリン事件です。この事件では、負傷者の治療に当たった医療従事者も多数サリン中毒になってしまいました。三鷹市民の生命のみならず医療従事者自身の身を守るためにも、医師会を代表する委員としては否応なしに「化学兵器」「核兵器」「生物兵器」などによる負傷者への対応方法を学ぶ必要があります。私は三鷹医師会防災救急対策担当理事となって以来、これまでも「爆発物災害対策担当者養成講習会」「生物テロ・バイオ災害対策担当者養成講習会」に参加してきました。
 主催する「NPO法人NBCR対策推進機構」のNBCRとは、「N;Nuclear」「B;Biological」「C;Chemical」「R;Radiological」の略語です。ちなみに、来月12月10日の日曜日も1日かけて「第3回『核テロ・核災害対策担当者養成講習会』」に参加してきます(右図)。「備えあれば患いなし」三鷹市民の財産は無理ですが、「生命、身体」の保護に寄与できれば幸いと思い講習会に参加してきます。

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2017/11/26 
「昨年に続き第93回多摩医学会講演会において『三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み』を発表しました。」(その6)

左図スライド16、中図スライド17、右図スライド18

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2017/11/26 
「昨年に続き第93回多摩医学会講演会において『三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み』を発表しました。」(その5)

左図スライド13、中図スライド14、右図スライド15

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2017/11/26 
「昨年に続き第93回多摩医学会講演会において『三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み』を発表しました。」(その4)

左図スライド10、中図スライド11、右図スライド12

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2017/11/26 
「昨年に続き第93回多摩医学会講演会において『三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み』を発表しました。」(その3)

左図スライド7、中図スライド8、右図スライド9

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2017/11/26 
「昨年に続き第93回多摩医学会講演会において『三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み』を発表しました。」(その2)

左図スライド4、中図スライド5、右図スライド6

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2017/11/26 
「昨年に続き第93回多摩医学会講演会において『三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み』を発表しました。」(その1)

 2016年11月8日の院長コラム「第92回多摩医学会講演会において『熊本地震における東京JMAT活動報告』を発表しました。」において多摩医学会での発表について報告しました。昨年に続き今年も2017年11月18日土曜日、パレスホテル立川で開催された第93回多摩医学会講演会において「三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み」を発表しました。
 この学会は、都下の主たる地区医師会(日本医師会の下に東京都医師会があり、その下におもに市町村を単位とした地区医師会があります)が持ち回りで主催する小さな学会ですが、93回と学会としては大変歴史があります。今年は稲城市医師会が主催しました。一般演題と特定のテーマを持った特集演題の二つのセッションに分かれて発表しますが、今年の特集演題のテーマは、「地域における災害医療の課題」でした。そこで、三鷹市医師会を代表し、三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試みについて発表してきました。このコラムでは、抄録と作成したスライド1〜18を提示します(左図スライド1、中図スライド2、右図スライド3)。

第93回多摩医学会講演会抄録
「三鷹市における災害時医療救護所設営運営訓練の試み」

三鷹市では発災時、市医師会、歯科医師会、薬剤師会、助産師会、柔道整復師会に所属する医療機関は自院を閉院、職員はロジ担役の三鷹市商工会員とともに市内7住区の小学校に設置された災害時医療救護所と医療拠点である市内6病院に分散し参集することになっている。そのため市の実施する総合防災訓練は、例年各住区毎に小中学校等を会場として開催され、市の要請に基づき医師会は専ら災害時医療体制の解説、トリアージのデモ等(メーン会場のみ救護所を設営)を行っている。この訓練は一会場500人以上の参加市民への広報としては機能するが災害時医療を提供する我々の訓練としては不十分で、より実践的で実効性の高い訓練を希望する声が寄せられていた。そこで本年新たに救護所運営スタッフのみを訓練対象とし、発災時から診療完結までの救護所における一連の流れを実践する訓練を開催、参加者から一定の評価を得たので、その詳細ついて報告する。

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2017/11/26 
「インフルエンザワクチンの在庫が一時的に底を突きました。」

 巷間、新聞、TV等マスメディアで報道(下図)されているように、今シーズン、インフルエンザワクチン出荷時期が遅れ、かつ出荷量が最終的に約5%減少、一部の方が接種できなくなりそうです。
 厚労省は対策を講じ、「昨年度と同等程度の接種者数を確保できる見込みです」(厚生労働省ホームページより転載)としていますが、「昨年度と同程度」ですから、裏を返せば、「昨年より接種希望者が増加した場合対応できない」と宣言しているようなものです。
 原因ですが、そもそもインフルエンザワクチンには流行予測に基づき4種類のウイルス株で構成されています(2015/10/29院長コラム「インフルエンザワクチン接種が始まっています。」をご参照下さい)。一冬に流行するインフルエンザウイルスは複数種類のことが多いため、出来るだけ流行株をカバーするよう4種類のウイルス株を混合しています。その4種類のワクチン株選定は、厚生労働省健康局の依頼に応じ、国立感染症研究所が決定しています。それを受け、国内4社のワクチンメーカーがワクチンを製造します。ところが、当初決定されていた「A/埼玉/1032014(CEXP002)株」の製造効率が悪い(インフルエンザは鶏の有精卵に種を接種し培養しますが、ウイルス株により育ちの早いもの遅いものがあります)ことが判明(通常、事前に増殖効率のよいことも確かめているはずなのですが)、7月急遽昨年と同じ「A/香港/4801/2014(X-263)株」に戻されました。そのため、製造が間に合わなくなってしまいました。
 当院も11月25日ワクチン在庫が底を突きました(予約制廃止以前に予約した方の分のみ取り置きしています)。今後は少量ずつ入荷予定ですが定かではなく、予約を受け付けていません。入荷次第院内ポスター、ホームページ上で告知します。

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2017/11/03 
「2017年11月1日当院は開院10周年を迎えることができました。」

 2017年11月1日当院は開院10周年を迎えることができました。これも偏に当院を信頼し受診して下さる地域の皆さん、患者さんやそのご家族の御蔭です。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
 さて、当院では毎朝8時45分から朝礼をしていますが、11月1日の朝礼でサプライズがありました。スタッフから下図のごときお花を頂きました。前日仕事を終え帰宅したのは午前2時頃です。年々患者数が増加していますが、本年もさらに増加の一途を辿り、本当に仕事が終わらなくなっています。そのため、連日帰宅は24時頃です。とくに前夜は、19時30分から武蔵野赤十字病院山ア記念講堂で「武蔵野赤十字病院地域医師会交歓会」が開催され21時まで参加していました。その後帰院し、レントゲンや心電図の読影、健診判定や紹介状作成、各種の書類作成などを仕上げていたため、午前2時までかかってしまいました。そのため朝礼時は寝ぼけ眼で、ろくすっぽ御礼をしなかったように記憶しています。この場をお借りして職員皆さんには改めて御礼を申し上げます。今後も皆さんと一緒に当院の掲げる診療指針に則り、当院を信頼し来院される方々へよい医療を提供したいと思います。

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2017/10/09 
「放射性ヨウ素による放射線被曝予防薬ヨウ化カリウムについてロイター通信のTV取材を受けました。」

 2017年9月21日、放射性ヨウ素による放射線被曝予防薬ヨウ化カリウムについてロイター通信のTV取材を受けました。海外向けのニュース報道で、中国、東南アジア、トルコ等数か国で放送されるそうです。取材を担当したプロデューサーから配信されたとの連絡を受けました。もちろん日本国内ではそのTV番組を直接見ることはできませんが、ネット上に公開「Japanese concerns increase as relations with North Korea suffer」されているので閲覧可能です。外国からの取材は初めてです。端的に言うと、北朝鮮問題から福島原発事故以来再び放射能汚染のリスクが高まっており、一部の日本人はすでにその対策を始めているといった内容です。一部の日本人にはもちろん私が含まれます。若い娘がいる私にとってもは喫緊の問題です。皆さんは如何お考えでしょうか。

2017/10/09 
「2017年10月8日大阪国際会議場で開催された第38回日本肥満学会に参加してきました。」

 2017年10月7日から8日まで大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学教授下村伊一郎大会長のもと、大阪国際会議場で開催された第38回日本肥満学会に10月8日の日曜日のみ参加してきました。秋は三鷹市民健康診査や当院健診スクエアで受診する職場健診・人間ドックの繁忙期のため、1年で最も忙しい時期です。さらに、現在三鷹市医師会の災害救急対策委員長を拝命しているため、三鷹市が実施する総合防災訓練が開催されるこの時期は、その準備で最も多忙となります。診療を休みにくい時期ですが、幸い本年は学会開催日と連休が重なり、診療を休むことなく土曜日の午後東京を出発、1日だけですが参加してきました。
 今回のテーマは、「肥満症学『適塾』」です。学会長の下村先生のご挨拶を引用します。「適塾は、幕末の蘭学医学者・緒方洪庵が、今回の学会場に近い大阪船場の地に、後進の育成のために1838年に創設し、現在もその建物が存在しています。「人の為に生活し、ただおのれを捨て、人を救はんことを希ふべし」の精神で、高峰譲吉、福沢諭吉といった多くの人材を輩出しました。出身身分を問わず、それぞれが畳1畳のみ与えられ、皆で切磋琢磨しながら学問にいそしむ。人の受け売りはせず、皆の智恵を結集して常に世界の先端を走っている、その明るく豪快な雰囲気に皆が浸り、夜中に灯が消えたことはなかったと言います。」
 ご存知ように福沢諭吉は、慶應義塾の創立者で、その代表的著作「学問のすゝめ」の冒頭の一節「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといヘリ」はあまりにも有名です。高峰譲吉は、世界初のアドレナリン、タカジアスターゼ一の発明者。三共製薬を創業、タカジアスターゼを消化薬として売り出し巨万の富を得ています。その他、大村益次郎も適塾で学んでいます。
 今回、朝8時30分のシンポジウム「肥満症と消化管制御」に始まり、「肥満症と老化−サルコペニア/フレイルを含めて−」までいつも通り駆け足の聴講でした。その中で最も興味深かったものはランチョンセミナー「安全かつ効果的にコミットできる減量方法の確立を目指して」と題する朝日生命成人病研究所附属医院櫛山暁史先生の講演でした。「結果にコミットできる」のフレーズでピンときた方もいらっしゃるのではないかと思います。そうです、TVコマーシャルに大幅ダイエットに成功した「松村邦洋」「森永卓郎」「エド・はるみ」など有名人を起用したRIZAP(ライザップ)による減量法の分析結果を発表したものでした。RIZAPのホームページを見ると、多数の大学と共同研究を行い、RIZAPメソッドの効果について研究発表を行っています。今回の発表では経済評論家森永卓郎氏が19.9kgの減量によりその血液検査データがどれほど改善したか発表されていました(もちろんご本人の承諾済みです)。氏は糖尿病と高血圧を患っていたそうです。使用するインスリンや3種類の糖尿病治療薬、2種類の降圧剤の種類、量を見るとかなりひどい糖尿病でした。しかし、19.9kgの減量により、そのすべての治療薬を中止できるまでにデータは改善していました。減量以前の年間医療費約44万円(自己負担は3割で13万円程度)が、すべての治療薬を中止、定期検査の通院だけとなって12万円(自己負担4万円足らず)になっていました。こう考えると、RIZAPの高額な費用もリバウンドしなければ十分元がとれそうです。本セミナーを聴講したのは、事前に公表されたプログラム(最近はスマホのアプリでプログラムが配布されます)にあった「本学会限定プランをご用意してお待ちしております。」の一文が気になったのも一因です。頂いたパンフレットには、「ボディメイクスタンダード(短期集中)コース」(2ヵ月間、50分を16回)の通常料金、入会金50,000円+コース料金298,000円、合計348,000円(税別)が、いずれも半額の25,000円+149,000円、合計174,000円とあります。メタボ腹が気になる昨今、この多忙な時期にも拘わらず、家族みんなの「行くべき!」の言葉が重くのしかかっています。

2017/08/22 
「当院は認定NPO(特定非営利活動法人)法人ロシナンテスの活動を支援します。」(その1)

 2013年9月たまたまNHKテレビ番組「プロフェッショナル仕事の流儀」を見たところ、その回は「医師で国際NGO代表である『ロシナンテス』川原尚行理事長の特集でした。以下ロシナンテスのホームページからの転載です。

「2002年、川原は大使館の医務官としてスーダンに赴任しました。しかし、日本政府は当時内戦中のスーダンへの援助を停止していたため、目の前で苦しむスーダンの患者さんを救うことが許されなかったのです。川原は外務省を辞して、スーダンで医療支援を始めました。これが、ロシナンテスの活動のきっかけです。」

 番組で彼が高校の後輩であり、医師であることも知りました。その活動に強い感銘を受けましたが行動を起こすまでに至りませんでした。
 時が流れ、本年5月高校の関東支部同窓会が東京で開催、初めて参加した折、北九州から上京した川原さんも参加されており、直接お話をする機会を得ました。後日資料を頂き、活動内容を精査、やはり支援したいと強く感じました。以下に、ロシナンテスに寄付の申し入れとともに送ったメールの一部を転載します。

「5月開催の関東明陵同窓会で川原さんと名刺交換させていただきました。高校はS53年卒です。山口大医学部卒で東京都三鷹市で開業しています。詳しくは、当院HPを。約28年前、院生時代、研究活動でガーナにしばらく滞在したことがあります。小生が地域でしかnoblesse obligeを果たせていない中、皆さんの活動、行動力に大変感銘、尊敬の念を禁じえません。羨ましくもあります。そのような活動に自分自身の時間を使いたい気持ちを若い頃から持っていましたが、家庭の事情(障害を抱えた子供がいます)から果たせないで来ました。微力ながら法人として応援させて下さい。」

 私見ですが、援助活動する団体も玉石混交、残念ながら問題のある団体も存在すると認識しています。私の間違った判断のため、浄財が「悪貨が良貨を駆逐する」のを手助けすることのないよう寄付する場合、細心の注意を払うよう心がけています。判断の必須条件の一つは、自分より頑張っている方です。川原さんの活動を拝見し、私以上の高い志、高度な戦略、頑張りを確認、ぜひ応援したいと思いました。
 下図はロシナンテスの活動の様子です。画像を使用する許可を頂いたので掲載します。
 このコラムをお読みになった方、是非ロシナンテスのホームページを覗いて見て下さい。そして、出来るだけ多くの方のご賛同、ご協力、ご支援を賜れば幸いです。

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2017/08/22 
「当院は認定NPO(特定非営利活動法人)法人ロシナンテスの活動を支援します。」(その2)

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2017/08/22 
「当院は認定NPO(特定非営利活動法人)法人ロシナンテスの活動を支援します。」(その3)

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2017/08/21 
「今度は第2期梅毒です。」

 2016/10/30院長コラム「梅毒」で現在梅毒患者が急増していることをお話ししました。15年ぶりの診断を機に、記憶が曖昧になっていた梅毒の病態に関する知識をもう一度勉強しなおしたことも報告しました。あれから10か月足らずですが、今度は第2期梅毒に遭遇しました。
 患者さんは、手掌に真っ赤な皮疹が多数出現、地元の皮膚科を受診しました。診断名不明のまま取り合えず外用剤を処方されましたが治りませんでした。昨年当院で受診した健康診断において、肝機能障害などを指摘されたことを思い出し、単に皮膚の病気ではなく、内臓疾患が原因の皮膚病を危惧し来院されました。初診時一見して何が原因か判断できず、昨年の健康診断で異常を指摘された検査項目を再検査してみました。確かに様々な検査異常を認めました。今流行中の手足口病も鑑別診断として挙げましたが判断がつかず、府中市の多摩総合医療センターに紹介しました。その後、同院より、梅毒第2期との連絡を受けました。つまり、手掌の皮疹は、「バラ疹」だったのでした。私自身、医師になってからバラ疹に遭遇したのは初めてです。しっかり勉強したつもりでしたが、教科書の画像と自身の目で実物を見るのでは大違いでした。
 ちなみに、同センター宛の紹介状を作成した折、前医の皮膚科医院の正式名称を記載しようとネットで検索したところ、〇〇皮膚泌尿器科となっていました。つまり、梅毒の専門家である泌尿器科医もバラ疹を診断出来ていませんでした。泌尿器科医も最近急増しているとはいえ、梅毒診療の経験は決して多くはないということでしょう。
 医療センターから連絡を受けた数日後、東京都福祉保健局感染症対策課から、下図のごとき注意喚起の資料が送付されてきました。まさに私が診たのはバラ疹でした。また一つ勉強になりました。

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2017/08/21 
「都内で手足口病が大人にも猛威を振るっています。」

 先週、先週と合計3人の手足口病と思わる患者が来院しました。もちろん全員大人です。最後の方は62歳でした。手足口病は小児の発疹性ウイルス疾患の代表的な疾患です。しかし、大人が感染した場合、他の発疹性疾患同様に重症化することもあり注意が必要です。現在、都内では手足口病が大流行しています(左図、都内定点医療機関当たり手足口病患者報告数)。最近隔年で流行していますが、今年は流行年になっています。今年秋で開院10年になりますが、このように立て続けに手足口病患者が来院したのは初めてです。折角の機会なので手足口病についてまとめてみました。
 手足口病は、その名の通り手掌、足蹠、口腔内に水疱を生じる発疹性ウイルス疾患です。その原因ウイルスは単一でなく、コクサッキー(Cox)A-6、A-16、A-10、エンテロウイルス71(EV71)をはじめとするエンテロウイルスにより発症します。まれにCoxA-4、A-5、CoxB群やエコーウイルスの一部が原因となることがあります。インフルエンザにA型やB型などの亜型があるのと同じです。
 例年6〜7月に流行しますが、最近では秋から冬にかけても発生が持続、通年性の傾向があります。
 EV71による感染経路は、咽頭から排出されるウイルスによる飛沫感染、便中に排泄されたウイルスの手指を介する糞口感染、水疱内容物からの感染などが考えられています。経口感染によりウイルスが腸管で増殖、その後血行性に親和性のある臓器に運ばれ、そこでまたウイルスは増殖します。一度手足口病を発病しても、その病因ウイルスに対しての免疫は成立しますが他のウイルスによる発症は防げないため、手足口病が複数回発症することもあります。A-6による手足口病はしばしば体にも紅斑を生じ,時にStevens-Johnson症候群(時に命を落とすこともあるほどの水泡、表皮剥離などの表皮の壊死を伴う重症皮膚疾患)様の症状を呈する症例もみられます。今回、一人の男性は両手の皮膚がほとんどが落屑(表皮が剥け落ちること)しており、大学病院皮膚科に紹介しました。
 好発年齢は4歳以下ですが学童期でもみられます。潜伏期は通常3〜6日で、症状経過以後もウイルスは咽頭から1〜2週間、糞便からは3〜5週間排泄が持続します。今回来院された方々は皆成人で20歳代後半から62歳までの方々でした。うち一人は、明らかに手足口病の子どもと接していましたが、残りの二人は小児と接しておらず、感染経路は不明でした。大人の場合、多くは手足口病に感染した小児との接触によって感染していますが、大人−大人感染もあります。手足口病に罹った孫の面倒を頼まれた62歳の女性は7日目に発症していました。
 潜伏期の後、発熱、喉や口内痛を来します。手足では手背、指間、足背、趾間のみならず、手掌や足底にも直径2〜3mmの紅斑、丘疹および小水疱が出現します。乳幼児期には殿部、膝、などの皮膚の厚い部分にも水疱性丘疹が出現することが多いです。発熱は約1/3にみられますが軽度で38℃以下のことがほとんどです。口腔粘膜には紅暈を伴った浅い潰瘍を形成、時に痛みの強いこともあります。通常3〜7日の経過で水疱は色素沈着を残して消退します。皮膚の痒みや痛みを訴えることは少ないです。3人全員が当初発熱、喉の痛みを訴えていました。うち一人の皮疹は膝、臀部、体幹の一部に拡大、発症後2週間を経過していましたが皮疹は消退しませんでした。特質すべき点は、その方は当院を受診する前に皮膚科を受診、原因不明と言われていた点です。投薬で改善がみられないため(後述の如く治療法がないのですから当然です)不安になり、内臓疾患を疑い内科の当院を受診しました。
 下痢,嘔吐などの消化器症状を伴うこともあります。通常は軽症ですが、ごくまれに髄膜炎、脳炎、小脳失調症、ポリオ様麻痺、Guillain-Barré(ギラン-バレー)症候群などを引き起こすことがあります。ほか、心筋炎、腎障害などを生ずることもあります。特にEV71感染の場合には,中枢神経系合併症,肺水腫,急性心筋炎による死亡率が高いために注意する必要があります。
 治癒1〜2ヶ月後に爪の変形や爪甲脱落が生じる例が報告されています。
 多くは自然治癒する予後のよい疾患で、治療は対症療法となります。口腔内の発疹で疼痛が強く、飲水・摂食不良になっている症例では脱水予防目的に補液します。
 基本的に皮疹が治癒するまでは学校などの出席を停止します。皮疹治癒後も長期間にわたり鼻汁、糞便などの排泄物による接触感染、もしくは咳などによる飛沫感染により他人に感染する可能性があるので手洗いによる感染予防を励行させます。
 予防接種はありません。予防には、手洗い、うがい、咳エチケットの励行が有効です。発疹が消えても、3〜4週間糞便中にウイルスが排泄し続けるため、手洗いを徹底し、タオルの共用は避けるべきです。

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2017/08/06 
「心電図計、血圧脈波検査装置、スパイロメーター、24時間自由行動下血圧計、パルスオキシメーター等を一新しました。」

 約10年前の開院時に購入、使用し続けていた心電図計、血圧脈波検査装置、スパイロメーターを一新、24時間自由行動下血圧計、パルスオキシメーターの台数を増やしました。
 先日血圧脈波装置が不具合を起こし、修理が必要な状態になりました。その他の機器は問題なく使用していましたが、これを機にこれらの機器をすべて一新しました。
 当院の生理機能検査機器はいずれもフクダ電子製を使用していますが、心電図は同社の販売する心電図の中でハイエンドモデルであるFCP-8800(左図)にしました。ACS(急性冠症候群)診断補助機能やBrugada波形診断機能などの新機能が充実していので選定しました。
 また、血圧脈波検査装置は省スペースタイプでタッチパネル式のVS-2000(中図)にしました。
 スパイロメーター(肺機能検査装置)は、肺年齢を経時的に表示できるSP370肺per(右図)を選定しました。
 24時間自由行動下血圧計(ABPM)は、従来のエー・アンド・デイ社製に加え、新しくフクダ電子製のFB-270を購入、2台体制としました。
 パルスオキシメーターは医師用と看護師用の2台に増やし、呼吸不全の疑われる患者さんがいたら、迅速に測定できる体制にしました。
 締めて300万円強の出費となりましたが、診療レベル向上が図れる上、故障を心配することなく日々安心して診療ができることを思えば十分見合う投資だと思います。

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2017/07/30 
「7月25日「糖尿病トータルケア〜これからの糖尿病治療を考えるin多摩〜」で座長を務めました。」

 7月25日吉祥寺第一ホテルにて開催された講演会「糖尿病トータルケア〜これからの糖尿病治療を考えるin多摩〜」において講演1の座長を務めました。本講演会では、講演1で杏林大学大学院医学研究科第三内科糖尿病・内分泌・代謝内科の保坂利男講師が「高齢糖尿病患者の診療入門」と題する講演を、講演2では、京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の福井道明教授が「糖尿尿食事療法と薬物療法の課題とその対策」と題して講演されました。保坂先生の大学の先輩(山口大学)である私は、以前より知己でしたが、その縁で今回の講演の座長を依頼されました。
 講演1では高齢糖尿病患者の診療全般について、まさしく「トータルケア」についてお話頂きました。詳細は割愛しますが一つだけ以前から私自身も感じていたことを報告します。
 高齢化社会と糖尿病患者数の増加に伴い、必然的に高齢糖尿病患者が急増しています。2014年厚労省が発表した「患者調査の概況」では、日本国内の糖尿病患者数は過去最高の316万6,000人に達しています。厚労省の発表した「2014年国民健康・栄養調査」では、70歳以上では、男性の4人に1人(22.3%)、女性の6人に1人(17.0%)が糖尿病を患っていました。
 糖尿病そのものはほとんど自覚症状がありません。しかし、糖尿病の怖いところは高血糖を放置するといずれ出現してくる合併症の存在です。糖尿病が原因で失明されたり、血液透析を受けたり、下肢を切断したりした方の話を皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。糖尿病の合併症には、
1、神経症:高血糖により増加したソルビトールが全身の神経に蓄積し神経が麻痺していきます。
2、網膜症:眼球の中の光を感じる網膜に存在する細い血管がもろくなり、眼底出血などをきたし、視力が低下、最終的は失明します。大人になってからの失明原因の第1位が糖尿病です。
3、腎症:腎臓にある糸球体の中の毛細血管が破壊され、腎機能が低下、最終的には尿毒症となり、人工透析なしでは生きていけなくなります。現在、人工透析導入原因の第1位が糖尿病です。
 以上三つを三大合併症と呼びます。その他、大血管障害として、脳梗塞、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、末梢動脈疾患(壊疽)などがあります。また、糖尿病では免疫力が低下するため、さまざまな感染症に罹りやすくなります。さらに、糖尿病が重症で極端に血糖コントロールが悪いと、昏睡状態になり急死する場合もあります。
 これら怖い合併症を持つ糖尿病ですが、糖尿病に対する様々な治療薬が開発されこともあり、日本の糖尿病患者の寿命は延びています(日本糖尿病学会の「糖尿病の死因に関する調査委員会」報告)。では糖尿病患者さんは、最期どのような死因で亡くなるのかというと、第1位は悪性新生物(38.3%)、第2位は感染症(17.0%)、第3位は血管障害(慢性腎不全、虚血性心疾患、脳血管障害)の14.9%で糖尿病性昏睡は0.6%でしかありませんでした。上述のように糖尿病治療薬の改善に伴い高齢糖尿病患者が増加した結果、意外ですが直接糖尿病に関連した死因で亡くなる方より、がんで亡くなる方の方が多くなっています。
 しかし、このがんも実は糖尿病とは無関係ではありません。国立研究開発法人国立がん研究センターの社会と健康研究センター予防研究グループが発表した「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」において、糖尿病患者は糖尿病のない方に比べほとんどすべてのがんで2倍程度がん発生リスクが高いことが報告されています。以前から言われていたことですが、糖尿病患者は免疫力が低下しているため、がんに罹りやすいことが分かっています。
 当院の外来にも多数の高齢糖尿病患者さんが通院されています。その中から毎年数人の方ががんを発症されています。とくに印象深いの膵臓癌です。膵臓癌はがんの中でも非常に予後が悪く、見つけても助けられない例がしばしばです。自覚症状を訴えられ、検査した場合はほとんど助かりません。ですから、糖尿病患者さんには、膵臓癌を早期発見するため少なくとも年1回腹部超音波検査を受検することを進言しています。実は、超音波検査は患者さんの体型(肥満があると膵臓の観察が困難になる)や検査時の条件(胃や腸にガスが多いと膵臓、とくに膵尾部の観察が困難になる)などで膵臓すべてを観察できるとは限りません。ですから、この超音波検査だけでは不十分です。しかし、現実問題、全くの自覚症状のない糖尿病患者全員に高額な腹部CTやMRIを実施することは保険診療では認められていません。ですから、せめて腹部超音波検査だけでも受検して頂きたいというのが主治医からの願いです。

2017/07/17 
「英文書類の作成に関して」

 国際化という言葉は今では当たり前すぎて、陳腐な印象さえ受ける言葉になりました。当院でも、一時、中国人による「爆買」がありました。具体的には「金額はいらでも構わないので、出来る検査をすべてやって欲しい。」といった電話での問い合わせが健診スクエアにありました。できる検査すべてと言われても、健診スクエアのページのオプション検査項目一覧表を見ていただければわかるように、一つ一つの検査はさほど高額ではありまんので、全部やってもしれています。
 少し話は脱線しましたが、外国の方がちらほら来院されますし、日本人の方から外国に提出する英文書類を依頼されることも珍しくありません。
 依頼される英文書類で最も多いものが、インターンシップや留学予定の方から依頼される予防接種証明書です(左図は東カルフォルニア大学のもの)。例えば米国などでは、麻疹の予防接種を規定通り受けていなけば、入学させない、入寮させない、さらには州に入らせないとするところもあります。欧米諸国では大なり小なり似たような規定を設けています。留学経験もなく英語は得意ではありませんが、基本的に英文書類作成の依頼はお受けしています。しかし、内容から当院で作成できないものもあります。外務省ホームページ「世界の医療事情」中の「アメリカ合衆国(ニューヨーク)」のページ、「(3)学校への入学・編入」の項目を転記します。ところどころ私が色付け拡大しています。

「学校への入学・編入時には州で規定された予防接種やツベルクリン反応検査が義務付けられています。幼稚園から大学・大学院はもとより、サマーキャンプへの参加等にも予防接種証明書の提出を要求されることがあります。この証明書がないと入学を許可されず、各種行事に参加できない場合もあります。米国 の小児予防接種には、日本の小児予防接種には含まれていないものや、接種回数が異なっている項目が多くあります。過去に実施した予防接種又は罹患歴が証明できない場合には、全て再接種を要求されることも往々にして起こっています。これを防ぐには、母子手帳や予防接種記録・証明書及び罹患証明書(医師が作成した予防接種,罹患証明書)等が必要です。この証明書を当地の医療機関に持参し、不足分の接種を受けて学校等の予防接種証明書を作成してもらうことになります。当地では、ツベルクリン反応陽性者は結核感染者として取り扱われます。しかし、邦人の中には過去に受けたBCG接種の影響で反応が陽性となったと思われる方も稀ではなく、これら陽性者(結核感染による陽性かBCG接種による反応か)の取り扱いが度々問題となっています。」

 母子手帳を見て、予防接種記録を頂いた英文書類に転記するだけなら問題ありません。また、抗体価を測定し、その結果を記入したり、抗体価が不足していたり、未接種だったりしたワクチンを当院で追加接種することも問題なくできます。ただ、追加接種を要求されたワクチンが日本で未承認のものだと当院では対応できません。日本承認のワクチンで代用できる場合もあるようですが、小児科としての専門的知識が必要になってきます。2017年7月16日の院長コラム「小児患者の当院の対応について」で記載したように、当院では小児の診療はほとんどしていませんでの、小児の予防接種に関して専門的な知識を有していません。ましてや、海外のワクチン事情に関してはなおさらです。そのような場合、小児科標榜の医療機関やトラベルクリニックを受診するよう進言しています。ですので、事前に、作成希望の英文書類を当院に持参していただき、当院で対応可能か拝見し、お受けするか否か判断することにしています。そのため、書類作成期限には時間的に十分余裕を持って頂きますようお願いします。ちなみに、B型肝炎ワクチン予防接種を要求する書類の場合、B型肝炎ワクチンが6か月間かけ3回接種するワクチンのため、書類完成まで半年かかることになります。
 次に多いのが海外旅行時の英文携行薬剤証明書(右図)です。通院中の患者さんに限り書類を作成しています。
他院通院中の方は、主治医にご依頼下さい。
 その他さまざまな書類(格闘技大会参加のための健康診断書、移住や婚姻ための健康診断書など)を依頼されますが、個別に対応しています。いずれにしても事前に書類をご持参いただき拝見、当院で作成可能なものか確認の上ご返事しております。

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2017/07/16 
「小児患者への当院の対応について」

 当院は内科であって、小児科を標榜していません。では小児が来院された場合、当院ではどのように対応しているのでしょうか。
 日本の医薬品の添付文書における年齢区分では、小児は15歳未満としています。では、小児科ではなく内科の当院は15歳以上の方のみを対象として診療しているのでしょうか。
 日本の法律では、小児科が15歳未満を、内科が15歳以上を診療するなどと明文化されていません。つまり、小児科が15歳以上を、内科が15歳未満の患者を診療することは法的に禁止されていません。山奥や離島に1件しか診療所がない場合など、全年齢を診療しなければ住民は困ってしまうからです。
 このように、小児科が何歳まで診察し、内科が何歳から診察するかは医療機関独自で決めています。
 ちなみに私の知るかぎり、三鷹市内のほとんどの内科開業医は小児の診療をしています。極端な話、周囲に小児科がないため、大人以上に小児を診ている内科医もいます。
 当院の場合、たまたま(というより小児を診ないで済むように小児科の隣で開業しました)小児科の隣で開業しているため、基本的に小児(15歳未満)の診療はお断りし、隣のつちや小児科を受診するよう進言しています。その方が患者さんのためだからです。
 ただし、つちや小児科が休診の場合、お受けし出来る範囲で精一杯診療しています。子どもは好きなので、困っているなら助けたいですから。
 また、つちや小児科が休診でなくとも、事情があり敢えて当院での診療を希望する場合もお受けしています。
 当院職員や当院通院患者さんのお子さんで、当院を受診した方が便利だったり、インフルエンザを含め予防接種のようにどちらで接種しても全く同じ内容だったりする場合もお受けしています。

2017/07/10 
「7月7日グランドプリンスホテル広島で開催された第49回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。前日午後の診療を予約限定とし申し訳ありませんでした。それから、脳卒中の奇跡のような治療が来年実用化されます。」

 平成27年7月6日から7日にかけて、JCHO星ヶ丘医療センター、広島大学名誉教授松本昌泰大会長のもとグランドプリンスホテル広島で開催された第49回日本動脈硬化学会総会・学術集会に7日の1日だけ参加してきました。前日6日19時3分三鷹発の電車に乗り、23時53分広島着の切符を事前に購入していました。宿泊先は学会会場のホテルを事前に予約していました。駅からホテルまで20分余りかかるため、ホテルに着くのは24時をとうに過ぎる予定になっていました。この旅程が東京から広島に行くほぼ最後の電車のため、絶対に乗り遅れるわけにはいきません。7日金曜日の診療を休診にしていたこともあり、前日6日は朝からいつも以上に患者さんが多く、また、重症の方もいたため、午前中の診療はついに午後の診療開始時間14時になっても終わらない始末に。予約診療にもかかわらず午後の診療開始時間を30分遅らせ、10分間で持参した弁当を掻き込み、午後の診療を始めました。お待たせした方には大変申し訳ありませんでした。このままでは19時3分三鷹発の電車に間に合わないのは火を見るよりも明らかです。そのため、午後の診療は予約者限定にし、予約のない方の診療はすべてお断りしました。今回のことも含め、最近とみに公務の会議体(東京都や三鷹市、医師会など)が多く、遅刻できない場合、診療時間を1、2時間休診にすることも珍しくありません。それでも間に合わない場合、予約限定にすることも時々あります。ですから、受診される方は極力予約されることをお勧めします。すでに予約があるにもかかわらず、休診にすることは絶対にありませんので。
 さて、朝から最終のシンポジウムまで目一杯講演を拝聴しましたが、多数の新しい知見を吸収することができました。皆様にご迷惑をおかけしましたが、明日からの診療に役立てたいと思います。新しい知見は早速ホームページにアップしますが、この場を借りて幾つかご披露します。
 今回の大会テーマは「分子レベルから見た脳・冠動脈硬化症〜その臨床へのインパクト〜」です。まず、「脂質異常症診療のupdate」と題するシンポジウムに参加しました。当院ホームページ「脂質代謝内科」のページ、「動脈硬化危険因子」の項目の「その他の考慮すべき危険因子」にLp(a)を記載しています。Lp(a)は悪玉のLDL同様、動脈硬化病変への蓄積、冠動脈疾患の独立した危険因子として確立され、その測定は保険適応にもなっています。しかし、これまでそれほど大きく注目されていませんでした。それはLp(a)を測定し、たとえ異常を認めたとしても、Lp(a)を低下させる治療薬がビタミンのニコチン酸程度しかなく治療が困難だったからです。脂質異常症の代表的な治療薬、スタチン(おもにLDLコレステロールを下げる薬)やフィブラート(おもにトリグリセライド;TG≒中性脂肪を下げる薬)は全く無効です。そのため、残余リスク(LDL-コレステロールを治療しても残る心血管イベントリスクのこと。高LDLコレステロール血症を完璧に是正しても、心筋梗塞になる確率は0になりません。換言すれば、LDLコレステロール以外に動脈硬化を促進し、心血管イベントを発症させる危険因子が存在するということです。)の中でもとくに注目すべき因子です。最近、使用可能となった完全ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体製剤は、Lp(a)を劇的に低下させるため、Lp(a)が再び注目を集めています。また、アスピリン(300mgの高容量)にも低下作用があるとのことでした。
 次に、トリグリセライド測定の標準化について。日本と欧米ではトリグリセライドの測定方法が異なり、欧米では遊離グリセロールを含めて測定、日本では最初に遊離グリセロールを除去してから測定しているため、欧米より5%程度低い値になるとの話には、私を含め多くの聴衆が驚かされていました。これでは欧米と日本でTG関する共同研究をすることも困難だし、欧米の論文をそのまま日本人に当てはめるのは不正確です。数年前、糖尿病検査HbA1cの測定方法が日本(JDS)と欧米(NGSP)で異なり、1割近い差のあることが問題となりました。日本の方が正確な測定方法であったにも拘わらず、多勢に無勢で押し切られ結局日本が欧米に合わせることになってしまいました。日本では、頭蓋内圧亢進、頭蓋内浮腫治療剤、眼圧降下剤であるグリセロール製剤の影響を除去するため、わざわざ遊離グリセロールを除去するステップを実施しています。ですから、日本の方が理にかなった正確な測定方法と言えます。今後、欧米と日本を含めたアジア、ひいては世界全体で標準化する試みがなされることでしょうが、今回こそは正確な日本の測定方法を採用してほしいものです。
 第34回大島賞を受賞した日本医療大学学長、前札幌医科大学学長の島本和明先生の講演を拝聴しました。先生のお話は高血圧学会を含めこれまでも何度となく聞いています。今回、受賞講演であるため、先生のこれまでの研究生活、業績を総括したお話でした。しかし、最後に自身が学長だったころのプロジェクトとして紹介された札幌医科大学で現在進行中の「自家骨髄間葉系幹細胞を用いた脊髄損傷、脳卒中患者治療」いわゆる再生医療の成果については衝撃を受けました。あまりに素晴らしい成果ため厚労省「先駆け審査指定制度」の指定を受け、来年早々には保険適応となるそうです。講演では、脊髄損傷や脳卒中のため、四肢に完全麻痺の後遺症が半年以上に渡って残った方に、約1万倍に増殖させた自家骨髄間葉系幹細胞を点滴すると、早い方ではその日のうちに全く動なかった手足が動き始め、2、3週間後には歩けるようになって退院するという信じられないような動画を見せられました。もちろんチャンピオンデータ(多数の治験症例の中から、最も治療が奏功した症例のデータ)ですが、あまりに改善ぶりにあっけにとられました。しかも治験を行った10数例のほぼ全員に効果があり、あまりに有効なため治験を途中で打ち切り、臨床応用となったとのことでした。それは奇跡ともいうべきく映像でした。動画をお見せできないのだ残念でなりません。
 「EPAを臨床に活かす:最新の知見」と題する講演も大変興味深いものでした。EPAの作用を血小板凝集抑制作用より、抗炎症作用に注目した解説でした。腹部大動脈瘤(AAA)、急性冠症候群(ACS)、急性心筋梗塞(AMI)はみな炎症ですから、炎症のマーカーCRPが高いほど予後が悪くなります。CRPの解説は、Lp(a)同様、「脂質代謝内科」のページ、「動脈硬化危険因子」の項目に詳しく記載していますのでご参照下さい。ですから抗炎症作用のあるEPAをこれらの疾患に早期から投与すると予後が著しく改善するデータを提示されました。抗炎症作用を発揮するためにはEPAは1800mg/日程度必要とのことでした。なお、厚労省は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」において健常人も、1g/日以上のn3系脂肪酸(EPA及びDHA)の摂取を推奨しています。なお、n-3系多価不飽和脂肪酸の効用につては、やはり、「脂質代謝内科」のページ、「n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA;エイコサペンタエン酸、DHA;ドコサヘキサエン酸)の効用」の項目に詳しく記載していますのでご参照下さい。
 最後につい最近発表された「動脈硬化疾患予防ガイドライン2017」のシンポジウムに参加、今回改訂の要点について勉強しました。7日の帰宅も24時頃になりましたが、充実した1日となりました。ただ、翌日8日土曜日の午前診療は15時近くまで終わらず、書類の整理が終わったのは未明で、また午前様になってしまいました。

2017/06/26 
「新患患者動向調査結果について」(その1)

 新患患者がどのような経路で当院を認知、どのような理由で当院を選択したかを知る目的で、2016年10月20日より2017年4月10日まで当院を初めて受診した方305人を対象にアンケート調査を実施しました。アンケートをお願いした方のほぼ全員がお答え下さいました。まずは御礼申し上げます。
 質問票は左図のごとくで、合計6問お尋ねしました。その結果を報告します。
 まず、性別は女性224人、男性81人と女性が73%を占めていました。
 年齢は中図のごとく、40歳代を頂点に30〜40代の方が48%を占めていました。このように40歳代を頂点に中年女性の新患が圧倒的に多かった理由は後述します。
 右図の如くお住まいは当然三鷹市内が84%と圧倒的に多かったです。私の知る限り住宅地で診療する一般的なクリニックでは、市境にでも位置していなければ、患者さんのほとんどが地元自治体の住人です。ですから、むしろ16%も三鷹市外から来院されているのが驚きです。おそらく、その理由は当院が健診スクエアとして企業健診を請け負っていること、三鷹駅に近く住宅地というより商業地のため、住所が市外でも勤務先に近いとの理由で当院を受診される方が少なからずいること、などによるものだと思います。初めは勤務先に近いからとの理由で当院に通い始め、その後転勤したり、リタイアしたりした方も引き続き通院されている方がたくさんいらっしゃいます。こういった方々はほとんどが三鷹市外にお住まいです。私自身、診療していてご住所が遠方の方が多いと皮膚感覚でも感じていました。

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2017/06/26 
「新患患者動向調査結果について」(その2)

 左図は当院を知った経緯、経路です。予想通り、ホームページと紹介が各々約30%で最多となっています。ホームページに関してはパソコンとスマホが半々で、スマホ使用者が増加しているのを実感しました。昨年10月ホームページをリニューアル、スマホ対応としたのは間違っていなかったようです。
 個人的には、家族・友人・知人・当院職員など口コミ、紹介などが理由で来院された方が31%もいたとことは大変心強く、嬉しい限りです。当院の通院患者や当院職員の口コミは、私を直に知っている人たちの当院の診療に対する評価です。その人たちが当院を周囲に勧めて下さるということは、当院の診療が高い評価を得ているということで、大変名誉で自信になります。
 さらに「その他」の理由をみると、黄色で色付けしたものは、すべて三鷹市のさまざな健診を受診するときに、受診先の医療機関を探すための経路です。それらを合計してみると52人で約17%になります。このことから、40歳代を頂点に中年女性の新患が圧倒的に多かったのは、三鷹市乳がん検診を受診するため初めて当院を受診した方が多かったためではないかと推察されます。当院がマンモグラフィ(乳房レントゲン装置)を導入し、三鷹市乳がん検診受託施設となったのは2014年度とまだ歴史が浅く、ようやく周知されてきたことに加え、三鷹市内に5施設しかなかったMMG検査受託施設の一つで、当院のすぐ近くにあった武蔵野病院が昨年11月から診療を停止したため、当院に乳がん検診受診者が流れてきたことも影響しているのではないかと思います。
 また、「看板を見て」来院された方は9%でした。当院はクリニックの建物以外の場所に、電柱看板や駅看板などを含め一切看板を出していません。ですから「看板を見て」来院された方は、「通りかかり」とほぼ同義です。合わせて16%しかありません。つまり、換言すると当院に来院される方の84%が事前に何らか方法で当院の情報を得て来院されており、急に具合が悪くなって飛び込んでくるような一見の患者さんは非常に少ないということです。おそらく、ビル2階にありいわゆる路面店でないためだと思われます。
 右図は当院への交通手段です。徒歩、自転車が圧倒的に多いのは、三鷹市内にお住まいの方が84%だったことと符合します。しかし、にもかかわらず、バスで来院される方はわずか8%しかいませんでした。当院が面する三鷹中央通りはバス便がなく不便な場所のためと思われます。そのため商店街の方々と協力し、三鷹中央通りにみたかシティバスを誘致する運動を始めました(院長コラム2017/05/16「三鷹中央通りにみたかシティバスを走らせましょう。」(その1)(その2)(その3)をご参照下さい)。
 今回アンケートを実施しいろいろなことが明らかになり、今後の診療に役立つ情報を多数得ることができました。
 最後に次回アンケート調査に向けた反省点として、受診目的の設問を設定しなかったことが挙げられます。つまり、病気で受診したのか、健康診断目的なのか尋ねる設問あれば、先述したような推察の答えも明確になり、もっと詳細な分析が可能になったと思います。
 末筆ではありますが、アンケートに回答して下さった方々に重ね重ね御礼申し上げます。

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2017/06/25 
「内なる海と原発性アルドステロン症」

 ある特定の原因による高血圧を二次性高血圧といいます。ある特定の原因が一次で、高血圧はそれに合併する二次的なものだからです。一方、遺伝、体質に環境因子(悪しき生活習慣)が重なり発症、特定の原因のない高血圧を本態性高血圧と呼びます。本邦の高血圧患者数はおよそ4300万人と推測されていますが、約9割が本態性高血圧のため、一般に本態性高血圧は単に高血圧と呼ばれることが多いです。
 本態性高血圧は特定の原因がないので、背景となる生活習慣の是正を試みても改善がみられない場合、降圧剤を開始することが多いです。一方、二次性高血圧は特定の原因を取り除くと自ずと血圧が改善、降圧剤が不要となる場合もあります。すなわち治癒可能な高血圧の可能性があります。ですから、二次性高血圧を正しく診断することで、生涯降圧剤を飲み続けなければならない方を少しでも減らすことができます。
 二次性高血圧は稀なものも含めると数十種類以上はあります。主なものはホームページ「高血圧内科」のページの「本態性高血圧か二次性高血圧かの鑑別診断」の中の表をご覧下さい。二次性高血圧の中で最も頻度が多いのは原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism;PA)と睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome;SAS)です。今回は、PAについてお話します。
 両側腎臓の上に帽子のように被さる副腎(左図、ピンク色の両側腎臓の上にある黄色の部分)という臓器でアルドステロンaldosteroneホルモンが作られています。アルドステロンは、腎臓でカリウムを排泄、引き換えにナトリウム(塩)の再吸収を促進、血圧を上昇(維持)させる働きを担っています。
 ところで、皆さんは地球上の最初の生命が塩水である海の中で誕生したことをご存知のことと思います。約46億年前に最初の生命は誕生したとと考えられています。その後生物は陸上に進出、長い進化の過程を経て人類は誕生しました。赤ちゃんは母親の羊水の中でたった一つの受精卵から約10か月をかけ成長します。ヒトの受精卵は胎内で人類の進化の過程、数十億年の歴史を10か月で経験、生まれてくるといわれています。そのため、個体発生の初期段階、胚子はすべての脊椎動物で形態学的に非常に似ており、妊娠後半の器官形成期を経て各動物固有の形態に成長していきます(中図、エルンスト・ヘッケルによる脊椎動物の胚の比較)。羊水の塩分組成、塩分濃度(約0.9%)は海水に非常によく似ています。現在の海水の塩分濃度は約3.5%ですが、約4億年前のデヴォン紀、脊椎動物が誕生した頃、原始の海の塩分濃度はその程度だったと推測されています。つまり受精細胞は海水の中で成長していくのです。出産後もヒトの細胞は細胞外液(血液、リンパ液、組織液など)の中で生命を維持します。やはり、この細胞外液の塩分組成、塩分濃度(約0.9%)は羊水同様海水に非常によく似ています。フランスの科学者ルネ・カントン(1866〜1925)は、この様子を「内なる海」と表現、脊椎動物に生命維持のためこの内なる海の塩分組成、塩分濃度を保とうとする仕組みがあることを発見しています。現在、この仕組みを「ホメオスターシスhomeostasis(同一の状態、恒常性)」と呼び、生物が外的、内的環境の変化にかかわらず、生体の状態を常に一定範囲内に調整し、恒常性を保とうとすることを意味します。
 アルドステロンホルモンはナトリウム濃度を低下させないため脊椎動物が進化の過程で獲得した機能です。古代、塩は貴重品で海辺で生活していれば別ですが、内陸部で生活する人にとって、むしろ塩分摂取不足による低ナトリウム血症のリスクの方が大きかったのではないかと推測されます。日々の労働も現代とは違い肉体労働が中心ですから、発汗のため低ナトリウム血症をきたし熱痙攣(熱中症の一型)を発症することも多かったと想像されます。そのような状況下、このアルドステロンは生命維持のため必須のホルモンでした。しかし、現代社会では発汗量も少なく(エアコンもありますし)、むしろ塩分過剰摂取が喧伝される中、このホルモンの重要性は極端に低下しています。
 原発性アルドステロン症PAは、副腎にアルドステロン産生腫瘍ができたり、過形成がおきたりしてアルドステロンが過剰分泌され、体内にナトリウム(塩)が貯留、血圧が上昇(ナトリウムが過剰になると塩分濃度を下げるため喉が渇き、飲水します。すると循環血液量が増加、血管の中の圧力=血圧が上昇します)する一方、カリウムの排泄が促進され、低カリウム血症をきたす疾患です。低カリウム血症が進行すると四肢の脱力、周期性四肢麻痺、多尿、多飲などの症状がでます。しかし、近年、低カリウム血症をきたさない程度のPAが多く存在、本態性高血圧と鑑別が困難であることが明らかになってきました。そのため、これまで見逃されていた低カリウム血症をきたさないPAを考慮すると、PAはまれな疾患ではなく、高血圧患者の20%近くがPAであるとする研究報告さえもなされています。このように非常に高頻度で鑑別困難なため、日本内分泌学会、日本高血圧学会とも高血圧患者全例でのスクリーニング検査を推奨しています(右図)。
 本態性高血圧とは下記のごとき違いがあり、そのような症例ではPAを疑い必ずスクリーニング検査を実施する必要があります。

スクリーニング検査が推奨されるPA高頻度の高血圧群
----------------------------------------------------
・低カリウム血症(利尿剤誘発性も含む)合併高血圧
・若年者の高血圧
・U度以上(中等症・重症)の高血圧
・治療抵抗性高血圧
・副腎偶発腫瘍を伴う高血圧
・40歳以下で脳血管障害合併例
----------------------------------------------------
      (高血圧治療ガイドライン2014から転記)

 初診時未治療の患者さんでは、まず採血でPAC・PRA同時測定を実施します。一方すでに降圧剤を服薬していた場合、検査データに影響を及ぼしにくい降圧剤(Ca拮抗薬、α遮断薬、ヒドララジン)を服用中なら早速採血しますが、それ以外の降圧剤を服用している場合は、一旦降圧剤を中止するか、上記薬剤に降圧剤を変更し採血します。ただ、降圧剤の変更が患者に著しい悪影響を及ぼす危険のある場合、そのまま採血することもあります。採血結果が、PAC/PRA比>200、PAC>120pg/mLを満たす場合、当院では翌月(保険診療では、同一月内に2回のPAC・PRA測定は査定を受ける可能性があるので)に30分安静臥位を保持後再度採血しています。その結果、やはりPAを疑う結果が得られた場合、高次医療機関(杏林大学病院、武蔵野赤十字病院など)へご紹介しています。
 PAは本態性高血圧と異なり、脳、心血管系、腎臓等の臓器障害を合併しやすいことが分かっています。また、PAの副腎病変が一側性の場合、腹腔鏡下副腎摘出術(副腎は両側にありますが、卵巣同様片方は予備で一方を摘出しても生活上支障ありません)により高血圧が根治可能です。ただ、本態性高血圧も合併していると、術後血圧値は低下しても完全に正常にはならず、降圧剤の服用を継続しなければならない場合もあります。さらに最近、横浜労災病院内分泌内科では、超選択的副腎静脈採血により片側副腎の中の腫瘍局在部位を同定、片側副腎を全摘出する必要のない単孔腹腔鏡下副腎部分切除術という患者さんにより侵襲の少ない術式も開発されています。副腎腺腫は必ずしも片側とは限らず、両側性の方が3〜4割程度います。そのような方は手術できませんので、PA内服治療として最適な抗アルドステロン剤による治療となります。患者さんの中には端から手術を希望されないか方もいます。当院では、たとえ手術を希望されなくとも確定診断のため負荷試験までは進言しています。内服治療を行うにしても、PA疑いのまま治療を行うのではなく、確定診断の上治療を進めた方が降圧剤選択や予後判定時、より正確に判断できると考えているからです。
 当院では現在(2017年4月現在)まで、24人の方が精密検査により原発性アルドステロン症の確定診断を受け、64人の方が検査中です。高血圧の方で、PAスクリーニング検査未実施の方は、是非一度検査を受けて下さい。

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2017/06/08 
「三鷹市国民保護協議会の委員に就任しました。」(その1)

 市に請われて三鷹市医師会代表として「三鷹市国民保護協議会」の委員に本年より就任しました。先月も外来を休診にして、本年度第1回会議に出席してきました。医師会理事会で同会議の件を報告しましたが、ほとんど先生がこの協議会の趣旨どころか存在自体を知りませんでした。斯く言う私も知りませんでした。この会議は、「武力攻撃事態における国民の保護に関する法律(平成16年法律第112号)−いわゆる国民保護法−」の施行を受けて「三鷹市国民保護計画」(左図「表紙」、中図「はじめに」、右図「目次1」)を策定するために開催される会議です。

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2017/06/08 
「三鷹市国民保護協議会の委員に就任しました。」(その2)

 目次(左図「目次2」、中図「目次3」、右図「目次4」)をご覧になるとお分かりのように、テロ攻撃、例えば北朝鮮からのミサイル攻撃等を想定した内容になっています。昨今、連日のように海外でのテロ事件が報道されています。2020年の東京オリンピック開催に伴い多数の外国人の来日が予想されています。その中にテロリストが紛れ込み入国する可能性があります。テロ事件発生が懸念され、テロ対策、治安対策が喫緊の課題となっています。そのような状況下、国民保護協議会の存在意義はなお一層増しています。

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2017/06/05 
「くじ運は絶好調。今度は東京ドーム巨人戦、1塁側エキサイトシート3人分が当選しました。」

 昨年10月9日の院長コラム「帰宅は連日深夜ですが嬉しいことがありました。フォトコンテスト大賞を受賞しました。」でディズニーランドペアチケットをゲットした件、ご報告しました。今回は純粋にくじ運で、東京ドーム巨人vs中日戦のなんと1塁側エキサイトシート3人分(下図)をゲットしました。
 拙宅の土地を購入時、仲介して下さった不動産会社からその後社報が定期的に送られてくるようになりました。2か月ほど前の春休み中、時間もあり珍しく何気なく眺めていると、巨人戦エキサイトシート3人分プレゼントの案内が掲載されていました。太っ腹にも合計10試合30人分のプレゼント。社報の配布先は当然以前同社を利用した顧客でしょうからそんなに多くはないはず、当選確率は相当あるのではないかと思いました。何せその会社は社員7人ほどの小さな会社ですから。早速申し込みました。
 2か月が経ち、ほとんど忘れかけていたころ、当選のメールが。早速家族に報告、希望者を募ってみると娘3人が名乗りを上げました。普段野球に全く興味のない三女も野球観戦してみたいと言い出しました。私はその頃には、当選枚数が3人分であったことをすっかり失念、娘達3人で話し合い、誰か一人が我慢するようにと話をしました。
 その2日後、レターパックに入ったチケットが送られてきました。開封し中に3枚分のチケットがあるのを見て、3人分がセットであったことをやっと想起しました。ということで娘達三人で行くことになりそうです。それにしてもこのエキサイトシートはフィールド上の特設席で選手たちと同じ目線で観戦することができ、選手と握手したり、サインをもらったり可能な座席です。防護柵もないので鋭い打球も飛んできます。上記リンク先はまさに今回の座席の位置からの眺めです。なんだか子ども達にばかりで観戦するのは、少々もったいないような。

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2017/05/21 
「高齢者におけるピロリ菌除菌療法の意義について」

 ホームページ「ピロリ菌、ペプシノゲン法とABC検診〜胃がんは早期発見の時代から予防する時代になりました!」の項目ではピロリ菌除菌による胃がん予防に焦点を当てて解説してきました。しかし、記載したように高齢者(65歳以上)、とくに後期高齢者(75歳以上)になると除菌後の胃粘膜萎縮の改善スピードは若年者に比べどんどん遅くなり、胃がん発症予防効果も減弱します。年を取れば取るほどケガが治りにくくなるのと同じです。私自身、ちょっとした傷なら子どもの頃は数日で治ったのに、最近は本当に時間が掛かるようになったと実感しています。では、高齢者のピロリ菌除菌はあまりメリットのない治療法なのでしょうか。
 そもそもですが、ピロリ菌感染が引き起こす病気は「萎縮性胃炎→胃がん」のみではありません。胃・十二指腸潰瘍、MALTリンパ腫、胃原発悪性リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、蕁麻疹など多岐にわたります。
 ところで、高齢になると動脈硬化性疾患を罹患する方の比率が急激に増加します。動脈硬化性疾患とは、血管が老化し、段々と詰まっていく病気です。具体的には狭心症・心筋梗塞や脳梗塞などです。それぞれ日本人の死因の2位と4位です。動脈硬化については脂質代謝内科の項をご参照下さい。
 動脈硬化疾患では血液をサラサラにして血管が詰まるのを予防する薬を服用します。具体的には低用量アスピリンを服用、血液を固める働きのある血小板の機能を阻害し、血管の細い場所で血液が凝固するのを防ぎます(抗血小板療法)。低用量アスピリン服用すると、脳梗塞の再発が約25%低下します。
 しかし、低用量アスピリンの副作用として胃粘膜傷害による潰瘍発症があります。その詳細な機序は割愛しますが、アスピリンは、シクロオキゲナーゼ-1(COX-1)を阻害、プロスタグランジン生成を抑制、胃粘膜の微小循環障害、組織修復抑制、粘液産生減少をきたし、潰瘍(胃粘膜に傷つき、ポケット状の穴が開くこと。下図参照(「NATOM IMAGES ©Callimedia」より転載))を誘発すると考えられています。低用量アスピリンを1か月以上服用すると10.7%に潰瘍が発症したとのデータがあります。しかもそれらの8割の方は無症状でした。先述の如く低用量アスピリンを服用するのは高齢者ですが、高齢者潰瘍は無症状の場合が多いのが特徴です。潰瘍を発症した場合、時にその傷口から大量に出血することがあります。低用量アスピリンを服用した場合、重症消化管出血を生じる割合は、年0.12%と報告されています。そのため、低用量アスピリンを服用するとき、潰瘍予防のための胃薬(プロトンポンプ阻害薬;PPI)の併用が必須となっています。
 アスピリンは当初鎮痛剤として開発された薬です。解熱・鎮痛・抗炎症薬には様々な種類がありますが、アスピリンはそのうち、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類されるものです。NSAIDsにはアスピリン以外に、商品名で挙げるとオパイリン、ポンタール、ボルタレン、インテバン、インドメタシン、ブルフェン、二フラン、ロキソニン、フルカム、ロルカム等々多数あります。NSAIDsは最も頻用される解熱鎮痛剤で、膝や腰などの関節の痛み、腰痛、関節リウマチ、五十肩、打撲や骨折、歯痛、頭痛、風邪の咽頭痛や発熱など様々な痛みに使用されています。テレビCMで頻繁に宣伝されていますし、皆さんも一度や二度、服用されたことがあるのではないでしょうか。これらは、アスピリンと同じ作用機序の薬ですから、NSAIDsはみな一様にアスピリン同様の胃粘膜傷害の副作用があります。非常に使用量の多い薬ですから、副作用による胃・十二指腸潰瘍症例も珍しくなく、「NSAID潰瘍」と呼ばれています。
 そもそも消化性潰瘍の二大要因は、ピロリ菌感染とNSAIDsで、その他の要因の潰瘍はわずか2%しかありません。某大学病院で出血性潰瘍で緊急入院された方の服薬歴を調べたところ、NSAIDsが35.3%、抗血小板薬・抗凝固薬(低用量アスピリンやアスピリン以外の抗血小板薬、ワーファリンなど血液の二次凝固を抑制する薬)が25.4%、副腎皮質ホルモンが5.6%でした。高齢者では、脳梗塞や狭心症・心筋梗塞の再発予防として低用量アスピリンを服用される以上に、腰痛や膝痛などの関節痛でNSAIDsを服用されている方の方が多いのは明らか。ピロリ菌感染率は高齢になるほど高くなりますから、高齢者の場合、ピロリ菌感染者が、NSAIDsや低用量アスピリンを服用している場合も決して珍しくありません。このような方は潰瘍の二大発生要因が重複するため、高率に潰瘍を発症します。
 このような状況を鑑みると、ピロリ菌感染高齢者における除菌療法を意義は、単に胃がん発症予防のみならず、むしろそれ以上に胃・十二指腸潰瘍予防、とくに抗血小板療法やNSAIDs服用中に頻発するNSAID潰瘍予防にあるといっても過言ではありません。ですから、高齢者であっても、ピロリ菌感染者には積極的に除菌療法をお勧めしています。

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2017/05/16 
「三鷹中央通りにみたかシティバスを走らせましょう。」(その1)

 当院が下連雀4丁目三鷹中央通りに開院して9年が経ちました。以前、私は下連雀8丁目、杏林大学井の頭キャンパスの近くに居を構えていました。三鷹駅周辺、とりわけこの三鷹中央通り近辺で行動するようになって、すごく感じたことがあります。それは三鷹中央通りは駅前なのに交通の便が悪いということです。左図は小田急バスの路線図です。下連雀8丁目には吉祥寺通り、人見街道に多数の経路の路線のバスが通っています。一方、三鷹駅前のメインストリートである三鷹中央通りにはバスは全く走っていません。もちろんバス停はありません。小田急バス、京王バス(中図)とも多数の三鷹駅行きのバスを走らせていますが、すべて三鷹市八幡前交差点を経由して三鷹通りを通るか、あるいは、南浦交差点を経由してむらさき橋通りからさくら通りを抜け、三鷹駅に向かいます。三鷹市では、みたかシティバスを運行(右図)させていますが、こちらも小田急バスや京王バスと全く同じルートで三鷹駅に向かいます。

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2017/05/16 
「三鷹中央通りにみたかシティバスを走らせましょう。」(その2)

 三鷹駅周辺地区は、駅前ということもあり、三鷹市の中で最も古くから開発された地域です。三鷹で最初に建設されたマンションも三鷹中央通りにあります。そのため、三鷹駅周辺住区は駅前の商業地域にも拘わらず、高齢化率は他の住区と比べ低くありません(左図、三鷹市基礎データより抜粋)。もちろん今でも三鷹市で最も人口密度の高い地区です(中図、三鷹市基礎データより抜粋)。中央通りにお住いの方々はバスを利用する場合、先述のように三鷹通りかむらさき橋通り、さくら通りまで歩かなけらばなりません。地図をご覧になると分かるように、三鷹駅周辺住区は古くからの地割が残り、南北に短冊状になっています。そのため東西方向へのアクセスが非常に不便です。特に下連雀4丁目はほとんど東西の道がありません(右図、グーグルマップを転載)。地図上、赤色の線で囲まれた部分が下連雀4丁目です。例えば、当院から直線距離の最も近い三鷹通りにある「三鷹第三小学校入口」バス停まで直線距離では150mしかありませんが、実際には最短ルートで450m、6分かかります。一方、むらさき橋からさくら通りルートの最も近いバス停「北浦」までは、直線距離では250mほどしかありませんが、実際には最短ルートで550m、7分かかります。時間はいずれも普通の成人の歩く速さの場合で、高齢者なら各々9分、11分かかります。三鷹中央通りは足の不自由な高齢者が公共交通機関を利用するにはたいへん不便な場所になっています。
 このように既存路線バス便の不便な場所を解消するために導入さるのがコミュニティバスです。三鷹市まちづくり基本方針に基づき都市整備部より(広報みたか 号 外 2016.4.24付)交通総合協働計画2022 第1次改定が発表されています。内容としては、市民・事業者・行政の連携・協働による「交福(交通福祉)」という理念のもと、誰もが安全で安心して快適に移動できる交通体系の実現を目指すというものです。主な事業と取り組み内容として、みたかバスネットの推進、路線バスとコミュニティバスの役割分担を明確にし、地域特性に合わせたコミュニティバスの運行を目指すとともに既存ルートの見直しや乗換拠点の整備など、利便性の向上を図るというものです。そして、市民、事業者、行政の3者が役割分担を明確にしつつ、互いに連携・協働して総合的な交通の取り組みを実施すると結論付けています。
 また、国土交通省のコミュニティバス導入ガイドラインには「路線や区域については、導入するコミュニティバスの地域交通ネットワークにおける役割分担を明確にした上で、路線バスと実質的に競合することのないよう十分に検討すべきである」との記載があります。

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2017/05/16 
「三鷹中央通りにみたかシティバスを走らせましょう。」(その3)

 では、三鷹市のコミュニティバス、みたかシティバスはどうでしょうか。左図はみたかシティバスの路線図です。中図は小田急バスの路線図です。みたかシティバスは小田急バスにその運行を委託しているため、小田急バスの路線図にはみたかシティバスの路線図も破線で記載されています。三鷹台ルート、北野ルート、明星学園ルート、三鷹の森ジブリ美術館循環ルート、西部ルート、新川中原ルートとも路線バスと競合しないルートを通ってはいますが、人見街道や三鷹駅周辺に関してはみたかシティバスと路線バスの運行経路は完全に一致しています。同じ地図の西北に武蔵野市のコミュニティバス「ムーバス」の運行図が掲載されています。一見して分かるように路線バスと競合しない細い路地を専ら運行しているのわかります。これが本来のコミュニティバスの在り方だと思います。
 このような思いから三鷹中央通りにバスを通すための活動を始めることにしました。具体的には「三鷹中央通にみたかシティバスを誘致する会」を立ち上げ、署名活動を展開します。まず、三鷹中央通り南側の商店会である「三鷹南銀座会」の総会で提案、趣旨説明を行います。具体的なことが決まりましたらまたご報告します。その節は、ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

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2017/05/07 
「改正道路交通法施行に伴う高齢運転者対策について」(その1)

 先日もまた大分市で高齢者ドライバーによる事故が発生しました。76歳の女性が病院の駐車場に車を止めようとしてアクセルを踏み過ぎ、病院1階のガラス戸を突き破り、外来待合室にあった長椅子20脚を押しのけながら20mも進み、会計カウンターでやっと止まったというものでした。幸い死者は出ませんでしたが、13人がけが、4人が骨折などで入院しています。幸い事故現場が病院ということで対応が早く死者が出なかったのかもしれません。アクセルとブレーキの踏み間違い、高速道路の逆走など、高齢ドライバーによる俄かに信じがたいような事故が最近頻発、なんと1日当たり20件近く発生しているそうです。これも高齢化社会の為せる業でしょうか。こういった背景から、高齢運転者対策を施した改正道路交通法が平成29年3月12日施行されました(左図、改正道路交通法ポスター頁1、右図、改正道路交通法ポスター頁2)。改正点の詳細は、警視庁ホームページをご参照下さい。今回の改正は我々医師にも大いに関係があります。そのため、4月25日三鷹市医師会館に東京都北多摩南部医療圏地域拠点型認知症疾患医療センター長である杏林大学神ア恒一教授をお招きし勉強会を開催しましたので報告します。
 改正以前から75歳以上のドライバーには3年毎の運転免許更新時に認知機能検査が義務付けられていました。その結果、たとえ認知症の恐れがある(第一分類)と判定(検査受験者の約2.2%)されても、一定の違反行為が把握されなければ医師の診断書提出は義務付けられていませんでした。そのため、平成27年の診断書提出該当者は全国で300人ほどしかいませんでした。しかし、今回から第1分類に判定された高齢者は全員、医師の診断書が義務付けられました。そしてその結果、認知症であると診断された場合、免許取消しまたは免許停止になります。また、3か月の期限内に診断書を提出しなかった場合も運転免許の取消しまたは停止になります。
 更新時の認知機能検査で第2分類(認知機能が低下しているおそれがある)、第3分類(認知機能が低下しているおそれがない)と判定された高齢者は、どのような違反行為を犯そうとも次回3年後の免許更新まで認知機能検査を受ける義務、機会はありませんでした。たとえ第3分類と判定されても、75歳以上の高齢者なら、3年の間に認知機能が低下、運転に支障をきたしうります。ましてや、認知機能が低下しているおそれがあると判定された第2分類の方ならなおさらです。にもかかわらず、これまでは全く放置された状態になっていました。しかし、今回の改正では、免許更新時の認知機能検査で第2分類、第3分類と判定された75歳以上のドライバーであっても、右図にあるような信号部無視など18の認知機能低下時に犯しやすい違反をした場合、臨時の認知機能検査が義務付けられました。この結果、認知症と判断されれば当然免許取消しまたは免許停止となります。このように次回免許更新までの3年間に認知機能低下が疑われた場合、医師の診断を受けなければならなくなりました。
 さらに臨時の認知機能検査で認知症の恐れがなくとも、直近の認知機能検査と比較して認知機能が低下していた場合、臨時高齢者研修を受けなければなりません。
 また、そもそも免許更新時の認知機能検査で第2分類、第3分類と判定されても、本年度より3時間(第2分類)、2時間(第3分類)の高齢者研修が義務付けられています。
 以上の如く臨時認知機能検査制度、臨時高齢者講習制度が新設され、医師の診断を受けなければならない機会が増え、三鷹市内でも数百人が対象者になるのではないかと言われています。
 ところで、この医師の診断書ですが、認知症に関して専門的な知識を有する医師(専門医)または認知症に係る医師(主治医)の診断により作成されたものを提出することになっています。当院では「初めて診療を受ける方へ」の項目にも記載しているように中等度以上の認知症の方の診療は基本的にしておりません。しかし、通院中の方が認知症を発症した場合は、希望により継続的に診療しています。これは、初対面の認知症専門医に転院し環境を変えるより、認知症専門医ではありませんが10年以上のお付き合いのある私が継続して診療した方が、患者さんの病状によい場合もありうると考えているからです。ですから、認知症のある75歳以上の高齢ドライバーが当院に診断書発行を依頼する場合もありえます。

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2017/05/07 
「改正道路交通法施行に伴う高齢運転者対策について」(その2)

 さらにこの診断書様式ですが、公安委員会が示した「診断書記載ガイドライン」の内容に応じた必要事項が記載されていなければなりません(左図、改正道路交通法認知症診断書頁1、右図、改正道路交通法認知症診断書頁2)。医師の自由裁量の様式では不可です。この様式では、単に認知症の有無のみならず、認知症の病型分類を診断する必要があります。
 まず、健常者や、認知症と診断するほどではないが認知機能の低下がみられる状態、「軽度認知障害、mild cognitive impairment;MCI」を除外し、認知症(広義)疑いを選別します。広義の認知症疑い症例の中には、アルコール多飲、薬物、うつ病等の影響で認知機能が低下している場合がありますので、これらを除外します。残った認知機能障害症例の中には、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、薬剤誘起性、甲状腺機能低下症など治療(回復)可能な認知症もありから、これらを除外診断します。残りが狭義の認知症となります。認知症には様々な病型(アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、その他)があります。病型分類まで診断するためには、頭部CTあるいはMRI検査が必要となります。ですから当院のみで診断書を完成させることは不可能です。
 そもそも診断書作成を依頼される方は、引き続き車の運転を希望されている
から来院されるわけです。運転を希望されなければ自主返納すればよくわざわざ認知症の診断は不要です。運転免許証を身分証明書として所持したいと考えているだけなら、自主返納した場合、生涯身分証明書として使用できる運転経歴証明者を発行してくれます(認知症との結果になった診断書のため運転免許取消しまたは停止となった場合、この証明書は発行してもらえません!さらに、自主返納した場合、地方自治体によっては様々な特典を用意しています。ちなみに、三鷹市の場合、住民基本台帳カードを無料(通常500円)で交付してくれます。
 また、運転免許の更新時や運転中に一定の違反行為をして認知機能検査を受検、第1分類と判定されたということは、免許更新時期、場所を認識したり、現実自動車の運転したりしている方なわけですから、ある程度生活が自立しており、自ら認知症との病識のない方、少なくとも高度認知症ではない方が診断書発行を希望されているということになります。そのような方に、本人の希望、認識とは裏腹に、認知症と診断し運転免許取消しまたは停止となるような診断書を発行するからには、一縷の疑念もない診断書としなければ、患者さんの納得は得られません。
 このような状況を鑑み、当院では、診断書発行を希望し来院された場合、以下のように対応しようと思います。

1、当院通院中でない方の場合、認知症専門医(杏林大学もの忘れセンターのぞみメモリークリニック)にご紹介します。
2、当院通院中の方の場合、少なくとも75歳以上の方なので、自主返納の特典と人身事故を起こしたときの重大性をお話し、自主返納をお勧めします。
3、自主返納を固辞、診断書発行を希望された場合、当院単独で診断書発行が不可能であることをご説明し、紹介状を作成、専門医をご紹介します。

以上です。

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2017/04/28 
「2017年度から実施される胃がんリスク層別化検査、ABC検診の判定方法が変更になります」

 2017年4月1日から胃がんリスク検診(ABC検診)の分類法、判定基準が、胃がんリスク層別化検査運用研究会が監修し発表した「新しいABC分類胃がんリスク層別化検査(ABC分類)2016年度改訂版 運用の手引き」に準拠し変更になります。その概要をお話しします。なお、詳細は、上記手引きをご覧下さい。
 従来の分類法を示します(左図)。これまでは、ピロリ菌感染の有無(ヘリコバクター・ピロリ抗体価検査)と胃粘膜萎縮(ペプシノゲン法)の有無でAからDの4群に分類、判定していました。また、ピロリ菌除菌療法を受けている方の場合、ABC分類の検査対象外とし、E群としていました。それぞれの群は、中図のような臨床的意義があり、A群からD群になるに従い胃癌発症の危険度が増していきます。
 しかし、ABC検診が広く実施されるようになり、新しい知見が集積、今年度から改訂されることになりました。
 まず、C群(ピロリ菌に感染し、胃粘膜が萎縮している状態)とD群(胃粘膜萎縮が進行し、ピロリ菌が住めなくなり、いなくなった状態)を区別する意義が乏しいとする意見が多く、C群とD群を合わせC群となりました。これで名実ともにABC検診となりました。胃粘膜萎縮が進行すると棲み家である胃粘膜が減り確かにピロリ菌の数は減っていきます。そのためピロリ抗体価は基準値以下になり、(−);陰性と判断されます。しかし、D群の胃にピロリ菌が全くいないわけではなく、数が減っただけで生息しています。ですから、やはりピロリ菌除菌療法の対象になります。D群は萎縮が進行しているので胃がんになる確率はC群より高めですが、検査後の処置(胃内視鏡検査とピロリ菌除菌)はまったく変わらないため、臨床的には区別する意義は乏しく、合わせてC群とすることになりました。ただ、C群とD群を区別すること禁じているわけではないので従来通りでも構いません。今年度の三鷹市胃がんリスク検診ではABC+E群に分類することになりました。
 次に、ピロリ抗体検査の陽性(ピロリ菌がいる)基準が従来の10U/ml以上から3U/ml以上に引き下げられました。これまでも、抗体価が3未満の場合はピロリ菌は陰性(いない)と判断してよいが、3〜9.9U/mlの場合、完全に陰性とは言い切れず、グレーゾーンで少なからずピロリ菌現感染者が紛れ込んでいることが指摘されていました。そのため一昨年から抗体価3〜9.9U/mlの場合「陰性高値」と表現し、陽性者同様胃内視鏡検査を指示することになっていました。当院でも以前からそのような抗体価の方には、右図のようなリーフレット配布していました。最近の研究でもやはりこの陰性高値、グレーゾーンの方は、9.3%すなわち100人中約9人が現にピロリ菌に感染しているとのデータが得られています。ちなみに、3未満の完全に陰性(白)と判断される集団にも0.8%ピロリ菌感染者が紛れ込んでいました。一方、10以上の陽性(黒)と診断された集団の中には、過去の感染者が5.4%、未感染者が0.1%いました。このようにABC検診は絶対的に正確な検査ではありません。胃の画像検査と合わせて総合的に判断しなければなりません。
 「陰性高値」の方は、陰性なのに精密検査対象者となり、誤解を招きやすい表現であったため、今年度よりグレーゾーンの陰性高値を黒(陽性)と改め、シンプルに3以上は陽性、要精密検査となりました。上述の如く、グレーゾーンで陽性の方は9.3%しかいませんが、76.7%の方は過去感染であり、完全に未感染の方は14.0%しかいませんでした。過去感染の76.7%の方は、たとえ現在ピロリ菌はいなくとも、過去感染で多少なりとも胃粘膜が萎縮、傷ついているため、未感染の方より胃がん発症リスクの高い方です。ですから、胃内視鏡検査を進言することは理にかなっています。
 少し厄介なのは、ABC検診において、HP抗体陽性基準は3.0以上に引き下げられましたが、HP抗体検査を単独で実施した場合(臨床診断)、従来通り10以上のままということです。検査試薬を製造したメーカーが行った臨床試験から得られたデータにより10以上という基準値を設定、厚労省に申請、承認されているため、それを改めるとなると、莫大な費用を掛けもう一度正式な臨床試験をやり直さなければなりません。その費用負担を考慮、基準値は変えずこれまで通り「陰性高値」という表現で運用していくことになったようです。ですからこれまで通りピロリ菌抗体価3〜9.9までのグレーゾーンの方には、別法でのピロリ菌検査(尿素呼気試験、便中ピロリ菌抗原など)を指示します。
 当院でも今後は、三鷹市の胃がんリスク検診のみなら当院健診スクエア受診者に対するABC検診においても同様の判定基準で運用します。

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2017/04/23 
「家族性高コレステロール血症について」(その1)

 健常人の血中コレステロールの3割は食事由来ですが、残りの7割は肝臓で作られます。コレステロールは、細胞膜の材料やステロイドホルモンの原料となる生体にとって非常に重要な物質です。ですから肝臓が生成しているのです。肝臓で生成されたコレステロールは、リポタンパク質という球形の船に乗って血液中を運ばれていきます。その船は全部で5種類(カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL)ありますが、LDLは肝臓から血管壁にコレステロールを運び、HDLは血管壁から肝臓へコレステロールを回収する役目を担っています。LDLにより運ばれるコレステロールがLDLコレステロール(悪玉)で、HDLにより運ばれるコレステロールがHDLコレステロール(善玉)です。LDLが多くHDLが少ないと血管壁にどんどんコレステロールが運ばれていくので動脈硬化が促進されます。、逆にLDLが少なくHDLが多いと血管壁からコレステロールがどんどん肝臓に回収されるので動脈硬化は進みません。両者に含まれるコレステロールに違いは全くありません。ですから、良いコレステロールも悪いコレステロールもありません。ただ、それを運ぶ船、HDLが良い船で、LDLが悪い船なだけです。
 肝臓はコレステロールを生成するだけでなく、余分なコレステロールを処分します。血液中の余分なLDLを取り込み処分します。このLDLを受け取り、処分する経路に異常があるとLDLを取り込めなくなり、血液中のLDLが著増、結果としてLDLコレステロールが増加、動脈硬化が著しく促進されてしまいます。このLDL受容体経路の先天的な異常は遺伝するため、家族内に患者が多発することが多く、家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)と呼ばれています。
 ご存知の方も多いと思いますが、遺伝子は父親由来と母親由来の遺伝子が1組になっています。ABO式血液型を思い出して下さい。Ao(表現型はA)型の父親とAo(表現型はA)型の母親から生まれてくる子どもは、AA(表現型はA)型が1/4、Ao(表現型はA)型が1/2、oo型が1/4の確率になります。FHを引き起こす遺伝子異常は複数知られていますが、いずれもABO式血液型のA型遺伝子の如く常染色体優性遺伝形式(男女に関係なく、正常な遺伝子より強く表現される遺伝形式)をとります。AA型となり、遺伝子異常が重なった方をホモ接合体といい、Ao型となり遺伝子異常が片方だけの方をヘテロ接合体と呼びます。
 ホモ接合体は遺伝子異常が2重になっていますから、より著しい高コレステロール血症を示し、LDLコレステロールは600〜1200mg/dL(LDLコレステロールの基準値は139以内)に達します。一方、ヘテロ接合体も150〜420mg/dL(平均248)になります。そのため、未治療で放置すると男性では30〜50歳位に、女性では50〜70歳位に狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患(Coronary Artery Disease:CAD)を発症することが多いです。その他、腹部大動脈瘤、末梢動脈疾患なども合併します。脳梗塞に関しては意見が分かれています。ヘテロ接合体患者は200~500人に1人程度、ホモ接合体患者は16〜100万人に1人程度存在、日本国内には合計25〜64万人程度いると推定され、治療を受けている高コレステロール血症患者の約8.5%を占めるとする報告もあります。FH患者の全高脂血症患者に占める割合は少ないですが、先述の如く重症型となるため、65歳未満のCAD患者の約10%をFHが占めるといわれています。
 ですから、著しい高コレステロール血症の方を見つけた場合、2親等以内にFHの親族がいたり、若年(男性で55歳未満、女性で65歳未満)発症のCAD家族歴(ヘテロ接合体患者の43.1%に家族歴があります)があったりしないか確認することはFHを診断する上で非常に重要な手掛かりとなります。

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<成人(15歳以上)FHヘテロ接合体の診断基準>
1、高LDLコレステロール血症(未治療時のLDL-C180mg/dL以上)
2、腱黄色腫(手背、肘、膝などの腱黄色腫あるいはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結  節性黄色腫
3、FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)
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・続発性高脂血症を除外した上で診断する。
・ 2項目が当てはまる場合、FHと診断する。FH疑いの際には遺伝子検査による診断
  を行うことが望ましい。
・ 皮膚結節性黄色腫に眼瞼黄色腫は含まない。
・ アキレス腱肥厚は軟線撮影により9 mm以上にて診断する。
・ LDL-Cが250 mg/dL以上の場合、FHを強く疑う。
・ すでに薬物治療中の場合、治療のきっかけとなった脂質値を参考とする。
・ 早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満と定義する。
・ FHと診断した場合、家族についても調べることが望ましい。
(出典:「日本動脈硬化学会編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」)
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 15歳未満の小児ヘテロ接合体に関しては別の診断基準となりますが、当院は小児の診療は行わないため割愛します。
 一方、FHホモ接合体は、上述の如く非常に重症であるため、総コレステロール600mg/dL以上、小児期から認められる黄色腫と動脈硬化疾患、両親がFHヘテロ接合体などの特徴があり、比較的簡単に診断できます。ただし、総コレステロール値が600mg/dL未満であっても、FHホモ接合体が疑われる場合は、遺伝子診断も考慮されますので、高次医療機関での診断、治療方針の決定が必須です。
 ところで、上述の診断基準の中の腱黄色腫とは如何なるものでしょか。血液中に増加したLDLコレステロールは左図(「NATOM IMAGES ©Callimedia」)の如く血管壁に沈着していきます。同様の現象が血管以外に、結節性黄色腫(肘、膝などの四肢伸側、手首、臀部など機械的刺激か加わる場所)、腱黄色腫(アキレス腱や手足、膝の腱)、眼瞼黄色腫(上眼瞼の内眼角部(ヘテロ接合体の22.9%で出現しますが、正脂血症の方に出現することもあるので特異的な所見ではありません)、角膜輪(角膜辺縁に認める白色環でヘテロ接合体の41.3%に出現します。角膜輪は高齢者でよく見られる所見(中図、88歳の母の老人性角膜輪)ですが、50歳未満で出現した場合、FHを疑います)として出現します。とくにアキレス腱肥厚(左右差がほとんどなく、時に自発痛、圧痛を訴える方もいます)は、視診や触診で簡単に気づきますが、レントゲン撮影するとその厚みを正確に測定することができます。最大径9mm以上(ヘテロ接合体の平均厚は12.6mm)の場合、異常と判断します。アキレス腱肥厚の程度は、生まれてから現在までのコレステロール値の積分ですから、動脈硬化の程度とよく相関し、肥厚が著しくなるほど、CADのリスクも高まります。右図は34歳ののとき当院を初診された男性FH患者のアキレス腱撮影です。右は9.23mm、左は10.52mmといずれも9.0mm以上ありました。この方は22歳から高脂血症を指摘され服薬していましたが、ご自分がFHであるとの認識はまったくなく、薬も中断しがちでした。当院受診後FHと診断、CADを疑い某病院循環器内科をご紹介しました。

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2017/04/23 
「家族性高コレステロール血症について」(その2)

 その後、入院し冠動脈造影検査を実施、左冠動脈は3ヶ所で90%狭窄し(左図)、右冠動脈は近位部で完全閉塞(右図)していることが判明しまた。その後6枝冠動脈バイパス術を実施、現在元気に過ごされています。
 こういった方は決して稀な例ではありませんので、当院では、LDL-Cが180mg/dL以上ある高コレステロール血症の患者さんには、必ずアキレス腱撮影を受けていただきます。
 FH同様高コレステロール血症をきたす疾患として代表的なものは、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群などの続発性高脂血症、家族性複合型高脂血症(Familial Combined Hyperlipidaemia:FCHL)などです。FCHLはコレステロールとトリグリセライド(TG)両方が増加する疾患で、やはり常染色体優性遺伝形式をとります。FHほどコレステロールは高くなく、LDLコレステロールは140mg/dL以上といった程度です。そのため、アキレス腱肥厚や角膜輪を認めません。しかし、TG高値(150mg/dL以上)も合併するため、small dense LDL(2017/04/14院長コラム「動脈硬化危険因子としてのsmall dense LDL超悪玉コレステロールについて」をご参照下さい。)が増加、LDLコレステロールがFHほど高くな割にはCADを合併します。また、その頻度は100人に1人程度とFHより4〜5倍多いため、65歳以下のCAD患者の30%程度を占めるほどです。
 FHの治療について。すでに動脈硬化性疾患を併発している可能性が高いですから、まず現時点での動脈硬化の程度を評価する検査(眼底、運動負荷心電図、頸動脈超音波検査、血圧脈波、腹部超音波検査(腹部大動脈瘤評価)、CRPなど)を受けていただきます。生後長く続く高コレステロール血症の病歴を考慮、LDLコレステロール<100mg/dlを管理目標値とします。最近、LDLコレステロール値を下げれば下げるほどCAD発症率の下がることが明らかになっており、すでにCADを発症している場合、二次予防のためにはさらに下げることも考慮するべきです。運動療法や食事療法(上述の如く、健常人では血液中のコレステロールの3割は食事由来ですが、残りの7割は肝臓で作られます。FHの方は場合、そのほどんどは肝臓由来です。ですから食事療法を行っても低下するのは1割程度でしかありません)だけでは十分改善しないため、FHに関しては初めからスタチンなどの高脂血症治療薬を併用していただきます。内服すると明らかにCAD発症率が低下します。また、最近開発された完全ヒト型抗PCSK9モノクローナル抗体の注射を併用していただくこともあります。この注射の効果は絶大で、劇的にLDLコレステロール値は低下します。ただ、2週間毎に通院、注射を受けていただく必要があります(2017年秋頃にはインスリン同様自己注射も可能となる予定です)。もちろん、喫煙、糖尿病、高血圧などの他の動脈硬化危険因子をお持ちの場合、それらも厳格にコントロールする必要があります。
 ホモ接合体患者の場合、薬物療法の効果は乏しいため、1〜2週間毎のLDLアフェレーシス(吸着療法、血液浄化療法の一つ。血液透析のようなもの)が必要になります。当院で実施できませんので、ホモ接合体型FHと診断した場合、高次医療機関をご紹介します。
 以上の如く家族性高コレステロール血症FHはいくつかの点において非常に重要な疾患といえます。
1、若年時から高頻度でCADを合併するため、早期診断早期治療(男性は20歳頃か
  ら、女性は30歳頃から)が必須の疾患である。
2、日本全体で25〜64万人程度いるため一般開業医が遭遇する可能性が高い。
3、全FH患者のうち、正しく診断を受けいるのは20%足らずしかいない。換言すれば
  80%余りのFH患者は適切な治療を受けていない。さらに、診断を受けていても適
  切な治療を受けている患者は半分程度と言われている。
4、一人の患者を発見すれば、その家族内に他の患者も発見できる可能性がある。
 健康診断などでLDL-Cが180mg/dL以上であった方、特に若年者の方は、治療はまだ早いなどと自己判断せず、是非ご来院下さい。

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2017/04/14 
「動脈硬化危険因子としてのsmall dense LDL超悪玉コレステロールについて」

 ご理解頂けていると思いますが再確認です。「総コレステロール」は血液中のコレステロールの合計です。その中には悪玉コレステロールであるLDLコレステロールと善玉であるHDLコレステロールが含まれます。血液中のLDLとHDLコレステロールの比率はおおよそ2〜3:1で、LDLコレステロールが6、7割を占めますから、LDLコレステロールの測定が技術的に困難で総コレステロールしか測定できなかった時代、総コレステロールでLDLコレステロール値を代用していました。しかし、その後、総コレステロールに含まれるHDLコレステロールには、むしろ動脈硬化予防作用のあることが明らかとなり、総コレステロールよりも、LDLコレステロールとHDLコレステロールを各々測定、総コレステロールの中身を評価するようになっています。
 しかし、その後LDLコレステロール値が正常であるにもかかわらず、動脈硬化の進行する方が少なからず存在することが明らかとなり、LDLコレステロール以外の残余リスクが問題となっています。残余リスクの検討が行われる中、注目されているのがsmall dense LDL(sd-LDL)、別名超悪玉LDLです。
 ところで、血液中のコレステロールはそのままの形で流れているのではありません。アポタンパク質という物質と結合し安定したリポタンパク質になり、血液中を運ばれます。つまり、コレステロールはリポタンパク質という球形の船に乗って血液中を運ばれていきます。その船は全部で5種類(カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL)ありますが、LDLは肝臓から血管壁にコレステロールを運び、HDLは血管壁から肝臓へコレステロールを回収します。LDLにより運ばれているコレステロールがLDLコレステロールで、HDLにより運ばれるコレステロールがHDLコレステロールです。LDLが多くHDLが少ないと動脈硬化が促進されますが、逆にLDLが少なくHDLが多いと動脈硬化は進みません。両者に含まれるコレステロールに全く違いはりありません。ですから、良いコレステロールも悪いコレステロールもありません。ただそれを運ぶ船、HDLがよい船で、LDLが悪い船なだけです。LDLやHDLを測定するより、LDLコレステロールやHDLコレステロールを測定する方が簡便なため、通常、LDLに含まれるコレステロール、すなわちLDLコレステロールやHDLに含まれるコレステロール、すなわちHDLコレステロールを測定し、動脈硬化のリスクを評価しています。
 上述の如くLDLコレステロール値が正常であるにもかかわらず、動脈硬化の進行する方が少なからず存在するのですが、LDLを詳しく調べてみると、LDLの中には動脈硬化惹起作用の弱い大型のLDLと動脈硬化惹起作用の強い小型LDL、small dense LDLの2種類が存在することが解りました。sd-LDLはその小ささゆえ、血管内皮細胞(下図(「NATOM IMAGES ©Callimedia」)の血管の内腔側の表面にある一層の細胞)の隙間から、血管壁の中に入り込んで行きやすいのです。しかもこのsd-LDLは小ささゆえ多数存在してもLDL全体に占める割合は増えにくく、LDL全体の量を押し上げません。つまりsd-LDLが多数存在してもLDLコレステロール値を押し上げません。換言すれば、LDLコレステロール値が正常な方であっても、sd-LDLが多数存在している可能性があります。今後は、総コレステロール値測定がLDLコレステロール値測定に取って代わられたように、LDLコレステロール値測定がsd-LDL測定に取って代わられると予想されます。実際、欧米ではすでにsd-LDL測定が動脈硬化危険因子評価において主要な項目になっています。
 ところで、ご存じの方も多いと思いますがトリグリセライド(中性脂肪)も動脈硬化危険因子の一つです。しかし、トリグリセライドは、LDLコレステロールのように血管壁の中に入り込んで行きません。ではなぜトリグリセライドが動脈硬化を惹起するかというと、トリグリセライドには上述の大型LDLを超悪玉の小型LDLに変化させる作用があるからです。メタボの方が心筋梗塞(冠動脈の動脈硬化が原因)を発症しやすいことから、メタボ撲滅を目指し国の施策として数年前よりメタボ健診(特定健診が正式名称)が始まっています。メタボの方の脂質検査値は、LDLコレステロールは高くありませんが、HDLコレステロールが低く、トリグリセライド値が高いのが特徴です。つまり、メタボの方は、LDLコレステロール値は正常ですが、高トリグリセライド血症のため超悪玉のsd-LDLが多い状態になっています。そのため心筋梗塞を発症しやすいのです。
 さて、翻って日本では、sd-LDL測定は保険で認められていません。しかし、熱心な患者さんから、sd-LDL測定のご希望があり、保険外診療のため高額になりますが、当院では7,000円で超悪玉sd-LDLを測定できる体制を構築しました。測定試薬は、デンカ生検のものを使用しています。同社のホームページにはsmall dense LDLについて、動画も交えて詳しい解説が掲載されています。是非参考にしてみて下さい。なお、sd-LDL測定が推奨される方は、
1、 狭心症や心筋梗塞の既往のある方
2、 狭心症や心筋梗塞の家族歴のある方
3、 血圧の高い方
4、 トリグリセライド値の高い方
5、 血糖値の高い方
6、 メタボの方
7、 HDLコレステロール(善玉)値の低い方
  などです。測定を希望される方はどうぞご連絡下さい。検査を受けるには前日までに事前の予約が必要です。検査値は食事の影響を受けません。ですから食事をして来院しても検査を受けることができます。

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2017/04/09 
「当院実施の超音波検査数の変遷、とくに乳房超音波検査結果について」

 検査科スタッフが例年作成している当院で実施した超音波検査のデータを公開します。
 まず、左図は当院が開院した2007年11月(2007年11月開院のため、2007年度は11月から翌年3月までの5ヶ月間の実績)から2016年度末まで、当院で実施した超音波検査数10年間の変遷です。2007年度は5ヶ月間のみの実績に加え、当時、検査日を週1日と設定していたため、極端に少ない検査実績でした。その後、患者数の増加とともに、2008年から検査日を週3日に増やし、さらに2009年4月より毎日にしました。
 2013年三鷹市が実施する乳がん検診の超音波検査受託施設になり、乳房超音波検査の実施数が増加しました。乳房超音波検査の如く食事制限の不要な検査は午後実施しても構いません。午後に検査受検を希望される方のため、現在、食事制限のない頸動脈、甲状腺、乳房等の検査は、月2回ですが午後も実施しています。
 開院以来受診者数が増加の一途と辿っているため、超音波検査実施数も増加、2016年度は1741件に達しました。診療日数から計算すると1日平均6件から7件実施しています。今後さらに増加が予想されるため、午後の検査枠の拡大も検討しています。
 中図は直近3年間の乳房超音波検査(乳ヱコー)の実績です。2013年度より三鷹市が実施する乳がん検診の超音波検査受託施設になりましたが、2013年11月当院にマンモグラフィ(MMG、乳房レントゲン)装置を導入(2013/11/15院長コラム「マンモグラフィ(乳房レントゲン)の運用が始まりました。」をご参照下さい)したため、2014年度からはマンモグラフィの受託施設に変更しました。三鷹市乳がん検診では、市内医療機関は、超音波検査、レントゲン検査のどちらか一方の検査施設しか受託できません。三鷹市内の超音波検査受託施設は10施設ですが、マンモグラフィ受託施設は当院以外に3施設しかありません。機器が高額な上、管理が難しいので、医療機関の多くは設置を躊躇しているようです。しかし、健診施設を併設する当院は積極的にマンモグラフィを導入、受託施設に名乗りを上げました。MMG受託施設となってから、三鷹市乳がん検診の超音波検査は一切実施していませんが、逆にMMG受診者が急増(後日報告します)、その精密検査として乳房超音波検査を受検する方が増えました。
 中図左の2014年度乳エコー実施者のうち、乳がんが否定できず、さらに精密検査を指示した方は14%でした。上記の如く、この乳エコー対象者は、健診スクエア受診者で一次検診としてエコーを受検した方と、一次検診のMMGで異常を認め二次検査としてエコーを追加実施した方の合計で、14%を多いと判断するか、少ないと判断するかは意見の分かれるところです。がん検診の基本的な考え方として、癌でない者は一次検診で「異常なし」とし、癌である者は細大漏らさず全員「要精密検査」対象者として拾い上げるのが理想です。つまり、精密検査不要とされた86%から、後日一例も癌患者が出現せず(後日早々に癌が発見された場合、癌見逃しとなります)、さらに精密検査必要とされた14%が、その後の精密検査で悉く癌が発見された場合、理想的ながん検診であったといえます。しかし、要精密検査対象者となったが結局癌ではなかった者(偽陽性)を減らそうと敷居を高くすればするほど癌を見逃す(偽陰性)確率が上昇します。一方、癌の見逃し(偽陰性)を減らそうと敷居を低くすればするほど、癌ではないのに要精密検査対象者(偽陽性)となる方が増えてしまいます。ジレンマを感じるところです。この問題を解決する方法は、癌の有無をより正確に鑑別する機器の導入です。そこで、当院では乳房超音波検査受検者数の急増を鑑み、2015年4月より、エラストグラフィ機能を搭載した新型の超音波検査装置を導入しました(詳しくは、2015/04/18院長コラム「エラストグラフィ、オートIMT測定装置を採用した新型超音波検査機を導入しました。(その2)」をご参照下さい)。2015年から要精密検査の対象者の割合が14%から4%に激減したのは、その影響が大きいと思います。もちろん、検査技師や私の経年的な技術向上も加味されていることでしょう。
 2016年度超音波検査の結果、さらに要精密検査となり専門医療機関に紹介した結果をまとめたものが右図です。精査検査が終わった6例は癌ではありませんでした。残りの3例は現在さらに精査中です。例年2〜3例程度の乳癌が当院で発見されています。当初良性と思われていたものが、後々癌と診断される例も珍しくありません。今後を注視したいと思います。
今後もこのように検査結果を分析しつつ、診療レベルの維持向上に努めてまいります。

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2017/01/29 
「整形外科疾患、接骨院=整骨院≠整体院=カイロプラクティックについて」

 当院は内科ですから、基本的に外傷など整形外科的疾患(骨、関節、靭帯、筋肉、腱)の治療は行っていません(一部膠原病やリウマチ性多発筋痛症など全身性炎症性疾患はむしろ積極的に診療しています)。それでも、内科疾患で通院中の患者さんからときに打撲や腰痛にたいして湿布や鎮痛剤の処方を希望される場合があります。軽傷と思われ、簡単な対処療法で治癒可能と思われる場合、患者さんの利便性を考慮し投薬を行いますが、専門的治療が必要と思われるものに対しては、近隣の整形外科医院の受診を進言しています。
 また、整形外科同様に接骨院、整骨院、骨接ぎ/骨継ぎ等の受診に関して質問を受ける場合があります。接骨院、整復院、骨接ぎ/骨継ぎは、呼び名は違いますが診療内容は同じ(床屋、理髪店、理容院の関係と同様です)とお考え下さい。いずれも国家資格である柔道整復師が、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷、筋肉や腱などの軟部組織の損傷を受傷した患者さんに対して、柔道整復術(電気刺激、冷温熱刺激も)による治療を行う所で、柔道整復師法では、柔道整復師施術所と記載されています。そのため、医師が開設する医院同様に保健所の認可を受けなければ開業できず、保険診療も行っています。
 一方似たような名称のものに、「整体」「カイロプラクティック」等がありますが、少なくとも日本では国家資格がなく、いわゆる民間療法で誰もが自由に開業できます。そのため、健康保険を使うことはできません。上述の如く「接骨院」と「整骨院」は同じものですが、「整骨院」と「整体院」ではまったく別物です。このように名称が酷似しているため混同されている患者さんが多いように思います。この辺の解説は、「公益社団法人東京都柔道整復師会」のホームページに詳しく記載されています。
 私見ですが、最近、医院以上に林立しているのが歯科医院、薬局、接骨院です。以前は余り気にしたことはありませんでしたが、三鷹市医師会の防災救急対策担当理事となり、防災訓練を通じて、五師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会、助産師会、柔道整復師会)の先生方とお付き合いすることが多くなり意識するようになりました。これほど多数の医療機関がありますが、すべての医療機関が三鷹市総合防災訓練に協力しているわけではありません。というのは、2017/01/03院長コラム「平成28年度三鷹市総合防災訓練の総括〜課題と今後の展望〜」に記載したように、すべての医療機関が五師会に加入しているわけではないからです。防災訓練は、まず三鷹市より五師会各々に協力要請があります。そして、各師会が会員に参加を募ります。そのため、五師会に属していない医療機関はまったく協力して頂けません。例えば市内の接骨院は2割ほどしか整復師会に加入していません。ですから、ほとんどの接骨院が防災訓練に協力していません。整復師会に加入されている接骨院は、「公益社団法人東京都柔道整復師会」のホームページにも記載されているように防災訓練を始めいろいろな公益活動を行っています。防災訓練にも市民のため手弁当で参加しています。それに比べ、公益活動を行わない整復師会未加入の接骨院は何をか言わんやで、実際東京に大震災が発災したとき、災害時医療救護所に駆けつけてくれるのか疑問です。例え駆け付けたとしても、日頃まったく訓練を受けていないわけですから、防災訓練に参加している接骨院の先生方のように、効果的な動きができるはずもありません。当院では東京柔道整復師会に加入している接骨院と未加入の接骨院を区別し、対応するようにしています。患者さんへも、柔道整復師会に加入している接骨院をお勧めしています。ちなみに三鷹市内で開業される柔道整復師会会員の接骨院は下記の如くです。

1、池内接骨院 院長 池内 雅胤
2、三鷹健生堂接骨院 院長 森田 武志
3、三鷹台整骨院 院長 竹内 仁
4、武蔵中央接骨院 院長 廣瀬 雅人
5、ばらやま整骨院 院長 石井 菊次郎
6、新川整骨院 院長 山田 修
7、たかはし接骨院 院長 橋 邦章
8、南浦整骨院 院長 村本 和生
9、連雀整骨院 院長 宿利 政生
10、しばた整骨院 院長 柴田 和幸
11、さかい接骨院 院長 酒井 唯
12、三鷹台整骨院 副院長 中澤 寿明
13、和田接骨院 院長 和田 雅史

 整復師会に加入している接骨院では、整復師会のマーク(下図)を医院に掲示しています。皆さんも、このマークのある接骨院をお選び下さい。柔道整復師会未加入の先生方には失礼は言い方かもしれませんが、悪貨が良貨を駆逐することのないよう見極めていきたいと思います。

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2017/01/16 
「インフルエンザ迅速診断検査について」

 現在、インフルエンザが流行中なのは御存じの通りですが、今シーズンからインフルエンザ迅速検査キットを「ファインビジョン」に変更しました。よい機会ですので、このインフルエンザ迅速診断検査についてご解説します。
 このインフルエンザ迅速診断検査とは、名前の如く綿棒で咽頭や鼻腔を拭いインフルエンザに感染しているか否かを数分で判定する検査のことです。この検査、どのくらい正確かというと、基本的な考え方として、陽性の結果(感染している)が得られた場合は100%正しいと診断できますが、陰性(感染していない)の場合、様々な理由から必ずしも正確ではありません。つまり、感染しているのに感染していない(陰性)との結果になっている可能性があります(偽陰性といいます)。この検査キットは、綿棒で喉や鼻腔を拭いウイルスを採取、反応を見ているものですが、たとえ感染していても、ウイルス量が検査キットの検出感度以下であると陰性の結果になってしまいます。どのような場合かというと、
1、小児に比べ大人は陰性になりやすいです。患者の年齢が高くなると陰性になりやすいです。大人は小児と比べ長生きしている分だけインフルエンザに対する抗体保有率が高くなり、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることができるからです。
2、インフルエンザワクチンを接種していると陰性になりやすいです。ワクチンにより誘導された抗体がウイルスの増殖を抑えるからです。ワクチンにインフルエンザ重症化予防効果があるのはそのためです。
3、咽頭拭い液より鼻腔拭い液の方が、陽性率が高いです(5%程度)。綿棒で検体を採取するとき、喉より鼻腔の方が、辛いと感じる方が多いですが、陽性率を考慮し当院では鼻腔拭い液を使用しています。
4、採取者(医師、看護師)の採取手技レベルでも変わります。綿棒を鼻の奥〜鼻咽頭まで突っ込むのを遠慮し深く挿入しなかったり、しっかり綿球を粘膜に押し当てなかったりすると陽性率は下がります。
5、発症(38℃以上の発熱)から経過した時間が短いほど陽性率は下がります。発症後24時間までウイルス量は経時的に増加していくからです。現在日本では30種余りの診断キットが発売され、使用されていますが、おおよそ発症後3時間以内では40%、4〜6時間で75%、7〜12時間で85%、24時間を経過すると90%ほどの陽性率となります。発症24時間以内では偽陰性の確率が高くなります。
 そのため、発熱後24時間以内に来院、迅速診断検査を実施、陰性の結果となった場合、上記のような患者さんの諸条件を考慮しつつ、インフルエンザに「まず感染していません。」「感染している可能性が否定できません。」「感染している可能性が十分あります。」「検査は陰性ですが感染している可能性が高いです。」などとご説明しています。正確な診断が必要と判断した場合、24時間経過後再度受診して頂き、再検査する場合もあります。
 当院では2016〜2017年のシーズンから、反応時間5分(従来品は8分)、発症3時間での陽性率約80%の最新鋭検査キット「ファインビジョン」(下図)を導入しています。

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2017/01/03 
「平成28年度三鷹市総合防災訓練の総括〜課題と今後の展望について〜」(その1)

 三鷹市医師会員の先生方 明けましておめでとうございます。防災救急対策担当理事の松です。例年にも増して大勢の先生方が昨年の防災訓練にご参加下さり有難うございました。本年もご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 さて、紙面をお借りし、平成28年度の医師会事業として参加した三鷹市総合防災訓練について総括し、私の考える課題と今後の展望についてお話させて下さい。
 前担当理事退任に伴い急遽後任を任されてから2年余りを経、3回の三鷹市総合防災訓練を経験しました。恥ずかしながら、開業して6年目に防災救急対策担当理事に選任されるまで、1度しか防災訓練に参加したことがありませんでした。もちろん、開業前、野村病院勤務時代は、毎年開催される院内での防災訓練に参加してはいましたが。就任後、休日を返上し防災関連の講演会、座学や実地訓練に手当たり次第に参加してきました。また、昨年は熊本地震に東京JMATとしても参加、その経験を都医雑誌や多摩医学会で発表、防災経験値も増しました。最近になり、ようやく全体像、森が見えてきたように感じています。この間、勉強不足の私を防災救急対策担当理事経験者としてご指導いただきました宇井義典会長、若林研司前会長を始め諸先輩方には改めて深謝申し上げる次第です。
 さて、三鷹市が主催する総合防災訓練は、市内7住区各々で会場を定め、開催しますが、我々医師会は主に災害時医療救護所での活動を念頭においた訓練に参加しています。年により訓練会場が本来災害時医療救護所設置場所である市内7か所の小学校(井の頭地区第五小学校、東部地区高山小学校、新川中原地区中原小学校、連雀地区南浦小学校、駅前地区第三小学校、西部地区井口小学校、大沢地区大沢台小学校)のこともありますが、住区内のコミセンや中学校など別の場所で開催されることもあります。救護所設置場所の7小学校の名前を淀みなく挙げ、地図上の場所も把握できている自分を思うに、間違いなく私の防災力は増しています。
 ちなみに、本年度の総合防災訓練には、井の頭地区井の頭コミセンでの訓練に7名、東部地区は医師会に協力要請がなく不参加、本年度メーン会場新川中原地区中原小の訓練に10名、連雀地区南浦小には6名、駅前地区第四小には4名、西部地区井口小には3名、大沢地区大沢台小には4名、延べ34名の医師会員の先生方が参加して下さいました。
 一方、市内7病院(武蔵野病院、三鷹病院、篠原病院、野村病院、井之頭病院、三鷹中央病院、長谷川病院)は医療拠点となっており、三鷹市総合防災訓練とは別に、各々独自に防災訓練を実施します。ただ、後述のように11月19日をもって武蔵野病院は廃院したため、医療拠点は6ヵ所となりました。今年、杏林大学吉野秀朗教授や野村病院野村幸史院長など本来自院で災害時医療を展開される先生方が病診連携(災害時医療拠点と救護所の連携)の観点から総合防災訓練に参加していただいたことは特筆すべき点です。
 その他、本年度防災訓練における特筆すべき点は以下のごときでした。

1、訓練参加住民を模擬傷病者(左図「模擬傷病者用ゼッケン見本」をご参照下さい。)に見立てたトリアージ訓練が、メーン会場を含め3ヶ所の会場に拡大されました。もちろん、住民の要望です。おそらく今後もさらに実施会場が拡大されていくものと思われます。
2、住民の要望により今年度初めて「エコノミークラス症候群予防訓練」を井の頭地区の訓練で実施しました。熊本地震の際、車中泊の住民から多数のエコノミークラス症候群患者が発生したとのニュース報道の影響です。右図「エコノミークラス症候群予防のために」のごときA1サイズのパネルを使用し、先生方に説明していただきました。反省点として、いくらA1サイズに拡大しても後方の方には見えにくかったこと、口頭だけの説明では理解しにくかったことなどから、来年度は同内容のリーフレットを準備したいと思います。
3、従来五師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会、助産師会、柔道整復師会)が協力して実施する訓練は、メーン会場のみでした。しかし、今回、メーン会場以外の訓練においてもトリアージ訓練やエコノミークラス症候群予防訓練などが実施されため、医師会以外の四師会に協力を要請、結果として、歯科医師会3ヶ所延べ13名(86名の会員数を誇る歯科医師会は例年もっと多くの先生方が参加されています。しかし、本年度たまたま医師会旅行とバッティング、にもかかわらず多数の先生が参加してくれました)、薬剤師会6ヶ所18名(会員数約40人)、助産師会3ヶ所10名(会員数6名)、整復師会5ヶ所17名(会員数14名)の先生方が参加してくれました。各師会の構成人数を考慮するとその参加率の高さには驚かされます。四師会先生方の防災に対する意識の高さは我々医師会以上で、敬服しています。

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2017/01/03 
「平成28年度三鷹市総合防災訓練の総括〜課題と今後の展望について〜」(その2)

 さて、防災救急対策担当理事となり、まず肝に銘じたことは、先輩方が地道に築いてこられた防災力を担当理事在任中に少しでも上積みさせることです。防災力は私たちの本業、医療と異なり、日々経験しているわけではないので、訓練しなければ確実に力を落としていきます。錆び付いてしまいます。ですから定期的に実施される訓練で錆び付いた防災力を、brush upさせる必要があります。ただ、毎年同じことを繰り返すだけでは、防災力を維持することはできても、向上させることはできません。ですから、防災訓練の内容も進化させていく必要があると考えました。
 この3年間で開催期日がバッティングしない限り、すべての地区の防災訓練に参加してきたため、12か所程の防災訓練を経験することができました。また、長谷川病院などの医療拠点の訓練にも参加させていただきました。その経験から感じたいくつかの問題点を改善するための具体的な対策に本年度初めて着手しました。
 まず、三鷹市総合防災訓練を「市民」の防災力向上のための訓練と明確に位置づけ、我々五師会メンバーは完全に黒子に徹することを市及び五師会に提案、了承して頂きました。我々救護所運営メンバーにとって年1回しかない防災訓練ですが、市民にとっても同様です。しかし、市民の防災力向上を優先した訓練を行おうとすると、我々の訓練を端折らざるを得なくなります。また、その逆も言えます。例えば、市民を模擬傷病者に見立て、救護所運営訓練を実施する場合、本来なら来所した一人一人にトリアージタグを着けトリアージを実施、重症度に合わせタグの緑や黄色の部分を捥ぎり、重症度分類ごとに移動しもらいます。黄色以上は医療拠点へ搬送、緑色の方は受付でカルテを作成した後、振分外来で診察を受け、外科系、内科系、助産師会、整復師会ブースに移動し診療を受けます(左図「災害時医療救護所における患者の流れ」を参照)。最後に薬剤師会ブースで薬を貰い、帰宅するといった段取りです。しかし、このようなやり方では、2時間足らずの時間で500人(本年度メーン会場全参加者は約1,200人で、そのうち地区住民は800人足らずでした)以上もの市民を受け入れることはできません。また、黄色や赤にトリアージされた方は歩けない方ですから、内科や外科、歯科などの診察ブースの見学をするのはあり得ない話になります。緑色の方も振り分けられた診察ブースしか見学できません。このような本来の進め方では訓練に参加した市民のほんの一部の方が、医療救護所の一部分を経験することにしかなりません。そこで今回の訓練では、本来のやり方を完全に端折り、あくまでも参加された市民全員に、右図「防災訓練用配布資料『大災害発生時には災害時医療救護所を設置します及びSTART式トリアージ』」の配布資料の内容を理解していただくこと、トリアージを体験していただくこと、各師会のすべてのブースを見学していただくこと、これらを唯一無二の目的としてメーン会場での訓練を実施しました。もちろん、メーン会場以外ではさらに端折り、兎に角参加された市民全員に経験していただくことを唯一無二の目的としました。その代り、市と交渉し、我々災害時医療救護所運営メンバーの訓練を目的とした別の訓練機会を新たに設けていただくことにしました。現在、市防災課とその内容に関して打ち合わせを行っています。この訓練では、実際にトリアージタグを使用し、実戦的な訓練とする予定です。初めての試みです。是非ともご参加下さい。
 医師会を除いた四師会の防災訓練参加率の高いことを先述しました。これは各師会の組織率が低いことも影響しています。医師会の場合、三鷹市内で医師会に未加入の医療機関は数件しかありません。そのため組織率は95%以上です。一方、医師会以外の四師会の詳しい組織率は把握していませんが、例えば整復師会は2割ほどだそうです。薬剤師会も、いわゆるチェーン調剤薬局はそのほとんどが薬剤師会に加入していません。薬剤師会に確認したところ、さくら薬局、クオール、スズケン、ファーマホールディング、稲垣薬局は加入していますが、日本調剤、スギ、アイセイ、ココカラファイン、ツルハ、ウェルシア、クリエイト、ミキ薬局、ウェルパーク等は薬剤師会に加入していません(一部加入を希望されている薬局もあるようです)。そのため、防災訓練にはまったく参加しません。ちなみに、小生のクリニックの隣はミキ薬局ですが、やはり薬剤師会に加入しておらず、防災訓練にはまったく参加していません。日々の調剤も大切な仕事ですが、手弁当で三鷹市民のための防災訓練に参加する三鷹市薬剤師会員の方々と比べると・・・。
 同様、組織率20%程度しかない三鷹市整復師会の皆さんは他の80%の接骨院と違い公共活動、公益活動に関して非常に意識の高い方々です。だからこそそのほとんどの院長先生が手弁当で防災訓練に参加しています。その参加率はほぼ100%で、我々医師会員以上に防災に対する意識の高い方々です。ですから、内科の私は接骨院とは診療上ほとんど接点こそありませんが、個人的には整復師会会員と非会員の施設を薬局同様明確に区別し、意識して対応するようにしています。同様理由から歯科医師会も助産師会も医師会以上に防災に対して高い意識をお持ちです。我々医師会も五師会のリーダー(少なくとも私はそう思っています)としてそういった先生方以上に高い防災意識を持たなければならないと痛感しています。
 今後できるだけ多くの医師会員の参加を促すため、参加を表明して下さった会員の先生方には三鷹市が作成したポスターやチラシを配布いたします。是非、院内院外に掲示、通院患者さんを防災訓練にお誘い下さい。先生方の高い意識、公共性公益性を通院患者さんにアピールして下さい。そのことにより、公益社団法人三鷹医師会の三鷹市における存在意義が益々高まります。
 ご存じのように医療拠点の一つであった武蔵野病院が昨年11月19日をもって廃院になりました。今後、某医療法人が買い取り再開するといった噂もありますが、定かではありません。このまま再開されない場合、市内の医療拠点は6か所となります。改訂中の災害時医療体制配属表も作り直しを余儀なくされます。今後医療拠点をどうするか市と相談中です。
 先述のように発災時市内6ヵ所の医療拠点と離れた7ヶ所に災害時医療救護所を設置することになっています。そして、防災訓練において再三再四そのことを市民に周知して来ました。しかし、それでもどれだけ市民に浸透しているか不明です。これまでの震災では、やはり、必ずと言っていいほど傷病者が入院設備のある病院に集中しているのが現実です。そのため重症者に対する病院機能を確保することと搬送の手間を省く目的から、病院前に災害時医療救護所を設置するのが主流となっており、東京都も推奨しています。私の知る限り、都下の自治体においてもそのほとんどが病院前に災害時医療救護所を設置しています。そのような状況下、三鷹市はこのままの災害時医療体制でよいのか、再考すべき時に来ているのではないかと考えています。三鷹市災害時医療における根本的な問題であり、市とも十分協議した上で判断します。
 現在三鷹市災害医療コーディネーターは不在になっています。都下で不在なのは三鷹市を含め幾つかの市町村のみです。ほとんどの市町村では保健所長または医師会員が任用されています。当然、医師会防災救急対策担当理事の私が指定される可能性があります。しかし、指定されたからといって簡単に勤まるものではありません。コーディネーターたるには、十分な知識や経験、訓練が必要ですが私にはそのような能力がありません。また、そもそも発災時私が生きている保証さえありません。ですから、複数の者を選任し不測の事態に備える必要があると思います。そのような考えのもと、現在、東京都医師会は東京都と協力して来年度から区市町村災害医療コーディネーター研修を開始する予定です。詳しくは都医ニュース平成28年10月号をご覧下さい。そういった研修を通じ十分なトレーニングを積んだ者でなければ、発災時まったく役に立ちません。複数の会員、とくに防災救急対策委員の先生方には是非とも受講をお願いしたいと考えています。
 前理事と小職が後任に選任されるまでの繋として、奮闘して下さった高山前副会長からの宿題として、救護所運営メンバーの立場を明確にした市との契約書の作成があります。これも次年度中に何とか締結したいと考えています。
 災害時要援護者を含めた災害時医療救護所訓練は一度も行われていません。これも今後の課題です。
 最後に、今後の7住区における総合防災訓練の進め方です。現在、渡辺雅令副委員長の力を借りながら委員長の私が7住区すべての訓練の準備をし、仕切っています。防災訓練の主催者である7住区の住民協議会や防災協と同時期に打ち合わせを行うため混乱が生じることも珍しくありません。そのため、本年度西部地区の訓練においては、住協と参加される先生方の間で直接連絡を取り合い、打ち合わせをして頂きました。以前より知己の地元住区の先生方が参加して下さったため、スムーズに事が運びました。
 一方、若林研司前会長のご英断で、医師会班割が完全に7住区と一致しています。そのような経緯から、今後の7住区の防災訓練は、班長や住区災害時医療救護所長の先生方に直接市と連絡を取り合い、進めてい頂く予定です。もちろん、委員長である私がサポート致します。なお、メーン会場に関してはこれまで同様私がお手伝いします。
 今後とも災害時医療へのご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
(本文は三鷹市医師会雑誌醫人往来平成29年1月号に掲載されたものを改変、転載しています)

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2017/01/03 
「東京JMAT in熊本地震の写真展byデジタルフォトフレーム」

 明けましておめでとうございます。
 謹んで初春のお慶びを申し上げます。
 旧年中は格別のご愛顧を頂き誠に有難うございました。
 本年もなお一層のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い 申し上げます。

 さて、皆さんはお正月休みを如何お過ごしでしょうか。私はクリニックでの書類整理や買い物程度でほとんどどこにも出かけず自宅にいました。というのも、一つは高齢の実父が入院中であること、三女、四女が受験生で大晦日、元旦も含め冬休みの間、ほとんど毎日朝から夕方まで塾があること、山のように溜まった書類やトゥドゥリスト(to do list)を整理、処理したいとかねがね思っていたこと等のためです。
 トゥドゥリスト中の一つに熊本地震で撮影した写真の整理があります。2016/06/06の院長コラム「熊本地震に日本医師会災害医療チームとして派遣されました。」でご報告したように、東京JMATとして当院職員と一緒に熊本地震に派遣されました。その報告書作成のために撮影した多数の写真を整理、院内に掲示、当院へ来院された方々にも熊本地震の現状を知って頂こうと思っていました。本来5月に派遣後すぐにすべきでしたが、三鷹市総合防災訓練の準備が忙しかったり、院内の展示スペースが狭隘だったりして、後回しにされていました。しかし、秋頃ふと製薬メーカーから記念品として頂いたデジタルフォトフレームがまったく使われないまま数年間放ってあることに気付き、これを使えば場所も取らず写真を展示できると思い時間を見つけて設定しようと思っていました。しかも、この頂き物、合計2台放置されていました。ということで、冬休みの間に写真を整理、デジタルフォトフレームを設定、来院された方がご覧になれるように準備をしました(左図)。新年、来院された折にはぜひご覧になって下さい。そして、今年度もくまもん募金(右図)(2016/06/06院長コラム「熊本地震への義援金募金を始めました。くまもん募金です。」をご参照下さい)への協力を宜しくお願い申し上げます。

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2016/12/11 
「毒蛇ヤマカガシ咬傷について」

 私は欠席しましたが、平成28年8月30日医師会館において、医師会理事と日本共産党三鷹市議団の懇談会が開催されました。理事会では、このように市議会の各会派議員団と年1回程度懇談会を開催しています。会において井の頭公園でのヤマカガシ咬傷被害を危惧する質問があったそうです。会長より防災救急対策担当理事である小生に「発生事例、例数、保健所としての対処法、抗毒素血清の在庫」等について保健所へ問い合わせ調査、報告するよう指示がありました。その後調査結果を理事会で報告、共産党市議団に資料を提供しました。理事会において、「ヤマカガシが毒蛇であることはあまり知られていません。今回いろいろ勉強し、三鷹一のヤマカガシの大家になったと思います。」と自慢げに吹聴しました。すると、会長や理事の先生方より、折角詳しく調べたのだから、醫人往来に投稿、広く周知すべきとのアドバイスを頂きました。そこで、早速、内容を改変、投稿させていただくことにしました。
 結論から言いますが、このヤマカガシという蛇、兎に角ユニークで面白い蛇です。私は今回の調査まで、ヤマカガシの名前をまったく知りませんでした。毒蛇であることはおろか、ヤマカガシなる蛇が日本に存在することすら知りませんでした。私の知識では、日本に生息する毒蛇はマムシとハブだけ。しかし、今回の調査でこのような私の認識も強ち不思議ではなかったことが分かりました。
 まずは、ネットで検索。ヤマカガシがどんな蛇か調べてみました。ウィキペディアその他からの引用です。

<ヤマカガシとは?>
1、北海道、南西諸島、小笠原諸島以外の日本中に生息、ありふれた蛇です。
2、全長60〜150cmほど
3、目がクリッとしており、首周りにある黄色いリング状の模様など、色鮮やか(図参照。ウィキペディアより引用)でペットとして人気があるようです。(毒蛇がペット?)
4、湿地、河川敷、用水路、水田などの水辺に好んで生息しています。というのはカエルを主食とするからです。近年水田の減少や、都市部での下水道の整備に伴いカエル生息数が減少、それに伴いヤマカガシ個体数も減少、都市部では見かけることは稀になっています。よって、井の頭公園に生息していても、生息数それほど多くないと推測されます。
5、性質は一般におとなしく、触れようとしなければ攻撃してこないようです。敵わないと判断すると、仰向けになり擬死行動(死んだふり)することもあります。
6、さて、肝心な毒のこと。ヤマカガシは、マムシやハブと異なり、自ら毒を産生できません!ではなぜ毒を持つかというと、毒を持つヒキガエルを好んで捕食、そのヒキガエルの毒を自身の毒腺にそのまま蓄えて利用するからです。ですから、ヒキガエルを捕食していないヤマカガシには毒はありません。ヒキガエルの生息しない金華山のヤマカガシには毒はありません。また、ヒキガエル以外のカエルを餌として与え、ペットとして飼育した場合も当然毒はありません。ですからペットとして飼われているわけです。ちなみに、ネット上では、「小学生の頃、教室でヤマカガシを飼っていた。頭に乗せて遊んでいた。」等の文章も。マムシやハブなど攻撃性の強い蛇でさえ毒を持つヒキガエルの捕食は避けるのに、ヤマカガシは好んでヒキガエルを捕食するそうです。
7、元々毒を産生するわけではないので、マムシやハブのように上顎の先端に毒牙を持ちません。上顎の奥に2mmほどのナイフ状の牙があるだけです。ですから、口の奥に届くような細い部分、例えば手の指などが咬まれなければ、皮膚は傷つきません。毒はこの牙の根部にある毒腺より出てきます。その毒が、皮膚の傷より染み込んでいくと、中毒症症状が出現します。マムシやハブのように毒牙から直接注入されるわけではないので、数秒間咬まれ続けなければ毒は染み込んでいきません。
 
以上がヤマカガシの生態です。
 このように、無毒のヤマカガシも多く、また、たとえ咬まれても中毒症状を呈することが稀なため、以前は毒蛇とはまったく考えられていませんでした。しかし、1972年中学生がヤマカガシに咬まれ死亡するという事故が発生、初めて毒蛇と認識されるに至ります。この中学生もやはり、素手でヤマカガシを捕まえようとして咬まれましたが、毒蛇とは思わず放置、数日後に死亡しています。しかし、その後も、ヤマカガシ咬傷の被害が滅多に発生しないため、現在でも毒蛇と認識されていないわけです。
 北多摩南部保健医療圏を管轄する東京都多摩府中保健所に問い合せてみました。結果、蛇のヤマカガシは管轄せず情報をまったく持っていないとのことで、東京都環境局多摩環境事務所自然環境課を案内されました。同課は「保全地域の管理、開発規制、緑化指導、鳥獣保護・狩猟免許、自然公園の管理、林地開発の許可、森林病害虫の防除、都民の森の維持管理」する部署です。同課に問い合せたところ、「鳥獣」を取り扱うが、蛇はまったく管轄していないとのことでやはり、情報をまったく持っていないとのことでした。
 因みに、同課担当者からは、「保健所はセアカゴケグモも管轄するのだから、毒蛇を管轄しても可笑しくないのだが、生き物だと何でも本課を紹介するので困っています。」とのことでした。さらに、同課担当者によれば、都庁内に蛇咬傷を管轄する部署はないとのことでした。ですから、井の頭公園も含め、都内での発生事例、例数などの情報を得ることは不可能です。しかし、同課より、日本救急医学会により設立された「公益財団法人日本中毒情報センター」と文部科学省管轄の財団法人で、日本で唯一蛇類を中心に研究を行っている「一般財団法人 日本蛇族学術研究所」(群馬県太田市藪塚町3318 電話0277-78-5193)を案内されました。
 「公益財団法人日本中毒情報センター」ホームページでヤマカガシ咬傷を検索すると、ヤマカガシに関して、「概要」「毒性」「症状」「処置」「情報提供時の要点」「治療上の注意点」など詳しく情報が提供
されています。それによると、抗毒素血清は厚労省研究班により、2002年試作品が作成されていますが市販されていません。症例報告の論文でも有効性が確認、投与後数時間で効果が発現しています。ただ、「治療上の注意点」として、「財団法人日本蛇族学術研究所」に電話で問い合せ、相談の上、投与要否の判断を行うよう推奨されています。
 そこで、同研究所が一般に公開している施設「ジャパンスネークセンター」(同所)公式ホームページの「毒蛇咬症など緊急の場合には、いつでもご連絡下さい。(時間外緊急問合せ先等)」に記載されている連絡先に問い合せ、堺淳主任研究員(厚労省研究班員で血清試作品を作られた先生)に直接お話を伺いました。結果、

1、水田の減少、下水道普及により主食とするカエル生息数が減少、ヤマカガシ個体数は激減している。
2、ヤマカガシ咬傷による問い合せは年間数件(昨年3例、一昨年8例)程度。一方、マムシ咬傷は年間3000例程度。
3、同研究員も班員であった厚労省研究班により2002年ヤマカガシ抗毒素血清試作品が作製されているが、医薬品として認可されておらず、市販されていない。そのため、抗毒素血清の使用期限である10年を過ぎたが、廃棄せず今でも保存、使用している。因み、数年前抗毒素血清使用機会があったが、有効だったとのこと。抗毒素血清作製には毒を持つヤマカガシ300匹程度が必要だが、現在、ヤマカガシ300匹を集めることは困難なため、再度抗毒素血清を作製するのは非常に難しい。
4、先述のように、ハブやマムシと異なり、ヤマカガシの毒は指など細いところを咬まれなければ、体内に染み込んでいかない。そのため、軍手や靴下を穿いていれば咬まれても毒が体内に回ることはない。これまで問い合せのあった30例で実際に抗毒素血清を使用したのは18例のみ。それらは、ほとんどが「素手で捕まえようとした」「サンダルで踏みつけた」などの事例とのこと。
5、抗毒素血清は咬傷4日後でも有効なため、ヤマカガシに咬まれた後、まず、ジャパンスネークセンターに電話で問い合わせをし、医療機関と相談の上、使用の要否を決定するとのこと。そもそもヤマカガシの皮膚の模様は個体差が大きいため見間違うことも多く、咬んだ蛇がヤマカガシでないことも多い。咬まれた状況を十分ヒアリング、翌日の採血検査結果を確認の上、ヤマカガシ咬傷か確認し、抗毒素投与を決定するとのこと。
6、抗毒素血清は都内7ヶ所程度の病院(抗毒素血清試作品が作製された当時、杏林大学も保存していたが、担当者が代わり現在は保存していないとのこと。よって、ウィキペディアの情報は間違っている)に保管されているが、その使用は、先述の日本中毒センターの資料の如く、結局、受診医療機関からジャパンスネークセンター堺研究員に問い合わせがあり、相談の上抗毒素血清を使用するとのこと。医療機関に在庫のない場合、ジャパンスネークセンターから医療機関に緊急車両(警察)を使用し、配送することも行っているとのこと。
7、これまでの死亡例は、ヤマカガシと気付かず放置した症例で、近年まで(現在でも)、ヤマカガシが毒蛇だとの認識がなされていないためである。

以上のようなお話を伺えました。

<結論>

 井の頭公園を含め三鷹市内の水辺に、ヤマカガシが生息している可能性はあるが、以前に比べその生息数は非常に少ないと思われる。見つけた蛇を素手で捕まえようとしたり、素足のサンダル履きで踏みつけたりしなければ、ヤマカガシ咬傷が発生する可能性は低い。さらに、たとえヤマカガシ咬傷が発生しても、抗毒素血清を必要とするほど毒が体内に注入される可能性はさらに低い。万が一ヤマカガシと思われる蛇に咬まれた場合、近隣の救急病院を受診の上、ジャパンスネークセンター(0277-78-5193、夜間も緊急連絡先のメッセージが流れる)に問い合せれば、抗毒素血清要否の判断、提供を含め24時間対応してもらえる。過去の死亡例は、ヤマカガシ咬傷と気付かず放置した症例であり、上記のように対応すれば生命に危険が及ぶことはまずない。いずれにしても、ヘビを見つけた場合、それが毒蛇であるか否か完全な判断は不可能であるから、近づかないようにすべきである。

 末筆ですが、本文作成にあたり、症例報告論文やスネークセンター発行の資料「ヘビ研ニュース」など貴重な資料をご提供いただきました笹本浩理事に深謝いたします。
(三鷹市医師会雑誌醫人往来平成28年11月号より転載)

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2016/12/04 
院長コラム「ザガーロ、恐るべし」(その1)

 当院では不定期ですが、ランチョンセミナーと称し、昼休みの時間帯に製薬メーカーにお越しいただき弁当(メーカーさんが提供してくれます)を食べながら医薬品説明会を開催しています。防災訓練準備や診療のため帰宅が毎晩深夜となる昨今、診療後開催される勉強会や講演会などに参加するのはままなりません。ランチョンセミナーは日々開発される新薬の情報を入手する貴重な機会となっています。もちろん、メーカーさん主導で開催する勉強会ですから、薬のいいとこ取りになりかねません。聞く側がその点を念頭において、より客観的、あるいは批評的な目をもって判断する必要があります。
 先日もグラクソスミスクライン社(GSK)の男性型脱毛治療薬ザガーロの説明会を開催しました。ザガーロは医師の処方箋が必要な医薬品(処方箋医薬品)ですが、保険適用医薬品ではありません。いわゆる自由診療です。当院は専ら保険診療を行う医療機関ですが、「自由診療コーナー」に記載しているように、患者さんの要望もあり一部自由診療も行っています。これらは、高血圧、糖尿病等さまざまな持病で通院されている方が、わざわざもう一軒別の医療機関を受診しなくてよいように、保険外の医薬品も一通り処方できるようにしています。
 これまで処方箋医薬品である男性型脱毛症治療薬としてはプロペシアしかありませんでした。しかし、本年6月このザガーロカプセル(0.1mgと0.5mg)が新たに発売になりました。噂ではプレペシアに比べ、かなり効果が高いと聞いていましたが、今回具体的にその効果を実感することができました。
 左図はザガーロの発毛効果を調べたデータです。服用24週間後に頭頂部の10円玉大の面積中の髪の毛の本数を調べベースラインからどれだけ変化したかを見ています。服薬しなければ(プラセボ)当然本数は減っています。しかし、ザガーロ0.5mgを服薬している方は、その用量に比例して増えています。フィナステリド(プロペシア)最大量1mgに対し、ザガーロ最大量0.5mgは1.6倍発毛していました。
 また、中図はザガーロの育毛効果を調べたデータです。服用24週間後に頭頂部の10円玉大の面積中の毛髪の太さ(直径30μm以上の非軟毛の太さの合計)を調べベースラインからどれだけ変化したかを見ています。やはり服薬しなければ髪の毛は細くなっています。しかし、ザガーロ0.5mgを服薬している方は、その用量に比例して太くなっています。フィナステリド(プロペシア)最大量1mgに対し、ザガーロ最大量0.5mgは約1.4倍太くなっていました。結局、ザガーロ0.5mgを服用するとプロペシアを服用している方よりも、本数が増えるだけではなく、一本一本がより太く、剛毛になっています。そのため、医薬品の添付文書においても、プロペシアの「効能効果」は、「男性における男性型脱毛症の進行遅延」となっているのに対し、ザガーロでは「男性における男性型脱毛症」となっており、「進行遅延」の文言が外されています。すなわち、たんなる「進行遅延」ではなく、「発毛育毛」を効能効果として謳っているからです。
 もちろん、ザガーロは男性型脱毛症に関与する男性ホルモンの一種、ジヒドロテストステロン(DHT)を減少させる薬ですから、それに伴った副作用も報告されています(右図)。自分の持病やライフスタイルを考慮しつつ、服用するか否か決める必要があります。私のように禿げていても気にせず、毎日明るく健康に過ごしている人も多数いますから、健康のため必要な薬ではありません。

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2016/12/04 
院長コラム「ザガーロ、恐るべし」(その2)

 さて、今回GSKはザガーロのCMにタレントの剛力彩芽さんを起用しました。その名前から、剛=剛毛、力=力強い髪の毛、彩=黒々とした彩り、芽=新しい毛が芽吹く、といったイメージを連想するので起用したそうです。最近TVCMも流れているのでご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。私も納得です。因みに、個人的には以前からこの剛力彩芽さんのことをかわいい子だと思っていました。我が家の次女も私に似て目が細いのですがとても笑顔のかわいい子です。目の細い剛力彩芽さんに似ていると思っていました。また、高一次女はダンス部に所属していますが、剛力さんも学生時代はダンス部に所属していたそうです。ただ、剛力さんに失礼のないよう、娘のことは常々「顔面パンチを食らった剛力彩芽」とか、生意気なことを言ったあとは「交通事故にあった剛力彩芽」と呼んでいます。メーカーさんから剛力彩芽さんのポスターをゲット、記念撮影(下図)の後、院内数カ所に掲示しました。ザガーロの効果、そのCM戦略、恐るべしです。このコラム、娘が気づかなければいいのですが。

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2016/11/08 
「第92回多摩医学会講演会において『熊本地震における東京JMAT活動報告』を発表しました。」(その1)

 2016年11月5日土曜日、パレスホテル立川で開催された第92回多摩医学会講演会において「熊本地震における東京JMAT活動報告」を発表しました。
 この学会は、都下の主たる地区医師会(日本医師会の下に東京都医師会があり、その下におもに市町村を単位とした地区医師会があります)が持ち回りで主催する小さな学会ですが、92回と学会としては大変歴史があります。今年は八王子市医師会が主催しました。一般演題と特定のテーマを持った特集演題の二つのセッションに分かれて発表しますが、今年の特集演題のテーマは、「災害医療に於ける医師会の取り組み」でした。そこで、三鷹市医師会を代表し、熊本地震における東京JMATとしての活動を報告してきました。また、一般演題では、座長を務めました。なお、この熊本地震での活動の詳細は、2016年6月6日の院長コラム「熊本地震に日本医師会災害医療チームとして派遣されました。」(その1〜4)をご参照下さい。このコラムでは、抄録と作成したスライド1〜9を提示します(左図スライド1、中図スライド2、右図スライド3)。

第92回多摩医学会講演会抄録「熊本地震における東京JMAT活動報告」

 5月19〜22日まで東京JMATとして派遣された熊本地震での活動を報告する。
 南阿蘇村役場に設置されたSADRO(South Aso Disaster Recovery Organization)事務局(阿蘇市の阿蘇医療センターに設置されたADRO本部の南阿蘇村分室)を拠点に活動。4月14日発災後、1ヶ月以上経過しているため診療ニーズはなく、様々な派遣団体、組織の統括を地区医師会より期待された。朝夕開催される会議において各種チーム、関連組織(南阿蘇村保健師、保健師協会、日本看護協会、日赤DMAT、薬剤師会、歯科医師会、DPAT、東京JMAT、ADRO事務局等)が1日の活動、問題点を報告、全体で共有、意見交換、意思統一した。
 DMATと異なりJMATは72時間以後の急性期〜亜急期災害時医療、具体的には避難所状況把握と改善、在宅患者・避難者の医療・健康管理、地元医師会中心の連絡会立ち上げ等を担うが、正に今回の活動。昨今、専門性をもった各種団体が災害援助チームを独自に派遣しているが必ずしも連携しておらず、地区医師会とパイプを持つJMATは今後一層、全体を統括する役割を期待される。

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2016/11/08 
「第92回多摩医学会講演会において『熊本地震における東京JMAT活動報告』を発表しました。」(その2)

左図スライド4、中図スライド5、右図スライド6

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2016/11/08 
「第92回多摩医学会講演会において『熊本地震における東京JMAT活動報告』を発表しました。」(その3)

左図スライド7、中図スライド8、右図スライド9

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2016/10/30 
「梅毒」

 近年梅毒届出数が増加しています。ペニシリンによる治療法が確立、公衆衛生の改善とともにこの花柳病(花柳界で感染することの多い病気、すなわち性感染症のことです。そもそも「花柳界」を知らない若い方のためにご説明すると、花柳界は遊郭のこと、ずばり性風俗業界のことです)は減少の一途をたどっていました。しかし、最近、男女を問わず全国的に急増しているというニュースを頻繁に耳にするようになりました。厚労省も2014年の感染者数が10年前の約3倍にまで増加したことを受け、注意喚起するとともに、ホームページに「梅毒に関するQ&A」を掲載しています。東京都の報告によれば都内でも同様に増加しているようです(下図)。
 とくに衝撃的だったのが、2016年10月13日日本産婦人科医会が報告した妊娠中の梅毒感染症に関する実態調査結果です。妊娠中の梅毒感染率は4022人に1人で、年齢層別では40代以上で6012人に1人、30代で8091人に1人、20代で2449人に1人、10代で537人に1人と、10代妊婦は平均の約8倍も梅毒に感染していました。梅毒感染妊娠は、周産期死亡率4%、児の先天奇形発生率も14%と非常に高い結果でした。
 約30年前医者になりたての頃は、内科医であってもたまに外来で梅毒を見ることがありました。とくに救急外来を担当、夜間診療をしていると、梅毒に遭遇する頻度は高くなりました。私見ですが、恥ずかしさから泌尿器科や性病科を明るい時間帯に受診するのを躊躇っている方、昼間寝て夜活動する方等が24時間営業ですべての診療科を兼ねる夜の救急外来を受診していたように思います。しかし、上述のごとく梅毒の頻度が激減、めったに遭遇することがなくなりました。私の記憶ではここ15年間とんと遭遇していません。約9年前当院を開院後、夜勤をすることもありませんし、梅毒に接する確率はさらに減っています。
 ところが、先日約15年ぶりに梅毒を診断、梅毒感染者数急増を実感することになりました。問診、診察から梅毒を疑い、血液検査を受けて頂きました。梅毒の病態に関する記憶が曖昧になっていたので、久しぶりに梅毒に関する医学書を通読、正確に診断できるよう記憶を呼び起こしました。検査結果はやはり梅毒でした。梅毒は、見逃すことなく正しく診断、治療すれば確実に治る病気です。しかし、第1期、第2期を見逃すと命に関わるような合併症を併発する晩期梅毒に移行してしまいます。
 この梅毒、学生時代の試験では多少厄介な病気だと感じました。それは、梅毒特有の医学用語がいくつもあるからです。つまり、梅毒以外の病気では使わないような梅毒特有の症状を表す言葉です。例えば、「初期硬結」「硬性下疳」「横痃」「ゴム腫」「バラ疹」(バラ疹は腸チフスでも使用する言葉です)など。これらは梅毒でしか使用されない医学用語です。とくに「痃」など見たこともない漢字が使用されています。
 今回しっかり remind しっかり頭に叩き込んだので、今後問題なく梅毒の診療ができそうです。ただ、性感染症には梅毒(原因微生物:Treponema pallidum)以外に、淋病(Neisseria gonorrhoeae)、軟性下疳(Haemophilus ducreyi)、鼠径部肉芽腫(Calymmatobacterium granulomatis)、性器クラミジア感染症(Chlamydia trachomatis),性器ヘルペス等があります。これらとの鑑別診断が必要な場合、泌尿器科または性病科に行って頂きます。そらから、梅毒と診断された方には、その他の性感染症にも同時に感染していることが珍しくありません。そのため、必ずエイズ検査、肝炎ウイルス検査も受けて頂きます。

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2016/10/09 
「帰宅は連日深夜ですが嬉しいことがありました。フォトコンテスト大賞を受賞しました。」

 以前お話しましたが、公益社団法人三鷹市医師会の防災救急対策担当理事を拝命しています。年間を通した定例の会議に加え、防災訓練の季節となり、その準備のための会議、打ち合せ、書類作成等に忙殺されています。また、秋は様々な健康診断の繁忙期のため、両者のピークが重なり一層多忙になり、昨年同様帰宅は連日午前様です。誤解のないよう念を押しますが、宴会ではなく仕事で帰宅が24時を過ぎるのです。
 10月9、10日の連休は、年1回の医師会旅行が催行されています。8日から二泊三日で多くの先生方が北海道に旅行されています。しかし、私は、深夜残業でも裁ききれず溜まりに溜まったたくさんの書類を、この連休で一気に片付けようと思い参加しませんでした。遣り残した仕事が溜まってくるとそれだけでもストレスです。あまりに多く、最近遣り残した仕事が把握できなくなりそうで心配です。To doリストを作成していますが、書類の数が20を超えると、それでも把握しきれなくなります。当然、遣り漏れが出てしまい、提出日を過ぎたところで催促を受け、慌てて徹夜作業ということに。徹夜作業はまた翌日の業務効率低下を招き、また書類が溜まるという悪循環に。この悪循環から抜け出すためにも、日曜日や連休で一気に書類を減らすようにしています。
 愚痴はこれくらいにして、こんなストレスフルな生活ですが、久しぶりに嬉しいことがありました。我が家の庭の植栽は、昨年クローバーガーデン南青山オフィスに依頼し植えていただきました。バリ風、アジアンテイストという当方の希望を伝え、樹木、下草の選定やデザインをしてもらいました。自動散水の工事もお願いしたので水遣りはなく楽をしています。さほど日当たりの良い庭ではありませんが、それでも1年で相当木々が大きくなってきました。剪定は私が日曜日に時間を見つけやってはいますが、数ヶ月に一度程度ですからかなりぼうぼうです。
同社より定期刊行物が送られてきます。その冊子をチラ見していると「ご家族ふれあいフォトコンテスト」の一文に目が止まりました。読んでみると商品はディズニーペアチケット、iPad等等と魅力的。娘達に話すとディズニーペアチケットが欲しいと半ば受賞したのり。我が家は、私がアミューズメントパーク嫌いなため、20年間で1度しかディズニーランドに連れて行ったことがありません。来春、三女、四女の受験が終わると誰も受験生がいないため、ディズニーランドに連れて行くにはちょうど良いタイミング。応募方法は、デジカメ画像を3枚(下図、娘達の顔は画像処理しています)と簡単な文章を送るだけ。日曜日に娘達に協力してもらい写真撮影、7月頃応募してみました。
すると、数日前大賞受賞のお知らせがきました。これまで必ず連れて行くと約束し、結局空手形に終わっていますが、今回はチケットが手元にあるので、間違いなく行くことになりそうです。

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2016/10/02 
「ホームページを全面的にリニューアルしました。経緯をお話します。」(その1)

 本年2月から始めたホームページリニューアル作業が漸く終わりました。一部動画が見られないなどの不具合は残っていますが、基本的に完成です。
今回、ホームページをリニューアルした理由は、

1、前回のホームページリニューアル、2011年10月から約5年が経ち(2011/10/11院長コラム「ホームページ大幅リニューアル上梓しました。」を御参照下さい)、体裁が大分陳腐になってきたこと。

2、スマホ対応にするため。
 以前は、当院ホームページにアクセスされる方の大半がパソコン端末からでした。しかし、最近スマホからアクセスされる方が急増、約50%になっています。
 確かにスマホからアクセスすると、表示された電話番号をワンクリックするだけで、すぐに予約電話を掛けたり、クリニックまでのナビが表示されたりと便利です。そのため、巷では、パソコンを押入れにしまい込み、ネットやメールは専らスマホで、という方も増えているそうです。そういった方々が当院ホームページを閲覧しやすいようにスマホ対応としました。
 また、日本で利用される検索エンジンのシェアは、最近ではパソコンもスマホも圧倒的にGoogleが1位で、2位のYahooに大差をつけています(左図、パソコン検索エンジンシェア、中図、スマホ検索エンジンシェア)。かくゆう私も検索エンジンは専らGoogleです。Googleはスマホで検索した場合、スマホ対応されたページを優先的に表示しているそうです。これをモバイルフレンドリーと呼びますが、その影響でスマホ対応でないホームページは、パソコンにおいても同様に検索順位が下がっていくそうです。そのことをホームページ製作会社から指摘され、ホームページのリニューアルを執拗に進言されました。しかし、昨年、すでに毎月の訪問者数が約5000人を突破(2015/04/03院長コラム「当院ホームページのアクセス数が増加して驚いています。」を御参照下さい)、裁ききれないくらい患者数が多い(私の仕事の鈍いのが主因ですが)のに、これ以上お金を払って宣伝するつもりはないと突っぱねていました。
 実際、以前は、例えば「三鷹市」「高血圧」等の検索語で検索すると、必ず1ページ目のトップ5に表示されていたのに、昨年後半ぐらいから段々と順位が下がり、最近では、1ページ目に表示されることがほとんどなくなってしまいました。アクセス数(ホームページ訪問者数)も、2015年1月の5649をピークに頭打ちになっていました(右図、2015年撫子ホームページ訪問者数)。そもそも、ホームページを始めた主な動機は、2015/04/03の院長コラムに記載したように「多少大袈裟に言うと、年を取るに従い死ぬ前に自分の思っていることを思う存分述べてみたいという欲望に駆られ、2011年10月頃より思いつくままに『院長コラム』を執筆する」ためです。もちろん、言いたいことを書き殴っても、誰にも読んでもらえないようでは、自己顕示欲(恥かしがり屋で人見知りにも拘わらず、そこそこ自己顕示欲もあります)が満たされません。また、向上心が強く、負けず嫌いな性格からすると、増え続けていたアクセス数が増えなくなった現実を突き付けられると、冷静さを失い、何とかしなければとういう衝動に駆られてしまいました。昨年に引き続き、医師会理事として防災訓練その他に忙殺され、打ち合せ時間を捻出できるか不安でしたが、ホームページ製作会社とリニューアルの契約を結びました。

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2016/10/02 
「ホームページを全面的にリニューアルしました。経緯をお話します。」(その2)

3、前回リニューアル後、情報量が大幅に増加、旧生活習慣病のページなどは、相当時間スクロールしなければ、読みたい内容に辿り着けなくなっていました。この不便さを解消するため、例えば「高血圧内科」「脂質代謝内科」「糖尿病・甲状腺内科」「高尿酸血症・痛風内科」などの解説を各々独立したページに分散、スクロールする手間を大幅に減少させました。その他すべての内容をスクロールする手間を少しでも減らすよう独立したページに掲載しました。また、どの画面でも必ず画面右下に、下図のようなワンクリックでページトップへ移動できるボタンを設置しました。

4、文字を大きくしました。旧ホームページでは字が小さく、何人かの方、大抵はご高齢の方から読み難いとのご指摘を頂きました。ご存知の方も多いと思いますが、大抵のブラウザには画面を拡大する機能がついています。それを利用すれば老眼の方でも容易に読むことができると思います。しかし、ご高齢の方皆さんにその機能を周知させるのは無理ですし、酷だと思います。ですので、今回、デフォルトの文字を以前より大きくしました。

5、ホームページの「HOME」ページに休診状況を表示する「診療カレンダー」を設置しました。ホームページの利点の一つは、irregularな休診、診療時間の変更を24時間何時でも告知できることです。換言すれば、患者さんは自宅に居ながら24時間何時でも確認できます。旧ホームページでは、休診情報は「休診・診療時間変更のお知らせ」のコーナーに掲載していました。このコーナーにはトップページのバナーからワンクリックで移動できました。しかし、見方を換えるとトップページを一見しただけでは休診や診療時間の変更に気付かない方も多くいたようです。今、「HOME」ページに「診療カレンダー」を設置、一見して休診状況が把握できるようにしました。もちろん、詳細な時間は従来どおり「休診・診療時間変更のお知らせ」で確認できます。

6、当院のシンボルカラーである茶色をベースとした色味、配色は変えませんが、背景にjazzの巨匠達のポートレート、名盤のアルバムジャケット(アルバムの多くが2010年休刊したスイングジャーナル誌のジャズ・ディスク大賞を受賞した作品です)を配置、私の好きな jazzy な雰囲気を前面に出しました。受賞作以外にもお勧めのアルバムがまだまだ多数ありましたが掲載することができませんでした。というのは例えば「高血圧内科」のページは、独立したとはいえ掲載情報量が多いため相当縦長になっています。画面を見ていただくとお気づきだと思いますが、ほぼ半分以降の背景は上述のような画像が配置されておらず、無地のままになっています。こういった空きスペースにもっと多数のjazz関連の画像を配置するつもりでした。しかし、製作会社からページが重たくなるため、スペックの悪いパソコンでは表示に時間が掛かり過ぎる可能性があり、ある程度制限した方がよいとの忠告を受け、泣く泣く諦めた次第です。今後PCのスペックが向上したら、画像を追加しようと思います。

7、音楽プレーヤーを掲載、私が所属した山口大学医学部軽音楽部ラテンエコーズが創部20周年記念に製作したアルバム楽曲を試聴できるようにしました。私のパートはトランペットです。当時大学2年生でした。私は大学2年から入部しましたが、それまで音楽の経験といったら、小学校時代の縦笛、ハーモニカ程度です。初心者な上(クラブのホームページを見ると今でも大半の部員が初心者のようです。医学部は6年生なので、初心者でも気長に練習すると何とか物になります)、入部して間もないためまともに吹けませんでした。正直卒業までへたくそのままでした。バンマスの先輩から「隅で目立たないように吹いていろ。」と言われ、変な音がマイクに拾われないよう戦々恐々としていたのを覚えています。今では懐かしい思い出です。演奏にはOBの先生方も参加されていました。後に山口大学学長になられる当時の産婦人科学講座教授の加藤紘先生(クラリネット)、川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学講座前主任教授の加来浩平先生(アルトサックス)が参加されていました。また、同じトランペットパートの2学年先輩、矢野雅文先生は、現山口大学医学部器官病態内科学(第二内科)教授に、1学年後輩の小谷譲治君(ベース)は、兵庫医科大学救急救命センター主任教授に就任しています。卒業後顔をあわせることはほとんどありませんが、当時を思い出すと大変懐かしいです。
 現役の学生諸君が今でも定期演奏会や追い出しコンパなどの案内を必ずメールしてくれます。もちろん遠くて参加できていません。私の頃は先輩から代々引き継いだ理想科学製のプリントゴッコを使い、幹部が下宿に集まり、手作業で葉書を印刷していました。今回検索して分かったことですが、このプリントゴッコ、2008年に販売が終了したそうです。理想三鷹支店が当院の入居するビル3階にあるのも何かの縁を感じます。少し大袈裟過ぎですかね。
 なお、この埋め込まれたmp3プレーヤーですが、よくあるAdobe Flash Playerを利用したものではありません。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、iPhone OSはFlash Playerをサポートしておらず再生できません。そのため、今回、HTML 5 playerを使用しました。スマホでも楽曲が試聴できるよう作業中です。乞ご期待。
 我々アマチュアバンドの演奏が耳障りなジャズファンのため、jazz界の巨匠が演奏する本物のスタンダードナンバーを提供する計画も進めています。ただ、ホームページが重たくなり過ぎるなどの問題があり、製作会社と交渉中ですが難航気味です。それが待てない方は、是非CLASSIC JAZZ ONLINEからmp3音源の本物の名演奏をダウンロードしてみて下さい。米国では著作権の保護期間が70年のため、1946年以前の音源は無料でダウンロード、聴くことができます。

8、ほとんどのページを自分自身で改訂できるようになりました。旧ホームページでは、「新着情報」「院長コラム」「Clinic Blog」「スタッフ募集」「休診・診療時間変更のお知らせ」などは製作会社を通さず自分たちで自由に変更できました。しかし、それ以外のページを変更するには、製作会社に依頼しなければなりませんでした。今回からほとんどのページが自分たちで変更可能になりました。しかし、そのためには、多少HTML(HyperText Markup Languageの略、Webページを作成するときに使用される言語)の知識が必要となります。こつこつ勉強していきます。
 
 以上です。さて、こうして列記してみて再確認できたことは、皆様に少しでも有益な情報をお届けしようとする前に、自己主張、ストレス発散(言いたいこと言うとスッキリします)の場であると言うことがハッキリしてきます。私の我が儘にお付き合い頂き最後までこのコラムをお読み頂き有難うございました。
 なお、最後にお知らせですが、ホームページリニューアルを記念して、イベントを企画しています。乞ご期待。

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2016/07/03 
「不味いのに行列のできるラーメン」

 広報委員会には加藤謙二副委員長を初め、ラーメン好きが多いようです。医師会員にも、お酒の締めにラーメンといった先生方もいらっしゃることでしょう。斯く言う私もラーメンが好きで、学会を含め地方に出かけた折は、ご当地ラーメンを味わって帰ることも珍しくありません。全国津々浦々のラーメン屋を食して回ったわけでもなく、また、決して食通でもありませんが、少ない経験ながら、「世にも奇妙な」と表現できるラーメンを食べたことがあります。何が奇妙かというと「不味いのに行列のできるラーメン」なのです。そして御多分に漏れず私も嵌まってしまい、一時何度となく通いました。誌面を借りてお話させて下さい。
 それは竹岡式ラーメンです。ウィキペディアに「竹岡ラーメン」の解説がありますから、超レア、マイナーではなく、ご当地ラーメンとして一定の地位を確立しているようです。千葉県富津市の竹岡地区が発症のラーメンで、その元祖と目されているのが「梅乃家」です。
 お店の営業時間は午前10時から午後19時ですが後述するように結構アバウトです。10時の開店時間に合わせお店に着いてまず驚かされることは、すでに20人前後の行列ができていることです。私自身は休日しか行ったことがないため、休日特有の現象かもしれませんが。約10年前通い始めた頃、稀に10人以上並ぶことはありましが、大抵数名程度でした。しかし、最近はほぼコンスタントに開店時20人以上の行列ができています。それほど大人気です。そのため、以前10台足らずだった駐車場スペースは、路駐する車が余りに多いため、3倍に拡張されました。それでも路註が絶えません。店は国道127号に面し、まん前には天羽日東バスのバス停があります。しかし、1時間に1本程度なので、地元の方も大抵車で来るようです。駐車場ですぐに気付くことは、地元袖ヶ浦ナンバーに加え、千葉ナンバー、さらには都内ナンバーの車の多いことです。さらには、田舎の小汚いラーメン屋に似つかわしくない外車、ときにポルシェなども普通に駐車してあります。この時点ですでに掴みはOK、期待に胸を膨らみます。何せアクアラインを越えわざわざやってくる輩がたくさんいるのですから。
 このように行列ができるため、開店準備が整うと、30分くらい前に開店することもあります。しかし、チャーシュー(お店では後述のように煮豚と呼ばれています)の準備が出来ないと1時間近く遅れてやっと開店することもあります。逆にチャーシューがなくなると早々とお店を閉めてしまいます。よく、スープや麺が売り切れたため早仕舞いするラーメン屋はありますが、ここはスープや麺がなくなり早仕舞いすることはありません。理由は後で述べますが、お店を早く閉めるのは煮豚がなくなったときだけです。この執筆のため「食べログ」で梅乃家を検索すると、営業時間の欄に堂々と「チャーシューが売切れ次第、営業を終了します。」と明記されているではありませんか。
 お店に入り、取り敢えずメニューを探し壁に目をやると、店主坂口治敏氏の著書「一生ツッパレ!!」(図1、「一生ツッパレ!!」)が目に飛び込んできます。帯には「1杯のラーメンに、命をかけてきたんだ」の一文。益々期待度アップです。
 普通に「ラーメン」700円を注文すると、図2、「梅乃家ラーメン」の如きものが出てきます。
 まず、スープと並んでラーメンの両輪の一つ、麺ですが、生麺ではなく縮れた乾麺です。「サッポロ一番みそラーメン」と同じ俗に言うインスタント麺です。ですから、麺にまったく腰がありません。伸びた麺は美味しくありませんからラーメン屋では注文時、私はいつも「麺硬め」を指示します。しかし、ここでは腰のある麺が出て来るはずもなく、一度も麺硬(めんかた)をお願いしたことはありません。なぜ、乾麺なのかというと、麺を茹でるのが近所のおばちゃん達だからです。素人でも均一に茹でられるようにと乾麺にしたそうです。確かに店主以外は全員、その風体が如何にも近所の主婦といった感じです。
 また、一定の火加減を維持しやすいようにと七輪に載せた小鍋で面を茹でています。見てきたことのようにお話していますが、厨房近くの席に座ると、こぢんまりとした厨房の様子が丸見えで、お話したとおりの様子を目にすることができます。兎に角、お金を払ってラーメン屋で食べる麺とはとても思えません。
 両輪のもう一方がスープです。どこのラーメン屋も、鶏ガラスープ、豚骨系だの魚介系だの、その両者を合わせたWスープだの、ラーメン屋繁盛の肝はスープといっても過言ではないでしょう。繁盛店では、さまざまな食材の旨味を凝縮した出汁の製法が企業秘密となっています。しかし、この梅乃家には出汁がありません。図2に見て取れる醤油に近いような液体は、煮豚の煮汁を、麺を茹でたお湯で薄めただけのものです。茹で汁が足りない時はただのお湯で薄めます。繰り返すと、豚を地元富津、宮醤油店の醤油を使ったタレで煮ます。ラーメンの注文があると、麺を茹で、丼にその麺と煮豚の煮汁適量を入れ、麺の茹で汁で薄めて完成です。そのためラーメンのスープは醤油のような濃い茶色をしています。ウィキペディアには「醤油ダレにはしっかりと肉のうま味が溶け込んでおり、湯を加えることで見た目は濃いがまろやかな味のスープとなる」と書かれていますが大袈裟です。豚「骨」から出汁は出ますが、豚「肉」から出る旨味などしれています。サシの入った霜降り肉から旨味は出ますが、ただの豚肉からはビタミンB1は摂れても旨味はしれています。茶色のスープを飲むと、出汁を入れ忘れた赤味噌の御味御汁のようで、「旨い」と感じるはずがありません。普通のラーメン屋のようにスープの準備に何時間〜何日もかける手間がなく、また、保存の利く乾麺を使用しているため、麺やスープがなくなり店じまいすることはないのです。このようにお手軽なスープのためか、丼には溢れんばかりになみなみとスープが入れられています。丼はお盆に載せられて運ばれてくるのですが、必ずスープは零れ、お盆は洪水のようになっています。竹岡ラーメンの特徴の一つとして、誰かがスープを「零して何ぼ」と言わんばかりに注がれていると書いてあるのを読んだことがありますが、私も同感。ウィキペディアの解説に書き加えて頂きたいです。
 ドッピングの海苔はやはり地元富津産、東京湾で採れた海苔です。肉厚で海苔というより海草と表現した方がイメージピッタリ。海草の生臭い臭いがきついです。メンマも臭いがきついですが普通です。図2の如くどっさりと載った白い物体は角切りされた生の玉葱です。長ネギではありません。新玉の季節ならまだしも、その時期を外すと、出汁のないスープと一緒に生で頂く玉葱の苦さ、美味しいはずがありません。しかも、この玉葱は「薬味」と称して50円追加料金を支払う必要があります。
 最後に煮豚です。豚肉をたこ紐で縛って、タレに漬け込んだ後焼くような段取りがまったくありません。ただ、豚肉ブロックを塊のまま醤油や砂糖の入った鍋で煮ているものです。ですから、チャーシューではなく煮豚です。肉は、普通の豚肉で脂身がたっぷりついています。見た目、肉の周囲は醤油の色がついて真っ黒です。中は煮ただけですから普通の肉。味付けは悪くありませんが、兎に角大量に載ってきます。図2では薬味に隠れて見えませんが、ただのラーメンで、分厚い、ものによっては1cm厚の煮豚が4枚程度(1枚1枚の煮豚の大きさがバラバラなため人により枚数が違うようです)入っています。チャーシュー麺800円をオーダーしようものなら、丼一面を10枚近い肉厚の煮豚で覆い尽くされた丼が運ばれてきます。是非、「梅乃家」「チャーシューメン」で画像検索してみて下さい。肉だらけの画像が大量にヒットします。チャーシューメンはもはやラーメンというより、肉料理と表現した方が適切です。
 このようにまったくもって美味しくないラーメンなのに、奇妙なことにいつも行列ができています。食べログを見ると3.57と意外に高得点。醫人往来5月号でお話したように、加藤謙二副委員長、私のお勧めのラーメン店、荻窪駅北口の「らーめん なないろ」が3.21なのに。美味しくないものに行列ができる。単に味覚の問題と思われる方もいるかもしれませんが、上記の私の説明で美味しいと思えますか。実際、「梅乃家」「ラーメン」「まずい」でググると55,200件がヒットします。「衝撃のラーメンに出会った。」「行列のできるマズラーメン」「これは正式にはラーメンと呼べる食べ物ではありません。梅乃屋という食べ物だと思って下さい(そうで無いと、普通のラーメン屋さんに申し訳無いです)。」「実に衝撃的で不思議なラーメンでした。・・・なにせ、チャーシューと、薄まったチャーシューの煮汁の味しかしないんだから。ラーメンというよりも「麺入り煮豚」なのかもしれない。でもこりゃあクセになるな。」「凄いよね、美味いかどうか最後までわからないのにさ、また食べたいと思うなんて。」皆、不思議なコメントをしています。斯く言う私も、初めて食べた時二度と来ないだろうなと思いました。しかし、しばらくするとまた食べたくなってしまい、結局今日が最後と思いつつ何度も足を運んでいます。個人的には大量の白胡椒を降りかけると何とか食べられます。家内などは、「怖いもの見たさ」ではなく、「不味いもの食べたさ」なのではないか、「ゲテモノ食い」「肉料理と理解すべき」と言っています。さすがに私の家族は辟易していて、最近は梅乃家より「一般的な」な「鈴屋」(創業は、実は梅乃家より古い、竹岡式ラーメンの老舗)で食べています。こちらも行列ができる上、営業時間が10時30分から15時で、スープ、麺、煮豚がなくなると、とっとと店仕舞いしますので、お早めのお越しを。
 この拙文をお読みになって、好奇心を抱かれた方、是非食べてみて下さい。東京駅八重洲口発の高速バス「房総なのはな号」は、先述と同じお店のまん前のバス停に止まります。一杯やりたい方は、バスで行くのもよいかもしれません。
後日談です。ゴールデンウィーク中、記憶を辿りながらこの原稿を執筆しました。やはり、正確を期すべきと思い、5月11日水曜日、午前中の診療を終えた後、早々に三鷹を出発、久しぶりに梅乃家でラーメンを食べてみました。お店に入ったのは夕方6時頃です。さすがに誰も並んでいませんでしたが、ほぼ満席でした。当日、お店の大将は不在、おばちゃん4人でお店を切り盛りしていました。ラーメンを注文しました。待つこと15分、やはり、大量のスープをお盆にこぼしながら、写真通りのラーメンが運ばれてきました。間違いなく分厚い煮豚が4枚、海苔もメンマも以前のままの臭さでした。新玉の季節ですし勇気を出して「薬味」を追加したところ、微塵切りにされた玉葱が小さなお茶碗ほどの小鉢に一杯入れられ運ばれてきました。運悪く、この季節なのに新玉ではありません。やはり苦かったです。麺やスープは、以前のままで、梅乃家のラーメンそのままでした。余談ですが、トイレは以前同様汲み取り式です。用を足した後、お水を流すと排水溝が一時的に開き汚物が流れていくタイプです。ですから、肥溜めから臭いやハエが上がってくることはありません。しかし、トイレの入口には、「くれぐれも携帯や財布を落とさぬように」と張り紙がしてありました。おそらく、酒に酔った誰かが落としたのでしょう。想像したたででも背筋が寒くなってきました。これで、また、当分行かないことでしょう。(三鷹市医師会雑誌醫人往来平成28年7月号より転載しました)

追記 所用があり本日早起きして富津に出かけてきました。久しぶりに鈴屋のラーメンを食べようと思い午後1時30分に行ってみると、なんともう閉店していました。10時30分開店なので営業時間はたった3時間です。ということで2カ月ぶりの梅の屋です。こちらは12人並んでいました。しかも、「本日豚を煮るのが間に合わないので、大ラーメンかラーメンの注文でお願いします。」との張り紙が店の外に。店の大将は不在で、スタッフはやはり近所のおばちゃん達です。ラーメンを薬味付きで注文。今回は新玉でラッキーでした。

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2016/06/17 
「当院紹介用の名刺サイズのリーフレットを作成しました。」

 当院紹介用の名刺サイズのリーフレットを作成しました(左図と右図)。開院当初作製したものを改訂したものです。
 開院してもうすぐ丸9年になりますが、御陰様で年々来院者数が増加しています。きちんと調査したわけではありませんが、日々診療をしていると家族や知人の方に勧められて来院された方と当院のホームページを御覧になって来院された方が多いように感じています。以前から、どのような経緯で当院を選ばれたのか、アンケートをとってみたいと思っていましたが、忙しくてなかなか実施できませんでした。このところ業務量が急速に増大したため、今年度になり一度に4人のスタッフを増員しました。スタッフは総勢19人になります。そのため、午前外来の受付は3人体制になります。また、事務部門にはベテランの男性スタッフに入ってもらいました。これまでの経験値を生かし、私のサポートをしてもらう予定です。早速、患者動向アンケート実施を指示しています。
 最近、某氏から「医療機関の増患には、口コミが大切だ。」とのお話を伺いました。私自身、上述のようにアンケート結果を待たずともそのように感じています。その方は、「当院を信頼し、知人に紹介したいと思っても、実際の行動に移るには一定のハードルある。それはどのように当院のことを説明したらよいかということ。そのハードルを下げるためには、当院のことを簡潔に説明する資料が有効。それはパンフレットのような資料が便利だが、場所をとらず簡単に友人知人に渡せるようなものが便利。しかし、名刺は手軽すぎて簡単に捨てられてしまう。捨てるのを躊躇させるようなものが良い。」といったようなお話でした。なるほどとお思い、早速、紙ではなくプラスチック製の名刺サイズのリーフレットを作成してみました。クリニック受付に置いておきます。当院を信頼し、ご紹介していただける方、宜しかったらご家族、友人知人にお配りいただけると幸いです。

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2016/06/06 
「熊本地震への義援金募金を始めました。くまもん募金です。」

 5月19日から22日まで当院スタッフと南阿蘇村に熊本地震に対する日本医師会災害医療チームJMATとして派遣されたこと、すでに報告済みですが、どれだけお役に立てたか疑問です。むしろ、近々起きるのではないかと予想されている首都直下型地震発災時の実地訓練をさせていただいた感が強く、申し訳ないくらいです。ささやかですが、熊本地震への義援金募金を始めました。募金箱は、JMATに同行した当院スタッフのお土産の空き箱を利用、スタッフが手作りで作製したものです。名付けてくまもん募金です。なかなか良く出来ているので写真に撮りました。来院者の皆様にもご協力頂ければ幸です。

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2016/06/06 
「熊本地震に日本医師会災害医療チームとして派遣されました。」(その1)

 2016年5月19日(木)から22日(日)まで、熊本地震に日本医師会災害医療チーム(Japan Medical Association Team、JMAT)として派遣されてきました。具体的には南阿蘇村のSADRO事務局統括者としての業務です。SADROとは、South Aso Disaster Recovery Organizationの略で、南阿蘇災害復興機構のことです。
 左図の阿蘇市、南阿蘇村、高森町の市町村境に書かれている赤字の「阿蘇郡」の文字のところが、ちょうど阿蘇五岳です。阿蘇山は五つの峰が連なった連山です。そして、その裾野に位置する阿蘇市、高森町、南阿蘇村は阿蘇山の外輪山に囲まれ(中図)、カルデラ地形(右図)を形成しています。このカルデラ地形という言葉、小学校の地理で習ったのではないでしょうか。
 阿蘇地方の中心都市は阿蘇山の北側に位置する阿蘇市です。熊本地震発災直後から、様々な災害医療チームが熊本入りしましたが、その一部は被害の大きかった阿蘇地方にも派遣されました。それらのチームを組織化し、効率よく活動させるために立ち上がったのが、阿蘇災害復興機構(Aso Disaster Recovery Organization、ADRO)です。阿蘇地方の被害は、震度7を2度記録した震源地の益城町(左図)により近い南阿蘇村の方が甚大で、より多くの方々が避難所に収容されていました。中図や右図の如く阿蘇山の北側に位置する阿蘇市から、南側の南阿蘇村に行くには阿蘇五岳を時計回りか、反時計周りに迂回しなければなりません。反時計周りに阿蘇山の西側を通るルートは震源地に近くなるため、彼方此方で崩落、地滑り、崖崩れが発生、道路が寸断されています。そのため、何度も細い抜け道、脇道を迂回しなければなりません。そのような迂回路も崩落の危険があるため、南阿蘇村に行くには、山道にはなりますが東側ルートが推奨されています。いずれにしても、阿蘇市からアクセスが悪いためADROの支部として、南阿蘇村白水庁舎にSADROが設置されました。
 4月14日発災後、熊本近県を中心に多数の災害医療チームが続々と熊本入りしました。日本医師会も会員有志を募り災害医療チーム(JMAT)を派遣しました。当初、津波を伴った東北大震災程、甚大な被害はなかったため、九州各県、さらには中国地方、四国地方のチームで求められた医療ニーズに十分応えることが出来ると思われていました。しかし、地元熊本県医師会から、「阿蘇大橋(中図、赤字で書かれた「立野ダム」の右側に、黒川に架かる「阿蘇大橋」の文字が見て取れます)が崩落したため、立野地区を境に西側の熊本県西部と阿蘇地方が分断され南阿蘇村の医師会員が孤立、南阿蘇村住民への医療サービスを発災以前の状況に移行する準備がままならない。援助して欲しい。」と、ゴールデンウィーク明けになり日本医師会に要望が寄せられました。右図の如く立野地区は、阿蘇山カルデラ盆地のまさにボトルネックです。そのためここで交通が遮断されると、中図の如く北側の「ミルクロード」、南側の「グリーンロード南阿蘇」を利用して、大きく迂回するしかなく、アクセスが極端に悪くなります。そのため、熊本より遥か遠方ではありますが、東京都医師会にも派遣要請がなされ、三鷹市医師会もボランティアを募集しました。今回、1チーム4人(医師、看護師、事務職員、薬剤師)が募集要件だったため、当院スタッフや当院の隣にあるミキ薬局に声を掛けたところ、手を挙げてくれるスタッフがいました。そのメンバーで応募したところ、当院チーム(撫子隊)が選抜されたわけです。

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2016/06/06 
「熊本地震に日本医師会災害医療チームとして派遣されました。」(その2)

以下は、小生が作成した報告書を個人情報に配慮し改変したものです。

       東京JMAT(5/19~5/22)高松チーム報告

2016年5月22日(日)
松慶太
活動日報:
5月19日(木)
09:00松慶太(医師、三鷹市医師会、高松メディカルクリニック)、○泉○也(薬剤師、ミキ薬局三鷹店店長)、○田○希(当院看護師)、○迫○美(当院事務員)羽田空港集合
09:10東京都医師会随行事務職員、○田○介合流
09:20現地東京都医師会事務員○塚○より、本日天皇陛下被災地慰問のため、南阿蘇地区の道路交通規制の可能性について電話連絡あり
10:00羽田発 ANA 643便11:45阿蘇熊本空港着
12:10~14:20 南阿蘇村白水庁舎SADRO(South Aso Disaster Recovery Organization)事務局へレンタカーで移動。当日は天皇皇后両陛下、被災地慰問(我々の直後、正午過ぎに特別機で熊本入り)と重なり、さらなる交通規制の可能性があったが、実際には両陛下は自衛隊ヘリコプターで移動したため、道路規制はなかった。当初、○田○先生推奨のルート(左図)を目指したが、道を間違え若干異なったルートで南阿蘇村に入った(36km、59分)。空港を出発後、県道206号を西へ進む。「役場入口」交差点では南阿蘇村方面への県道28号線(通称俵山バイパス)が通行止めのため右折し、県道28号線を益城町方面へ向かう。秋田橋交差点では、益城町へ向かう直進方向が通行止めのため左折し、らくのうマザーズ阿蘇ミルク牧場を経て、県道206号線(通称グリーンロード南阿蘇)を通り→地蔵峠→グリーンピア南阿蘇→南阿蘇村へ入った。「役場入口」交差点かららくのうマザーズ阿蘇ミルク牧場までの区間に落石箇所が数箇所あったが、道路脇の落石を避けながら通行は可能であった。
 阿蘇熊本空港は、北側は菊陽町、南側は益城町に跨っている。そのため、空港出発直後は、最も揺れの激しかった益城町を通る。その地域では倒壊家屋、ブルーシートで屋根を覆った家屋が多く、被害の甚大さを容易に理解できる。また、道中、阿蘇外輪山、阿蘇五岳の山肌に地滑りが散見された。外輪山の地滑りは明らかに震源地に近い西側に多発し、東側は極めて少なかった。最新の道路状況は、中図をご参照下さい。
14:50~15:10 SADRO事務局到着後、○中○保子(調布市医師会)チームから申し送り(○中○保子チーム15:30発)
15:10 ADRO(Aso Disaster Recovery Organization)からSADROにサポート役として派遣されている日本集団災害医学会派遣の千葉大学救急集中治療医学○邉○三準教授より、南阿蘇地区の現況についてブリーフィングを受ける。先発隊からの情報通り、発災後1ヶ月以上経ち、様々な専門性を持った災害医療チームが多数活動、収容人数が最多(216人)の南阿蘇中学体育館には日赤の避難所内救護所(夜間もオンコールで24時間対応)も立ち上がっている。地元医師会の診療所もすべて診療を再開しており、診療支援へのニーズはほとんどないとのこと。ただ、唯一阿蘇立野病院が、阿蘇大橋落橋の原因となった崩落した山の山裾にあり、裏山がやはり崩落する危険があるため、同地での再開の見込みが立っていない。同院は、南阿蘇村の西端、立野地区に位置する南阿蘇村内唯一の入院施設。南阿蘇村中心部からは、崩落により落橋した阿蘇大橋より遠方に位置するため、大きく迂回しなければならずアクセスが非常に悪い。迂回路も多くが通行止めのため、まさに大きく迂回しなければならない。通常20分足らずのところを、迂回路では約1時間を要する。そのため、再開しても通院困難が予想されている。
 SADRO統括、発災以前の地区医師会による診療体制への繋ぎが我々の役割だが、今後、南阿蘇地区医師会のキーパーソン、上述の阿蘇立野病院院長○○先生(法人で設立している南阿蘇村内の老健施設を改装、6月診療再開に向け準備中とのこと)院長、南阿蘇村○○内科、○○先生が、今後SADROミーティングに参加予定とのことだった。
15:20 白水庁舎すぐそばにある白水中学体育館一次避難所視察(148人収容中)。隣のグランドが臨時瓦礫置き場となっているため、埃が多く窓の開放が難しい。そのため室温が高く、熱中症のリスクの高い避難所。屋内は全ブースともパーテンションで仕切られており、プライバシーは確保されている。しかし、その分通風が悪く室温があがりやすい状況だった。
16:00~16:30 SADRO全体会議参加。各派遣チーム、関連団体(南阿蘇村保健師、保健師協会、日本看護協会、日赤DMAT、薬剤師会、歯科医師会、DPAT、ADRO事務局、東京JMAT等)の1日の活動内容、問題点等を報告、情報共有、意見交換、意思統一などを行う)
16:30 ○迫がSADRO事務作業について事務局よりレクチャーを受ける
17:10 SADRO出発、
17:30〜17:50避難所「四季の森(簡保関連宿泊施設)」視察、両下肢痛を訴える女性を診察。
18:20 高森町の休暇村南阿蘇着

5月20日(金)
07:55休暇村南阿蘇出発、08:10 SADRO本部着 (8.4km)
08:30~08:45 SADROコアメンバーミーティング(前夕の議事録、本日行動予定確認、問題点意見交換)
09:25~10:00 高松チーム、都医事務スタッフ2名と立野地区にある阿蘇大橋崩落現場約1km手前まで車で移動(10.9km)。徒歩で視察。通行止めだが、事情を説明、ヘルメット着用を条件に立ち入りを許可された(持参した三鷹市医師会のヘルメットを、後発隊のため、SADRO本部に貸与した)。また、現場から数百メートルにある現在閉鎖中の阿蘇立野病院を遠方から視察(右図)。
10:30前日天皇皇后両陛下が慰問された南阿蘇地域で現在最多数の避難者(216人)を収容している南阿蘇中体育館を視察。体育館内に設置された日赤(当時は鹿児島日赤が担当)が避難所内救護所を視察、医師よりヒアリング。また、体育館前に設置された和歌山県薬剤師会所有のモバイルファーマシー(キャンピングカーを改造し、分包器などを備えた薬局。全国に4台のみ)を見学した。
11:00 久木野総合福祉センター(デイサービスなどを行う村の施設、10人収容中)避難所視察。
13:40 昼食後SADRO本部帰着
16:00~16:30 南阿蘇村白水庁舎にてSADRO全体会議司会。避難所収容人数、派遣チームの減少に伴い、課題も減少しているため、これまで毎夕行っていた会議も、本日を最後に今後は毎週月曜、木曜日に縮小することになった。
16:50 ~17:30 SADRO発、阿蘇医療センター(ADRO本部)へ移動 (34km)
18:30~19:20 第30回阿蘇地域災害保健医療復興連絡会議(ADRO)出席、○邉○三先生とともに、南阿蘇エリアの現況、問題点を報告。
19:40 宿泊先高森町の休暇村南阿蘇での夕食時間に間に合わないため、阿蘇市内で夕食を摂り、宿に向かう。
21:40休暇村阿蘇着、宿泊

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2016/06/06 
「熊本地震に日本医師会災害医療チームとして派遣されました。」(その3)

5月21日(土)
07:55休暇村南阿蘇出発、08:10 SADRO本部着 (8.4km)
08:30~08:45 SADROコアメンバーミーティング(前夕の議事録、本日行動予定確認、問題点など意見交換)。ADRO事務局からサポートで参加されている○邉○三先生の参加は、本日が最後となり、明日からは都医が、南阿蘇村一帯に派遣されているチームの実質的なまとめ役となる。
09:50~11:40 高松チーム、都医事務スタッフ2名とミルクロードを通り、南阿蘇村立野地区にある旧立野小学校体育館一時避難所(全員がすでに本田技研大津工場体育館一時避難所に移動済み)視察。
12:00~12:20 通行止めの国道57号が阿蘇立野病院まで通行可能となっていることが判り同院へ移動。同院は、現在、裏山が崩落の危険性があるため閉鎖中。危険なため病院外より視察(左図)。
12:20~12:55 大津町にある本田技研工業大津工場体育館一時避難所に移動(中図)、視察。南阿蘇村立野地区住民は、阿蘇大橋落橋のため、村内ではなく、大津町内の避難所に収容されている。派遣されている保健師チームと熱中症予防について意見交換、テント生活者に声掛けをした。また、炊き出しを続けるボランティア団体が撤退したか確認(自家製生ジュース、炊き出しは勧告により中止していたが、ベーグル、コーヒーなどを新たに提供していた。屋外で溜め水を使って調理しており、気候的にも食中毒が懸念され、翌朝のコアメンバーミーティングで行政側と対策について話し合った)。
12:55~14:05 昼食
14:05~14:45 益城町総合体育館一時避難所へ移動。
14:55~15:30 避難所、日赤災害時医療救護所など視察(右図)。管轄外に案内などの依頼はしなかった。

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2016/06/06 
「熊本地震に日本医師会災害医療チームとして派遣されました。」(その4)

15:30~16:30 益城町中心部を中心に被災状況を視察(左図)。
16:30~17:20 阿蘇熊本空港、グリーンロード南阿蘇を経て南阿蘇村白水庁舎に移動。
17:20~17:40 報告書作成後、休暇村南阿蘇に移動、宿泊

5月22日(日)
07:55休暇村南阿蘇出発、08:10 SADRO本部着 (8.4km)
08:30~08:45 SADROコアメンバーミーティング(前夕の議事録、本日行動予定確認、問題点意見交換)。本日より、東京JMATのみで会議を仕切る。
09:30~10:30 高松チームでミルクロードを通り、大津町の本田技研大津工場体育館一時避難所に移動、ボランティア団体視察。生ジュースの提供を再開しており、時期的に食中毒の危険性がある旨、口頭で注意を促す。震災直後から避難所に通い続け、避難者と信頼関係が出来上がっており、避難者から炊き出し再開の要望が出ているという現実もあり、対応に苦慮している。
11:00~14:00 南阿蘇村に移動、昼食。
14:00 SADRO本部帰着後、来訪された熊本県医師会○塚○一郎課長と会談、東京JMATの活動に深謝されるとともに、今後、SADROの活動をどのようにして阿蘇郡市医師会に引き継いでいくか、意見交換した。
14:10○塩○行(八王子市医師会)チーム到着、申し送り
16:00〜18:40 南阿蘇村白水庁舎出発、熊本市内被災状況視察、夕食
18:40 熊本市内出発
20:20阿蘇熊本空港発ANA650便、22:00羽田空港着

総括;
1、今回の派遣(発災1ヶ月余り)では、災害医療における診療のニーズはほぼなく、南阿蘇村地区の様々な派遣組織を統括する役割、マネージメントが求められた。診療行為であれば、派遣された医師は誰でもその日からシームレスに活動できる。いみじくも○田○先生が報告されているが、統括となると、臨床力のみならず、被災地の地理、風土、災害医療に対する総論的知識、役所や派遣された各種団体との交渉力など、幅広い知識、能力などが求められる。派遣以前に被災地の地理、風土などを理解されている医師は皆無であろうから、4日を1クールとした派遣では、被災地の地理、風土を把握した途端で最終日を迎えかねない。今回のようなミッションの場合、都医派遣の事務スタッフの如く1週間程度の派遣期間が必要かもしれない。そのような体制を構築するために、例えば派遣された先生の診療所を地区医師会が輪番でバックアップするといった方法もあるかもしれない。
2、発災後72時間の超急性期の災害時医療を担うDMATに対比して考えると、JMATは72時間から1ヶ月の急性期から亜急期の災害時医療、具体的には、避難所の状況把握と改善、在宅患者・避難者の医療・健康管理、地元医師会を中心とした連絡会の立ち上げを担っていると考える。その点からも、今回の活動はJMATとして重要な活動の一つと考えた。昨今、様々な専門性をもった団体が災害援助チームを構成、派遣している。そのような観点からも被災地地区医師会とパイプを持ち、地区の特性、情報を最も用意に入手できる立場を考えると、今後一層、全体を統括する役割を担っていく可能性が高いように思われた。
3、私自身三鷹市医師会防災救急対策担当理事ではあるが、東北大震災は派遣されておらず、災害医療の経験不足は歪めなかった。しかし、九州出身で阿蘇地方の地理的な知識が僅かながらも持っていたこと、先発隊より情報提供頂いたこと、東京JMAT研修に厚かましくも2年連続参加させて頂いていたこと(テキストVer.2を持参した)などが一助になった。
4、同行薬剤師は当院とはまったく無関係の門前にあるミキ薬局店長であった。ミキ薬局もそうであるがチェーン展開する薬局は、様々な理由から地区薬剤師会に加入していない(少なくとも三鷹市では)。そのため市の防災訓練などにも全く参加せず、地区薬剤師会が手弁当で防災訓練に参加する中、このようなチェーン薬局にもどのような形で防災にかかわってもらうか、課題であった。東北大震災においても薬剤師を派遣していなかったとのとだが、今回、上層部許可のもと同行してくれた。今後も防災への係わりを深めてもらえるよう働きかけていきたい。
5、末筆ではありますが、我々より長期間にわたり派遣され、深夜まで事務作業に追われていた都医事務スタッフに謝意を示します。

道路状況:
@阿蘇熊本空港からSADRO本部、南阿蘇村役場白水庁舎:県道36号線を南下し“小谷”にて左折し、県道206号線(通称グリーンロード南阿蘇。らくのうマザーズ阿蘇ミルク牧場・地蔵峠・グリーンピア南阿蘇を通る)に入り、南阿蘇村に入ってから県道39号線に変わって“久石”にて県道28号線と交差するルートが最短。山道だが交通量は多い(中図参照)。(○田○チーム報告通り)立野町を経由するルート(国道57号+国道325号)は、阿蘇大橋落橋、またその迂回路阿蘇長陽大橋も落橋の恐れあり通行止め。俵山トンネルと経由するルート、南阿蘇やすらぎロードも通行止め。
ASADRO本部南阿蘇村役場白水庁舎からADRO本部阿蘇医療センター:阿蘇山を反時計回りにたどる国道325、265、57号線を使用
BSADRO本部南阿蘇村役場白水庁舎から落橋した阿蘇大橋より遠方にある本田技研工業大津工場体育館一時避難所への迂回経路:国道325号を西、阿蘇大橋方面へ進み、通行止め箇所を右折し県道299号へ進む。くまもと阿蘇CC近くで県道296号にぶつかったらへ左折、阿蘇ファームランド(二次避難所)を経由、国道57号に出る。阿蘇大橋方面は通行止めにて、右折し北へ国道57号を進む。ミルクロード(豊後街道)入口を入り外輪山を越える。その後、ミルクロード(県道339号)と豊後水道が分岐するが、豊後街道(別名清正公道)を進み、後は一直線(右図参照)。
追記 報道によれば、本報告書を作成した後の6月1日、阿蘇立野病院を運営する医療法人社団順幸会が、崩落した阿蘇大橋より東側の南阿蘇村河陽地区にある特別養護老人ホーム内で「上村ぬくもり診療所」として再出発したとのことです。1日も早い災害復興を祈念いたします。

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2016/05/03 
「入浴可能な防水型ホルター(24時間)心電図を導入しました。」

 24時間連続して記録できる携帯型心電図をホルター心電図と呼びます。これは、1961年にホルター(Holter)博士によって開発されたため、「ホルター心電図」と呼ばれています。
この検査は、1、発作的に生じる動悸や胸痛の診断、2、不整脈の検出とその重症度評価、3、心筋虚血の検出、4、抗不整脈薬や抗狭心症薬の有効性の評価などの目的で使用されます。
 具体的には、300g程度の記録器を患者さんに装着し、電極を胸に貼り付け、通常24時間の心電図情報をICメモリに記録させます。当然入浴はできませんが、日常生活は普段通りにできます。24時間後再度来院していただき、記録器を取り外します。記録器を取り外した後は、患者さんは帰宅して構いません。このように、ホルター心電図を受ける場合、患者さんはほぼ同時刻に二日続けて来院しなければなりません。メモリ内のデータはインターネット回線を利用し解析センターに電送します。数日後、解析結果がネットを経由し当院へ電送されてきます。その結果を診察室で患者さんに説明しています。
 例えば、動悸や胸痛を訴え来院された場合、不整脈や狭心症を疑い、心電図検査を行います。しかし、通常、心電図記録時間は1分足らずのため、ちょうどそのときに不整脈が出現していなければ、異常なしと判断されてしまいます。このように、不整脈の中には一過性に出現するタイプも多いのです。また、心臓を養う冠状動脈の血流が乏しくなり、胸痛を感じる狭心症は、数分程度で軽快することが多く、来院時にはすでに発作が治まり、心電図に何等異常の見られない場合もしばしばです。このような理由から、夜間睡眠中も含めて1日中、心電図が記録できるホルター心電図が必要となります。
 しかし、ホルター心電図検査を進言したとき、もっとも患者さんが気にされるのは入浴できないことです。とくに汗のかきやすい夏場、ホルター心電図を進言すると必ずと言ってよいほど、入浴の可否に関して質問されます。しかし、患者さんには申し訳ありませんが、「電気製品なので入浴だけはできません。後はまったく普段どおりの生活をしてかまわないのですが。」と答えるのが常でした。
 しかし、今回、入浴可能な防水型ホルター心電計(下図)を導入しました。従来のタイプに比べ小型軽量(57g)で装着感がなく、運動もできます。防水ではありませんが、従来の小型軽量タイプのホルター心電図も使用できますから、同時に二人の方に検査を行うことが可能になりました。入浴を気にして検査を拒まれていた方も、検査を受けて下さることでしょう。大枚を叩いた甲斐があろうというものです。

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2016/03/21 
「久しぶりに東京消防庁救急電話相談医をやってみました。」 (その1)

はじめに

 この事業は、急病の時、病院に行くべきか、どの病院にいけば良いのか、救急車を呼びべきか、そのように迷った時、電話番号「#7119」に電話すると、相談員がアドバイスしてくれるものです。受診の必要性ありと判断した場合適切な診療科のある医療機関を案内してくれたり、緊急性ありと判断した場合は電話を119番に転送、救急車を手配してくれたりもします。下図のごときポスターを御覧になったことのある会員の方も多いのではないでしょうか。
 防災救急対策担当理事となり、東京都医師会からの委託を受け、隔月で二枠を募集する側の責任者になりました。担当の医師会スタッフにこれまでの状況を確認すると、毎回同じお二人の先生が応募して下さり、何とか回せていることを知りました。そのため、お一人でも所要や体調不良などで応募していただけないとすぐに破綻してしまいます。応募者が少ない現況を何とか改善しなければと思いました。私が思うにその業務内容の詳細が不明な場合、応募しようにも不安で応募できないのではないかと思います。どの診療科の医師でも対応可能な内容なのか。また、深夜の勤務です。どの先生方も、翌日休診日でもなければ皆朝から自院の診療があります。自院の診療に支障が出ないのか、不安があれば応募できません。そこで、私自身が久しぶりに勤務、業務内容や職場環境をレポートすることにしました。

1、勤務場所は東京消防庁です。東西線竹橋駅徒歩1分のところにあります。下車したら4番出口に向かって下さい。駅のホームにある黄色に黒字の出口案内図は役に立ちません。何故だか消防庁の記載がありません。そのため私は初め行き慣れた都医事務所のある1番出口に向かってしまい、改札口で駅員に東京消防庁はホーム反対側の出口だと教えられました。5分以上はロスしました。

2、勤務時間は、日勤は07:45〜20:00、夜勤は19:45〜08:00です。三鷹市医師会には夜勤の応募のみが来ます。

3、夜勤をして翌日の診療に支障がないかアクセスを検討してみました。往路は、
19:06三鷹発、あるいは19:08吉祥寺発中央線快速19:19中野着、19:22中野発東西線19:39竹橋着、
がぎりぎり間に合います。
19時に三鷹または吉祥寺駅に間に合う先生は、遅刻なく勤務できます。
一方、帰路ですが、日勤の先生は07:45が勤務開始時間になっています。ですから、日勤の先生がいらっしゃれば、その場で交代し帰ることが出来ます。日勤の先生が遅刻でもしなければ、
08:01竹橋発東西線08:30吉祥寺着、あるいは08:33三鷹着、
は十分利用可能ですので、翌朝09:00診療開始としている先生でも間に合います。
 また、勤務医の会員で応募を希望される方もいるかもしれません。病院管理者の先生方に於かれましては、勤務医の先生が応募できるよう自院勤務時間の融通などご配慮いただけると大変有り難いです。

4、業務内容の詳細です。

4−1、入館から執務室まで。4番出口を出て徒歩1分の消防庁に着くと、敷地の角にいきなり夜間通用門の表示があります。当然そこに入っていき門扉の前に設置されたインターホンを押すと守衛が開錠してくれます。敷地内に入り、ビルのガラス戸を明け建物内に入るとすぐに守衛室があります。守衛に自己紹介すると臨時入館者用の首にかけるカードをくれます。担当者を呼んで待つこと3分、監督員(後で説明します)が来て、エレベータで4階にある救急相談センターに案内してくれます。エレベータを4階で降り、救急相談センターに行くにはもう一度セキュリティーチェックを通過しなければなりません。そのためのセキュリティカード、ピッチホン(庁舎内のどこにいても連絡がつくように)、仮眠室の鍵がセットになった首にかける紐を渡してくれます。案内された相談センター内の様子は、ネットで「東京都救急相談センター」を画像検索すると多数ヒットしますので御参照下さい。私自身もカメラを持参、写真撮影を申し出たところ、スタッフの顔が写り込むと問題なので上司の許可が必要とのこと。ただ、スタッフの顔が写らない範囲での撮影をその場で許可してもらいました。
(本文は、三鷹市医師会雑誌「醫人往来3月号」に掲載されたものを改変し転載しました)

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2016/03/21 
「久しぶりに東京消防庁救急電話相談医をやってみました。」 (その2)

4−2、執務机のモニターについて。左図を御覧下さい。4台の端末が執務机に設置されています。順を追って説明しますが、業務上どうしても触らなければならないのは左端の端末だけです。この端末はタッチパネルになっていますので、普段まったくパソコンを触らない先生でも問題ありません。
 まず、画面上段のモニターです。都内全域の救急告示病院の受け入れ状況が表示されます。直接電話対応する救急相談通信員、救急相談看護師が適切な診療科のある病院を検索する時に使用しますが、救急相談医が使うことはありません。
 次に、下段右端のモニターです。中図を御覧下さい。23区内を示す左側の机15台と多摩地区を示す右側の机3台が表示されています。左側にある縦3列横2列は6人の救急相談通信員を示しています。中央の一部赤色の縦3列と縦4列は7人の救急相談看護師を示しています。最下段の左側が全体を監督する先述の監督員で、右側が相談医、私を表示しています。右側の多摩地区は上段の2人の相談通信員と下段の監督員を示しています。それぞれの相談員が待機中なのか、離席しているのか、相談中なのか机の色を見ると一目で分かるようになっています。相談医の机にはヘッドホンがあり、タッチパネルの画面を触ると各々の相談員の会話をモニタリングできます。ちなみに8年前出務したときは、電話相談員は看護師2人だけでした。そのため2台のヘッドホンを渡され、左右の耳にそれぞれ別のヘッドホンを当て2人の会話を聴取、看護師からの質問に答えていました。看護師2人が同時に電話応答した場合、左右のヘッドホンで同時に2人の話を聞かなくてはならず、結構大変でした。その後この救急相談センターが都民に周知され、電話件数が急増、先述の如く看護師7人、相談員6人で対応するようになっています。二つしかない耳で3人以上の会話をモニタリングすることは無理ですから、結局相談員の会話をモニタリングすることはまったくありませんでした。結局この画面は、通信台の色や相談員の離席具合を見て、忙しさ=電話の多寡を想像するのに利用する程度です。
 ちなみに、通信員は上段の都内全域の救急告示病院の受け入れ状況の画面を見ながら、医療機関を探している相談者に、適切な診療科目のある医療機関を紹介するのが仕事です。一方、救急相談看護師は、相談者の病状を聞き、後述するようにその緊急度を判断する仕事をしています。
 次に、下段真ん中のモニターです。右図の「共通プロトコール画面」を御覧下さい。さまざまな主訴が表示されています。それをクリックするといろいろな設問が表示されます。看護師は、電話をしてきた相談者にそれらを質問し、「ランク」と呼ばれる4段階の緊急度に相談者を分類します。具体的には、「赤」は今すぐ救急車で病院に行った方がよい状態です。「橙」は1時間以内に病院に行った方がよい状態、「黄」は6〜8時間以内に病院に行った方がよい状態、そして「緑」が24時間以内に病院に行った方がよい状態です。この画面は、要は相談者の緊急度をランク分けするためのマニュアルで、相談看護師が使用するもので、相談医は使用しません。もちろん向学のため、どのような基準で看護師が判断しているのか覗いて見るのもよいと思います。ただ、あまりに細かく分類されているので、一晩で一読するのは難しいです。
(本文は、三鷹市医師会雑誌「醫人往来3月号」に掲載されたものを改変し転載しました)

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2016/03/21 
「久しぶりに東京消防庁救急電話相談医をやってみました。」 (その3)

 最後に、下段左端のモニターです。左図の「相談内容記録画面」を御覧下さい。この画面には、7人の相談看護師が電話対応した相談者の情報を記録、判断した緊急度の結果を見ることの出来る画面です。つまり、電子カルテのようなものです。使用法は次の項目でご説明します。

4−3、業務内容の詳細。業務上どうしても触らなければならないのは左端の「相談内容記録画面」端末(左図)だけと先述しました。業務の一つにこの端末を使い、電話相談に対応した看護師の緊急度ランク付けを検証する作業があります。以前は相談看護師が2人しかいなかったため、左右の耳で別々に両人の話をモニタリングすることもあったとお話しました。そのため、看護師が間違った説明をしている場合、直接注意指導することが出来ました。しかし、相談看護師の数が7人に増えたため耳の数が足りず、看護師の話をモニタリングできなくなっています。そこで考え出された対応のようで、電話相談終了後、記録が完了した全例分、相談医が看護師の判断に問題ないか確認、検証する作業です。問題なければ画面をタッチし、検証済みにします。確認する症例は300症例近くあったと思います。基本的に全例共通プロトコールに従って緊急度を判定しているため、7人の相談看護師の判断はほぼ一定で、問題となるような判定はありませんでした。眼が慣れてくると初心者の私でも1例20秒あれは検証可能なため、検証作業は正味2時間足らずで終了する作業です。もう一つの業務は、相談看護師や相談通信員からの質問、相談に答えることです。相談者からの相談内容が共通プロトコールに記載されている内容と一致する場合、看護師は相談医に相談することなく緊急度を決定、相談者に説明します。しかし、共通プロトコールに該当しないケース、あるいは該当するがランクアップしたり、ランクダウンしたりした方がよいと思われる症例の場合、看護師は相談医に判断を仰いできます。例えばプロトコール的には足の骨折の可能性があり「赤」、救急車を要請すべき病状であっても、たまたま相談者宅の隣が救急病院なので、祖母の使用する車椅子を借り、自力で病院に行きたいとの申し出あれば、「赤」ではなく「橙」にランクダウン可能だと思われます。そのような場合、医師に確認の相談を求めてきます。また、通信員は専ら、適切な診療科目のある病院を相談者に案内する仕事ですが、相談者の病状から何科に紹介してよいか判断がつかなかった場合、判断を求められます。私の勤務した12月29日は翌30日がほとんどの医療機関が休診のため電話をかけてくる相談者が多く、1年で最も忙しい日と説明を受けました。2000本の電話があり、そのうち看護師が対応する症例が300例、そのうち相談医に判断を求めてくる60例といったところでしょうか。年末でなければ普段はこの半分程度なのではないかと思います。
 質問の内容はもちろん全診療科目に渡ります。しかし、お分かりにようにこの判断は緊急度の判断であって、病名を診断するわけではありません。研修医時代を含め、過去に当直をしたことがある先生なら問題なく務まる仕事だと思います。自身の判断に自信がないようならランクダウンは認めず、ランクアップ(緊急度を上げる)のみ許可すれば、当然問題となることはありません。しかし、この事業が安易な救急車要請を減らすことを一つの目的としていることから、できるだけ適切な判断を行うことが求められています。

5、食事に関して。夕食、朝食の弁当などの支給はありません。弁当を食べることのできる休憩室が執務机のすぐ隣にあります。他のスタッフも時々その部屋に入り休憩を取っています。冷蔵庫やお湯が用意されています。カップラーメンやお菓子、蜜柑などもあります。カップラーメンはご自由にということで頂いてきました。基本的に弁当を持参するか夕食を摂ってから出務しましょう。ちなみに竹橋駅にはスタンドはなく食料は手に入りません。三鷹駅が吉祥寺駅で購入し持参して下さい。
 余談ですが、12階には職員食堂があります。8年前勤務した時は、翌日が休診日だったので朝食を食べて帰りました。今回御用納めの後だったので食堂はお休みでした。前回勤務の折、眼前に広がる皇居の緑、その景色の素晴らしさに、福岡出身の私は感動しました。折角ですので写真撮影してきました。南西方向に目をやる(中図)と、皇居東御苑二の丸庭園を眼下に、右端には皇居内の桃華楽堂、遠方に新宿副都心ビル街を望みます。左側には、宮内庁病院、遠方にミッドタウンタワーを臨みます。また、北西方向に目をやる(右図)と日本武道館、都医の入る住友商事竹橋ビルを望みます。翌朝時間のある先生は是非朝食を召し上がってお帰り下さい。
(本文は、三鷹市医師会雑誌「醫人往来3月号」に掲載されたものを改変し転載しました)

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2016/03/21 
「久しぶりに東京消防庁救急電話相談医をやってみました。」 (その4)

6、入浴について。地階にシャワールームがあります。私は入浴するつもりはなかったので、シャワールームの案内はお断りしました。ピッチさえ持参していれば勤務中に入浴して構わないそうです。同様、ピッチさえ持参していれば、12階の自販機に飲み物を買いに行ったり、後述の仮眠室に行ったりしても構いません。

7、服装について。仮眠室には白衣が用意されています。しかし、業務の内容から分かるように白衣を着る必要はありません。私は私服のまま過ごしました。

8、仮眠について。先述のようにピッチさえ持参していれば庁舎内のどこに行っても構わないとのことです。ですから、仮眠室のベッド(下図)で横になっていることも可能です。ただ、シーツはご自分で敷いて下さい。また、室内には洗濯籠が設置してあります。翌朝シーツを外し籠の中に入れ、きちんと布団を畳みましょう。監督員のお話では12時頃仮眠室に行く先生が多いようでした。前回仮眠中は数本しか電話は掛かってきませんでしたが、1年で最も忙しい今回は1時間に数本の電話が掛かってきました。勤務終了時間08:00の少なくとも30分前には起床する必要があります。というのは、相談センターに出向いて仮眠後電話相談のあった症例について、先述のように検証作業をする必要があるからです。
(本文は、三鷹市医師会雑誌「醫人往来3月号」に掲載されたものを改変し転載しました)

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2016/03/20 
「公星墜つ〜故村田欣造先生に謹んで哀悼の意を表します」

 本日、故村田欣造先生の葬儀、告別式に参列してきました。私はご子息の喪主聡先生と同い年ですので、親子ほど歳が離れています。私の医師会歴は準会員も含めると20年になるとはいえ、勿論私何ぞより余程懇意になさっていた先生方が多数いらっしゃること承知しており、追悼文を書くような立場ではありません。ただ、ご葬儀での清原慶子市長の弔辞や聡先生のご挨拶を拝聴し、ふと想起されたことを認めてみました。
 そもそも初めて村田先生とお言葉を交わしたのは、医療用ICカードの運用実験でした。詳細は忘れましたがNTTデータの技術協力の下、おそらく経済産業省主導の実験で、三鷹市役所で開催される会議に何度か参加したのを覚えています。医師会に入会して間もない頃なので、やはり20年近く前ではないかと思います。村田先生は既に三鷹市医師会長となられていましたが、この事で顔と名前を覚えていただき、その後参加した医師会旅行などでもお声を掛けていただきました。
 一時夢中になって読んでいた本に、経営コンサルタントの大前研一氏の著作があります。今や当たり前になった世界の「ボーダレス」化を初めて指摘、予言したのも氏だったと思います。氏の著作で、氏自身の人生訓について述べたものがありました。本の名前は忘れましたが、その内容は以下のようなものだと記憶しています。
 大前氏は、人生を四つに分けてバランスよく生活するようにしているとのことでした。一つは、職業人です。言う前もなく生活の糧を得るため仕事をする立場です。二つ目が家庭人です。家族の一員としての立場です。三つ目が個人です。例え配偶者や娘息子などの家族がいたとしても、一個人としての人生があります。そして最後は公人です。どのような仕事についていようと、小さくは地域コミュニティ、町会の一員です。マンションに住んでいるなら管理組合の一員です。さらに市民であり都民でもあります。さらには日本国民であり、地球人でもあります。このような公人のとして立場は、個人とは反対にコミュニティの中で利他的な価値観で物事を考えることです。
 三鷹の地で医療人として日々の診療に精一杯最善を尽くすことは、公人としての振る舞いでもありますが、おもには職業人としての立場だと思います。一方、不肖ながら昨年より三鷹市医師会理事を拝命しましたが、医師会執行部として職責を果たすことはまさに公人としての立場だと思います。理事となりその大変さをひしひしと実感、公人としての高い志が無ければ務まらない立場だと再認識させられました。醫人往来に掲載された前理事の先生方が書かれた退任の挨拶に、後輩たちに公人としての活躍を期待するエールがありました。翻って、村田先生は三鷹市医師会長職を4期8年に渡り全うされました。会長職を退かれた後も、東京都医師会、労災自賠責委員会委員長などなど、公人としてのご活躍は言うまでもありません。一方、職能団体としての三鷹市医師会に魅力を感じず、支払う入会金や会費を鑑み、入会されていない医師がいるのも事実です。然したる利点もない中、入会しきちんと会費を納めてくださっている会員先生方にはそれだけでも有り難いこととして感謝いたしております。にもかかわらず、村田先生は実に43年間も公人としての三鷹市医師会理事の重責を果たされました。私のような一職業人は、村田先生のような諸先輩方の敷かれたレールの上をただただ走ることにより、職業人としての立場を守れているのだと思っています。公人に重きを置いた生活は、先生のように志尚尊くして品格高く振舞う方にしかできません。
 3年前はみ出しウォーキング同好会でベトナム旅行をご一緒させていただきました。その折、ご夫妻で世界中を旅して回っているお話を伺いました。個人や家庭人としての生活もしっかりとバランスを取られていることを知りました。先生とご一緒させていただいた海外旅行は私や私の家族にとって大変良い思い出です。
 衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。
(本追悼文は、三鷹市医師会雑誌「醫人往来平成28年1月号」に掲載されたものを転載しました)

2015/12/31 
「HUBを入れ替えてマンモグラフィ(乳房レントゲン)読影スピードが格段にアップしました。」

 最近、多忙のためストレスが溜まることの多い生活で久々の朗報です。
 2013年秋よりマンモグラフィ(乳房レントゲン)を導入、運用を始めています。マンモグラフィ(以下、MMG)の画像は、胸部レントゲン写真と比べ格段にデータ量が多いです。具体的には、胸部レントゲン写真1枚のデータ量が8MB程度なのに対して、MMGは1画像10〜30MB程度ですが、左右の乳房に対して一般に2方向撮影するので結局4倍の40〜120MB、大容量となります。そのためPACS(医療用画像保存通信システム)自体も買い換えました(詳しくは、2013/11/15院長コラム「マンモグラフィ(乳房レントゲン)の運用が始まりました。」を御参照下さい)。MMGフィルム読影のため特定の画像を呼び出すと、胸部レントゲン画像はほぼ瞬間的にモニターに表示されるのに対し、MMGは画像が表示されるまで1〜2秒を要します。1日に何人ものMMG画像を読影していると、そのタイムラグがちょっとしたストレスになっていました。データ量が多く、サーバー室から診察室のモニターまでかなりの距離のため、この程度の待ち時間は避けられないものと諦めていました。
 一方、当院ホームページのトップページにある「医院紹介」の項目で記載したように、院内には、1、電子カルテシステム:メディカルステーション(左図)+PACS:コニカミノルタNEOVISTA生理機能ファイリングシステム:フクダ電子FEV-80、2、総合健診システムLANPEX、3、インターネット用院内LANの三つのネットワークシステムが構築されています。開院後年々それらの端末の台数が増加(全端末を合計すると50台以上ではないでしょうか)、HUB(HUBとはネットワーク回線を継ぎ、集線、拡張するための装置のことです。中図)を継ぎ足し継ぎ足しカスケード接続(右図)していったため、サーバー室には10台近いHUBが同居、どのHUBがどのネットワークなのか判然としなくなっていました。一度、間違ったHUBに接続、ネットワーク同志が連結、データ衝突の不具合を起こしたこともありました。何とかこの問題を解決したいと、当院のLANケーブル敷設弱電工事をお願いした電通工業に、大型HUBを導入した回線整理作業の見積りを依頼しました。しかし、30万円近い高額だったため、費用節約目的に自分で大型HUBを購入、時間を見つけ1日がかりで整理しつつ差し替えることにしました。通販のamazonで、パナソニック社製の48ポートHUBを10万円余りで購入できましたので、私の人件費を考えなければ3分の1の料金で済みます。
 しかし、防災訓練が始まり、時間をまったく捻出できなくなり、購入したHUBは活用されないままになっていました。これ以上を放置するのは逆に経営的損失の方が大きいと判断、HUB差し替えのみの作業を電通工業に依頼しました。そうしたところ、見積りは5万円程度と意外に安かったため、早速12月2日水曜日の診療後、電通工業に差し替え作業を実施してもらいました。作業後動作確認目的に、三つのネットワーク端末を操作、問題なく動作することを確認しました。電カル系ネットワーク動作確認時、PACSも操作してみました。試しにある患者さんのMMGを診察室の画像モニターに呼び出しところビックリ。胸部レントゲン画像とほとんど変わらないくらい瞬時にMMG画像も表示されます。HUBカスケードを整理し、シンプルにLANケーブルを接続するとこんなにもデータ転送スピードがアップするのかと感動、電通工業スタッフにその話をしたところ、スタッフ曰く、「HUBとHUBの接続に使用したLANケーブルの中に1本、カテゴリー5のケーブルが混じっていたのでカテ6のケーブルと交換しました。これがデータ転送を遅くした理由だと思います。」とのことでした。なななんと、カテ6の中に1本だけカテ5のケーブルが。ご存知のことと思いますが、カテ5は100BASE-TXイーサネットで、カテ6は1000BASE-Tイーサネット使われるケーブルです。つまり、10倍転送スピードが違います。HUBとHUBを継ぐだけならLANケーブルは30cmもあれば十分ですから、自宅に転がっていた不要なケーブルを持参、自分で購入したHUBの連結に使用したことを思い出しました。その当時、MMGはなく取り扱うデータ量は小さかったため、100 BASE-TXで十分と思い、自宅に転がっていた不要なケーブルを持参し使用したのでした。実際、その後何らストレス無く仕事をしていました。しかし、MMG運用後、データ量が10倍近くなり、初めてその弊害が顕在化したのでした。
 その後、MMG読影時もさくさくと画像が現れ、気持ちよく読影出来ています。連日の忙しさにストレスが増大していましたが、久しぶりに時間が節約出来る話題で心がうきうきしました。
 余談ですが、上記のパナソニック社製HUBですが、価格はお手ごろですが、使ってみると兎に角ファンの音がうるさいです。サーバー室はレントゲン操作室と兼ねているため、放射線技師には迷惑を掛けています。

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2015/12/30 
「9連休の冬休みも結構忙しくてゆっくり休めません。」

 12月27日から開院以来最長のお休み、9連休がスタートしました。12月21日の新着情報得でお伝えしたように、当初従来通り1月3日までの8連休の予定でした。しかし、委託検査会社が1月4日まで休業するとの連絡があり、4日に診療してもほとんど血液検査が実施できないため急遽1月4日も休診にしました。9連休で旅行に行ったり、自宅で寛いだり、さぞかし十分に英気を養えるだろうとご想像される方もいるでしょうが、今年はそんなに甘くはありません。
 冬休み0日目、12月26日土曜日最終日の診療を11時30分で切り上げ、予約の無い患者さんの診察は全員断り(本当にすいません)、13時に東京都立多摩総合医療センターに参集、東京都北多摩南部医療圏(武蔵野市、三鷹市、小金井市、府中市、調布市、狛江市)全体で実施する災害医療図上訓練予行に17時まで参加してきました。なお、本行は来年1月16日土曜日です。再び、土曜日の診療を11時30分で切り上げます。当院受診者の方々にはご迷惑をお掛けしていますが、東京にいざ大震災が発災した折、迅速かつ最善の災害時医療を三鷹市民、東京都民の皆さんに提供するための訓練です。ご理解いただければ幸いです。
 冬休み2日目、12月28日月曜日は夜8時から三鷹市医師会の理事会です。
 冬休み3日目から4日目、12月29日火曜日は19時45分から翌30日朝8時まで東京消防庁の救急相談センター(左図)で相談医の仕事です。詳細は、別途院長コラムに掲載する予定ですが、仮眠がほとんど取れず、ほぼ徹夜でした。朝9時に帰宅、10時から16時まで一寝入り、覚醒後この原稿を書いています。
 冬休み8日目、1月3日日曜日は三鷹市医師会休日診療所で準夜勤務(午後6時から9時30分まで)です。2015/12/30院長コラム「今季のインフルエンザ流行入りは遅めのようです。」に記載したように、インフルエンザ流行や来年になりそうです。1月3日の準夜勤務の時に流行していないか戦々恐々としています。
 冬休み9日目、1月4日月曜日は夜8時から三鷹市医師会広報委員会です。
 また、来春次女が高校を受験します。我が家の4姉妹では始めての受験生です。長女の進学時、面接はありましたが無試験で光の村養護学校秩父自然学園に入学できました。詳しくは、2012/03/02院長コラム「一泊二日の光の村養護学校秩父自然学園体験学習会に行ってきました。」を御参照下さい。次女は、生徒会長、陸上部に加え、クラスのいろいろな行事の纏め役、リーダーとして活躍、誇らしい限りですが、勉強がその分疎かになり成績が振るいません。妻もやきもきしています。この1、2年私は多忙のためで家事の手伝いがめっきり減ってしまいました。しかし、次女の成績が振るわないため、11月三鷹市内7住区の防災訓練が終わった後は、できるだけ12時前には帰宅、次女の勉強の手伝いをするようにしています。具体的には、受験参考書(右図)をもとに私が作成したスケジュールに従い単元を暗記または復習させ、帰宅した私がその日のノルマの単元について口頭試問を行います。一応、我が家で最も勉強が得意なのは私ですから。幸いその効果かどん底だった娘の成績が急上昇、妻も私も一安心、娘自身も結果が出ていることが自信になり、以前より勉強に身が入るようになっています。このまま成績が上昇し、志望校に合格してくれるとよいのですが。初詣は例年自宅周辺の神社で済ませるのですが、今年は、学問の神様、菅原道真公を祀る湯島天神まで足を伸ばし、て合格祈願をしようと思います。天満天神の総本宮は福岡の太宰府天満宮ですが、さすがに遠いので。福岡出身の私の場合、もちろん合格祈願は太宰府天満宮でした。
 また、最近多忙の余り書きたくても書けなかったコラムネタ、クリニックや医師会理事としての懸案事項など、溜まった宿題を一気に片付けてしまおうと思っています。

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2015/12/30 
「今季のインフルエンザ流行入りは遅めのようです。」

12月21日の新着情報で三鷹市内でも、少ないながらインフルエンザ患者情報が発生したことをお伝えしましたが、例年よりは明らかに少ないです。12月29日の朝日新聞の報道によれば、28日の国立感染症研究所(感染研)の発表では、全国約5千カ所の定点医療機関から報告された最新の1週間(14〜20日)のインフルエンザの患者数は1カ所当たり0.46人で、流行開始の目安の1人を大きく下回っていました。インフルエンザは例年、11月下旬〜12月に流行期に入ることが多いのですが、今季の流行期入りが年明けになったとすると、2006年以来となります。感染研によれば「流行期入りが遅れている理由はわからない」とのことです。

2015/12/06 
「卒後30年の山口大学医学部同窓会に出席してきました。」

 11月22日、23日の連休を利用し、山口県宇部市で開催された山口大学医学部昭和60年卒業生30周年同窓会に参加してきました。前回20周年に続き卒後2回目の同窓会です。
 しばしばご報告しているように終業が深夜0時を過ぎることも多く、未明近くの場合は、クリニック診察室のベッドに泊まっています。折角の連休ですから、溜まった仕事を一気に片付けたいところでしたが、半年前から計画された同窓会で、僕自身仲間と会って昔話に花を咲かせたり、近況を伺ったりするのを楽しみにしていたので、何をさて置き参加してきました。ということでこのコラムも久しぶりの執筆です。
 前回の20周年では、杉野法広君の母校産婦人科学教室教授就任のお祝いも兼ねていましたが、今回も清木誠君の母校プロテオーム・蛋白機能制御学分野(旧 生化学第一)教授就任のお祝いを兼ねていました。
 会場のANAクラウンホテル宇部には、120人のクラスメートのうち54人が集まりました。すでに他界した同級生は7人ほどいますので、およそ半分が集まったことになります。120人の同級生のうち私のように関東圏在住の者が15人程度いますが、そのおよそ半分もはるばる駆けつけていました。
 宇部はとても不便なところです。山口県の瀬戸内側に位置しますが、半島のように突き出た地形の先端に位置するため、山陽新幹線が通らず駅がありません。その代わり市内に山口宇部空港があります。関東圏へのアクセスは飛行機の方が便利で、利用者が多いため1日10便東京往復便が発着しています。しかし、飛行機が好きでない私は、可能な限り電車で行くのを常としているため、今回も新幹線で行ってきました。新幹線新山口駅で下車、在来線の山陽本線に乗り換え、宇部でさらに宇部線に乗り換え、目的の宇部新川駅(左図)(右図、飛行場マークの左上、緑色の県道342号と宇部線が交差するところにあるオレンジ色の駅が宇部新川駅で、そのすぐそばに山口大学医学部はあります)に到着しました。自宅からおよそ6時間半の行程です。駅から会場のホテルまで徒歩5分の道のりですが、閑散としほとんど人が歩いていません。私の住んでいた30年前も東京のように人の多い場所ではありませんが、それにしても閑散としていました。帰京後調べてみるともちろん宇部市の人口は年々減少、現在は16万8千人余りのようです。三鷹市の人口、18万9千人と大差ありませんが、宇部市の面積は三鷹市の17倍以上(昭和や平成の大合併のためだんだんと面積が広がったようです)のため、人口密度の少なさは比べようもありません。さらに、宇部新川駅の利用者数は、1999年の1,706人から2013年には947人と激減しています。おそらく私が学生時代を過ごした1980年代後半は現在の3倍くらいの利用者がいたのではないでしょうか。うーん、寂しい。
 それでも数人が同じ方向に向かって歩いています。信号待ちで顔を覗き込むと、近藤哲君や佐野由文(愛媛大学呼吸器センター長、准教授)、松岡周二さん(順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座助教。某国立大学の修士課程終了後、医学部に入学したため、同級生の間では大分年上でした。そのため、同級生はみな「さん」付けで呼んでいました。湘南高校卒業でヨットが趣味だったため、大学6年のとき、本業の部活を引退した連中が集まり、有志で急遽ヨット同好会を結成、松岡さんから瀬戸内海でヨットの手ほどきを受けていました。時間の余裕ができたら、また私もまたヨットを始めたいと思っています。)でした。10年〜30年ぶり再開です。歩きながら早速昔話に花を咲かせました。
 夜の宴会では、開宴に先立ち、物故者に黙とうを捧げ、新教授の清木誠君の挨拶、乾杯の発声の後、宴会が始まりました。スペシャルゲスト?として、古谷野妙子さん(こやの膚科院長)によるベリーダンスがありました。個人情報もあり画像での提供は憚るところですが、なんとご本人が堂々と自院のホームページに掲載しています。ご興味のある方は、こやの皮膚科ホームページの院長ブログをご覧下さい。
 今回の幹事を引き受けてくれた三輪茂之は、3年前それまで勤めていた行政職の山口県健康推進課長を退職し山口県知事選挙に立候補しましたが、落選しました。その真偽は定かではありませんがその経緯を幾ばくか知ることもできました。
 教授に就任した清木誠君が、卒業アルバムをスライドにし、プロジェクターで放映、当時の自分の写真の前に立ちながら、各自1分間の近況報告を行いました。人のことは言えませんが、すっかり禿げ上がった者もいれば、体型が別人のようになった者、逆に当時とはまったく変わっていない者など、テーブルを移動しながらわいわいと酒を酌み交わし、学生時代のエピソードや名言を思い出し爆笑しました。10年ぶりの同窓会ですが、皆「次回を10年後に開催すると、何人かは死んでいるはず。もっと短い間隔で開催しよう。」といった考えで一致、数年後に再度開催することになりました。皆私と同じような年齢の連中です。私同様開業した者以外は、大学の要職や、大きな病院の院長、副院長に就任している者が多く、皆各々の立場で頑張っている様子でした。宇部は小さな町ゆえ、この人数が一度に入れる二次会の会場がありません。いくつかのグループに分かれ、二次会三次会に流れていきました。
 私も三次会まで痛飲、ホテルに戻り爆睡しました。翌朝また宇部線の各駅停車で山陽新幹線の新山口駅まで行き、新幹線で帰京する予定で切符を購入していました。宇部線を走る電車はほぼ1時間に1本です。アクセスを考慮し11時台の新幹線に乗車する予定でした。しかし、ホテルでチェックアウトしているとき、貴船雅夫君(岩国市医療センター医師会病院副院長)とばったり会い、新山口駅まで車で送ってもらえることになりました。繰り上げ乗車する列車の乗車時間まで大分余裕があったので、久しぶりに宇部を訪れた僕のため、宇部市内を車で一周、大きく変わったところを説明して回ってくれました。感謝感謝。帰りの車中、この原稿を執筆、交換した多数の名刺を眺めながら、みなしっかりと地に足をつけ生活している様子に、感慨一頻りでした。車中で原稿を上梓したかったのですが、間に合わず残りを自宅で書き上げることにしました。しかし、その後、またまた連日のように帰宅は深夜となり、やっと本日書き上げることができました。因み、本日日曜日も10時から16時30分まで三鷹市医師会館で休日診療所の当番勤務をしていました。

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2015/10/29 
「三鷹健診センターの名称を三鷹健診スクエアに変更しました。」

 従来、「三鷹健診センター」と呼んでいた当院健診施設の呼称を「三鷹健診スクエア」に変更しました。
 平成19年11月当院を開院した折、併設の健診施設の名称を、前職の野村病院予防医学センター所長に因んで「三鷹健診センター」としました。この名称で約8年が経過しましたが、最近、診療所を管轄する東京都多摩府中保健所の担当者より、「センター」の名称は、公共的な施設、例えば「国立がん研究センター」「国立国際医療センター」「東京都健康長寿医療センター」など以外は使用してはならないとの連絡があり、交渉を重ねてきました。
 厚生労働省の「医療公告ガイドラインに関するQ&A(事例集)」では、「医療機関の名称に併せて、『○○センター』と公告することは可能でしょうか。」との質問に対する回答として、「『○○センター』と広告することについては、法令の規定又は国の定める事業を実施する病院又は診療所であるものとして、救急救命センター、休日夜間急患センター、総合周産期母子医療センター等、一定の医療を担う医療機関である場合又は当該医療機関が当該診療について、地域における中核的な機能、役割を担っていると都道府県等が認める場合に限り、その旨を広告することが可能です。」となっています。現在、当院の年間健診受診者数は1万人以上です。年間250日の営業日数として計算すると、1日平均で40人以上の方が健診を受診されています。しかも年々増加を続けています。この点から当院が「当該診療について、地域における中核的な機能、役割を担っている」と判断できないかと交渉してきました。「地域における中核的な機能」との主旨から、わざわざ名称に「三鷹」を加え「『三鷹』健診センター」としました。しかし、どれだけ多数の健診受診者がいようとも、公共的な施設でない以上、「センター」の名称を使用することは罷りならぬとの回答があり、「センター」の名称を改め「スクエア」としました。よろしかったら、「当院のご案内」の「創立理念」をお読み下さい。「患者さん」を「患者様」と呼ぶことと同じで、名称はどうあれ要は中身、心だと思います。ですから、「三鷹健診センター」が「三鷹健診スクエア」になろうとも何も変わりません。今まで同様、創立理念、診療理念、診療方針、経営理念に従い診療を継続していきます。
 早速、公用車のロゴを三鷹健診スクエア(下図)に改めました。また、ビルの入り口に新しく「三鷹健診スクエア」とする看板を準備しています。

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2015/10/29 
「インフルエンザワクチン接種が始まっています。」

 相変わらず帰宅は深夜で、診察室のベッドに泊り込むことも。ゆえに古いお話となることをお許し下さい。10月1日より今シーズンのインフルエンザワクチン接種を開始しました。今シーズンから従来の3価から世界標準の4価に変更され、A型、B型各々2種類、合計4種類のインフルエンザウイルスに有効です。ですから実際のインフルエンザ流行株とワクチン株が異なり、空振りとなる確率は減り、ワクチン有効性が増しました。しかし、そのため新聞紙上でも報道されているようにワクチン仕入れ価格が、一人当たり一律約500円値上がりしました。その料金をそのままワクチン接種料金に転嫁させると、ワクチン接種を躊躇する方が増え、接種率が低下、インフルエンザ流行を招くのではないかと懸念されています。そのため、当院では3,900円とし、昨年度より300円値上げに抑えました。なお、例年通り、調布市、武蔵野市、杉並区、世田谷区在住(杉並区、世田谷区在住の方はそれぞれの住区で配布済みの予診票が必要です)の65歳以上の方も当院で補助を受けられます。
 また、これも新聞紙上で報道されているように、インフルエンザワクチンを製造する国内4社のうち、化学及血清療法研究所(化血研)のワクチンが諸事情により厚労省より出荷自粛の要請を受けていました。化血研はワクチン流通量の約3割を製造しているため、このまま出荷自粛が続くと、数年前新型インフルエンザが流行したときの大混乱を招きかねません。しかし、幸いこの原稿を執筆している最中に、厚生科学審議会感染症部会で出荷自粛要請の解除が決定、ワクチン不足が解消されました。あわてず、安心して接種して下さい。
 インフルエンザワクチンの詳しい情報はこちらを御参照下さい。

2015/09/13 
「9月10日吉祥寺東急REIホテルで開催された東京三鷹ライオンズクラブの例会で『生活習慣病(≒成人病)について−最近の話題−』と題する講演をしました。(その1)」

 平成27年9月10日吉祥寺東急REIホテルで開催された東京三鷹ライオンズクラブの例会において「生活習慣病(≒成人病)について−最近の話題−」と題する講演をしました。同クラブの会員であった通院患者さんに依頼され、講演を引き受けました。生活習慣病に関する話題を依頼されていましたので、上述のようなタイトルにしました。講演内容は、1、三大成人病とは、2、沖縄26ショックとは、3、動脈硬化とは、4、今話題のオメガ-3脂肪酸について、5、厚労省の発表したコレステロール摂取制限の撤廃についてといったものです。その内容を少しだけお話します。
 皆さんの中には「沖縄26ショック」という言葉を聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。「沖縄26ショック」とは、長寿県として名を馳せていた沖縄県の男性の平均寿命が1995年の4位から2000年いきなり26位に急落(左図、沖縄県福祉保健部健康増進課・沖縄県衛生環境研究所「26ショック!」より抜粋)したことをさす言葉です。その中身を分析すると、高齢者は相変わらず長寿にもかかわらず、中年世代の急性心筋梗塞、脳内出血、肝疾患、糖尿病など、生活習慣病あるいは生活習慣病の結果として発症する動脈硬化性疾患による死亡が増加したのが要因でした(中図、沖縄県福祉保健部健康増進課・沖縄県衛生環境研究所「26ショック!」より抜粋)。
 では、なぜこれらの病気による死亡が中年世代で急増したのでしょうか。沖縄県などの分析では、一つ目は、伝統的な沖縄野菜(右図)を使った長寿食から米国式食事への食習慣の変化が挙げられています。沖縄には「A&W沖縄」というハンバーガーショップがあります。このお店は1963年創業です。本土でハンバーガーショップと言えばまずマクドナルドですが、銀座にマクドナルド1号店がオープンしたのが1971年です。つまり、沖縄では、本土より遡ること8年前から米国式の食習慣がすでに広がっていきました(右図)。
 次に、車社会による運動不足があります。沖縄には鉄道がありません。都市部に僅かにモノレールがあるだけです。ですから公共交通機関はバスだけです。とくに昼間は暑いので自転車での移動も大変です。また、タクシーの初乗り料金が500円(東京は730円)と安いので、ついつい近所のスーパーに行くのに車に乗ってしまうというのが沖縄県民です。

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2015/09/13 
「9月10日吉祥寺東急REIホテルで開催された東京三鷹ライオンズクラブの例会で『生活習慣病(≒成人病)について−最近の話題−』と題する講演をしました。(その2)」

 三つ目がアルコール摂取量の多さです。沖縄県は全国平均よりアルコール摂取量が多く、とくにアルコール度数の高い地酒、泡盛が好んで飲まれています(左図)。 そのため沖縄県の男性のアルコール性肝疾患による死亡率は全国平均の2倍もあります(中図)。
 さらに産業構造の変化もあります。従来沖縄県は、サトウキビ畑で代表されるように農業、漁業等の一次産業が主産業でしたが、戦後観光業、サービス業などの三次産業へ変わっていきました。漁師や農家では日々の労働が運動となっていたのに対し、観光やサービス業ではデスクワークが中心で、運動量が減っていきました。また、沖縄は暑いため、日中などはとても戸外で散歩やスポーツができません。そのため、どうしても運動不足になりがちです(右図)。

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2015/09/13 
「9月10日吉祥寺東急REIホテルで開催された東京三鷹ライオンズクラブの例会で『生活習慣病(≒成人病)について−最近の話題−』と題する講演をしました。(その3)」

 結果として沖縄県男性の肥満率は全国一位になっています(左図)。
 沖縄26ショックは、東京都に住む私たちにとって無関係、他人事なのでしょか。東京の産業は、農業、漁業の一次産業よりやはりサービス業中心です。東京でも運動の量が減っているのではないでしょうか。散歩だスポーツだといっても東京も猛暑だったり、また、雨が降ったりでサボりがちになってはいませんか。東京都民アルコール消費量は、実は沖縄県民以上です(中図)。車社会による運動不足はありませんか。まさか、車通勤していませんか。やはり他人事ではありません。
 オメガ-3脂肪酸についての内容は、よろしければ当院ホームページの「脂質代謝内科」を御参照下さい。
 最後に、本年4月厚労省が発表したコレステロール摂取制限撤廃の報道について説明しました(右図)。これは、
 1、そもそも血中コレステロール値のうち、自身の肝臓で作られるものが約70%で、食事由来のものが30%のため、厳密な食事制限をしても最大30%しか血中コレステロール値を下げることができないこと
 2、さらに、コレステロール摂取制限をしても、肝臓でのコレステロール産生量が増加、結果、血中コレステロール値は元の値に戻ってしまうこと
 3、またコレステロールを意識する余り、炭水化物摂取量が増加、むしろ肥満を助長しかねないこと、によるものです。
 一方、自身の肝臓で産生されるコレステロールは遺伝により規定されていますが、肥満により増強します。ですから、コレステロール摂取量を意識するより、摂取カロリーを制限したり運動したりして体重コントロールに気をつけ、オメガ-3など良質の脂質を摂取ることが大事です。決して血中のコレステロール値が高値なのを放置してよいということではありませんので、勘違いしないようにお願いします。
 例会には30人ほど方が出席していましたが、講演を依頼した某患者さん以外にも数人の当院通院患者さんがいらっしゃり、少しビックリでした。その方々もまさに生活習慣病で通院されているので、よい患者教育の機会になりました。
 また、思いがけず、講演料を頂きました。最近、患者さん、健診受診者が多いことに加え、以前お話したように医師会の多数の業務を引き受け、残業残業で深夜帰宅することが多くストレスが溜まっています。そんな時、妻と一緒に自宅近くの焼鳥屋、餃子屋、カフェ、小料理屋でデートするのがストレス発散になっています。早速頂いた講演料を軍資金に、夜10時頃より近所の焼鳥屋でデートしました。ただ、帰宅後調べものが残っていたのでビール1杯のみで帰宅しました。私自身も沖縄26ショックに気をつけたいです。

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2015/08/03 
「パシフィコ横浜で開催された第56回日本人間ドック学会学術大会に7月30日参加してきました。いろいろ忙しくてお疲れモードです。」

 平成27年7月30日から31日にかけて、医療法人社団相和会理事長土屋敦大会長のもとパシフィコ横浜で開催された第56回日本人間ドック学会学術大会に参加してきました。30日木曜日の診療を休診にして1日だけ参加しました。同日夜19時30分から、榊原記念病院で開催される第11回榊原循環器疾患検討会にも参加予定でしたがキャンセルしました。このところ連日受診者が多く、医師会の会議なども重なり、毎日昼休みのない状態が続いていたため、かなりお疲れモードでした。九州生まれで暑さに強く、真夏日〜猛暑日でも平気ですが、昼休みが無く朝から晩まで仕事が続き疲労困憊気味でした。
 精神的にも、家事が出来ないのでストレスが溜まっていました。家事といっても、DIYによる家の補修や庭の手入れなどですが、とくに妻から依頼のあった項目は出来るだけ早く解決するよう心掛けています。そろそろ長女の将来を決めていかなければならないことや、次女の受験、来年度は三女、四女が受験のため天手古舞いの妻の手伝いを心掛けるようにしています。先日は、「愛の手帳(東京都療育手帳)」(知的障害児の認定手帳)の認定更新のため新宿区戸山の東京都心身障害者福祉センターにダウン症の長女と連れ立って行ったり(因みに認定更新の面接終了後、そのまま娘の寄宿する埼玉県秩父市にある光の村養護学校秩父自然学園に車で送って行きました。)、妻と一緒に杉並障害者福祉会館にあるスマイル高井戸や国立市の社会福祉法人滝乃川学園に相談に行ったりして、唯一のウィークデイの休み、月2回の水曜日午後をフル活用しています。この滝乃川学園は1981(明治24)年に創立された日本最初の知的障がい児者のための社会福祉施設です。広い敷地の中ほどを矢川が流れ、鬱蒼とした木立に作られる木陰は、はあたかも軽井沢にいるようです。そのホームページをご覧になるとわかりますが、創設者から連綿と受け継がれたキリスト教精神に基づき、障がい者のニーズに合わせた福祉事業の規範となるようなさまざまな福祉サービスを展開しています。面談して下さった高瀬祐二様に二時間に渡り障害者福祉の現況、問題点、さらに滝乃川学園の特色を伺うとともに、施設を見学させていただきました。国登録有形文化財の1928年に竣工した記念館、国立市登録文化財の1928年に竣工した礼拝堂などタイムスリップした感です。とくに礼拝堂にあった1885年製の日本最古のアップライトピアノには感動しました。長女のことで相談に行ったのですが、何だか観光してきた気分です。
 最近、帰宅は24時を過ぎることも珍しくなく、泊り込む日もありました。診察室のベッドは寝心地が悪いですし、クリニックにはお風呂はありません。そこで、クリニック近隣に院長室を兼ねたワンルームマンションを借り、今後は帰りの遅い時にはそこに泊り込むつもりです。
 さて、大分話が脱線しましたが、今回の大会テーマは「人間ドック健診イノベーション−新機軸の創生と展開−」です。2015/08/02の院長コラム「仙台国際センターで開催された第47回日本動脈硬化学会総会・学術集会に7月10日参加してきました。」でご紹介した第47回日本動脈硬化学会総会・学術集会のテーマ「動脈硬化研究の新機軸Innovation of Atherosclerosis Research」となんだか似ています。しかし、東京オリンピックのロゴマークしかり、同じような分野では、似たようなことを考えれば自ずと同じような作品ができるものではないでしょうか。
 学会では、おもに子宮がん検診、乳がん検診のセッションを中心に拝聴しました。当院で実施していることもありますが、三鷹市医師会の乳がん検診委員会委員長、子宮がん検診委員会副委員長となり、最新の知識の習得が迫られているからです。何だか中途半端な終わり方ですが、深夜ですしここで筆を置きます。

2015/08/02 
「7月29日吉祥寺第一ホテルで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク−2015−で『サブクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の一例』という演題名で症例発表してきました。(その1)」

 平成27年7月29日吉祥寺第一ホテルで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク−2015−(左図)で「サブクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の一例」という演題名で症例発表してきました。この会は、武蔵野赤十字病院内分泌代謝科の杉山徹部長を中心に、症例ベースに内分泌や代謝性疾患について勉強する会です。この会は昨年からスタート、本年が2度目の開催です。当初より会の世話人になっていましたが、昨年は福岡で開催された第55回日本人間ドック学会学術大会(詳しくは2014/09/07の院長コラム「福岡国際会議場で開催された第55回日本人間ドック学会学術大会に9月4日参加してきました。」を御覧下さい。)とバッティング、参加できませんでした。そのため今回初めての参加です。今回、症例発表とともに司会も担当しました。
 今回私の発表した症例は、演題名のごとく原発性アルドステロン症(PA)にサブクリニカルクッシング症候群(subCS)が合併した症例です。当院で市民健診を受診、高血圧の診断を受け精査した結果、PAと判明、日赤で手術適応のための精密検査を受ける過程でsubCSも合併していることが判明した症例です。結局、PAも、subCSも手術を行わず、PAによる高血圧は降圧剤を、subCSに関しては定期検査で経過観察することになり、当院に逆紹介されフォローしています。サブクリニカルクッシング症候群に関しては、内分泌学会でもその診断的意義、治療の要否に関して議論の多い疾患です。今回subCSの疾患概念、診断基準、治療方針、診療方法などを十分理解することができ、自信を持って診療に当ることができるようになりました。また患者さんから一つ勉強させてもらいました。
 今回発表したスライドを添付します。スライド1(中図)、スライド2(右図)。

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2015/08/02 
「7月29日吉祥寺第一ホテルで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク−2015−で『サブクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の一例』という演題名で症例発表してきました。(その2)」

スライド3(左図)、スライド4(中図)、スライド5(右図)。

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2015/08/02 
「7月29日吉祥寺第一ホテルで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク−2015−で『サブクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の一例』という演題名で症例発表してきました。(その3)」

スライド6(左図)、スライド7(中図)、スライド8(右図)。

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2015/08/02 
「7月29日吉祥寺第一ホテルで開催された武蔵野内分泌代謝ネットワーク−2015−で『サブクリニカルクッシング症候群を合併した原発性アルドステロン症の一例』という演題名で症例発表してきました。(その4)」

スライド9(左図)、スライド10(中図)。

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2015/08/02 
「仙台国際センターで開催された第47回日本動脈硬化学会総会・学術集会に7月10日参加してきました。」

 平成27年7月9日から10日にかけて、東北大学加齢医学研究所 腫瘍循環研究分野教授佐藤靖史大会長のもと仙台国際センターで開催された第47回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。10日金曜日の診療を休診にして1日だけ参加しました。同日夜7時より府中市にある東京都立多摩総合医療センターで北多摩南部地域救急会議が開催されることになっていました。以前お話したように、私は三鷹市医師会の防災救急対策担当理事のためこの会議に出席しなければなりません。
 当日朝5時27分出発、8時4分に仙台に到着、学会に参加、15時30分仙台発の新幹線に乗り帰京しました。当初、最後までいろいろな講演を拝聴する予定でしたが、19時開催の会議に間に合うよう電車を変更し帰京しました。北多摩南部地域救急会議開催の連絡がある以前、当初予約していた帰路の電車は、「はやぶさ」のグランクラスでした。私が一度も乗車したことのないのを知っていた妻が気を利かせて予約してくれていました。しかし、夜の会議に間に合わせるため変更した「はやぶさ」にはグランクラスの設定はなく通常のグリーン車で帰京しました。そもそもグランクスが如何なるものかまったく知識の無い私は、後日ネットでグランクラスを検索してみてビックリ。飛行機でいうとこのファーストクラスのようです。グランクラスではアルコールを含めてドリンクは飲み放題とあります。会議に出席するのに飲酒するわけにはいきません。むしろグランクスでなくてよかったと思った次第です。
 さて、今回の大会テーマは「動脈硬化研究の新機軸Innovation of Atherosclerosis Research」です。日程の関係もあり「残余リスク」のセッションを中心に拝聴しました。大規模臨床試験において高脂血症治療の主たる標的であるいわゆる悪玉コレステロールのLDLコレステロールを正常化させても、動脈硬化性疾患の代表である心筋梗塞、脳梗塞などの危険性は14(KLIS研究)〜37%(CARDS研究)程度しか低下しません。換言すると動脈硬化はLDLコレステロール以外の因子が約70%関与していることになります。それらを残余リスクと呼ぶのですが、残余リスクには、1、トリグリセライド(中性脂肪)、2、small dense LDL、3、低HDLコレステロール、4、食後高脂血症、5、脂肪酸、6、糖尿病、7、高血圧、8、肥満、9、メタボリック症候群、10、喫煙、11、性別(女性より男性に多い)、12、年齢、13、遺伝的体質、等が想定されています。今回得られた知見をもとに今まで以上にこれらに留意した診療を行い、動脈硬化性疾患を発症する患者さんを一人でも多く減少させるよう頑張っていきます。よろしければ当院ホームページの「脂質代謝内科」の項目も御参照下さい。
 それにしても、JR東日本のグランクラスのホームページは素敵ですね。最初のページのスクロールで入口の自動扉が開いていくシーンや、BGMに使われているスタンダードナンバーの「Misty」もお洒落です。エロル・ガーナーの「Misty」は私のお気に入りの一つですが、個人的にはクリス・コナーのMistyがお勧めです。

2015/08/02 
「6月26日三鷹市医師会館で開催された公益社団法人三鷹市医師会第4回定時社員総会において理事に選出されました。」

 平成27年6月26日三鷹市医師会館で開催された公益社団法人三鷹市医師会第4回定時社員総会において理事に選出されました。選出といっても理事定員と同数の立候補者数だったため無投票当選となりました。その場で早速新理事による理事会を開催、医師会長には医療法人社団佳仁会の宇井義典先生が選出されました。
 その後理事会で検討した結果、私は従来の防災・救急対策担当理事に加え、乳がん検診委員会委員長、子宮がん検診委員会副委員長、産業保健委員会副委員長、情報委員会副委員長などの役職を、その他委員会の委員を拝命することが決まりました。昨年度までの任期は、2014/05/03の院長コラム「三鷹市医師会理事就任にあたってのご挨拶」に記載しましたようにあくまでも任期途中で退任された前任の引継ぎでしたが、本年度からは本格的に他の理事同様多くの役員業務を任され身の引き締まる思いです。
 これらの委員会業務に加え、三鷹市役所関連の会議、三鷹市議会各党議員団との懇談会など、昼間医師会館で開催される会議に出席することがしばしばあります。医師会員の先生方の多くは、昼休みを12時30分から15時に設定しているため、会議の開催時間は、13時30分から14時30分に設定される場合が多いです。一方当院は昼休みを12時30分から14時としているため、会議開催日は午後外来を一部休診にせざるをえません。また、委員長が遅刻するわけにはいかないため、午前中の診療は、12時以降は予約患者さんのみとし、予約なしに来院された患者さんの診療をお断りすることがあります。大変申し訳有りませんが、ご理解ご協力を宜しくお願いします。折角診療時間内に来院したにも拘らず、診察を受けられないなどということがないように、是非受診前にホームページの「休診・診療時間変更のお知らせ」の欄をご確認いただくか、事前に診療時間をご予約(0422-70-1035)いただくことをお勧めします。

2015/06/17 
「中東呼吸器症候群(MERS)について」

 中東の病気と思われさほど現実感のなかった中東呼吸器症候群(Middle East respiratory syndrome, MERS)の感染拡大が隣国韓国で続いています。当初首都ソウルだけでしたが、九州の目と鼻の先、韓国第2の都市の釜山でも死者がでました。プサンと山口県下関市は関釜フェリーで結ばれています。小倉生まれで山口大学を卒業した私にとって釜山は、一度も行ったことはないものの感覚的には身近な町です。海外旅行がまだ高嶺の花だった頃、福岡では海外旅行はまずは関釜フェリーで韓国へといった感じでした。たくさんの友人がフェリーに乗り海外旅行を楽しんでいました。
 6月14日現在韓国では145人が感染し15人が死亡、日本同様、中東に比べ医療水準が高く、かつ、国民の栄養状態も良好な韓国で約1割の死亡率は相当な脅威です。ちなみに、2009年大流行したブタ由来の新型インフルエンザ(発生後既に6年が経過、現在では季節性インフルエンザの一種とみなし、新型インフルエンザと呼ばないことになっています)の死亡率は0.16%でしかありませんでした。MERSは2012年発見されたまだ新しい疾患ですが、現時点での知見を関単に纏めてみます。
 MERSコロナウイルスが病原体の感染症で、潜伏期間は2〜14日程度のようです。中東地域(アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン)居住者や渡航歴のある方が肺炎を発症しているため、中東呼吸器症候群と呼ばれています。このように主として中東地域で感染が報告されていますが、最近は、ヨーロッパ、アフリカ、北米、東南アジア、あるいは韓国でも渡航歴のある方に散発的に発生しています。さらに限定的ではありますが、中東以外の国々でも感染者から接触のあったヒトへ、ヒト−ヒト感染も確認されています。
 主症状は肺炎ですから、発熱、咳、痰、息切れなどの症状がでます。また、約半分の感染者で下痢などの消化器症状もあるようです。他の感染症同様、軽症あるいはまったく無症状の感染者もいるようです。また、インフルエンザ同様高齢者、糖尿病、慢性の肺疾患、免疫不全などの基礎疾患があると重症化しやすいようです。ちなみ上述のごとく韓国での死亡率は約10%ですが、中東地域での死亡率は40〜50%と非常に高率です。
 感染経路もやはり咳、くしゃみなどによる飛沫感染、直接触れることによる接触感染と考えられておりインフルエンザ同様です。しかし、インフルエンザのように感染力は強くないようで、飛沫感染でもインフルエンザのような感染爆発は発生していません。
 インフルエンザの自然宿主は鳥ですが、MERSはヤマコウモリやラクダが自然宿主のようで、中東ではラクダから感染したと思われる症例が報告されています。ちなみに日本国内にいるラクダは既に検査を受けていますが、MERS感染は確認されていません。
 インフルエンザに対するタミフルのような抗ウイルス薬は開発されていません。また、ワクチンもありません。治療法は対症療法のみしかありません。
 MERSは2015年1月感染症法の二類感染症に指定されました。このためMERSの患者を診断した場合、医師は保健所への届出が義務付けられました。それ以前の問題として、東京都より一定条件の疑似症例を認めた場合、保健所への情報提供を依頼されています。6月12日現在のその条件とは、次の(1)、(2)又は(3)いずれかに該当する患者で、ただし、他の感染症によるものや、他の病因が明らかな場合は除きます。

(1)以下の要件を全て満たす場合
  ア 発症前14日以内に対象地域(*)に渡航又は居住していた者
  イ 38度以上の発熱及び咳を伴う急性呼吸器症状を呈する者
  ウ 臨床的又は放射線学的に実質性肺病変(例:肺炎又はARDS)が疑われる者
(2)以下の要件を全て満たす場合
  ア 発熱を伴う急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者
  イ 発症前14日以内に対象地域(*)において、医療機関を受診又は訪問した者、MERSであることが確定した者との接触歴がある者又はヒトコブラクダとの濃厚接触歴(例:未殺菌入の喫食)がある者

(*)対象地域:アラビア半島又はその周辺諸国
   患者発生国(輸入症例のみの国は除く)のことを指し、具体的には、アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン、(2015年6月5日現在)
〔参考〕厚生労働省HP 中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A(問2))

(3)以下の要件を全て満たす場合
  ア 発熱又は急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する者
  イ 発症前14日以内に、対象地域か否かを問わず(*1)、MERSが疑われる患者(*2)を診察、看護若しくは介護していた者(*3)、MERSが疑われる患者と同居(当該患者が入院する病室又は病棟に滞在した場合を含む。)していた者又はMERSが疑われる患者の気道分泌液若しくは体液等の汚染物質に直接触れた者

(*1)「対象地域であるか否かを問わず」とは、当分の間、「対象地域及び韓国」を対
象にする。
(*2)「MERSが疑われる患者」とは、対象地域及び韓国においてMERSと診断さ
れた者及びMERSが疑われる有症状者とする。
(*3)「診察、看護若しくは介護していた者」とは、医療従事者又は介護従事者等であ
って、医療機関等において、診察、看護若しくは介護などで日常的に患者と接
触する機会がある者とする。この場合の「接触」とは、対面で会話することが
可能な距離(2メートルを目安とする。)にいることをいい、単にすれ違うとい
った軽度の接触のみでは対象とならない。なお、医療従事者等であっても標準
的な感染防護具(サージカルマスク(エアロゾル発生の可能性が考えられる場
合は、N95マスク)、手袋、眼の防護具、ガウン)を適切に着用していた者は、
これに含まれない。

 さらに、本日、韓国で隔離対象者となっていた日本人が隔離する前に既に日本に帰国していたことも明らかになりました。以前上にMERSのリスクが高まっていることは明らかであり、当院でも十分な対応策を講じる必要があると考えています。

2015/06/05 
「平成27年度のインフルエンザワクチン製造株が決定しました。」

 平成27年度のインフルエンザワクチン製造株が決定しました。例年インフルエンザワクチンはA型2種、B型1種を混ぜ合わせた3価のワクチンですが、本年度から下記のA型2種、B型2種の4価のワクチンとなりました。

<平成27年度インフルエンザワクチン製造株>
A/カリフォルニア/7/2009(X−179A)(H1N1)pdm09
A/スイス/9715293/2013(NIB−88)(H3N2)
B/プーケット/3073/2013(山形系統)
B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)

 今回から4価となった理由は、近年上記A型2種に加え、上記のB型2種の混合流行が続いているため、WHOも2013年シーズンから4価ワクチンを推奨するようになったことに加え、米国でも4価ワクチンの使用が始まり、世界的にも4価が主流となってきたためです。
 日本でも、2014〜2015の冬は、前半がA型、後半はB型インフルエンザが流行しました。
 3価を4価にすればその分、はずれ(ワクチン製造株以外の株のウイルスが流行、ワクチンが効かないこと)が減りますからよいことです。しかし、一般に接種部位が腫脹する方が増える傾向にあります。インフルエンザワクチンの接種開始は10月1日を予定しています。次期が近づきましたら広報します。

2015/06/05 
「日本年金機構の125万件(以上?)の個人情報流出。当院では電子カルテも健診システムもインターネットには繋がっていません。」

 2015年6月1日、日本年金機構はサイバー攻撃により約125万件の年金情報が流出したと公表しました。基幹システムで管理する個人情報を取り出し、インターネットに繋がるファイル共有サーバにCD-ROMを介して移したところ、ウイルスに感染した端末を介して情報が流出したとのことです(下図)。
 基幹システムはインターネットには接続されていません。ですから、ウイルスが仕込まれたメールが職員の端末に送りつけられていても、すぐさまオンラインで基幹システムに感染していくことはありません。日本年金機構の内規では、基幹システムの個人情報は、抽出後CD-ROMに格納され業務使用されますが、ネットに接続するファイル共有サーバに移すことは禁止されていたそうです。しかし、このルールが守られず、個人情報をファイル共有サーバに移行したところ、ウイルスによってデータを持ち去られてしまいました。
 ウイルスが仕込まれた不審なメールが複数の職員に届いたそうです。そのうち、福岡県と東京都の職員二人が添付メールを開封してしまいウイルスに感染、そのウイルスがその端末から繋がるファイル共有サーバ内に格納されていた個人情報を持ち去ってしまいました。このメールには「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)」というもっともらしい件名が付けられていましたが、送信者のアドレスが無料のフリーメールで、如何にも怪しげなメールでした。年金機構では、それまでも不審なメールは開封しないように、添付ファイルは開かないようにと何度となく指導していたそうですが、それでも思わず開封してしまう職員がいました。日本年金機構の職員数は約12,000人だそうです。これだけいれば間違って開封する職員がいても何等不思議ではありません。
 神奈川県藤沢市では昨年、標的型メールによるサイバー攻撃を防ぐ目的で職員160人にテスト用の標的型メールを送りつけ、抜き打ち訓練をしたそうです。すると、4割近い職員60人余りがメールを開きリンク先をクリックしてしまったそうです。これが現実です。12,000人の職員全員を完全に教育、偽メールを誰一人間違って開封しないようにすることなど不可能だと思います。そういった職員教育を日々重ねつつも、インターネットに繋がったLAN内のパソコンに個人情報を保管しない、個人情報を扱うシステムをインターネットと接続しないようにすることの方が現実的です。
 当院は医療機関ですから大量の個人情報を扱います。その個人情報は外来での保険診療に関しては電子カルテ、健診センターで受診される健診に関しては健診システムのコンピュータ内に保管されています。これら二つのネットワーク(LAN)は両者ともインターネットに接続させていません。インターネットに関しては、「院内LAN」と呼ぶ別のネットワークを接続させ、メールやWeb上の情報収集などに利用しています。当院はたかだか職員数15人程度の組織ですが、それでも上記のように標的メールを思わず開封してしまうことはありうることだと思っています。ですから、このように当院の基幹システム(電子カルテと健診システム)はインターネットに接続させていません。そのため、電子カルテのバージョンアップは電子カルテメーカから送られてくるCD-ROMを介して行っています。もちろん、例えインターネットに直接接続されていなかろうと、USBフラッシュメモリなどを介してウイルスが進入しないとは言い切れません。これら基幹システムに出所の明らかでない情報を含んだメディアを接続しないことはいうまでもありません。
 個人情報流失というと、最近では昨年のベネッセ事件が有名です。ベネッセは自ら犯人を特定し、告発しました。日本年金機構がどこまで本気でやるのか。ベネッセの対応と比べることでその真価を評価できそうです。

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2015/06/04 
「レーザーイメージャーを買い換えました。」

 現在使用しているレーザーイメージャー(レントゲン撮影画像や超音波画像をレントゲンフィルムに印刷する装置、プリンターとお考え下さい)、コニカミノルタ製レーザーイメージャーDROPRO MODEL 832(2007年製)をマンモグラフィ(乳房レントゲン撮影)導入に伴いマンモグラフィ用の上位機種のレーザーイメージャー、コニカミノルタ製レーザーイメージャーDROPRO MODEL 873に買い換えました。
 当院は開院以来、すべてのモダリティ(レントゲンや超音波などの検査機器)をフィルムレスで運用していましたが、唯一市民健康診査のレントゲン画像だけは、ダブルチェック目的にフィルムで医師会に提出しなければならず、泣く泣く高額(中古を約70万円で購入)なレーザーイメージャーを購入していました。「フィルムレスでの運用」とは、普段レントゲンや超音波検査画像などはモニターで見て診断するため、撮影した画像を一々レントゲンフィルムに印刷しないで診療を行うことです。デジカメで撮った写真を印画紙に現像せずパソコンのモニターで見るのと同じ仕組みです。そのため、レントゲン撮影後、数秒で画像を見ることができます。レントゲンフィルムは高額なため、コスト削減にもなりますし、レントゲンフィルム保管庫を作る必要もなくなります。また、古くなったフィルムを廃棄する手間、コストも削減できます。しかし、画像モニターは高額です。パソコンのモニターは大きさにもよりますが、せいぜい数万円でしょう。一方、医療用モニターはもちろんその精度〜画素数にもよりますが数百万円とパソコンのモニターに比べ約100倍高額です。普段は、月初の市民健診用フィルム以外ほとんど印刷しないため、コストパフォーマンスを考えると非常に高価な買い物です。
 今回さらに、三鷹市乳がん検診の受託施設となり、そのフィルムも印刷しなければならなくなりました。マンモグラフィ検査では、拡大鏡で見なければ気付かないような微細な石灰化を探すため、それに対応したレーザーイメージャー、ドライフィルムが必要になります。そのため今回200万円以上もする上位機種のレーザーイメージャーをまたまた泣く泣く購入することになりました。何度もご説明しますが、普段はまったく使用しません。月初に前月分の三鷹市乳がん検診のフィルムを印刷するためだけに購入するのです。
 しかし、この新しい機器を導入し、乳癌の方を一人でもより早期に発見できれば、購入した甲斐があったというもの、良しとします。
 三鷹市医師会の某先生が、500万円もするかなり上位機種の超音波診断装置を購入した時、ベンツを一台我慢したと思えば安いものだと話していたのを聞いたことがあります。私はベンツに乗りませんが、確かに新車1台を我慢したと思えば安いものです。

2015/05/25 
「下関市と門司港の関門地区で開催された第58回日本糖尿病学会年次学術集会に5月21日参加してきました。」

 平成27年5月21日から24日にかけて、山口大学大学院医学系研究科病態制御内科学分野教授谷澤幸生大会長のもと下関市と門司港の関門地区で開催された第58回日本糖尿病学会年次学術集会に参加してきました。20日水曜日午前の外来診療を早めに閉め、12時23分三鷹発の電車に飛び乗り参加しました。午前中の外来予約枠を11時15分で閉じていましたが、終了間際に多数の予約が入り、時計を見ながらの診療となりました。最後の患者さんは高血圧で通院中の方でしたが、超音波検査の予約をしていました。通常、超音波検査結果はその場で説明するのですが、検査結果に大きな問題と緊急性のないことを確認後、15年来の付き合いの患者さんということもあり、お願いして詳細な結果説明は次回受診時に延期してもらいました。それでも間に合いそうになかったため妻に依頼、車に乗ってクリニック前で待機してもらい、急ぎ足でも8分掛かる三鷹駅まで送ってもらいました。私自身の今までの経験では、このように慌てたときに限って忘れ物をします。そのため、出発前に敢えて忘れ物がないか再確認し出発しました。ところが、三鷹駅に着き、車から降りて駅のホームに向かって歩き始めて大変な忘れ物をしていることに気付きました。それは靴です。診療中に履いているサンダルのまま旅立ったのです。そそっかしいと自覚している私も、さすがに今回は中央線車中で苦笑するしかありませんでした。
 私は山口大学の出身です。そのため下関には友人がたくさんいます。今回、当法人の監査役を引き受けてくれた下関在住の親友、梶井内科医院の梶井信洋君と久しぶりに一献することになっていました。事前の連絡では、彼が下関で最も美味しいと推奨する寿司・割烹浪花を予約してくれていました。そのような格式のあるお店にサンダルで入るのは気が引けます。妻からも梶井君からも下関到着後靴を購入するよう進言されました。しかし、履いていったのはサンダルと言ってもBIRKENSTOCKのBOSTON型で、一見すると靴のように見えるものです。旅行先での時間は貴重、学会中このサンダルのまま過ごすことに決心しました。
 さて、今回の大会テーマは「糖尿病学の進化と深化 〜サイエンスとヒューマニティーの融合〜」です。大会長の谷澤幸生教授は大学の2学年先輩で、東京に講演にいらした時にご挨拶させていただいたことがあります。今回、初日1日だけの参加でしたが、昨年5月に上梓された今までの糖尿病治療薬とはまったく違う発想の画期的な新薬、SGLT2阻害薬関連の講演を中心に拝聴しました。SGLT2阻害薬は体重減少効果があるため、肥満を合併する患者さんの多い米国では処方頻度が爆発的に増加しています。しかし、肥満者が米国ほど多くはない日本の糖尿病患者の場合、むしろその副作用が強調され、この1年それほど多く処方されていません。また、日本の法律では、新薬は発売後1年間2週間以上処方することはできません。これは、治験段階で安全性を確認し発売許可の下りた薬であっても、実臨床で多数の患者さんに処方されると、予想もしなかった副作用が出現することもあるからです。そのため過去には発売直後、発売禁止になった薬剤もあります。私自身もよほど緊急性のある患者さんでなければ、新薬は発売後1年が過ぎないと処方しないことが多いです。また、当院の通院患者さんはほとんどが1ヶ月毎に通院しています。その点からも、1ヶ月処方が可能となる発売後1年が経たないと新薬は処方しづらいものです。このような事情から処方日数制限の解除される5月になりSGLT2阻害薬の使用頻度が増すことが予想されていたため、私自身今一度SGLT2阻害薬に関し整理しておく必要性を感じていました。
 今学会でもSGLT2阻害薬は大きなトピックで、初っ端のシンポジウム1でも、「SGLT2阻害薬−新たな糖尿病治療薬の夜明けとなるか−」というタイトルのプログラムが組まれていました。今回の学会で得たSGLT2阻害薬に関する知見を纏めると、SGLT2阻害薬は、腎臓での尿糖再吸収を阻害することにより、1、尿糖排泄量を増加させる(1日60g強)、2、空腹時、食後血糖ともに低下させる(血液中のブドウ糖が尿糖として常に排泄されるため)、3、食欲増進作用がある(血糖値が低下するため)、4、体重を低下させる(尿糖60gは240kcal相当のため)、5、約500cc程度尿量を増加させる(増加した尿糖による浸透圧利尿)、6、脱水症を誘発する可能性がある(尿量が増加するため)、7、主要心血管イベントを増加させる可能性がある(脱水症が誘発されるため)、8、血圧が低下する(尿量増加により循環血漿量が減少するため)、9、尿酸値を低下させる(尿量が増加するため)、10、血中トリグリセリド(中性脂肪)を低下させる(低下した血糖値を補うために脂肪異化が進むため)、11、HDLコレステロール(善玉)が増加する(中性脂肪が減少するため)、12、LDLコレステロールは大きく変化せず、13、筋肉量が減る可能性がある(低下した血糖値を補うために筋肉異化が進むため)、14、腎機能低下例では効果が減弱する、15、腎の過剰糸球体濾過量を軽減させる(TGF;尿細管糸球体feedbackによる輸入細動脈の収縮により糸球体圧較差が是正されるため)、16、尿中微量アルブミンの排泄の改善(腎の過剰糸球体濾過量が軽減、球体圧較差が是正されるため)、17、非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD)を改善する(脂肪異化が進むため)、18、尿路感染症を誘発する可能性がある(尿糖が増加するためブドウ糖を栄養源とする細菌や真菌が増殖しやすくなるため)、などのメリット、デメリットが見られます。
 そのため、日本糖尿病学会では、昨年8月「SGLT2阻害薬の適正使用に関するrecommendation」を発表、その使用に関して注意を促しています。当院でもそのrecommendationを遵守、5月から処方頻度が増えると予想されるSGLT2阻害薬の患者さんにとってのメリットが最大となり、デメリットが最小となるよう適切な症例を選択、適切な投与方法で処方していきたいと思います。

2015/05/10 
「コニカミノルタ製レーザーイメージャーDROPRO MODEL 832を20万円で販売します。」

 コニカミノルタ製レーザーイメージャーDROPRO MODEL 832を20万円で販売します。
商品名コニカミノルタ製レーザーイメージャーDROPRO MODEL 832(2007年製)
    (左図)オプションの専用架台、追加トレー(よって2トレータイプになります)、Printlink 5-IN(本体とモニター)(右図)
価格:20万円
商品説明現行モデルのドライイメージャーです。現在何等問題なく使用していますが、MMG導入に伴いMMG用の上位機種のドライイメージャーに買い換えるため販売します。2007年製ですが、中古を約70万円で購入し(新品価格はオプションを含めると100万円以上だと思います)、使用していました。当院は開院以来、すべてのモダリティをフィルムレスで運用していましたが、唯一市民健康診査のレントゲン画像だけは、フィルムで医師会に提出しなければならず、泣く泣くドライイメージャーを購入しました。そのため月初の市民健診以外ほとんど使用しておらず使用頻度は多くないと思います。新規に開業された医療機関の方も私同様のお悩みで、格安のドライイメージャー探していらっしゃるのではないかと思い販売することにしました。中古医療機器販売会社のホームページを見ると高年式のもので70万円程度が相場だと思います。私同様たまに使用する程度なら新品でなくこの程度の中古機器で充分ではないでしょうか。初期導入費用を削減でき経済的です。商品の機能、仕様、寸法などはリンク先のコニカミノルタヘルスケアのホームページを御覧頂くか、または、直接メーカにお問い合わせ下さい。当方、メーカに設置して頂きワンパターンのフィルム印刷以外で使用したことがありません。そのため機能、仕様などに関してご質問にお答えできません。
 左図にありますように本体側面のポケットにマニュアルも附属しています。
購入条件以下の購入条件をご了承いただける方のみご連絡下さい。
1、お支払は、現金または銀行振込みのみです。クレジットカード決済はできません。領収書の発行は可能です。
2、商品のお引渡し条件は、代金お支払後になります。
3、商品のお引渡しは、6月3日水曜日15時以後になります(6月3日午後に後継のドライイメージャーが当院に納入されるため)。
4、当方メーカでないためすべての機能について動作確認は行っていません。そのため、当院が使用していない機能に関して不具合がないとは断言できません。ですからそのような不具合もありうることを前提にご購入下さい。購入後不具合が発見されても、当方一切責任は負いませんし、返品も受け付けないことをご納得の上ご購入下さい。
5、購入後はご自身でメーカに連絡するなどして設置して下さい。LAN使用を前提としているためIPアドレスの設定などが必要なはずです。ご自身の医療機関のネットワーク管理者にご相談下さい。医療機器ですのでご使用前に十分テストし、ご確認の上ご使用下さい。
発送方法:当方での梱包(大きすぎて梱包できないので)、発送(機器の安全な運搬方法を知りませんので)はいたしません。直接引取りか、購入者様で運送会社にご依頼下さい。
設置場所は2階ですがエレベータがあり、建物前の歩道までバリアフリーです。
また、専用架台にはキャスターが付いているため、男一人でも歩道まで運べます。都合が付けばお手伝いいたします。
ただし、本体は100kg近い重量のため、トラックに積み込むのに相当数の人手またはリフトなどの設備が必要と思われます。
連絡方法:商品に関してご質問があれば、分かる範囲で出来るだけお答えします。当院ホームページの「お問合せ」からメールにてご連絡下さい。在庫は当然この1台のみですから、ご購入の意思表示をされた方、先着順とします。ただし、1週間以内のお支払がない場合、キャンセルと判断し次の方にご購入していただきます。キャンセル料などはありません。
以上です。このドライイメージャーをご活用頂ければ幸いです。

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2015/05/06 
「待合室の椅子を変えました。」

 平成19年11月開院当初より使用していた待合室のスツール(左図)を背もたれのある椅子(中図)に買い換えました。スツールは開院時ウォーターヒアシンス製の二つソファー(右図)と一緒にタイから輸入したものです。当初、PERFORMAX社製ソファーを三つ注文していましたが、当院の設計を依頼した建築家の方がサイズを間違え、当院の待合室には不釣合いな大き過ぎるソファーを購入してしまいました。待合室にソファー三つは入るには入りましたが、椅子と椅子の間を移動するのも大変なほど狭くなってしまいました。建築家と話し合い、ソファー一つを返却、代わりに無償で上記のスツール二つを用意してもらいました。このようにこのスツールは曰く因縁のある思い出深い椅子でした。
 PERFORMAX社はタイ王室御用達で、デザイン性の高い家具メーカーとしてタイでは有名です。当院が購入したようにウォーターヒアシンスやバンブーなどの自然素材を多用した家具を多く製作しています。
 このスツールは大ぶりのため一人でゆったりと腰掛けることができます。詰めると二人でも座れなくはありません。しかし、赤の他人同士が一緒に座るには抵抗感があるため、二人で来院された方以外は一人で腰掛けていることが多いようです。開院当初来院者が少なかった頃は今の腰掛の数で十分足りていました。しかし、最近のように受診者が増えると待合室に受診者が入りきれず、健診センターやカンファレンスルームの椅子に腰掛けてお待ち頂くことも珍しいことではなくなってきました。
 また、このスツールは座面が低いのが気になっていました。リゾート感を出すため、ソファー、スツールとも座面が低い上、クッション性が高いので一旦座るとずっしりとお尻が埋まってしまいます。すわり心地はいいのですが、足腰の弱った高齢者が立ち上がるのは一苦労です。通院患者さんには高齢者も多いため足腰が不自由な方も珍しくなく、そのことが気になっていました。当院の受付スタッフに尋ねたところ、やはり高齢者はソファーを避け、ソファーの以外の背もたれのある椅子(右図)を選んで腰掛けることが多いとのことでした。
 そのような経緯もあり今回スツールを背もたれのある椅子に買い換えました。三つの椅子のうち右二つ(中図)はやはりPERFORMAX社製のセコハンです。カバーをつけて使用していたので背もたれのウォーターヒアシンスはまったく無傷です。ウォーターヒアシンスは硬いものが当ったりすると塗装が剥げたりささくれ立ったりしますが、本来その肌さわりを楽しむものですし、また、そのささくれも木材のように手に刺さることはありません。ですから、傷付くのを恐れずカバーを使わす使用するのがよいと思っています。左端の椅子はチーク製で背もたれにやはりウォーターヒアシンスが使われています。家具メーカーが試作品として製作したもので、アウトレットで購入してきました。ご存知の方も多いと思いますが、南洋材であるチークは、北米原産のウォルナット、中南米原産のマホガニーとともに高級家具材として使用される三大銘木の一つです。チーク材のうち、とくにミャンマー産の樹齢100年以上のものは本チークと呼ばれ、高品質で大変高額なようです。海水に漬っても劣化しないことのよりタイタニック号やクィーンエリザベス2世号、国会議事堂、箱根の富士屋ホテルなどで使用されています。今回購入した椅子は、もちろんインドネシア、マレーシア、タイなどで植林された「植林チーク」だと思います。またチーク材は耐久性が高いため100年持つとも言われ、使用しなくなった古材は、オールドチークとして再利用される事も珍しくありません。今回オールドチーク材のアンティークな椅子の購入も検討していましたが、医療機関の待合にアンティークな椅子は如何なものかという妻の意見もあり、購入を取りやめました。自宅で使用するにはアンティークとしての趣がありよいでしょうが、不特定多数が使用し、衛生を第一義とする医療機関では、単に古くてぼろい椅子という評価にしかならないかもしれません。
 ちなみに「モダンリビング」などの建築、インテリア雑誌を見ていると、最近はダイニングテーブルの椅子も同一の4脚を揃えるのではなく、意図的にいろいろな種類の椅子を組み合わせて使用することがお洒落なようです。今回そういった理由から複数の種類の椅子を組み合わせてみました。今後も当分この路線で行くつもりです。

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2015/05/03 
「同級生のアドバイスで文字の色を変えてみました。」

 先日、大学時代の同級生から、卒後30周年の同窓会開催にあたり、候補日伺いの連絡がメールで来ました。幹事を引き受けてくれている同級生からの連絡では同級生数名の連絡先が不明とのことで、その消息の問い合わせも記載されていました。その中の一人に今でも賀状交換しているT君がいました。彼とは出席番号が一つ違いだったため、解剖実習に始まり最終学年時の臨床実習(白衣を着て医者の真似事をする実習です)まで常に行動を共にしていた間柄でした。また、私と違い真面目に欠かさず授業に出席していたため、ノートを何度と無くコピーさせてもらったりもしていました。そこで早速以前聞いていた自宅の番号に電話してみました。直接声を聞くのはおそらく25年ぶりではないかと思います。生憎留守でしたが、留守電設定になっていたためメッセージを残しておきました。
 その後、同窓会開催日が11月に決まったとの連絡が幹事からあったため、急ぐ必要もなくなり、再度電話するのが遅れてしまいました。するとこのホームページの問い合わせの欄にT君からメールで連絡がきました。気遣いかもしれませんが、以前から当院のホームページを見てくれているとのことでした。早速返信、同窓会の連絡をしたところ、院長コラム「胃痛い放題」を時々読んでくれているとのことでした。
 2015/04/03の院長コラム「当院ホームページのアクセス数が増加して驚いています。(その1)(その2)」に記載したように最近当院ホームページのアクセス数(訪問者数)が月間5000人前後となり自分自身ビックリしています。この中の一人にT君がいたのを知り、またビックリしました。なんだか照れくさいような、しかし、ますますしっかりとした文章を書かなければとプレッシャーを感じました。
 また、そのメール末筆に、「茶色に赤い字は読み辛いです!!」の一文が書かれてありました。確かに自分自身も、濃い茶色と赤色は同系色のため赤い文字が茶色の背景に埋もれなんとなく見辛く感じていました。しかし、自分自身は白い背景に黒色の文字でWORDを使い元原稿を執筆していますから見辛くもなく、また、内容を理解していますから自分でホームページの院長コラムを読む機会は滅多にありません。そのため読者の立場に立った配慮が不十分でした。院長コラムの読者には当院通院患者さんが少なからずいらっしゃると想像されます。そういった方々は、読み辛いと感じても私には直接意見を述べにくいのは想像に難くありません。気遣い心配りが足りなかったと反省させられました。逆に、忌憚無く意見を言ってくれる友人は有り難いものと再認識させられました。
 そこで、早速、赤色を明るめのオレンジ色に変えてみました。
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 T君や読者の皆さん如何でしょうか。自由に色を選ぶこと出来ればよいのですが、文字の色を変更する場合、ホームページ管理会社から指定された色は下記の9色です。
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 「茶色に赤い字は読み辛いです!!」
 ただし、薄いピンク色はリンクを貼った文字用に設定しているため使用できません。この中ではオレンジ色が最も読みやすいように思ったのですが如何でしょうか。背景色を茶色にしたのが問題だったのかもしれません。しかし、茶色は当院のシンボルカラーです。その点は御容赦下さい。ご意見あれば、お問い合わせから宜しくお願いします。

2015/05/02 
「地下鉄サリン事件20年目に再考する『なぜ林郁夫はサリンを撒いたのか』」

 先日、防災担当理事としてNBCR対策推進機構が開催する「爆発物災害対策担当者養成講習会」に参加してきました。昨年12月には「生物テロ・バイオ災害対策担当者養成講習会」が開催されています。これらの講習会はCBRNE(シーバーンと呼びます)災害対策の講習会です。CBRNEとは、chemical(化学)、biological(生物)、radiological(放射性物質)、nuclear(核)、explosive(爆発物)のアクロニムです。これはテロ災害を想定したものであることは言うまでもありません。イスラム国による日本人拉致殺害、つい数日前のチュニジア博物館襲撃などテロは日本人にとっても身近なものになってしまいました。
 CBRNE災害の中で私自身にとって最も鮮烈な記憶として残っているのが、一昨日3月20日に事件発生20年目を迎えた地下鉄サリン事件です。この数日、新聞、テレビでもこの事件が取り上げられています。事件当時、オウム真理教幹部の経歴がニュース番組のみならずワイドショーでも盛んに取り上げられていました。青山吉伸京都大学法学部、荒木浩京都大学法学部大学院、石川公一東京大学医学部、遠藤誠一京都大学大学院博士課程、上祐史浩早稲大学理工学部大学院、土谷正実筑波大学大学院、富永昌宏東京大学医学部、豊田亨東京大学理学部大学院、中川智正京都府立医大、野田成人東京大学理学部、早川紀代秀大阪府立大学大学院、村井秀夫大阪大学理学部大学院など高学歴のエリートがずらり、私よりよほどIQの高い人たちばかりでした。何故そのように頭のよい人達が、殺人、その他の犯罪に加担していったのか、しかも人の命を守るべき医師までもが。サリンを地下鉄に撒いた実行犯の中に医師がいたことは同じ医師として大きな衝撃でした。何故林郁夫は大量殺人を目的とする化学兵器サリンを撒くに及んだのか、彼がサリンを撒き私が今ここにいることは必然といえるのか、単なる偶然ではないのか、その疑問に明確な答えを持っていなければ同じ道を歩むのではないかという不安に突き動かされたこと覚えています。
 2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件以後、米国政府はテロとの戦いを宣言しましたが、米国とウサマ・ビン・ラーディン率いるアルカイダとの戦いの背景にキリスト教とイスラム教の宗教的対立があったことは否定できません。それ以前、クェートを占領したイラクと多国籍軍が戦った湾岸戦争当時、イラクのフセイン大統領は「聖戦ジハード」の大儀を掲げ、「パレスチナ紛争」(イスラム教対ユダヤ教、キリスト教)にリンクさせ、宗教戦争化しようとするプロパガンダを繰り返しました。当時のブッシュ米国大統領はその否定に躍起なってはいましたが、イスラエルのパレスチナ占領問題に見られる米国のdouble standardを見れば、石油利権、ユダヤ金融資本など経済的要因があるにせよ宗教的対立が背景〜根底にあるのは間違いなさそうです。
 さらに、宗教的対立が背景の争いとして、東ティモール(イスラム教対キリスト教)、カシミール地方帰属をめぐる印パ紛争(ヒンズー教対イスラム教)、中国のチベット侵攻(ダライラマ法王のチベット仏教対宗教を弾圧する中国共産党)、さらに同一宗教内であっても宗派戦争として、北アイルランド紛争(キリスト教カトリック系対プロテスタント系)、イラン・イラク戦争(イスラム教シーア派対スンニ派)が起きています。もちろんこれらは宗教だけが原因で起きたわけではありませんが、一因となっていることは間違いありません。
 先述の宗教、宗派戦争は、多くの日本人の感覚からは理解しがたいものです。仏教、キリスト教など既成宗教に新興宗教を加えると、日本には数万の宗教法人(文化庁編集の最新の宗教年鑑平成25年度版では、18,200余りが登記されています)があり、その信徒数の合計は日本の人口1億2千万人を超えているそうです。換言すれば日本人は最低一つ以上の宗教に帰依していることになります。この数字の真偽のほどは別にして、日本人全員が何らかの宗教の信徒であることは間違いなさそうです。しかし、この説明に違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。かくいう私自身の菩提寺は浄土真宗らしく、仏事のときには南無阿弥陀仏と唱えることぐらいは知ってはいますが、生来なんら勤行に励んだこともなく、仏教徒であることを意識したことなどありません。そもそも日本人は、その大部分が仏教徒でありながら、同時に神道も生活の中に深く浸透しています。初詣、お宮参り、節分、七五三など神道関連の年中行事や、地鎮祭、上棟式は完全に定番化していますし、さらには、昨今クリスマスを祝わない日本人はきわめて少数派となっており、なんでもありの状態です。このような実態ゆえ、無宗教を自称する日本人も決して珍しくありません。つまり、日本人は、複数の宗教、宗派を広く浅く信心する、換言すれば、不信心な似非信徒、宗教的には極めて寛容かついい加減な存在なのではないでしょうか。
 日本人の低い宗教心の実例として「神の国」発言があります。2000年、時の森喜朗総理は「日本は天皇中心の神の国」と発言、多方面から批判を浴び、国会で陳謝させられました。とくに中国や良心的な進歩主義のインテリ層が拒絶反応を示した理由は後述しますが、確かに「天皇中心」はまだしも(現在の日本国憲法でも、「天皇は日本国の象徴」と明記されています)、「神の国」といわれてもピンとこない人が大半ではないでしょうか。では、もしこの発言が、先述した宗教戦争当事国元首のものだったらどうでしょうか。たとえば、イランの宗教指導者故ホメイニ氏やイスラム国最高指導者カリフを名乗るバグダディが「○○はアラーの神を中心とした神の国である」、イスラエルのネタニヤフ首相が「イスラエルはモーゼを中心とした神の国である」と発言したら、おそらく大多数の国民は違和感を覚えることもなく、むしろ拍手喝采するのではないでしょうか。
 以上のことから解かるように、一意専心信心深い国民性を持つ国に宗教戦争が勃発しています。一つの神を強く深く信じれば信じるほど他の神を受け入れなくなるのは当然です。「神は○○だけ」という経典をないがしろにし「他の宗教(神)の存在」を許すわけにはいかないからです。神について白黒つけたい人間は、白を黒といわれることが許せるはずもなく、諍いが始まるのです。一方、もともと神について寛容かついい加減、灰色な人は、白っぽかろうが黒っぽかろうがどちらでもたいした違いはないと感じてしまいます。現代日本人の場合、仏教のみならず、神道や氏神、道祖神をはじめとする土着信仰も同時に受け入れています。そのため、宗教戦争という概念が理解しがたいものになっています。
 宗教において最も極端な、世俗社会から乖離した教義が原理主義fundamentalismです。さらに自虐的他虐的を問わず狂信的な破壊的宗教団体がカルトです。日本のカルト集団の代表例はオウム真理教ですが、カルトの信者は教祖を盲信、狂信しています。信者にとって教祖は絶対神として完全無欠な存在です。ですから、私からすれば見るからに胡散臭く感じる存在であっても、彼らにとっての現人神、麻原彰晃が「サリンを地下鉄に撒け」と指示すれば、慶応大学医学部を卒業した秀才林郁夫さえも撒いてしまったのではないでしょうか(「オウムと私」林郁夫著、文藝春秋社)。カルトの恐ろしさは、概念としての「絶対性」にあるのではないでしょうか。
 さて、私は宗教戦争として中国のチベット侵攻(ダライラマ法王のチベット仏教対宗教を弾圧する中国共産党)を例示しました。余談ですが、4月4日、日本医師会館で開催される「ダライ・ラマ法王来日記念講演会」に参加してきます。どのようなお話が伺えるか楽しみです。閑話休題、チベット仏教と敵対する中国共産党は宗教ではありません。これは一体どういうことなのでしょうか。中国共産党は日本の自由民主党や民主党同様政党です。にもかかわらず宗教戦争の当事者となっています。これは、中国共産党が政党を標榜していながら、イデオロギーとして共産主義を信奉、一党独裁制を敷いているため、ある意味カルトと性格を同じくするからです。宗教、とくに排他的一神教は自らの神を、一方、共産党、特に原理主義的な共産党はマルクス主義を絶対的真理としています。原理主義的共産主義を国是とする共産主義国家に共通の病理は独裁者の出現です。旧ソ連におけるスターリン、中国における毛沢東(初期には良心的であったかもしれませんが、晩年は文化大革命で見られるごとく残虐性をいかんなく発揮しました)、北朝鮮における金日成、金正日、金正恩一族、キューバにおけるカストロ、カンボジアのクメール・ルージュにおけるポルポト、ルーマニアにおけるチャウシェスク等草々たるメンバーが揃っています。マルクス理論の最も忠実な実践者は英雄と称えられ、そしていつしかその英雄の論理が絶対的真理に置き換わり、ついには独裁者そのものが絶対的真理、あたかも宗教における神のようになっています。
 その創生期において、社会的公正などをスローガンとして良心的であった社会主義(私の知る限り、社会主義、共産主義に傾倒する人々は少なくともその初期において正義感の強い人たちでした)が、所得の平等化や労働条件の改善、雇用の確保、社会保障制度の充実など具体的要求を実現するため、資本の国有化、経済全体の計画化、中央集権化、官僚主義へと突き進み、より徹底した社会主義へ、さらには共産主義や国家社会主義へ転化していく過程は必然ともいえるものでした(この解説は他書に譲ります。興味のある方は、F.A.ハイエク著「隷属への道」を御参照下さい)。もはや、このような独裁共産主義国家は、宗教における原理主義と何等違いはありません。金正恩率いる北朝鮮での残虐行為、さらには連合赤軍が繰り返した総括という名のリンチ殺人、その後日本赤軍が海外で繰り返した無差別テロ事件は周知のとおりです。そういった国家や集団で行われてきた、いや現在行われている非人道的残虐行為の数々、大量虐殺、拷問、収容所送り、強制労働等を見ると、宗教的カルト集団となんら変わりありません。無宗教国家北朝鮮や連合赤軍、日本赤軍と、イスラム原理主義国家イスラム国、オウム真理教とは極めて類似しています。これが、共産主義国家が宗教戦争の当事者たりうる所以です。
 これらの残虐行為を語るとき真っ先に連想される国家体制がファシズムfascismです。ファシズムとは全体主義的totalitarianism排外的政治理念であり、一党独裁による専制主義、国粋主義を根幹とする政治形態です。その歴史上の代表的国家が第二次世界大戦当時のヒトラー率いたナチスNazismドイツ、ムッソリーニ率いたイタリアです。二人ともその初期においては社会主義者であり、社会主義を信奉する当時のインテリ層から絶大な支持を得ていました。その後、クーデターを起こすこともなく、まがいなりにも選挙で選ばれ独裁者への道を歩んでいきました。実際、ヒトラーは自らの政党を国家社会主義ドイツ労働者党と呼びました。そして、自らの理想達成の為反ユダヤ主義を徹底し、大虐殺を実行するに至りました。この歴史上の事実を見ると、ナチズムがオウム真理教と類似していることに気づきます。共産主義、ファシズム、原理主義、カルトは存在領域こそ違え、その病理を同じくするものです。すべて、何であれ完全無欠の絶対的真理として盲信する対象が存在しています。
 ゲーデルの不完全性定理にあるように私達人間のいかなる英知を結集しようとも絶対的真理に到達することはできません。絶対という言葉を使えるのは、唯一「絶対的真理は絶対無い」という命題においてのみです。私は、真理は手に入れることの出来ないものだと思っています。得られることのない真理を求め日々悩み続ける過程にこそ意味があるのだと思います。
 我々が忘れてはならないことは「真理の前での謙虚さ」です。あらゆる理論は仮説でしかないのですから。
 誤解されないよう念を押しますが、私は宗教そのものを否定しているのはありません。狂信し他の宗教を寛容しない姿勢、あるいは宗教そのものを否定し認めない態度こそが問題だと思っています。
 先述したようなIQの高い信者を含めオウム真理教に入信した者達は、生きることの意味だったり、真理への探求だったり、生活上のさまざまな悩みや不安だったり、それらに対する答を真剣に探していた人達です。皆、立派な動機や目的があった人達で、安易な私よりよほど人生に真正面から向き合った人達だと思います。そんな時、偶然オウムと出会ってしまい、得られるはずのない真理を得られそうだと思い込んだり、真理に出会ったと勘違いしたり、麻原には真理へ導く能力があると信じ込まされたりして、後戻りの出来ない道に突き進んでしまいました。途中、疑問を感じ立ち止まったこともあると思います。しかし、自分よりステージ(階級)の高い者から修行が足りないのが原因と言われ、もう少し修行を続けてみようと深みに入って行き戻れなくなってしまったようです。それは、パチンコなどギャンブル中毒の者が「次は勝つかも、次こそ勝つかも」とのめり込み、有り金すべてを叩いてしまう有様に似ています。
 余談ですが、オウム真理教の元幹部村井秀夫なる人物を覚えているでしょうか。先述のごとく大阪大学理学部大学院を卒業したエリートでした。某大手企業を退職しオウム真理教の出家信者となりました。そして、1995年青山にあったオウム真理教教団ビルの前で右翼団体〜暴力団員構成員の男に、多数の報道陣の眼前で刺殺されてしまいます。殺人事件がテレビで生中継されるという前代未聞の事件に衝撃を受けた方も多数いたのではないでしょうか。教団ナンバー2といわれていた彼の経歴の中で印象に残ったことが一つありました。
 それは、彼が上司に語った退職理由「『かもめのジョナサン』のようになりたい」という言葉です。リチャード・バック作の「かもめのジョナサン」は、新潮文庫選定の百冊にも選ばれ、教科書にも取り上げられるほどの作品ですから読まれた方もたくさんいるのではないでしょうか。私自身も学生の時読みました。掻い摘んで話すと、「他のかもめと違い頑張り屋で頭がよく向上心の強いジョナサンという名のかもめは、日々いかに早く飛ぶかということに情熱を注ぎます。しかし、かもめとして餌を啄ばむという日々の暮らしを繰り返す他のかもめたちからは異端者として扱われ追放されてしまいます。しかし、光り輝く二匹のかもめにより、目覚めたかもめたちの世界に導かれ、かもめを超越した飛行術を会得します。ついには瞬間移動を伝授され、自らが光り輝くかもめとなって、他のかもめたちを導くようになります。ジョナサンにとっては食べることより飛ぶこと自体が大切なのです。そして、飛ぶことの意味を求め、完全なる飛行を会得し、完全なるかもめになりました。ジョナサンは飛ぶという行為を、餌を啄ばむ為の手段だと捉える一般的なかもめたちに、飛ぶこと自体に意味があるのだ、飛ぶことがかもめの人生なのだと説きます。そして、自らのいる高次元のかもめの世界へ導こうとします。小説の最後は、「・・・そして微笑した。完全なるものへの彼の歩みは、すでにはじまっていたのだった。」という言葉で終わります。
 この寓話は、70年代のヒッピー文化の中で口コミ的に広まり、ついにはアングラの世界から、世界中で読まれる大ベストセラーとなりました。この寓話は、「解脱の境地を求めて日々精進する麻原は、日々食べることで精一杯な人生を送っている俗人に異端者扱いされる。しかし、ついに解脱、空中浮揚の術を会得する。グルとなった麻原は、俗人に完全なる真理、教義を布教、説いて回る」物語と読み替えることができます。そう考えるとこの本の愛読者であった故村井秀夫が、「完全なるもの」を希求しオウム真理教に傾倒、入信したことは容易に理解できます。少なくとも入信の初期において彼もやはりきわめて良心的、誠実、真摯でした。しかし、その後サリン製造の責任者となり、カルト集団として残虐行為、無法行為(化学兵器、細菌兵器、銃器、覚せい剤密造、拉致、誘拐、殺人などなど)の限りを尽くしていきました。この様子は、その初期において良心的な社会主義が、共産主義、国家社会主義、独裁主義となり、残略行為の限りを尽くすようになる過程と完全に一致します。
 このようにその初期において良心的で誠実な、正義感が強く向上心があり、いわゆる真面目な人たちが、カルトや共産主義に潜む病理に気づくことなく、退っ引きならない状況に陥っていった姿に、私は臍をかむ思いでした。
この世界的大ベストセラー「かもめのジョナサン」の翻訳をし、解説を書いているのは五木寛之です。彼はその当時すでにこの作品の中に潜む病理に気づいていました。その解説の一部を引用します。「・・・それにしても私たち人間はなぜこのような〈群れ〉を低く見る物語を愛するのだろうか。私にはそれが一つの重苦しい謎として自分の心をしめつけてくるのを感ぜずにいられない。食べることは決して軽蔑すべきことではない。そのために働くこともである。それはより高いものへの思想を養う土台なのだし、本当の愛の出発点も異性間のそれを排除しては考えられないと私は思う。管理社会のメカニズムの中で圧殺されようとしている人々が、この物語にひとつの脱出の夢を托するという可能性もわからないではないが、しかし、それにしてもこの物語の底の底には、何か不可解なものがあるようだ。たとえば、天国に昇ったカモメは、なぜみんな純白に輝くのか? 原作者には意図的なものはないにちがいない。しかし、潜在的に何かがある。それは小さな問題ではないはずだ。ポピュラーに読まれる物語を馬鹿にすることはやさしい。しかし、私がいちばん嫌いなものも、その〈馬鹿にする〉という姿勢なのだ。私はこの巨大な読者をかち得たひとつの物語を、強い抵抗を抱きながらも全力をあげて考え、そこからさまざまなものを発見したような気がする。・・・」。彼のベストセラーに「大河の一滴」があったことも頷けます。
 オウムと出会い、入信した人達は真理に真剣に向き合った真摯な人達でした。しかし、敢えて言わせて頂くと、その誠実さとは裏腹に私のような凡人に比べ、絶対的真理に近い崇高な存在であるという驕り、私のような凡人を見下す気持ちが心の片隅にあったのではないでしょうか。その心理の究極の形が、「ポア」(魂を高い世界に転生させるためには、積極的にその魂の持ち主の生命を奪っても構わないという教義。オウムから見て「悪業を積む者」は、そのまま生かしておいてはさらに「悪業」を積み、来世の転生先でその分苦しまなければならない。それを避けるためには一刻も早くその生命を絶たなければならないという理論:ウィキペディアより引用)だったように思います。
 地下鉄サリン事件を二度と繰り返さないため自身に言う。「真理の前で謙虚であれ」。
(本小論は三鷹市医師会雑誌「医人往来」平成27年5月号に掲載されたものを改変したものです)

2015/04/26 
「拡張期高血圧について(その1)」

 高血圧に関して「血圧の上の値と下の値の差が小さく、血圧の下の方の値だけが高いのですが、大丈夫なのでしょうか。下の値が高いのは良くないと聞いたことがあるのですが。」という質問をよく受けます。先日、内科でない某先生より同様の質問を受け、文章にしてメールで回答する機会がありました。外来でも頻繁に受ける質問です。折角の機会ですから、順を追って分かりやすく解説したいと思います。
 まず、血圧とは動脈という容器の中に入っている血液の圧力です。高血圧の方の動脈に針を刺すと噴水のように勢いよく血液が噴出してきます。一方、低血圧の方の場合、チョロチョロと弱々しく血液が漏れてくるのをイメージして下さい。
 血圧の上の値は「最高血圧」のことで、「収縮期血圧」とも言います。心臓は血液を循環させるためのポンプで、動脈に中に血液を送り込んでいます。心臓は1分間に60回程度、すなわち約1秒毎に1回収縮します。具体的には、1秒間の前半で大動脈弁を開放し、左心室を収縮させ動脈の中に血液を送り込みます(左図、心臓の断面(NATOM IMAGES ©Callimedia))。この前半の時期を収縮期と呼びます。動脈という容器の中に心臓から大量の血液が送り込まれるわけですから、一気に動脈圧が上昇します。そしてその頂点の血圧値が最高血圧で、収縮期の血圧ですから、収縮期血圧とも呼びます。後半は大動脈弁を閉じ、動脈から血液が逆流して来ないようにしつつ、収縮した心臓を拡張させ、心臓の後ろにある肺から血液を受け取り、次の心拍に備え心臓の中に血液を充填します(中図、循環系および心周期(NATOM IMAGES ©Callimedia))。この後半の時期を拡張期と呼びます。一方、拡張期、血圧測定用のマンシェットを巻いた上腕の動脈の中にあった血液は、上腕から肘、前腕、手首、指先へと流れ去って行きます。拡張期、心臓から血液の補充はありませんから、上腕の動脈の中に血液の量はどんどん減り、圧もどんどん減少していきます。そしてその底の血圧値が最低血圧、拡張期血圧です。このように動脈の中の血圧は最高血圧と最低血圧の間を1秒毎に行き来しています(右図、動脈圧波形)。右図の3〜6段目の波形が右上腕、左上腕、右足首、左足首の血圧値の波形です。
 正常域血圧の範囲は、診察室では140/90mgHg未満、家庭血圧では135/85未満です。ですから、頭書のような質問は、120/95といったような拡張期血圧のみ高血圧の方から受ける質問です。収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧と呼びます。この方の場合、脈圧は120-95=25です。心臓の循環ポンプ機能が低下した状態を、心臓機能不全、略して心不全といいます。心不全になると心臓から血液がわずかしか駆出されないため、動脈圧は余り上昇せず、収縮期血圧は低くなります。一方、上腕の中の血液も抹消へ循環していきませんから拡張期血圧の低下は少なめです。そのため心不全の方の脈圧は小さくなります。実際、臨終間際の方の脈圧はわずかです。ですから、脈圧が小さいのは心臓ポンプ機能の低下、心不全を連想させ悪いイメージを持っている方多いようです。
 しかし、通常外来を歩いて受診されるような方にそのような重篤な心不全の方はいません。脈圧が低下するような重篤な心不全になると、労作時呼吸苦が酷く、とても歩いて通院できません。バス停から距離のある当院まで歩いて通院できる程の心機能を有している方の脈圧はむしろ動脈の弾力性、柔軟性を反映し、反比例します。動脈の柔軟性が高い方の場合、収縮期に心臓から血液が送り込まれ、血圧が上昇していくとそれに伴い血管も拡張し、圧上昇を吸収していきます。動脈という容器が拡張すれば、心臓から送られてくる血液量が増えても圧は余り上昇しません。一方、拡張期に血液が末梢に流れ去り血管の中がすかすかになっても、血管も圧低下に従いどんどん収縮するため圧は余り低下しません。このように柔軟性のある動脈では最高血圧は低く、最低血圧は高くなり、脈圧は小さくなります。ですから、動脈硬化のない若年者の一般的な血圧値は110/80といったように小さな脈圧になります。そのため若年者が高血圧になると収縮期より先に拡張期血圧が140/90の高血圧の基準に達してしまいます。
 一方、動脈の柔軟性、弾力性の低下した固い血管の場合、収縮期に心臓から血液が送り込まれ、血圧が上昇していっても血管は拡張できず、圧はどんどん上昇していきます。一方、拡張期に血液が末梢に流れ去り血管の中がすかすかになっても、血管は収縮しません。ですから最低血圧はどんどん低下していきます。このように柔軟性、弾力性のない動脈では最高血圧はより高く、最低血圧はより低くなり、脈圧は拡大していきます。ですから、動脈硬化の目立つ高齢者の一般的な血圧値は135/65といったような大きな脈圧の血圧値になります。そのため高齢者が高血圧になると拡張期より先に収縮期血圧が140/90の高血圧の基準に達してしまいます。

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2015/04/26 
「拡張期高血圧について(その2)」

 以上の説明は一般論ですが、例外もあります。例えば心臓弁膜症である大動脈閉鎖不全では、大動脈弁が完全に閉じず、拡張期に血液が動脈から心臓に逆流します(左図、大動脈閉鎖不全(NATOM IMAGES ©Callimedia))。そのため上腕動脈内の血液は、拡張期に通常の末梢側に加え逆方向の心臓へも逆流、最低血圧は極端に低くなります。一方、心臓は拡張期に後にある肺から血液を受け取るだけでなく、一旦収縮期に送り出した動脈からの逆流によっても血液を受け取ります。そのため通常以上に大量の血液を拡張期に充填させます。通常以上に大量に充填された血液を次の収縮期で一気に動脈内に駆出します。結果、最高血圧は通常以上に高くなります。以上の如く、大動脈弁閉鎖不全の方の場合、例え若年者で動脈硬化が進行していない方であっても150/50といったような血圧値となります。
 以上の如一般に脈圧が小さいのは動脈の柔軟性、弾力性が保たれていることを示唆し、脈圧が大きいのは血管が硬くなっていること、つまり、動脈硬化の存在を示唆しますし、拡張期高血圧は動脈硬化の進んでいない方、一般に若年者の高血圧の特徴であって、必ずしも良くないことと考える必要はありません。

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2015/04/25 
「当院でのCTやMRI検査について」

 当院にはCT(コンピュータ断層撮影)(左図)やMRI(核磁気共鳴画像法)(中図)の画像診断装置はありません。そのためそれらの検査が必要な患者さんがいた場合、ご住所からアクセスのよい近隣の医療機関(CTはサウスポイントMYクリニックみたか中村脳神経外科クリニック野村病院に、MRIはみたか中村脳神経外科クリニック野村病院にご紹介しています。何れの医療機関も当院の診察室から電話で直接予約ができます。また、検査結果は、緊急性がある場合は、検査を受ける医療機関でそのまま受診、診察を受けていただきます。緊急性のない場合、基本的に検査後は帰宅して頂き、CD-ROMに記録された画像データ(右図)が当院へ郵送されてくる数日後に、当院へ来院していただき、当院で検査結果をご説明します。郵送されてきたCT、MRIの画像データは当院のPACS(医療用画像管理システム)に取り込み、一生涯保存します。他院で撮影された画像データを当院のPACSに取り込ませるとその分大容量のPACSを準備しなければならずコスト高になってしまいますが、にも拘らずこのような仕組みにしているのは、一人の患者さんの画像データを複数の医療機関でバラバラに管理するより当院で一括して管理した方が、利便性、全人的医療などの点で患者さんのメリットが大きいと考えているからです。一人の患者さんについてより多くの情報が収集できれば、私自身もより正確な診断、適切な判断を下すことが出来るはずです。
 もちろん、その患者さんを当院から大学病院など他の医療機関に紹介する場合、必要に応じその画像データを持参してもらうこともしばしばあります。CD-ROMによる画像データの提供は無料です。

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2015/04/19 
「当院でのB型及びC型ウイルス性肝炎の診療方針について」

 平成27年4月8日三鷹市医師会館で開催された武蔵野赤十字病院泉並木副院長の「肝炎の最新治療について」と題する講演会に参加してきました。ご存知の方も多いと思いますが、武蔵野赤十字病院は日本一最先端の肝炎治療を行っている医療機関で、大学病院以上の症例数を誇っています。都内に二つしかない東京都の指定する肝疾患診療連携拠点病院です。ちなみにもう一つは国家公務員共済組合連合会虎ノ門病院です。そのトップ泉並木先生は昨年、ホテルニューオータニで開催された第50回日本肝臓学会総会記念大会の会長を歴任されています。この三鷹市医師会が主催する泉先生の講演は、B型肝炎やC型肝炎に対する肝炎ウイルス検診の精度向上目的に、肝炎ウイルスに関する医学的知識のbrush upのため毎年春に開催されているもので、私も毎年欠かさず参加しています。最近のウイルス性肝炎治療法の進歩は目を見張るものがあり、知識量が爆発的に増大、非常に複雑化しています。患者さんにとって最も適切な肝炎治療を行うためには、生半可な知識ではダメで、非常に高度な専門性が必要になっています。大学院時代C型肝炎ウイルスの研究に携わり、ある程度基礎知識のある私でさえ、年々その複雑な内容に付いていけなくなっているのを実感しています。講演会の後の情報交換会で直接お話を伺ったところ、泉先生曰く、「非常に複雑なため専門医でも常に勉強していないと正確な診断、判断を下すことが出来ない。」とのことでした。
 B型やC型のウイルス性慢性肝炎における新知見として、例えば、

1、外来種の遺伝子型AのB型肝炎ウイルスが日本に蔓延化、成人感染のB型肝炎の約10%が慢性化するようになった。
2、B型肝炎ウイルスは稀ではあるが、尿、唾液、鼻汁、汗、涙などでも感染しうることが明らかになった。
3、成人発症のB型急性肝炎が慢性化せず完全に治癒したと考えられていた症例でも、実際にはB型肝炎ウイルス遺伝子は生体内に遺残、免疫抑制剤や抗癌剤投与時に
再活性化、重篤な肝炎を再発する可能性のあることが明らかとなった。
 以上は、「診療案内」の「予防接種」の項目の「B型腱炎の 疾患概念のパラダイムシフト~是非、B型肝炎ワクチンを接種して下さい!」を御参照下さい。
4、B型肝炎治療では、従来の肝庇護剤、インターフェロンに加え、経口剤である核酸アナログ(ラミブジン、アデホビル、テノホビル、エンタカビル)という肝臓癌を予防する薬を使用できるようになった。
5、C型肝炎に対するインターフェロン治療は、経口の抗ウイルス剤を併用することにより著効例が著しく増加、かなり確率で完治するようになった。
6、C型肝炎治療において、完治させうる経口剤の抗ウイルス剤が続々と上梓された。その著効率はきわめて高く(95〜99%!)C型肝炎は副作用の強いインターフェロンを使用しなくとも飲み薬で治せる時代になってきた。そのため従来インターフェロンを副作用のため使用できなかった患者さんも完治させうるようになった。さらに、肝硬変や高齢のためインターフェロンを使用できなった患者さんにも治療の適応が広がった。
7、これらC型肝炎に対する経口治療の新薬は事前に遺伝子検査を受けることにより、有効か無効か判るようになった。無効なものを投与すると耐性化が広がり、その後の治療をむしろ難しくする。そのため事前に遺伝子検査が必須になりつつある。
8、次々と有効性の高い新薬が開発されるため、患者さんによっては有効率の高くない治療をすぐに始めるより、むしろより有効な新薬を待って治療を始めた方がよいと判断される症例(治療待機患者)も存在するようになった。つまり、現時点では、治療しないことが最適な判断と考えられる場合もある。
9、肝臓移植が行われるようになった。
10、行政的にも東京都では「B型・C型肝炎治療医療費助成制度」「東京都肝炎ウイルス重症化予防推進事業(精密検査費用の助成)」という二本立ての医療費助成を行っている。
11、東京都では肝炎診療ネットワークを構築、「肝疾患診療連携拠点病院」(都内2医療機関)や「幹事医療機関」(都内12医療機関)、「肝臓専門医療機関」を指定、医療費助成受けられる医療機関が限定されるようなった。

 以上のような状況のため、当院ではB型またはC型ウイルス性肝炎の方を発見した場合、その方にとって最も適切な治療法を判断するため、必ず、武蔵野赤十字病院も含めた肝臓専門医療機関の受診をお勧めしています。当院でウイルス性肝炎の診療を行うのは肝臓専門医療機関で指示され、連携して治療を行う場合に限定しています。

2015/04/18 
「エラストグラフィ、オートIMT測定機能を採用した新型超音波検査機を導入しました。(その1)」

 平成27年4月16日現行の日立社製超音波検査機から最新鋭のGE社製LOGIQ S7 Expert(左図)に買い換えました。現行機は7年前の開院時に購入したもので、現在でも何等問題なく使用可能です。しかし、開院後、超音波検査実施数が年々増加(中図)、年間検査数が約1400件となる中、頸動脈超音波検査と乳腺超音波検査実施数が確実に増加してきました。
 頸動脈超音波検査は、動脈硬化の程度を評価するための検査です。「生活習慣病外来」のページの「高血圧内科」の段落や、「脂質代謝内科」の段落で供覧する超音波検査画像の如く、生活習慣病により血管の老化現象、動脈硬化は進展します。当院では高血圧、脂質代謝、糖尿病、高尿酸血症など動脈硬化危険因子である生活習慣病の診療に力を入れているため、自ずと頸動脈超音波検査実施数が増加していきました。頸動脈超音波検査では、血管壁の厚さの指標である内膜中膜複合体厚(以下、IMTと略す)を測定します。現行機の日立社製では、手作業で測定しなければなりませんでした。しかし、今回導入したGE社製では、一定区間の正確な最大IMT、平均IMTが瞬時に測定できる(右図、Avg 0.87mmが、水色の線で示された区間の平均IMT、Max 1.03mmが最大IMTです。)ようになりました。検査時間が短縮され、患者さんの負担が減るとともに、今後さらに検査数を増やすことが可能になりした。

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2015/04/18 
「エラストグラフィ、オートIMT測定機能を採用した新型超音波検査機を導入しました。(その2)」

 一方、乳房超音波検査はもちろん乳癌などを発見するための検査です。当院は「お知らせ」のページにあるように一昨年度より三鷹市乳がん検診の超音波検査受託施設に、昨年度より乳房レントゲン(マンモグラフィ)受託施設になっています。マンモグラフィで異常を認め、要精査となった場合、まず初めに必ず超音波検査を実施します。その結果、癌を疑う所見がなければ精密検査は終了となりますが、疑う所見があればさらにMRIや乳房に針を刺したりする侵襲的な精密検査を実施しなければなりません。ですから、不必要な精密検査を行わないためにも、精度の高い超音波検査を実施することが重要です。最近、超音波検査においてエラストグラフィという画期的な新技術が開発され注目されています。エラストグラフィは組織の硬さを色調で表す技術です。癌はその早期から周囲の正常乳腺組織より硬くなるという特徴があります。江戸時代、乳癌のことを「岩(がん)」と呼ぶこともありました。文字通り、乳癌が岩(いわ)のように硬かったからです。ちなみに「癌」の中の嵒という字は「岩」の異体字です。このようにエストラグラフィで癌の硬い特徴を画像化することが出来れば、通常の超音波検査で気づかれないような癌を発見したり、超音波検査で発見された腫瘤が悪性なのか良性なのかのより正確に判断したりすることができるようになります。左図(GEヘルスケアホームページより)のエラストグラフィ画像では、硬い部分が青色で示され、柔らかい部分は赤色で示されます。
 昨年度三鷹市乳がん検診乳房レントゲン受託施設となり約500人もの方が当院でマンモグラフィを受検されました。当然要精査の方も多数おられ、早速乳がん症例を発見することができました。乳房超音波検査実施数が増加する中、エラストグラフィ機能の必要性を強く感じるようになりました。そのため、現行機が十分使用可能にもかかわらず、大枚を叩き(かなり高額なので痛手です)、今回思い切ってエラストグラフィ機能付の新型エコーを購入しました。
 もちろん画像的にも、現行機と比べ格段に精度が増しています。例えば、中図は同一症例の総頸動脈分岐部に見られたプラーク(血管の壁に付着したコレステロール)像です。上段が現行機で下段が後継機です。後継機の画像では血管陰影が明確になり、血管内膜の微妙な凹凸も読み取れます。表在側(画像の上方)の血管壁も明確になりました。また、右図はやはり総頸動脈に見られた巨大なプラーク像です。石灰化が強いため上段の現行機ではプラーク全体を観察することはできませんでしたが、下段の後継機画像では、石灰化しているプラークの全体像がハッキリと確認できます。
 エコー購入にあたり、日立アロカ社製、東芝製もデモ機を使用、比較検討しましたが、エラストグラフィ機能が学会の推奨するものであったこと、また、血管画像が最も精密でより正確な診断が可能であること、などを考慮、割高ではありましたがGE社製の導入を決定しました。他社メーカーの超音波検査機は、3ヶ所のIMTを測定しその平均値を算出するのに対し、GE社製では無数の箇所のIMTの平均値を算出するため、再現性、正確性が比較にならないくらい増しています。
 今後、診療の現場で一層積極的に活用していきます。是非当院で超音波検査を受検して下さい。

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2015/04/16 
「肥満症とがん」

 平成27年3月18日武蔵野赤十字病院で開催された第25回武蔵野市医師会消化器研修会に参加しました。今回のテーマは「肥満とがん」です。肥満がさまざまな生活習慣病の原因となることはご存知の方も多いと思います。日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2011」から肥満合併症を抜粋すると、

1、耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
2、脂質異常症(高脂血症、高コレステロール血症、高中性脂肪血症など)
3、高血圧
4、高尿酸血症・痛風
5、冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
6、脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作
7、脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)
8、月経異常、妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、難産)
9、睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10、整形外科的疾患:変形性関節症(膝、股関節)・変形性脊椎症、腰痛症
11、肥満関連腎臓病


 等です。
 さらに、肥満と関連性が高いと考えられているがんとして、肝臓癌、胆道癌、大腸癌、乳癌、子宮内膜癌が取り上げられています。欧米の研究では、対象となった22種類の癌のうち、17の癌で体重の増減と癌発症との間に相関性が認められています。その中で明らかに肥満と関連性が高いと考えられている5種類の癌が、今回の肥満症診療ガイドラインで取り上げられました。
 私が医学生や研修医時代には、肥満と癌発症の間に相関性があるなど、まったく認識されていませんでした。しかし、最近ではその発症メカニズムも含めかなり解明されてきました。
 肥満になると糖尿病になりやすくなります。つまり血糖値が上昇します。血糖を下げるホルモンはインスリンですが、血糖値が上昇するとそれを何とか下げようと膵臓から分泌されインスリンホルモン量が増加します。もともとインスリンは、細胞のエネルギー源である血液中のブドウ糖を骨格筋や肝臓などに取り込ませるためのホルモンです。そのことによって血液中のブドウ糖濃度は低下するわけです。肥満により血液中のインスリン濃度が病的に上昇すると、細胞へ必要以上に多量のエネルギーが供給されることになります。不必要なエネルギーは細胞の増殖を必要以上に促進、発癌作用を示すことになります。
 また、肥満により肥大化した脂肪細胞からは炎症を惹起するサイトカイン(ホルモンと同じようなものです。具体的にはTNF-α、PAI-1、HB-EGF、エストロゲン等)が多量に放出されるようになります。炎症による細胞の破壊、再生が繰り返される過程で突然変異による細胞の癌化が誘発されます。ピロリ菌感染で発症する胃癌は、ピロリ感染性胃炎による胃粘膜の炎症を繰り返した結果として発症します。
 また、乳癌や子宮体癌は女性ホルモンのエストロゲンが一因となって発症しますが、肥満した脂肪細胞はエストロゲンを分泌するため、これらの癌発症を誘発します。
 肥満、とくにメタボリックシンドロームでは、脂肪肝を来たすことがしばしばあります。脂肪肝の一部は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症します。NASHは、目立った飲酒習慣がないのに炎症の強い脂肪肝を発症する症例です。NASHによる炎症が繰り返されるとやがて肝硬変を来たし、B型やC型ウイルス肝炎同様肝細胞癌を併発します。B型肝炎やC型肝炎は治療の進歩により減少傾向ですが、NASHを基礎疾患とした肝細胞癌はむしろ増加傾向にあります。
 肥満は上記の如く全身に生活習慣病のみならず癌などさまざまな病気を誘発することを心しなければなりません。

2015/04/03 
「当院ホームページのアクセス数が増加して驚いています。(その1)」

 当院ホームページ(以下HP)をリニューアルしたのは2011年6月です。それまでは業者に原稿を渡し、作成してもらったHPにほとんど手お加えず放置していました。小生の認識不足かもしれませんが、他の医療機関のHPを拝見しても似たようなHPが多いように思います。おそらくどこの医者も皆忙しいため、HPをまめに更新する暇がないのだと思います。私も似たようなものでしたが、多少大袈裟に言うと、年を取るに従い死ぬ前に自分の思っていることを思う存分述べてみたいという欲望に駆られ、2011年10月頃より思いつくままに「院長コラム」を執筆するようになりました。また、15人ほどスタッフも皆協力し、ブログを定期的に執筆してくれています。そのため個人の医療機関、クリニックにしては珍しく、結構頻繁に更新していると思っています。
 リニューアル直後、アクセス数(どれだけ多くの人が当院のHPを見てくれているか)が気になり、HP運営会社のサイトに時々アクセスし、アクセス数(左図、2011年アクセス数)を確認していました。徐々に増加していくアクセス数が嬉しく、1年ほどは時々覗き込んでいました(中図、2012年アクセス数)。しかし、2013年になり毎月1,000人以上がアクセス(右図、2013年アクセス数)するようになった頃から、アクセス数を確認するのに厭きたのと、他人の目が?気にならなくなり、まったく調べなくなってしまいました。そうしているうちに、アクセス用のパスワードを失念、調べれば分かるのですが、それがまた面倒になり放置していました。(その2に続く)

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2015/04/03 
「当院ホームページのアクセス数が増加して驚いています。(その2)」

 本年3月になり、インフルエンザの流行も終わり、また、健診オフシーズンということで、1年で最も暇な季節になりました。そういったこともあって、久しぶりにアクセス数を調べてみてビックリ、年々増加、この数ヶ月は毎月5000人前後の方が当院のホームページを訪問していることを知りました(左図、2014年アクセス数、右図、2015年アクセス数)。分析すると、アクセスされたページの1位が「ヘリコバクター・ピロリ菌検査を受けた方へ」、2位が「トップページ」で、3位がトップページの「新着情報」で、4位が「生活習慣病外来」のページ、そして「院長コラム」が第5位でした。毎月1,000人近い方が私の執筆する「院長コラム」を読んで下さっているようで、励みになりました。今後も、「胃痛い放題」、頑張ります。

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2015/03/21 
「光沢寺中井幼稚園」

 2014年3月2日の院長コラム「facebook小倉高校30期エッセー。若気の至りです。」で高校時代の若気の至りのエピソードをお話ししました。この駄文の最後に出てくる秋○亨君は高校同期のみならず幼稚園、小学校低学年時の同級生でもあります。私の駄文を読んだ彼は、私のことを覚えている北九州市在住の御母堂に原稿のコピーを送り、読ませてあげたそうです。たまたま御母堂のお隣には、秋○君と私が通った光沢寺中井幼稚園の当時副園長先生だった竹内先生の大学時代の友人がお住まいでした。その方のご好意により、竹内一代先生に私の駄文が渡ることとなりました。
 竹内先生は、私たちが卒園した後、園長先生となられ現在は娘に園長職を譲ってはいますが、今でも園のお花の手入れをしたり園児たちに絵本を読み聞かせたりして、園の運営に携わってらっしゃるとのことです。私の駄文を読んで下さった竹内先生は、ご丁寧なお手紙に私の幼稚園での集合写真のコピーを同封し送って下さいました。左図はその写真です。私がどこにいるか判りますか。コピーをスキャナーで取り込んだ画像なので判別できないかもしれませんが、最後段向かって左から3番目です。最前列向かって右端に腰掛けているのが担任の門永先生で、向かって左端法衣を纏った園長先生の後ろに立っているのが竹内先生です。秋○君は前から2番目の列の左から4番目です。
 上述の3月2日の院長コラムの最下段に述べたように昨年2月8日に開催される高校30期の同窓会に久しぶりに参加する予定にしていました。ところか、その日は皆さんも記憶に新しいことと思いますが、積雪27cmを記録した大雪で、同窓会は中止になってしまいました。同窓会幹事である秋○君が先日3月14日渋谷で同窓会を企画してくれ、久しぶり旧交を温めることできました。秋○君とは幼稚園時代の話で盛り上がり痛飲してしまいました。そういったこともあり、今回、光沢寺幼稚園のことを院長コラムに認めようと思い立ちました。
 御歳80歳を過ぎられた先生は、私ことしっかりと覚えて下さいました。私は大学に入学した20歳頃、北九州に帰京した折、ふと懐かしく思い一度幼稚園を尋ねたことがあります。幼稚園の外から門扉越しに中を覗き込んでいると、当時園長先生になられていた竹内先生が不審人物と思ったのか出ていらっしゃり、「何か御用ですか」と尋ねられました。私は園の卒業生であることをお話し自己紹介をしました。すると、先生は僕のことを思い出し、大層懐かしがって下さいました。55歳になった私にとってそれはもう35年前のエピドードです。
 私の駄文を読んで下さった竹内先生は担任の門永先生に連絡をしたところ、門永先生も「ちょっと元気な悪さ坊主だった」と思い出してくれました。お手紙では「ちょっと」と表現して下さいましたが、自分自身では「相当な」悪さ坊主だったと記憶しています。
 その後お便りの遣り取りがあり、光沢寺中井幼稚園創立60周年記念誌(右図)の寄稿を依頼されました。先日、小生の拙文を掲載していただいた記念誌を送っていただき、一読させていただきましたが、本当に竹内先生始め、学校関係者の方の思いのこもった記念誌で、先生方が子どもたちのためこんなにも深く深く考えてくださっていたのだと感銘を受けました。今でも母親手作りのお弁当を重視したり、敢えて通園バスを作らず、先生達が歩いて迎えに行き皆で登園したりすることなど、私の時代と変わぬ保育方針が貫かれていました。通園用バスを出した方が園児集めにはプラスなことは容易に想像できますが、敢えて保育方針、信念を貫く姿勢に感銘を受けました。この幼稚園の卒園者であることに誇りを感じました。
 最後にですが、記念誌に寄稿した拙文を転載します。

 光沢寺中井幼稚園創立60周年記念誌寄稿文「光沢寺中井幼稚園の思い出」

 光沢寺中井幼稚園創立60周年、誠におめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。昨今少子高齢化が社会問題となっていますが、今日こうして60周年の長き歴史を刻み続けることができたのも、ひとえに園長先生を初め園の運営の携わってこられた職員皆様の御尽力によるものと拝察致します。
 さて、私は現在東京都三鷹市で医院を開業しているものです。私が園に入園したのは昭和39年ですから、ちょうど約50年前になります。30歳で東京に転居したため、園の思い出は故郷小倉の思い出でもあります。41年に卒園するまで2年間通園しました。当時自宅は日明病院の少し南側、高峰町2にありました。記憶違いでなければ入園当初は高峰町15にあった記念公園に集合、先生に引率されて通園していたように思います。そして、慣れたところで近所の友達と連れ立って自分たちだけで、当初を除けば親の引率無く子どもたちだけで通園していました。私はガキ大将だったため近所の園児数人を引き連れて登園していました。その道程は子ども心にかなり遠かったように記憶しています。グーグルマップで距離を測ってみるとちょうど1.0kmですので子どもの足では30分近く要したことでしょう。ただ、途中、母と買い物に行った亀川市場やそのそばに掛かり付けの吉永医院(現在すでに閉院されたとお聞きしています)、さらには習字を習っていた朝日ヶ丘団地の集会所があったりしたためまったく知らない道ではなく、道草をしながら楽しく通園したように思います。当時は昨今のように交通量も多くなく、また、幼児だけの通園を心配するほど治安を危惧する風潮もなかったのだと思います。ただ、一度帰り道で雷雨に合い、長靴の中まで水浸しとなり、泣きながら帰宅した記憶があります。
 最近は便利なもので、その場に行かずともグーグルストリートビューを使用すると当時の通園路を辿ることが出来ます。東京に居ながらにして当時の通園路を辿ってみると、当然ですがだいぶ様子が変わったように感じました。昔は園の周辺にも空地があり、園を抜け出しバッタを捕まえたりしていました。今の時代と違い長閑な時代で、毎日伸び伸びと過ごすことが出来ました。自分でいろいろなことを考え、工夫しながら友達と思いっきり遊ぶこと、力いっぱい声を出し歌ったり踊ったり、友達と喧嘩したり仲直りしたり、子どものときにしか経験できないことをたくさん経験することが出来ました。
担任の門永先生は、それは大層美人の先生で子ども心に思慕の念を抱いていたのを覚えています。一方私は大層な悪さ坊主で、園庭で放尿し大きなハサミで竹内先生(?)にオチンチンをちょん切られそうになった(もちろん先生の脅かしです)のが一番の思い出です(60周年の祝賀に相応しくない低俗な内容を御容赦下さい)。たくさん褒められ、たくさん叱られたこと、本当に良い時間を過ごすことが出来ました。
 幼児期に光沢寺幼稚園で伸び伸びと子どもらしく過ごさせていただいたこと、親となった今、本当に良かったと感じています。私のような悪さ坊主と違い、最近の子どもは、賢くしっかりとし分別のある子が多いように思います。子どもは単なる大人のミニチュア版ではなく歴とした子どもですが、大人のような子どもが多いように思います。生まれてくる子どもは何時の時代も変わりませんから、時代や親である私たちの鏡なのではないでしょうか。さまざまなご意見があろうかと思いますが、大人の誰もが気忙しく忙しい時代だからこそ、私が過ごした光沢寺幼稚園のように、子どもたちが伸び伸びと遊び、遊びながらいろいろなことを学ぶことが出来ればと祈念していやみません。これからも光沢寺幼稚園がますます発展し元気な子ども達を育てていって下さることをご期待申し上げます。

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2015/03/17 
「大手町サンケイプラザで開催された第15回東京UGI研究会に2月28日参加してきました。」

 平成27年2月28日、大手町サンケイプラザで開催された第15回東京UGI研究会に参加、広島大学病院消化器・代謝内科診療伊藤公訓准教授の「ヘリコバクター・ピロリがいない胃癌−除菌後癌と陰性癌−」と題する特別講演を拝聴してきました。
 「健診のご案内」のページの「ピロリ菌、ペプシノゲン法とABC検診〜胃癌は早期発見の時代から予防する時代になりました!」で記載しましようにピロリ菌感染者を除菌すると胃癌の発症率が30%以下に減少します。そして若年で除菌するほど胃癌予防効果の高いことが分っており、30歳までに除菌すると胃癌を完全に予防できるのではないと考えられています。そのため何れ日本から胃癌を撲滅できるのではないかと。今回の伊藤先生の講演は、この問題に対する最新の知見であるため、土曜日の午後診療の後、何とか都合をつけて参加しました。広島大学のデータでは、3161例の胃癌患者のうち、ピロリ菌陰性(二つの検査法でピロリ菌陰性結果が得られ、かつ内視鏡検査で胃粘膜の生検を実施、病理検査で萎縮性変化のないことを確認した症例)の胃癌は21例でした。つまり、胃癌のうち0.66%はピロリ菌感染とは無関係に発生する胃癌でした。換言すると日本中からピロリ菌を一掃すると、胃癌の発生率は将来100分の1以下まで減少しますが、やはり完全に0にはならないということになります。しかし、これらピロリ菌陰性胃癌の約6割は悪性度の低い印環細胞癌でした。
 また、ピロリ菌除菌後、胃癌に無関係の病気で亡くなった方の胃を全割(隅から隅まで細かく切断すること)し病理検査すると、なんと18〜30%に胃癌が見つかったそうです。広島大学の研究で、1個の癌細胞が1cmの大きさの胃癌に成長するには平均16.6カ月を要することが明らかになり、ということは胃内視鏡で観察できるようになるには約10年が必要ということでした。ピロリ菌を除菌し、萎縮性胃炎が軽快、正常な胃の粘膜に徐々に回復していっても、除菌前に発癌していた1個の癌細胞が10年経って目に見える胃癌となって現れることがあるということです。「ピロリ菌、ペプシノゲン法とABC検診〜胃癌は早期発見の時代から予防する時代になりました!」でも述べているように、重ね重ね申し上げますが、除菌後も定期的に胃がん検診を受検するようお願いします。
 ABC検診でA群(ピロリ菌陰性でペプシノゲンも陰性の方、すなわち胃の粘膜の萎縮の見られない方)と判定されたにもかかわらず、胃癌になった方30例のうち、本当にピロリ菌陰性だったのはたった3例とのことです。残り27例はピロリ菌除菌後でした。もちろんこの除菌後というのは御本人が知らないうちに除菌(自然除菌と言います)されていた方です。ピロリ菌除菌に使用する薬剤の一つ、プロトンポンプ阻害剤は、逆流性食道炎や抗血小板療法中の患者さんの胃潰瘍発症予防等で頻繁に投与(内服患者の約30%がプロトンポンプ阻害剤を服用しているというデータもあります)されます。さらに感冒時等にもう一つの除菌薬、抗生物質のクラリスロマイシンを偶然服用すると、成功率は低いですがその2剤だけで偶然除菌されてしまうことがあるからです。こういった症例を真のA群と区別し偽A群、あるいはE群と呼ぶこともあります。こういった症例は、ABC検診のピロリ菌抗体検査で、基準値範囲内ですが、正常高値を示すことが多く、当院ではこういった方々に「ヘリコバクター・ピロリ菌検査を受けた方へ」と題するリーフレットを配布、注意を促しています。

2015/03/15 
「当院で3例目のRS3PE症候群を診断しました。」

 2014年7月22日の院長コラム「武蔵野赤十字病院膠原病・リウマチ科宇都宮雅子先生の『高齢化社会のcommon diseaseリウマチ性多発筋痛症/RS3PE症候群』という演題名の講演会に参加してきました。」で報告したように、昨今の高齢化社会においてRS3PE症候群は決して珍しい病気ではないようです。そのため、つい先日、当院3例目を発見しました。
 この方は糖尿病で通院する80歳を過ぎた男性です。認知症を患う妻と二人暮らしのため料理等ほとんどの家事を熟し、大変元気な方でした。その方が、両手をボクシンググローブのようにパンパンに腫らし、手指、手首、肘、型の関節痛を訴え来院されました。また、両足も浮腫んでいました。これでは料理を作れないと大変困っていました。既に2例を経験していた私は、すぐにRS3PE症候群ではとピンと来ました。早速採血で炎症反応系の検査、リウマチ因子を測定してみました。結果、炎症反応が増加、リウマチ因子は陰性でRS3PE症候群を裏付けるものでした。検査結果を聞きに来院した患者さんにこの病気について説明、不安なら日赤をご紹介するも良し、当院で早速治療を始めるも良し、とご希望を伺ったところ、やはり長時間を待つのは苦痛な上、妻を長時間放って置くことも出来ず、当院で治療を受けたいとのことでした。2014年7月22日の院長コラムでも述べたように、日赤からはまずは治療をしてみて、治療が上手くいかない場合に紹介して欲しいと依頼されていたこともあり、病態を理解、把握していた私は早速プレドニン15mgの投与を開始しました。そして1週間経った一昨日再受診されました。パンパンだった両手背はしっかりと皺だらけになり、足背に軽度浮腫が残存する程度まで劇的に改善していました。また、関節痛もかなり軽快、家事ができるようになったと大変喜んでいました。
 折角の機会ですので、このRS3PE症候群についてご説明します。高齢化社会になり増えてきたとはいえ、従来その罹患率(1年間に発症する患者の割合)は10万人当たり1.5人程度で、三鷹市の人口を18万程度とすると、三鷹市内で1年に3人程度しか発症しない病気です。ですからその発症原因など十分に解明されておらず、不明な点も多々あるのですが、大阪大学免疫アレルギー内科慶應義塾大学ホームページに比較的詳しい記載があります。これらを纏めると、

<病気の概念>1985年にMcCartyらが、1、予後の良い(Remitting)、2、リウマチ因子陰性(Seronegative)、3、対称性(Symmetrical)、4、手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎(Synovitis With Pitting Edema)等の特徴を表す言葉の頭文字をとって、RS3PEの概念を提唱しました。発生頻度については、本邦では50歳以上の0.09%に認められたとの報告があります。現在、適当な日本語の病名がないため、日本リウマチ学会などで検討されています。ときに前立腺癌、胃癌、大腸癌、悪性リンパ腫、白血病の初期症状として出現する場合があります(腫瘍随伴性RS3PE)。その場合、発熱、全身倦怠感などの全身症状が強く、治療抵抗性の場合が多いようです。
<臨床症状>比較的急な発症で,対称性の滑膜炎による末梢関節痛,両側手背・足背の圧痕を残す浮腫(ボクシンググローブハンドと呼ばれることもあります)が特徴です。RS3PE症候群27例の報告では、関節炎の部位は、中手指節関節 81.5%、近位指節間関節70.4%、手首55.5%、肩48%、肘11.1%、膝33.3%、足首25.9%でした。炎症に伴う全身倦怠感や微熱、体重減少を認めることもあります。
<検査所見>炎症を反映して赤沈が亢進、CRPが上昇します。リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体や抗核抗体は陰性、一部の症例で白血球が増加したり、補体が高値となったりします。血清VEGF(血管内皮増殖因子)が著明に増加、それによる関節周囲の血管透過性亢進が浮腫の原因と考えられています。
<診断・鑑別診断>確立した診断基準はまだありません。McCartyらの推奨する診断基準は、以下の4項目すべてを満たすものとしています。
 1、急性発症する左右対称性の四肢末端部の関節炎
 2、手背及び足背の圧痕性浮腫
 3、50歳以上の高齢者
 4、リウマトイド因子陰性
 関節リウマチ(RA)やリウマチ性多発筋痛症(PMR)の亜型とする意見もあり、その鑑別が重要です。
 各々特徴を纏めると、

          関節リウマチ  リウマチ性多発筋痛症  RS3PE症候群
発症年齢     :20〜60       50<          50<
性差        :女>男       女>男         女<男
末梢関節炎    :++        −〜+         ++
骨びらん     :++         −            −
筋痛        :−〜+       ++           −〜+
手足の浮腫    :−〜+       −〜+         ++
炎症反応     :+          ++           ++
リウマチ因子   :++        −             −
ステロイド反応性 :+         ++           ++
発症様式     :緩徐        突然発症        突然発症
予後        :慢性経過     再燃率20〜50%    予後良好、再燃まれ

<治療>副腎皮質ステロイドに対して反応性は良好。通常プレドニゾロン10〜15mgから開始し漸減する。

2015/02/26 
「富山国際会議場で開催された日本総合健診医学会第43回大会に2月20日参加してきました。」

 平成27年2月20日から21日にかけて、一般社団法人北陸予防医学協会施設長山上孝司大会長のもと富山国際会議場と富山市民プラザで開催された日本総合健診医学会第43回大会に参加してきました。20日金曜日の診療を休診にして1日だけ参加しました。同じ会期日程で、第48回日本痛風・核酸代謝学会総会も新宿の京王プラザホテルで開催されています。そちらも参加したため、19時20分頃には京王プラザホテルでの懇親会を後にして、19時54分新宿発の湘南新宿ラインに乗車、上越新幹線、ほくほく線を乗り継ぎ、23時26分富山着という強行軍で富山に行きました。帰路は逆方向の14時52分富山発の電車に乗り、19時04分三鷹着、その足で三鷹市医師会館に直行、19時45分開始の三鷹市学術講演会「乳癌治療の基礎と今後の展望」と題する杏林大学医学部外科学教室乳腺外科講師上野貴之先生の講演の司会をしました。この司会は本来私が担当する予定ではなかったのですが、担当予定の先生が体調不良により急遽交代、私が代行しました。
 さて、今回大会のメインテーマは「個々の疾病発生リスクに対応できる総合健診をめざして」です。今大会には拝聴したいセッションとして金沢大学消化器内科の金子周一教授の「血液による消化器がんの遺伝子診断」、昨年春日本人間ドック学会が発表した基準値から医療現場に大混乱を招いた騒動(2014/05/14院長コラム「日本人間ドック学会が発表した高血圧基準値範囲が誤って報道され困っています。(その1)(その2)」を御参照下さい)の誤解を払拭するために企画されたシンポジウム「生活習慣病関連項目の基準値」、労働安全衛生法改正に伴う教育講演「職場のメンタルヘルス対策における新展開−ストレスチェック制度にどう対応するか−」、日本高血圧学会が2014年に発表した診療ガイドラインで家庭血圧優先の方針を打ち出したことに関する教育講演「自動血圧計装置の進歩と課題」など昨年開催された第55回日本人間ドック学会学術大会より充実した内容のように私は思いました。
 2月20日午後2時までという時間的制約の中ではありましたが、私は「自動血圧計装置の進歩と課題」等を拝聴しました。この講演はわざわざ富山まで出かけてきた価値のある内容の講演でした。詳細は割愛しますが、再確認できた点として、

1、血圧測定のゴールドスタンダードはやはり水銀血圧・聴診法である。ただし、現在、水銀の環境汚染の問題からその使用を避けるようになりつつある。
2、水銀血圧・聴診法自体は正確だが、検者の聴力能に加え、バイアスが掛かり易い(一般に検者は無意識に5や0や8を好むので、125や120、118といった血圧値が多くなる)。
3、最新の2014年高血圧診療ガイドラインでは、自動血圧計を用いた家庭血圧の重要性が強調されており、したがった家庭で使用する自動血圧計のカフ・オシロメトリック法も受け入れられるようになり、診察室でもカフ・オシロメトリック法の血圧計を使用する医師が増えている。
4、カフ・オシロメトリック法による血圧測定はカフ圧を下げたときに発生する動脈の振動を時相によるパターン解析からアルゴリズムを求め、収縮期血圧と拡張期
血圧に近似した数値を算出している。このアルゴリズムは各メーカーの企業秘密であり非公開であるため、各メーカーの自動血圧計の値に誤差がある

 当院では、診察室では水銀血圧計を使用しています。待合室にはカフ・オシロメトリック法の自動血圧計を設置、ご自分で測定していただいています。以前から高血圧で通院される患者さんには、基本的に全員に家庭血圧計をご購入頂き、ご家庭での血圧測定をお願いしています。それはやはり、診察室での血圧値よりご家庭で測定した血圧値の方が、予後(高血圧を放置すると動脈硬化が進行し、将来脳卒中や心筋梗塞、腎不全、眼底出血などをきたすこと)により強く相関しているからです。

2015/02/20 
「京王プラザホテルで開催された第48回日本痛風・核酸代謝学会総会に2月19日参加してきました。」

 平成27年2月19日から20日にかけて、東京慈恵会医科大学総合診療内科教授大野岩男大会長のもと京王プラザホテルで開催された第48回日本痛風・核酸代謝学会総会に参加してきました。19日木曜日の診療を休診にして1日だけ参加しました。同じ会期日程で、日本総合健診医学会第43回大会も富山市で開催されています。そちらも参加予定のため、19時20分頃には京王プラザホテルでの懇親会を後にして、19時54分新宿発の湘南新宿ラインに乗車、上越新幹線、ほくほく線を乗り継ぎ、23時26分富山着という強行軍になっています。翌20日は逆方向の14時52分富山発の電車に乗り、19時04分三鷹着、その足で三鷹市医師会館に直行、19時45分開始の三鷹市学術講演会の司会をすることになっています。この司会は本来私が担当する予定ではなかったのですが、予定していた某先生が体調不良により急遽私が代行することになりました。初めから引き受けていたのなら、このようにぎりぎりの計画は立てません。とくに昨今の天候不順、大雪などを考慮すると富山からの電車が遅れないか心配です。天気予報ではやはり雨か雪となっていますが、ドカ雪ではなさそうでホッとしていました。
 ところがところが。現在、富山駅から乗車、帰路の車中ですが、踏み切り故障、点検のため10分遅れで富山駅を出発しました。越後湯沢での上越新幹線との乗り換え時間は8分しかありません!車掌さんに早速、越後湯沢での乗り換えについて質問したところ、もう少し走ってみないと判らないとの返事。不安です。本日富山に出張中のことは某先生にすでにお伝えしてあり、万が一電車事故などで遅れた場合を想定、保険を掛け代役の代役、もう一人司会役の先生を依頼していました。学会中、牟礼の里クリニックの岡田佳平先生から「某先生より司会を頼まれた」との電話が携帯にあり、少しホッとしています。しかし、岡田先生も本日夜に在宅医療関係の会議が市役所で開催されているらしく、私が間に合わない場合、会議を抜けてくるとのこと。不安です。
 さて、今回の内容ですが、この1年この痛風の分野に関しては特に大きな新知見はなかったよう、ほとんどが私の理解していることでした。「尿酸の臨床」「心・血管・腎と尿酸」「高血圧・腎と尿酸」「プリン代謝、酵素」といったセッション、「尿酸降下薬のトピックス」というシンポジウム、「腎臓再生研究の最前線」という特別講演、「尿酸値とその日内変動が臓器障害に及ぼす影響〜血圧の日内変動との関連を含めて〜」というランチョンセミナーを拝聴しました。
 これらの中で、詳細は割愛しますが、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科横尾隆教授の講演が最も感銘を受けました。腎臓病の終末像は慢性腎不全ですが、尿毒症を回避するためには透析治療を受けなければなりません。血液透析は1日おおよそ5時間、週3日程度必要です。命のためとは言え、患者さんにとって負担の大きな治療法です。現在人工透析を受けている方は32万人もいます。人口透析にかかる年間医療費は500〜600万円と高額(もちろん健康保険が使えますので患者さん自身が全額支払うわけではありません)です。そのため日本全体の透析に掛かる年間医療費は1.5兆円と医療費全体の5%にも上っています。しかも、高齢化もあり、透析患者は毎年1万人ずつ増加しています。そのように人工透析は患者さんにとって負担の大きな治療法であるため、腎臓移植を希望される方が約1万3千人います。しかし、臓器提供者が少ないため実際に腎臓移植できた方は年間1,500人程度で、ほとんどの方は移植できていません。国内での臓器提供者を待ちきれず、フィリピンに行って臓器売買された腎臓を使って移植治療を受けた方の記事がたまに新聞に掲載されています。保険が使えず数百万円の費用が必要なようですが、それほどまでに移植を受けたいのは、透析の辛さゆえです。そのためiPS細胞技術を利用した再生医療による腎臓再生は福音といえます。ところが、臓器の中で最も複雑な構造を持つ腎臓は、最も再生の難しい臓器ともいえ、その再生はこれまで諦められていました。しかし、この研究に取り組んでいるのが横尾教授です。もちろん、まだ臨床応用できるようなレベルではありませんが、想像以上に研究が進んでいることに驚かされました。腎臓再生は決して不可能なことではないと強く感じました。
 その他、痛風高尿酸血症と高血圧との関係について確認することができました。高血圧患者さんは、高尿酸血症を合併することが多いですが、利尿剤、β遮断薬、ACE阻害剤、ARB等の降圧剤は一般に尿酸値を増加させる作用があるため注意が必要です。血圧は日内変動しますが、夜間高血圧(就寝中の血圧)は脳卒中や虚血性心疾患などの臓器障害と日中血圧以上に強く関係していることが明らかになっています。この夜間高血圧の病態は、食塩感受性高血圧であるため、少量の利尿剤が有効です。しかし、先述の如く利尿剤は尿酸値を増加させるため注意が必要で、利尿剤投与時の高尿酸血症には少量の尿酸排泄薬の併用が効果的とのことでした。さらに、夜間高血圧患者さんは夜間高血圧がない方と比べ、血清尿酸値が高い傾向にあることが明らかになっていました。さらにこういった患者さんに、1日2回内服することにより夜間尿酸値も低下させるトピロキソスタット(商品名;トピロリック)を投与すると、早朝高血圧を改善させることが明らかになり、尿酸を低下させることが単に痛風を防ぐだけでなく、血圧、血管の機能も改善させる可能性が示唆されました。そもそも、血清尿酸値は深夜から早朝に掛けて上昇する日内変動が存在、それと平行し血管内皮機能も早朝(08:30)に低下することが観察されています。そして、尿酸降下剤が血圧のみなら血管機能も改善することが明らかになったわけですが、詳細は割愛しますがその詳細な機序も明らかになりつつありました。
 また、現在血清尿酸値の基準値は7.0mg/dl以下となっていますが、6mg/dlを超えると腎機能悪化を促進、尿蛋白(微量アルブミン尿)を生じさせます。しかし、やはりトピロキソスタットの内服により、抑制できることも明らかになっています。
 新しい知見を今後の診療にしっかりと生かしていきます。
追記:ほくほく線は4分遅れで越後湯沢に到着、何とか上越新幹線に乗り換えることができました。

2015/02/15 
「都内でスギ花粉の飛散が始まりました。」

 ほぼ例年通り2月13日都内で花粉の飛散が始まりました。多摩地区での飛散は本日2月15日の予定です。今シーズンの飛散量は昨年の2倍程度で、例年並になる見込みです。ただ、多摩地区の飛散量は昨年の2.6〜3.4倍とかなり増加することが予想されています。ちなみに昨年は例年の半分程度で、花粉症で来院される方が非常に少なかったのを記憶しています(2014年1月21日院長コラム「都内でも既にスギ花粉が飛散しています。」を参照)。
 なお、花粉飛散開始日の定義は1平方センチメートルあたり1個以上のスギ花粉が2日連続して観測された日です。ですから、それより少量は既に年末頃より飛散しています。花粉症の持病をお持ちの方は、早速抗アレルギー剤の内服を始めて下さい。常々ご指導しているように症状が悪化する前に内服するとシーズンを通して悪化せずに済みます。

2015/02/14 
「原発性胆汁性肝硬変について」

 平成27年2月10日、第18回武蔵野消化器病懇話会に参加してきました。今回の特別講演は福島県立医科大学消化器・リウマチ膠原病内科学講座大平弘正主任教授の「自己免疫性肝疾患の最近の話題について」という演題でした。本公演では、代表的な自己免疫性肝疾患である自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis;以下AIH)と原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis;以下PBC)について最近の話題をお話されました。開院後7年余りの間に当院でも、両者を合わせると10人近く発見された難病(自己免疫性肝炎原発性胆汁性肝硬変で、注意深く観察すると時々見つかる病気です。とくにPBCは国の特定疾患治療研究事業の56対象疾患の一つで、検査代、診察代、薬代など診療にかかわるすべての費用が公費負担となります。ですから、正しく診断し、公費負担の対象疾患であることを通知、申請手続き方法を指導することは患者さんにとって非常に大きなメリットとなります。現在AIHは10,000人程度、PBCは57,000人程度日本にいると推計されています。ということは人口約17万人の三鷹市内に90人程度自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変の方がいることになります。診断されていない方もまだ多数いるでしょうから、実際にはもっと多いと思います。今回は、頻度の多いPBCついて少しお話します。
 まず、自己免疫性疾患について。免疫とは人間が病原体、ガン細胞などヒトにとって有害なものから身を守るための体の中の仕組みです。そのため免疫システムは自己と非自己=病原体などの異物を明確に区別し、非自己のみを攻撃排除するようになっています。どのようにして免疫システムが無数にある非自己と自己を判別しているのか、その仕組みを解明したのが日本人で始めてノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士です。
 自己免疫性疾患とはその免疫システムが間違って自己を攻撃することによって発症する病気です。自己免疫性疾患の中で最も有名なのが関節リウマチです。関節リウマチは、免疫が自分の関節を攻撃する病気です。そのため関節が破壊され変形します。一方、自己免疫性肝炎は自分自身の肝細胞を、原発性胆汁性肝硬変は肝臓の中にある自分自身の胆管(胆汁を肝臓から腸管に流し出すための管)を攻撃、破壊する病気です。ちなみに、便の主成分は本来白色ですが、胆汁の黄色に染まりあのような色になって排泄されています。
 PBCは末期には胆汁が体の外に排泄できなくなるため、体内に胆汁が逆流、黄疸(黄疸で皮膚が黄色になるのは、胆汁が黄色いためです)をきたし、ついには肝臓病の終焉状態である肝硬変となります。PBCが発見された1950年当時、このような肝硬変の患者さんが端緒となって発見された疾患であったため、原発性胆汁性肝硬変と名付けられました。
 PBCの特長を列記すると、
1、男女比は1:9で圧倒的に女性に多い。
2、20〜80歳代まで幅広く発症するが、40〜60歳代に圧倒的に多く発症する。まとめると、患者の多くが中年女性に発症する。(下図、難病情報センターホームページより転載)
3、自覚症状を伴う患者の約30%程度で、残り70%は無症状(無症候性PBCと呼ぶ)である。自覚症状は皮膚掻痒感(胆汁の流れが滞ることにより血中に逆流してきた胆汁が皮膚を刺激するため)である。
4、血液検査で、血清IgM、胆道系酵素のALP、γ-GT、総コレステロールが上昇する。一方、AST、ALTの上昇は軽度にとどまる。
5、PBCに特異的な抗ミトコンドリア抗体が陽性となる。
となります。
 このうち、1〜3は問診で把握できることです。4のうち、AST、ALT、γ-GT、総コレステロールは三鷹市民健康診査の検査項目に含まれています。ですから、三鷹市民健康診査を受診すると、性別、年齢、AST、ALT、γ-GT、総コレステオロール値からPBCの可能性のある方を拾い上げることができます。実際、当院で発見されたPBC患者の多くが、三鷹市民健康診査が端緒でした。
 γ-GTはご存知の方も多いと思いますが、飲酒によって増加します(例外的に飲酒しても上昇しない方が存在します)。また、飲酒習慣のある方はメタボや肥満の方が多いため総コレステロール値も高い方が多いです。換言すると、飲酒習慣がないにもかかわらず、γ-GT、総コレステロール値高値の場合、積極的にPBCを疑い、高ミトコンドリア抗体、血清IgMなどの追加採血を進言しています。
 治療にはウルソデオキシコール酸やベザフィブラートが有効で、検査データが改善されるとともに、生命予後も改善します。無症候性PBCの方は、一般人と寿命は変わらず、天寿を全うします。一方、症候性PBCは徐々に進行、肝硬変に至り、肝不全や合併する食道静脈瘤の破裂が死因となることが多いです。そのため、末期のPBCの方に対しては肝移植が行われることもあります。無症候性PBCの方の一部は症候性PBCに移行しますので、無症候性PBCの方も定期的に検査を受ける必要があります。
 AIHもPBCも同じ発症機序の自己免疫性疾患ですから、両者が合併(PBC-AIHオーバーラップ症候群)することもあります。また、肝臓以外の自己免疫性疾患、例えば関節リウマチ、シェーグレン症候群、慢性甲状腺炎(橋本病)、CREST症候群などがPBCの約20〜30%に合併します。
 ところで、上記の如くPBCの約70%は無症状です。無症候性PBCの方は、一般人と寿命は変わらず、天寿を全うします。こういった方々に原発性胆汁性“肝硬変”といった病名を付けることは問題です。歴史上、この病気のため肝硬変に至った方が端緒となり発見されたため、当初付けられた病名「原発性胆汁性肝硬変」が現在まで変わりなく使用されてきました。しかし、現在、ほとんど健常人とかわらないくらい健康なPBC患者のいることが明らかになり、さらにそういった方の方が多いことも明らかになっています。にもかかわらず、未だにそういった方々に“肝硬変”の病名を使用しています。
 私自身、三鷹市民健康診査でPBCを疑ったとき、患者さんに「まったく無症状かもしれませんが、検査データから『原発性胆汁性肝硬変』という病気が疑われますので、追加で採血してはどうでしょうか?」と進言すると、皆一様に「肝硬変ですか!」と驚かれます。そのため、毎回原発性胆汁性肝硬変の歴史的な背景などをお話し、肝硬変でない方にも肝硬変という病名を使用していることをご説明しています。でないと、患者さんは検査結果が出るまでの間、不安な気持ちで数日間を過ごさなければならないからです。
 今回の講演会で演者の大平先生に、肝臓病学会で「原発性胆汁性肝硬変」の病名を改めるようにして欲しいとお願いしました。大平先生によれば同様の意見があり、原発性胆汁性肝硬変という病名はPBC患者像の実態と乖離しており、すでに「原発性胆汁性胆管炎」といった病名に改めようといった議論がなされているとのことでした。やはり、同意見の医師が少なからずいるようです。

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2015/02/03 
「インフルエンザを家族にうつさない方法」

 本日、三鷹市医師会館で開催された「デング熱・マラリア・新型インフルエンザについて」と題する川崎市健康安全研究所、岡部信彦所長の講演会に風邪を押して参加してきました。昨日午後より寒気を感じ始めましたが、予約制を布いている外来をドタキャンできず頑張って夕方まで通常通り診療を続けました。予約制は、患者さんをお待たせする時間が短くなるのはよいのですが、一方、私自身の具合が悪くとも休めないのが難点です。幸い開業以来7年余り大病もなく、一度も外来を休んではいません。しかし、医師会理事就任、災害時医療、防災などなどを任せられてから極端に睡眠時間が短くなり、かなり疲れが溜まっているのかもしれません。さらに昨日は強い寒気にも関らず、診療終了後さらに大急ぎで車に乗り、府中市にある都立多摩総合医療センターで開催された北多摩南部地域救急会議に出席してきました。体調不良で欠席も考えましたが、公務にて欠席するのは憚り、頑張って出席しました。帰宅の運転中、関節ががくがくするのを感じ、きっと発熱しているのだろうと思い、帰宅後早速熱を測ると38度でした。そのため食事もとらず水分だけ摂取し、10時には床に就きました。私の自己流風邪の養生法(医者がこんなことを言うのは変ですが)は、兎に角水分をたっぷり摂取、厚着をし布団をたくさん掛けてしっかり睡眠、十分発汗することです。しっかり発汗すると、大抵翌日にはかなり回復しています。実際今回も翌朝には解熱、完治とは行きませんが、かなり体調は戻っていました。ただ、翌日2月3日は月初のため毎月恒例のレセプトチェック(健康保険組合に提出する診療内容の記載された書類の内容確認)に加え、1月31日で終了となった三鷹市国民健康保険加入者の市民健康診査の結果報告書提出日が2月7日に迫っているため、昼休みも取らず書類作成に追われました。診療後先述の講演会のため残業出来ないことも予想されていたので、時間の遣り繰りに追われました。このように体調不良にも関らず業務が立て込んでいる場合、外来診療をドタキャンしない代わりに、予約患者さんのみ拝見、予約のない方の診療をお断りするようにしています。朝の診療開始時点で既に60人以上の予約が入っており、これ以上患者さんを受けると体調が戻らず、業務に支障が出て、結局より多くの患者さんの迷惑になると判断した場合の処置です。エレベータ前にある「本日都合により予約以外の患者さんの診療はお断りしています。」と書かれた立て看板見て帰られた方には大変申し訳ありませんでした。上述の事情を察しご容赦いただけると幸いです。なお、このようにいかなる事情があろうとも予約の患者さんをお断りすることはありませんので、極力予約をして受診されるようお願いします。
 さて、患者さんを制限し、風邪を押して参加した講演会でしたが、大変勉強になりました。デング熱、マラリア、新型インフルエンザのみならず、エボラ出血熱、SARS、MERS、鳥インフルエンザの最新情報を得ることが出来ました。また、2009年メキシコに端を発した新型インフルエンザが流行した折、航空機内で感染した方はすべて感染源となった患者さんの前後左右の座席に座っていた方でしたが、今回の講演で、2002年中国広州市に端を発したSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合もまったく同様で前後左右の隣り合った座席に座っていた方のみが航空機内で感染していたことを知りました。さらに、咳をしている患者さんの周囲で感染は発生しましたが、咳の無かった患者さんから感染する方はいなかったとのことです。これらの両ウイルス感染症は飛沫感染(咳やくしゃみ等による唾液のしぶきで感染する)しますが、この飛沫はせいぜい1m以内の至近距離でないと感染しないということです。このことを知り持論を再確認することができました。体積は距離の3乗に比例します。ですから、10cmの至近距離で咳をされるのと100cm=1mの距離で咳をされるのとでは、10×10×10=1000倍!、空気の中に含まれるウイルスの濃度が減少します。予てより私は外来診療中、インフルエンザに感染した患者さんから、「家族にうつさないためにはどうしたらよいですか?」と質問された場合、「2LDK以上の広さの家なら扉を占めて別の部屋にいて下さい。1ルームなら、互いに部屋の隅にいて少しでも離れていて下さい。互いにマスクをして咳やくしゃみによるしぶきを撒き散らしたり吸い込んだりしないようにして下さい。咳がまったく出ない場合、感染する確率はよほどそばにいない限りかなり低いです。咳やくしゃみが出る場合、頻繁に換気をしてインフルエンザウイルスの漂う空気を外気と入れ替えるのも有効です。」とご説明しています。今回、講演後岡部先生に上記の考えをご質問してみたら、まったく同様の説明も私もしますと賛同していただきました。もちろん、来院前に既に家族にうつしている場合は無駄ですが。
 先述の院長コラムのように今後B型インフルエンザが流行するかもしれません。感染時は家族に蔓延させないためにも上記の注意事項を励行していただければ幸いです。

2015/02/03 
「2015年2月3日今シーズンのB型インフルエンザ当院第1号が発生しました。」

例年より1ヶ月早いペースで流行していたインフルエンザは年末に峠を越え減少する様相(左図、東京都内定点医療機関あたり患者報告数の推移〜東京都感染症情報センターホームページより転載)を見せていました。これまで流行していたインフルエンザの99%がA型でしたが、当院では本日2月3日今シーズン始めてB型インフルエンザを検出しました。A型インフルエンザ流行の後半にB型インフルエンザが流行するのが例年のパターン(中図、全国の週別インフルエンザウイルス分離検出報告数〜国立感染症研究所ホームページより転載)です。都内でも12月よりB型が少数検出され始めています(右図、2014-2015シーズン東京都内型別インフルエンザ検出数〜東京都感染症情報センターホームページより転載)。今後B型インフルエンザの流行が始まるかも知れません。まだまだ、感染予防に留意して下さい

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2015/01/26 
「タケキャブ錠発売に伴うピロリ菌除菌治療の延期について」

平成27年2月末頃を目途に武田薬品工業からカリウムイオン競合型アシッドブロッカー「タケキャブ錠」が発売になります。この薬は従来プロトンポン阻害剤と呼ばれていた胃酸分泌抑制薬の新薬で、従来の薬剤(オメプラゾン、オメプラール、ネキシウム、タケプロン、パリエット)と比べ明らかに胃酸分泌抑制作用が強力です。これら胃酸分泌抑制薬は、主に胃や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの治療に使用されますが、さらに重要な役割としてヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療に使用されます。
ピロリ菌除菌治療では、2種類の抗生物質(菌の生育を抑える薬)とこの胃酸分泌抑制薬の合計3種類の薬剤を投与します。胃酸分泌抑制薬を投与する目的は、抗生物質は胃内の酸性の環境では効果を発揮しにくいため、胃酸分泌を抑制することにより胃内pH(酸性〜アルカリ性を表す指標)を中性に近づけ、抗生物質の効果を高めるためです。ちなみに、使用する抗生物質一つ、クラリスロマイシンは胃内pHを中性近くまで上昇させるとその作用は100倍以上増します。ですから、ピロリ菌除菌療法ではより強力な胃酸分泌抑制薬を使用するほど除菌成功率が増加します。
現在、ピロリ菌の一次除菌の成功率は、ピロリ菌の耐性化が進んだため、70〜80%程度に下がっています。一次除菌が失敗した場合、二次除菌を行いますが、その成功率は約90%程度です。ですから、現在、一次〜二次除菌療法で最終的に97%の方がピロリ菌の除菌に成功します。しかし、換言すると約3%の方は除菌に失敗します。現在、三次除菌療法のレジメンは学会等で鋭意研究されていますが確立されたものはありません。また、そのため保険適応が無く、挑戦するにしても自費で行わなければならず、治療費、検査代を含めると1万円前後掛かります。もちろん三次除菌も必ず成功するとは限らず、四次除菌を試みている医療機関もあります。
除菌成功率を下げる要因として薬の飲み忘れがあります。本来朝晩1日2回1週間服用しなければならない薬ですが、どうしてもたまに飲み忘れる方がいます。患者さんにとって薬を飲み忘れたことは主治医に言い出しにくい話ですから、正直に申告するとは限りません。ですから、医者はその実態を把握しにくいものです。医者が患者さんの薬の飲み忘れの実態に気付くのは、カルテに記載されている来院日と薬の処方日数とが合わず、薬が余っていると患者さんに言われたときです。余っている薬の数と日数から、大体どの程度の決められたとおり内服しているかざっと推測できます。このような現実を実感しているため、私はことピロリ菌除菌療法に関しては、しつこいくらい何度も「この1週間だけは必ず真面目に内服して下さい。飲み忘れて除菌が不成功に終わると取り返しがつきません。」と因果を含めます。その甲斐あってか、今まで当院では二次除菌療法で失敗した方は1人だけです。
ピロリ菌除菌の成否は、患者さんにとって将来の胃癌発症リスクを左右する大問題です。
また、ピロリ菌は唾液を介して我が子にも感染しますから、自分一人だけの問題にも止まらず、保菌者にとって心理面においても非常に大きな負担となっています。それだけに何としても除菌は成功させたいものです。
先述したように今回発売されるタケキャブ錠は、従来の薬品より明らかに胃酸分泌抑制作用が強力です。そのため、ピロリ菌一次除菌療法の胃酸分泌抑制薬に従来のタケプロンを使用した場合の75.9%に比べ何と新薬のタケキャブを使用した場合92.6%と著しく除菌成功率が増しています。また、同様二次除菌療法の成功率は、従来の90%に対し98.0%と明らかに改善しています。一次、二次除菌を積算すると成功率は約99.85%となり、ほぼ全員が成功するといっても過言ではありません。失敗する方は0.15%とこれまでの1/20に激減します。
ピロリ菌除菌は、早く実施すればするほど胃癌になる確率が低くなることが明らかになっています。どうせ除菌するなら出来るだけ早く除菌した方が患者さんにとってメリットは大きいです。一方、ピロリ保菌者の感染時期はせいぜい3歳までの幼少期であることが明らかになっています。ですから、例えば40歳で除菌療法を受ける方は既に約40年間ピロリ菌を胃で飼い続けていたことになります。そういった点を考慮すれば、除菌治療が1〜2ヶ月程度遅れてでも、必ず成功する治療薬を選択すべきだと私は考えました。そのため、2月末頃まで当院でのピロリ菌除菌療法を中断、タケキャブ錠発売後、タケキャブ錠を使用した除菌療法を再開することにしました。今後も患者さんにとって最大の利益となるような治療を提供できるよう研鑽を積んでいきます。

2014/12/14 
「糠味噌亭主」

 世に「糠味噌女房」という言葉があります。広辞苑では「家事に追い回されているだけで何の見栄えもしない妻」と記載されています。それほど糠味噌、つまりぬか床はどの家庭にもあたりまえのようにあり、毎日こなさなければならなかった家事なのでしょう。
 私は福岡県北九州市小倉(北区)の出身です。北九州の郷土料理はいくつがありますが、その中で知名度は高くありませんが、私の大好きな小倉名物が「鰯のぬか炊き」です。実家では「糠味噌煮」と称していましたが、ウィキペディアでは「鰯のぬか炊き」として掲載されています。ぬか漬が好きな諸兄にはおそらくたまらなく美味しい料理であること間違いありません。是非一度お試しを。詳しい調理法はCOOKPADをご覧いただくとして、この料理は、基本的材料であるぬか床を持っている家庭でなければ作れません。今頃、いったいどのくらいのご家庭でぬか床をこしらえているのでしょうか。ぬか床は日本が誇る発酵食品の一つですが、手入れが面倒な上、臭いがきついなどの理由から自作のぬか床を作っている家庭は激減しているようです。試しに当院スタッフ10人余りに質問してみましたが誰一人としてぬか床を作っていませんでした。最近は、既製品のぬか床が通販で販売されており、手軽に美味しいぬか床が手に入るため自作する方が減ったようです。そういえば昔、俳優の目黒祐樹は米国留学中、ぬか漬が食べたくてアパートの自室でぬか床をこしらえていたそうです。するとお隣の米国人から腐った臭いがするとクレームを言われたとTVのトーク番組で話していました。
 東京に住んで早25年鰯の糠味噌煮(左図)が食べたくて、妻にお願いし我が家オリジナルのぬか床(右図)をこしらえてもらっています。ぬか床は腐らせないため毎日かき混ぜる必要があります。また、よいぬか床を作るには塩加減もさることながら、昆布や山椒、唐辛子、ビール等を定期的に加え、長期間熟成させることが大事です。使い込めば使い込むほど漬けた具材の旨味が加わりますから、とにかく維持し続けることが大切です。まるで、鰻の老舗店でうん十年続いた秘伝のタレのようです。我が家のぬか床は妻のおかげで10年物となり、かなりいい味になっています。私もできるだけぬか床の手入れを手伝っています。出汁のとり終わった昆布を摘み食いするのもちょっとした楽しみです。ただ、なんといっても難点はぬか床特有の臭いが手に残ってしまうことです。風呂に入る前に手入れしたときは、シャンプーをつけた手で髪を洗うと、いい塩梅に臭いが消せます。厄介なのは風呂上りにぬか床の手入れをしたときです。なかなか臭いが消えず、翌日の診察時にも指先にほのかにぬか床の臭いが残っています。患者さんに気付かれないよう手にたっぷり消毒用アルコールジェルを付け、手もみしてもなかなか消えません。診察時に私の指先の臭いが気になった方は、このような事情をご察し下さい。
 昨今、「糠味噌女房」なる言葉はどう考えても死語です。むしろ「糠味噌亭主」(筆者注:「いまどき珍しいぬか床を混ぜる何の見栄えもしない夫」)なる言葉の方が実用的になるかもしれません。
 この料理、ぬか床で鰯を煮ることからわかるように、塩分はかなり多めで高血圧の方は要注意です。しかし、鰯に大量に含まれるDHA、EPAのω-3系多価不飽和脂肪酸をたっぷり摂取できるはずです。最近、サプリメントでも多数販売されているように、鰯などの青背の魚に多く含まれるDHA、EPAは血清脂質低下作用(コレステロールやトリグリセリド低下作用)、血液さらさら作用(心筋梗塞予防作用)、認知症予防効果などが報告され、話題となっています。とくにDHAの認知症予防効果は、「糠味噌亭主」には嬉しい限りです。詳細は、当院ホームページの脂質代謝内科の欄を御参照下さい。
(本原稿は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」に掲載された内容を改変の上、掲載しました。)

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2014/12/08 
「デング熱の危険を顧みず乳がん検診従事者講習会『検診でも診療でも役に立つマンモグラフィと超音波の総合判定の考え方』に参加してきました。」

 平成26年11月22日国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された平成26年度東京都がん検診センター第1回乳がん検診従事者講習会に参加してきました。今回のテーマは「検診でも診療でも役に立つマンモグラフィと超音波の総合判定の考え方」です。昨年度から超音波による乳がん検診、そして本年度からマンモグラフィ(MMG)による乳がん検診を本格的にスタートさせたことはご報告済みですが、とくに本年度より、三鷹市乳がん検診におけるMMG受託施設となり、大変多くの方々が受診しています。そのため、10月より不定期ですが午後もMMGを受検できる体制にしたところ一層受診者が増え、1日5人以上の日も珍しくありません。
 国が進めるがん検診推進事業では、乳がん検診は超音波検査でなくMMGで実施するよう定められています。それは、現在のところ、MMGによる乳がん検診しかその有効性が証明されていないからです。これは、超音波検査による乳がん検診に有効性がないと言っているわけではありません。現時点で、超音波検査による乳がん検診の有効性を証明する研究がなされていないためで、今後その有効性を証明する研究結果が発表されれば、国は超音波による乳がん検診を推進する可能性があります。当たり前ですが、厚労省はその公共性から、学識者によって広くauthorizeされた研究結果に基づく検診しか推進しません。ちなみに、現在、乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するため比較研究(J-START)が進行しており、近々研究結果が発表される予定です。公式発表前のため公表は憚りますが、内々の情報ではやはり超音波検査も乳がん検診において有効との結果が出ているようです。そのため、今後乳がん検診はMMGと超音波検査を併用する方向に進んでいくと思われます。今回の講演会はそういった動きを受けたものです。講演会では、MMGと超音波検査を同時実施した場合の総合判定の方法、考え方について、現在日本乳がん検診精度管理中央機構(略して、精中機構)が作成中のガイドラインに準拠した考え方について勉強しました。MMGだけによる検診では、異常があると後日専門医療機関に再度出向き精密検査を受けなければなりません。しかし、最初からMMGと超音波検査を併用すれば、その場でより精度の高い結果が得られ、不要な精密検査を受けなくてすみます。当院でも、MMGで異常が見つかった場合、まずは当院で超音波検査を受けていただいています。その結果さらに疑わしい場合、専門医療機関をご紹介し、精密検査を受けて頂いています。
 話し変わって、今回の講演会場の国立オリンピック記念青少年総合センターは代々木公園のすぐ隣にあります。代々木公園といえば、この夏デング熱で話題になった場所です。当院でも、代々木公園でバーベキューをしていて蚊に刺され、その後発熱した患者さんが9月頃来院しました。当然、デング熱を疑いましたが、結局デング熱ではなかったという一例を経験をしました。「デング熱の危険を顧みず」と大げさなタイトルを付けましたが、デングウイルスを媒介するヒトスジシマカの活動時期は5月中旬から10月下旬のため、現在ヒトスジシマカはほとんど死滅しており、デング熱に罹患する危険性はほぼ皆無です。11月27日、「最近話題の感染症」と題する防衛医科大学校感染症・呼吸器科川名明彦教授の講演会に参加、デング熱についても復習してきました。来年もまたデング熱が流行することは間違いないでしょうし、折角の機会ですので、厚労省が作成した「デング熱診療ガイドライン」を抜粋し簡単に纏めたいと思います。もちろん詳細は、ガイドラインを直接お読み下さい。

<はじめに>
 デング熱はアジア、中東、アフリカ、中南米、オセアニアで流行しており、年間1億人近くの患者が発生していると推定されています。とくに近年では東南アジアや中南米で患者の増加が顕著で、こうした流行地域で、日本からの渡航者がデングウイルスに感染するケースも多いです。一方、2013年8月、日本に滞在したドイツ人旅行者が帰国後にデング熱を発症したため、日本国内での感染が強く疑われていました。そしてついに本年8月27日及び28日、国内でデング熱に感染したと考えられた症例3例が確認されました。その後9月16日現在まで、新たに121例の患者が確認されています。これら124症例の大部分は、発症前2週間以内の海外渡航歴がなく、都立代々木公園周辺への訪問歴があり、同公園周辺の蚊に刺咬されたことが原因と判明しています。
 日本においてデング熱の媒介蚊となるヒトスジシマカの活動は主に5月中旬〜10月下旬に見られ(南西諸島の活動期間はこれよりも長い)、冬季に成虫は存在しません。2013年時点で、ヒトスジシマカは本州(青森県以南)から四国、九州、沖縄まで広く分布していることが確認されており、デング熱を疑う際には、臨床所見に加えて、地域のヒトスジシマカの活動状況やデング熱患者の発生状況が参考になります。

<デング熱の概要>
 デング熱はデングウイルスによって起こる熱性疾患で、感染源となる蚊(ネッタイシマやヒトスジシマカ)はデングウイルスを保有している者の血液を吸血することでウイルスを保有し、この蚊が非感染者を吸血する際に感染が生じます。ヒトがデングウイルスに感染しても無症候性感染の頻度は50〜80%と高く、大半が感染してもなんともありません。症状を呈する場合、比較的軽症のデング熱と重症のデング出血熱に大別されます。
 デング熱を発症すると通常は1週間前後の経過で回復しますが、一部の患者は経過中に、デング出血熱を呈し、このうち、デングショック症候群等の病態になった患者を重症型デングと呼びます。重症型デングを放置すれば致命率は10〜20%に達しますが、適切な治療を行うことで致命率を1%未満に減少させることができます。なお、1999年から現在までに日本国内で発症したデング熱患者で死亡者はいません。

<症状および検査所見>
 日本国内で診断されたデング熱患者の症状や検査所見の出現頻度を表1に示します。

表1、デング熱患者にみられる症状や検査所見
症状・検査所見 発生頻度
発熱        99.1%
血小板減少    66.4%
頭痛        57.6%
白血球減少    55.4%
発疹        52.7%
骨関節痛     31.1%
筋肉痛      29.1%

 3〜7日の潜伏期間の後に、急激な発熱で発症します。発熱、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などの症状が出ます。ただし、発熱以外の症状を認めないこともあります。発症時には発疹はみられないことが多いですが、皮膚の紅潮がみられる場合があります。通常、発病後2〜7日で解熱します。皮疹は解熱時期にでることが多く、点状出血(左図)、島状に白く抜ける麻疹様紅斑(中図)など多彩です。検査所見では血小板減少が認められ、白血球減少も約半数で見られます。またCRPは陽性化しても他疾患と比較すると高値にならないとの報告もあります。デング熱を疑う目安を表2に示しました。

表2.デング熱を疑う目安
海外のデング熱流行地域から帰国後、あるいは海外渡航歴がなくてもヒトスジシマカの活動時期に国内在住者において、Aの2つの所見に加えて、Bの2つ以上の所見を認める場合にデング熱を疑う。
(A)必須所見
1. 突然の発熱(38℃以上)2.急激な血小板減少
(B)随伴所見
1.皮疹2.悪心・嘔吐3.骨関節痛・筋肉痛4.頭痛5.白血球減少
6.点状出血(あるいはターニケットテスト陽性)

 血管透過性亢進を特徴とするデング出血熱は典型的には発病後4〜5日で発症します。この病態は2〜3日続き、この時期を乗り切ると2〜4日の回復期を経て治癒する。しかしながら、病態が悪化しデングショック症候群となった場合、患者は不安・興奮状態となり、発汗や四肢の冷感、血圧低下がみられ、しばしば出血傾向(鼻出血、消化管出血など)を伴います。デングショック症候群を含む重症型デングの診断基準を表3に示しました。

表3.重症型デングの診断基準
デング熱患者で以下の病態を1つでも認めた場合、重症型デングと診断する。
1.重症の血漿漏出症状(ショック、呼吸不全など)
2.重症の出血症状(消化管出血、性器出血など)
3.重症の臓器障害(肝臓、中枢神経系、心臓など)

 また、重症化のリスク因子としては、妊婦、乳幼児、高齢者、糖尿病、腎不全などが指摘されています。

<診断>
 デング熱患者の確定診断には、血液からのウイルス分離やPCR法によるウイルス遺伝子の検出、血清中のウイルス非構造タンパク抗原(NS1抗原)や特異的IgM抗体の検出、ペア血清による抗体陽転又は抗体価の有意の上昇、が用いられます。これらの検査法は、発病からの日数によって陽性となる時期が異なります。デング熱の鑑別疾患としては、麻疹、風疹、インフルエンザ、レプトスピラ症、伝染性紅斑(成人例)、伝染性単核球症、急性HIV感染症などがあげられます。
 右図に国内におけるデング熱診療の流れを示します。医師が患者にデング熱を疑う目安(表2)に該当する症状を認めた場合は、必要に応じて、診断に加えて適切な治療が可能な医療機関に相談または患者紹介します。デング熱疑い例を探知したが、医療機関でウイルス学的検査を実施できない場合、地域の保健所に相談の上、地方衛生研究所(地研)ないしは国立感染症研究所(感染研)に検査を依頼することができます。
 デング熱は感染症法で4類感染症全数届出疾患に分類されるため、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要があります。

<治療>
 デングウイルスに有効な抗ウイルス薬はなく、対症療法を行います。すなわち、水分補給や解熱剤(アセトアミノフェンなど)の投与等です。アスピリンは出血傾向やアシドーシス(血液の酸性化)を助長するため使用すべきではありません。また、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬も胃炎あるいは出血を助長することから使用すべきではありません。
1. 外来治療
 経口水分補給が可能で、尿量が確保されており、重症化サイン(表4)が認められない場合は外来治療も可能です。

表4.重症化サイン
デング熱患者で以下の症状や検査所見を1つでも認めた場合は、重症化のサイン有りと診断する。
1. 腹痛・腹部圧痛、2.持続的な嘔吐、3.腹水・胸水、4.粘膜出血
5. 無気力・不穏、6.肝腫大(2cm以上)、7.ヘマトクリット値の増加(20%以上)

 ただし外来で治療する場合も、経過中に重症化サインの出現の有無を慎重に経過観察することが必要です。経口水分補給ができない場合は、生食や乳酸リンゲル液などの等張液輸液を開始、数時間の輸液により経口水分補給が可能になったら、輸液量を減らします。通常、輸液は24〜48時間のみで十分です。
2. 入院治療
割愛します。

<予防>
 デング熱には現時点でワクチンがないため、予防には蚊に刺されないような予防対策をとることです。
 海外では、デング熱を媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカは、都市やリゾート地にも生息しており、とくに雨季にはその数が多くなります。また、これらの蚊は特に昼間吸血する習性があり、蚊の対策は昼間に重点的に行う必要があります。
 国内では、ヒトスジシマカが媒介蚊であり、昼間に活発に活動する。医療機関においては、デング熱患者が入室している病室への蚊の侵入を防ぐ対策も重要です。有熱時にはウイルス血症を伴うため、蚊に刺されないように患者に指導することが重要です。
 また、デング熱は患者から直接感染することはありませんが、針刺し事故等の血液曝露で感染する可能性があるため充分に注意します。また患者が出血を伴う場合には、医療従事者は不透過性のガウン及び手袋を着用し、体液や血液による眼の汚染のリスクがある場合にはアイゴーグルなどで眼を保護します。患者血液で床などの環境が汚染された場合には、一度水拭きで血液を十分に除去し、0.1%次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。院内感染予防のための患者の個室隔離は必ずしも必要ありません。

以上です。

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2014/11/25 
「第57回日本甲状腺学会学術集会に11月14日参加し甲状腺乳頭癌に関する重要な知見を確認してきました。」

 平成26年11月13日から15日にかけて、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生態情報科学講座教授岩谷良則大会長のもと大阪ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターで開催された第57回日本甲状腺学会学術集会に11月14日金曜日の診療を休診にして1日のみ参加してきました。3日間通して参加できればよかったのですが、毎度のことながら診療を3日間休むのはなかなかできません。しかも、先週11月7日金曜日は前橋で開催された日本乳癌検診学会に参加したため休診にしています。2週続けての休診は、最近のように100人前後が来院される現状を考慮するととてもできません。
 今回の大会メインテーマは「甲状腺学の未来を拓く」です。日本甲状腺学会は今回で第57回と大変歴史ある学会です。換言すると甲状腺学は医療の中でも古くから研究の進んでいた分野です。私が医学生だった頃、学んでいたさまざまな病気のうち、最も心躍らされた病気は、やはり日本人の名前がその病名に冠された病気です。例えば、橋本病(別名、慢性甲状腺炎、以下同様)、高安病(大動脈炎症候群)、川崎病(小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)、菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)等。医学生なら誰しも何時かは自分の名前が冠されるような新しい病気を発見したいといった名誉欲、功名心にはやったことがあるはずです。非公式なものも含めると日本の医学者の名前の付いた病名は40以上あるようです。ただし、自ら主張はしているが世界的に認められていないものがほとんどで、世界中で通用する病名は上述の4病名のみです。因みに、日本人以外も含め病名に名前の含まれる病気は200ほどあります。やはり、日本の医学がまだ発展していなかった時代に欧米の医学者の名前が冠されたものがほとんどです。最近は、新しく病気が発見されても、発見者である医学者の名前を冠さず、あくまでも病態を表した病名を付ける、たとえは「橋本病」ではなく「慢性甲状腺炎」とする、そういった傾向があるので、今後余ほどのことがない限り、日本人の名前の冠された病名は出現しないはずです。
 さて、その日本の医学者の名前の冠された4病名の中でも圧倒的に有名なのは、九州大学の橋本策先生が1911年に報告した橋本病です。世界中どの国であっても、医者なら橋本病の名前を知らない者はいません。「Hashimoto’s disease」といえば世界中の医者、誰もが知っている病名です。橋本病は日本人女性のおよそ10人に1人が罹患する病気です。それほど頻度の多い病気ですから、医者なら誰でも知っているわけです。珍しい病気の場合は、医者もその病名をなかなか覚えられません。ちなみに、橋本病に関しては現在ホームページ用の原稿を鋭意執筆中で、上梓次第アップします。
 日本のおける甲状腺学は橋本先生のような先達の医学者の存在、尽力もあり、その歴史的背景から非常に解明の進んだ分野で、全身の臓器の中でも最も研究、医療の進んだ臓器といっても過言ではありません。現在の甲状腺疾患の診断、治療法もほぼ半世紀前には確立、それが現在も脈々と続いています。換言するとこの50年間ほとんど変わらぬ医療が提供されているわけで、岩谷大会長は従来を上回るような革新的な治療法、予防法などがそろそろ開発されるべきではないかといった気持ちを今回のメインテーマに託したわけです。
 今回、わたしは今最も問題となっている偶発的甲状腺癌の取り扱いに関するセッションを中心に拝聴しました。甲状腺癌は乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌の四つに大別されます。その中でも乳頭癌は70〜80%を占め最多です。30〜60歳代、とくに若年層の女性に多く発症しますが、その増殖速度は大変遅く、2倍の大きさになるのに数年要することも珍しくありません。そのため大変予後がよく、1cm以下の小さなものなら100%近く完治するとのデータも出ています。甲状腺乳頭癌は、病理解剖で0.5〜5.2%という高頻度で発見されています。そしてその84%が直径1.5cm以下だったと報告されています。この頻度は臨床的甲状腺癌、つまり甲状腺癌が増大、転移し、医学的に治療をしなければならなくなった状態の癌、の約1,000倍です。
 一方、乳頭癌の2001年の発見頻度は米国では1973年の2.4倍と著増しています。とくに超音波検査診断技術の進歩した1980年代後半からの増加が著しいにもかかわらず、甲状腺癌の死亡率はまったく変化していません。
 以上のことを、換言すると「甲状腺乳頭癌は最大20人に1人が罹患するようなありふれた癌であるが、そのほとんどは悪性度が低く放っておいてもゆっくりにしか増殖せず、実際に治療が必要となるのは1,000人に1人程度しかいない。しかし、昨今の超音波検査技術の発達により、放っておいてもよいような小さな癌(3〜10mm)が頻繁に発見されるようになった」、ということになります。ですから、そもそも超音波検査で偶然発見されたような小さな甲状腺乳頭癌を治療する必要があるのか疑問が沸いてきます。上述の如く橋本病は大変ありふれた病気ですから、当院でも甲状腺超音波検査を実施する機会が頻繁にあります。ですから1cm以下の甲状腺乳頭癌は頻繁に見つかります。そのため、偶発的甲状腺乳頭癌の治療の必要性を明らかにすることとは臨床上の非常に大きな問題です。さらにいうなら、ほとんど増大しないような甲状腺乳頭癌を「癌」と呼ぶことが正しいのか、「患者よ、がんと闘うな」の著者として有名な慶応大学の近藤誠先生がいうところの「がんもどき」ではないのかという疑問です。なぜなら、医者から単純に「がんです」と告知された後の患者の自殺率は20倍に跳ね上がるという統計があります。「がんもどき」を「普通の癌」として患者に告知することは、患者さんに無用なストレスを負荷することになり、迷惑千万な話です。
 この問題に対して甲状腺専門病院である神戸市の隈病院では、1993年から世界に先駆け、転移がなく、細胞診で悪性度が低く、かつ気管や反回神経(反回神経は声帯の動きを調節しているため、傷つくと声が出にくくなってしまいます)への浸潤が疑われないような微小癌を年1〜2回程度の超音波検査のみで経過観察することを始めています。その結果、現在までの1,235例のうち、5年後、10年後に3mm以上大きくなったものは各々わずか4.9%、8.0%しかありませんでした。さらに新たにリンパ節転移したものは各々1.7%、3.8%しかありませんでした。さらに経過観察中に遠隔転移が出現した症例、経過観察後に手術して再発した症例は一例もなく、当然癌が原因で死んだ方は皆無でした。以上のことは、超音波検査で発見されたような微小な偶発的甲状腺(乳頭)癌で低リスクなものは、すぐに手術を行うのではなく、まずは経過観察して、増大傾向、進行傾向があれば手術するといった方針でまったく問題なく、実際手術が必要となるものもごく一部でしかないということです。甲状腺乳頭癌と診断され不要な手術を受けている方が多数いる現状は非常に問題です。
 私の某産業医勤務先の30歳代の女性職員の方から昨年、甲状腺乳頭癌について相談を受けました。その方は、従来橋本病を患っていて、都心にある有名な甲状腺専門の病院に通院治療されていました。定期検査で受検した超音波検査で直径数mmの乳頭癌が発見されました。当初は半年後の経過観察を指示されましたが、数ヵ月後治療方針が変わり、手術を受けました。幼いお子さんがいることもあり、その憔悴ぶりは見ていられないほどで、うつ気味になっていました。そのとき、甲状腺乳頭癌の過剰手術の問題を知っていたのですが、腫瘍の具体的な情報がありませんでしたから、やんわりと経過観察する方法もあると伝えることしか出来ませんでした。反回神経近くに浸潤していたのかも知れず断定はできませんが、隈病院に通院していたら経過観察になっていたかもしれないと思いました。当院でも甲状腺超音波検査を実施していますから、頻繁に甲状腺腫瘤は発見されます。検診により癌を早期発見することも大切ですが、無用な診断により患者さんに無用な不安を抱かせないこと、無用な治療を受けさせないことも大切なことだと再確認しました。このような患者さんを発見した場合、当院の診療理念の如く、最新の知見を提供し私自身が信じるところの最もよいと考える診療をご提案していきたいと思います。
 さて、今回の会場は、昨年JR大阪駅の真北にオープンしたグランフロント大阪の中のコングレコンベンションセンターです。東京の東京国際フォーラムに匹敵するスケールで、それにしても馬鹿でかいエレベータでした。橋下徹大阪府知事→大阪市長になってから大阪の勢いを感じていましたが、実感してきました。やはりHashimoto効果のようです。

2014/11/17 
「群馬県前橋市ベイシア文化ホールで開催された第24回日本乳癌検診学会学術総会に11月7日参加してきました。」

 平成26年11月7日から8日にかけて、渋川総合病院院長横江隆夫大会長のもと群馬県前橋市ベイシア文化ホールで開催された第24回日本乳癌検診学会学術総会に11月7日金曜日の診療を休診にして1日のみ参加してきました。2日間通して参加できればよかったのですが、毎度のことながら診療を2日間休むのはなかなかできません。しかも、翌週11月14日金曜日は大阪で開催される第57回日本甲状腺学会学術集会に参加のため休診にしています。2週続けての休診は、最近のように100人前後が来院される現状を考慮するととてもできません。例年11月はインフルエンザワクチン接種を希望される方だったり、職場健診で指摘された異常について精査や治療を希望される方だったり、流行り始めた風邪に罹った方だったり、外来患者数が急増する時期です。誤解を招かないよう申し上げると、風邪はインフルエンザではなく普通感冒です。インフルエンザはまだ流行っていません。インフルエンザは例年ですと年末から年始の頃流行し始めます。
 今回初めて日本乳癌検診学会の総会に参加しました。昨年後半、実質的には本年度より、新規に導入したマンモグラフィ(MMGと略します)(乳房レントゲン撮影)装置が稼動を始めました。初年度で十分周知されていないにも拘わらず、このペースで行けば年間500人以上の方が受検して下さりそうで嬉しい限りです。現在フィルムの読影は読影認定医資格を持った放射線科専門医に依頼し、認定医資格を持っていない私は自身の勉強を兼ねサブとして二重読影しています。ちなみに三鷹市乳がん検診では、各医療機関で読影約2ヶ月後、そのフィルムを三鷹市医師会が回収、さらに医師会内で読影専門医が読影しているため当院の場合3回読影していることになります。このように三鷹市乳がん検診は精度の高い検診といえます。未受診の方は是非受診して下さい。
 そういえば、学会では三鷹市医師会副会長の宇井義典先生と偶然お会いしました。宇井先生は三鷹第一クリニック院長ですが、三鷹市医師会で乳癌について最も学識豊かで臨床経験豊富な先生です。三鷹市乳がん検診もこの先生が責任者として仕切っています。私も乳癌に関する疑問があると、教えを乞うことが多いです。当院での乳癌診療は、あくまでも健診センターとしての検診であって、乳癌を疑われた方の生検による精密検査や治療は行っていません。検診により乳癌の可能性が否定できなかった場合、超音波による再検査で除外診断可能そうな方は当院で超音波検査を受けていただきます。しかし、むしろ乳癌を疑う場合は、杏林大学医学部付属病院武蔵野赤十字病院三鷹第一クリニックや受診者の希望される医療機関にご紹介しています。
 さて、今回総会に参加した目的は、認定医試験に向けた準備(学会開催中、MG Film Readingと題する模擬試験を想定した教育ブースが設けられていました)もありますが、遺伝性乳癌の基礎知識、考え方を整理することもありました。「遺伝性乳がんの基礎知識」「ハイリスク女性に対する検診をどうするか」といった遺伝性乳癌のセッションを中心に拝聴しました。
 乳癌の発生増殖には女性ホルモンであるエストロゲンが関与しています。ですから、体内のエストロゲンレベルを高くする要因が乳癌の危険因子になります。具体的には、
1、妊娠や出産経験がない
2、授乳歴がない
3、初経年齢が早い(11歳以下)
4、閉経年齢が遅い(55歳以上)
5、初産年齢が遅い
6、経口避妊薬ピルの内服
7、閉経後のホルモン補充療法
その他、
8、飲酒習慣
9、喫煙習慣
10、運動不足(運動により乳癌リスクが下がる)
11、乳癌家族歴、とくに一親等(親、娘)
12、高脂肪食の摂取(野菜、果物、食物繊維、イソフラボンはリスクを下げる)
13、高身長
14、閉経後の肥満(逆に閉経前の肥満者は閉経前の乳癌リスクを下げる)
15、良性乳腺疾患の既往、MMG上の高密度所見
16、放射線被曝
等です。
これらの危険因子の中で自分ではまったくどうしようもないのが乳癌家族歴です。
 日本では毎年約8万人以上の女性が乳癌に罹患し、約1万5千人の方が乳癌で亡くなっています。女性が罹患する癌で最も多いのが乳癌で、死亡は大腸癌、肺癌、胃癌、膵臓癌に次いで5番目に多い癌です。乳癌の罹患率、死亡率とも毎年増加しています。これは、上記の危険因子を御覧になれば判るとおり、昨今の出生率の低下、生活習慣の変化によるものです。乳癌と他の癌との際立った違いは、下図(国立がん研究センターがん情報サービスより)のごとく他の癌は高齢になるほど発症しやすくなるのに対し、乳癌は30歳代から増加し始め、40歳代後半にピークとなり、その後は徐々に罹患率が減少することです。閉経後に乳癌罹患率が低下するのは、エストロゲンの影響が減少するからです。
 全乳癌のうち約5〜10%が遺伝性乳癌です。みなさんは米国の女優アンジェリーナ・ジョリー(37歳)さんが乳癌予防のため両側乳房切除術を受けたとの2013年5月のニュース、記憶に新しいのではないでしょうか。遺伝性乳癌の原因として最も多いのがBRCA1/2遺伝子の変異です。この遺伝子は本来がん発症を抑制する遺伝子ですが、その遺伝子配列に変異が生じるとその機能を失い、BRCA1遺伝子変異を持つ米国女性の65%が、BRCA2遺伝子変異を持つ女性の45%が将来乳癌になります。ちなみにジョリーさんも、このBRCA遺伝子に変異があり、将来乳癌になる確率が87%と診断され、両側乳房切除術を受けることを決断したそうです。日本人の場合、BRCA遺伝子変異のある方の生涯乳癌発生率はもっと高く、約80%といわれています。この遺伝子変異のある方の乳癌は、若年発症、両側発症する傾向があります。この遺伝子は常染色体優生遺伝のため、男女に関係なく50%の確率で親から子供へ受け継がれていきます。ちなみに、ジョリーさんの母親は乳癌に罹患、56歳でなくなっています。男性にも遺伝しますが、男性の乳腺は女性より小さいため乳癌に罹患する確率は女性の1/100程度で、60〜70歳代になって発症する場合が多いようです。
 また、BRCA遺伝子変異は卵巣癌も発症させ、その確率は各々39%、11%です。ジョリーさんも卵巣癌発症の確率が50%以上とのことで、今後は卵巣も摘出する予定とのことです。ちなみにジョリーさんの母親は乳癌のみならず卵巣癌にも罹患、さらに母方の祖母も卵巣癌のため40歳代でなくなっています。卵巣癌を発症する確率は乳癌ほど高くはありませんが、乳癌より早期発見が難しいため予防的手術を受けるようです。
 このように乳癌、卵巣癌の両方を発症するため、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC;hereditary breast/ovarian carcinoma)と呼ばれています。ちなみにこのBRCA遺伝子変異の有無を調べる遺伝子検査は健康保険が使えません。自由診療のため定価がなく、20〜30万円が相場のようでした。
 遺伝性乳癌の家系を早期に発見し、発癌リスクを低下させるような生活指導を行いつつ、乳癌早期発見のための綿密な検診サーベイランス体制の構築が一部医療機関で始まっています。この家系を発見するには遺伝子検査を行えばよいわけですが、とても高額なため手当たり次第に女性全員を検査するような非効率的なことはできません。また、乳癌を発症させる遺伝子のすべてが解明されているわけではないので、遺伝子検査で異常がないからといって遺伝性乳癌ではないと断言できません。遺伝性乳癌拾い上げのための診断基準として、一般に
1、第1等近親者(親、子供、兄弟姉妹)に本人を含め3人以上の乳癌患者がいる。
2、第1等近親者に本人を含め2人以上の乳癌患者がいて、そのうち1人が以下の条件に該当する。
あ、40歳未満の若年発症
い、両側乳癌
う、他の臓器の癌を合併
え、男性乳癌
が利用されています。

 このような条件に合致する受診者がいた場合、遺伝子カウンセリング体制の整った医療機関にご紹介します。
 ところで、今回はじめて前橋市を訪問したのですが、群馬県や前橋市の関係者の方には失礼ですが、それにしても本当に寂れた感じの町でした。疲弊する地方都市を象徴するような町の雰囲気でした。参加前日の夜10時頃前橋に到着したのですが、夜歩くのを怖く感じました。昼間もシャッター通りのような通りもあり寂しく感じました。そのため県内富岡市にある富岡製糸場が「富岡製糸場と絹産業遺産群」として本年6月世界遺産登録が決まったことは群馬県にとって本当に朗報だったことでしょう。今回時間がなく訪問できませんでしたが、一度訪ねてみたいです。

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2014/11/04 
「宮崎シーガイアコンベンションセンターで開催された第35回日本肥満学会に10月24日参加してきました。」

 平成26年10月24日から25日にかけて、宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野教授中里雅光大会長のもと宮崎フェニックスシーガイアリゾートコンベンションセンターで開催された第35回日本肥満学会に10月25日土曜日の1日のみ参加してきました。
 前回の院長コラム「長女の花子が宮古島で開催された光の村養護学校トライアスロン大会で完走しました。」でご報告したように10月20日月曜日から24日金曜日まで長女の参加するトライアスロン大会(宮古毎日新聞記事)のエイド役(下図、伴走車に使用したレンタカー)として沖縄県宮古島東急リゾートに滞在、24日宮崎に移動、25日土曜日1日のみ参加しました。
 さて、今回の大会メインテーマは「肥満症学の知の創造と実践」です。最も拝聴したかったシンポジウム「肥満症と腸内環境」は朝9時からの開催でした。積年の課題、長女のトライアスロン大会が終わった虚脱感、喪失感からか、早く就寝したのに朝起きられず、聞き逃してしまいました。トライアスロン大会中は毎晩11時前には就寝、朝4から6時には起床していました。このコラムでも再々報告しているように、最近は明け方に就寝するのも珍しくない状況が続いていましたので、宮古島では大変健康的な生活をし、睡眠も十分確保できていました。しかし、やはり疲れが溜まっていたのでしょう。
 さて、上記シンポジウムを聞き逃した代わり、10時開催のワークショップ「実践的な肥満診療」を拝聴しました。この中で有意義だったのは「効果的な運動処方箋の実際」と題する福岡大学附置身体活動研究所田中宏暁先生のお話です。2012/06/19の院長コラム「サルコペニア(筋肉減少症)について」で筋肉減少症についてお話しました。この加齢による筋肉減少は、全身の筋肉に一律に起こるわけではないとのことです。どのような筋肉が減少するかというと、主に走ることに使われる筋肉だそうです。つまり、もともと人間は、しばしば〜常時走るように作られていたとのこと。確かに、約10000年前に農耕文化が始まる以前は、主な生計は狩猟でしたから、数百万年の人類の歴史上、そのほとんどを走ることによってのみ生計を立ててきたといえます。しかし、農耕文化が広がり、とくに交通機関の発達した現代において、加齢とともに歩くことはしても走らなくなり、走ることに使われる筋肉が専ら減少しているようです。ですから、ヒトのすべき運動は歩くことではなく走ることです。しかし、現実高齢者が走ることはいろいろと危険もあり無理もあります。そこで、推奨されているのがスロージョギングです。歩くことよりゆっくりなジョギングです。その詳細は、2009年6月10日放送のNHK番組「ためしてガッテン『脳いきいきダイエット 超らくジョギング革命!』」で詳しく説明されていますのでそちらを御覧下さい。このお話を聞いて自分も走りたくなりました。生活を立て直し、スロージョギングから始めてみます。そして、何れ、花子と東京マラソンに出場できるように頑張ります。
 私が宮崎を訪れた前週の週末、三鷹市医師会旅行でこのシーガイアを訪問、今回の宿、シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートに宿泊予定になっていました。しかし、生憎台風19号のため旅行は中止になりました。翌週に肥満学会で宿泊予定だった私は参加する予定ではありませんでした。実際宿泊してみて、確かに東京のホテルでは見られない広々としたつくり、10階建てビルに相当する吹き抜けなどスケールの大きさは相当なもの、高額なホテル料金もある程度納得できます。しかし、築20年とかなり設備は古めかしく、やはり料金が高すぎるように思いました。おそらく、フェニックスシーガイアリゾートの売りはやはり隣接の名門ゴルフコースですから、ゴルフ好きな方からすると納得の価格なのかもしれません。来年2月、三鷹市医師会では中止になった医師会旅行のリベンジ旅行を同じこのリゾートで計画しています。これから参加するつもりの先生方には申し訳ありませんが、私はパスさせていただきます。

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2014/11/04 
「長女の花子が宮古島で開催された光の村養護学校トライアスロン大会で完走しました。」

 平成26年10月21日から23日まで光の村養護学校土佐自然学園娘の通う秩父自然学園が合同で開催するトライアスロン大会(宮古毎日新聞記事)にエイド役として参加してきました。
 10月20日の宮古島市役所平良庁舎の表敬訪問に続き、21日はスイム3km(左図、写真の黄色の水着が長女の花子です。両端のがたいのいい男性が教師と花子の後ろに立っているのが女性教師)、22日はバイク155km(中図、ゴール後に伴走してくれた森先生と記念写真)、23日はラン42.195km(右図、ゴールする花子と仲間)が実施され、見事参加した全員(土佐校3名、秩父校7名)が完走しました。本物のトライアスロン大会は同一距離の3種目を1日で時間制限内に完走しなければなりません。花子は女子(花子以外の9人は全員男子です)で体力がない?上、高等部からの途中入学のため訓練期間が十分でなく、もう一人のダウン症の男子と二人、スイム1km、バイク70km、ラン30kmに短縮して挑戦、見事完走しました。とくにランでは30kmのうち20kmを泣きながら、伴走の先生や宮古島トライアスロンクラブのボランティア西村香織さんに叱咤激励され完走しました。西村さん本当に有難うございました。2年前の高等部入学時には、5mしか泳げず、三輪車も乗れず、400mしか走れなかった子です。最後のランで陸上競技場を一周しゴールのテープを切ったときには自然と涙がこみ上げてきました。この2年半の努力を大いに褒めてやりたいです。親馬鹿ですが自慢の娘です。
 花子がこの学校に入学する直前の体験学習会の様子を2012/03/02の院長コラム「一泊二日の光の村養護学校秩父自然学園体験学習会に行ってきました。」で記載しました。今、その文章を再度読み返しています。あのとき俄かに信じ難かった校長先生のお話が、こうして現実となり、花子をこの学校に通わせた私たち夫婦の判断は間違っていなかったと、確信することが出来ました。
 そのコラムで記載したように障がい児の教育方針にはさまざまな考え方があると思います。第一、一言で障がい児といってもその障がいは千差万別でそれぞれに適切な教育方法は異なるはずです。私たち夫婦は私たちなりの考えで花子にはこの教育が最も成長を促すものだと考えました。
 障がいを持ったお子様の親御さん、是非、子供の教育に光の村養護学校秩父自然学園をご検討下さい。身辺自立のための訓練はどのような障がいを持ったお子さんにも共通して必須な教育です。ですから、ダウン症であれ、自閉症であれきっとお子さんを大きく成長させてくれます。この学校の先生方は皆愛情を持って厳しく生徒たちに接してくれます。粘り強く教育してくれます。その姿に、親の私自身が自らの体たらくさを恥じるくらいです。この学校の先生方は皆情熱を持った本当に信頼できる先生方です。
 可愛い我が子を遠く離れた地に寄宿させること、とくに女の子であれば心配でなりません。病気の子を一時的にでも遠くに預けることに、親として後ろめたさを感じている方もきっといるはずです。しかし、その考え方は間違っています。今、親のあなたが優先すべきことは、後ろめたい気持ちになりたくないという自分のことより、成長という扉の前に立つ我が子にチャンスを与えることです。

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2014/11/03 
「当院休診時に1階の『えみた歯科』に問い合わせするのは止めて下さい。」

 平成26年10月20日月曜日から25日土曜日までご存知のように休診でした。この間、予約なく来院された方が2階の当院へ行こうとエレベータに乗り、2Fボタンを押すと「ランプの点灯しない階には止まりません。」とのメッセージが流れ、不思議に思ったようです。そのため、何人かの方が当ビル1階の「えみた歯科」を訪問し「どうして休診なのか」と質問、診療の妨げになり困ったそうでえみた歯科より対策を求められました。
 当院では、院長の急病や突然の公務など例外的な場合を除き必ず1ヶ月以上前から院内に休診の告知を掲示しています。因みに11月1日で開院7周年を迎えましたが、一度も病欠したことはありません。
しかし、2014/05/03の院長コラム「三鷹市医師会理事就任にあたってのご挨拶」に記載したように、理事就任後は1ヶ月後以内の急な公務を依頼されることがときどきあります。
 また、当院ホームページでも「休診・診療時間変更のお知らせ」のコーナーに必ず休診予定を掲載しています。さらに、受診時は予約するよう再々お勧めしています。予約していた時間が何らかの理由で休診となった場合、必ずその方には電話でご連絡し、無駄骨を折らせることのないようにしています。しかし、予約していない方には連絡しようがなく、ご自身で休診の有無を確認していただくしかありません。
 さらに、ビル1階のエレベータホールには当院の移動式の立て看板(左図)があり、診療予定=休診予定(中図)を掲示しています。
 当院ビル1階の「えみた歯科」は当院とはまったく無関係で、同じビルに入っているだけの関係です。
ですから当然ですが、当院の休診予定や理由を一々「えみた歯科」にお知らせしていません。予約なく来院し「どうして高松メディカルクリニックは休診なのか」と質問されても、「えみた歯科」さんは返答しようがありません。無意味な質問で頻繁に受付の方が呼び出されると、いちいち診療を中断しなければならず、迷惑です。
 当院休診時に1階の『えみた歯科』に問い合わせするのは止めて下さい。

 しかし、このようなお願いをホームページ上で行ってもあまり実効性がないのは容易に想像できます。そもそもこのコラムを御覧になっている方は、休診のお知らせをホームページ上で確認する術をお持ちのわけで、えみた歯科に問い合わせをする方は、おそらくホームページを御覧にならない方ではないかと思います。
 さらに、ビル1階のエレベータホールには当院の移動式の立て看板があり、診療予定=休診予定を掲示してはいますが、他のビル入居者の迷惑にならないよう休診中はビル入口、ガラス自動扉の裏に移動しているため休診の案内の掲示が見難くなっており、来院者には不親切だったかもしれません。
 今後は実効性のある対策として、1階エレベータホール、エレベータの前に右図のよに、予約なく来院された方全員が必ず気付くように「高松メディカルクリニックは○月○日から○月○日まで休診です。無関係なえみた歯科にお問い合わせするのは診療の妨げになりますのでお止め下さい。」との立て看板を追加で設置します。
 以上、ご協力を宜しくお願いします。

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2014/10/27 
「パシフィコ横浜で開催された第37回日本高血圧学会総会に10月17日参加してきました。」

 平成26年10月17日から19日にかけて、横浜市立大学大学院医学研究科病態制御内科学(循環器・腎臓内科学)教授梅村敏大会長のもとパシフィコ横浜で開催された第37回日本高血圧学会総会に10月17日金曜日の診療を休診にして1日のみ参加してきました。3日間通して参加できればよかったのですが、毎度のことながら診療を3日間休むのはなかなかできません。しかも、翌週10月20日月曜日から25日土曜日まで長女の参加するトライアスロン大会のエイド役として沖縄県宮古島に滞在、1週間休診することになっていたため2週連続の休診になってしまいます。その影響で16日木曜日には、インフルエンザの季節でもないのに外来受診者数が97人と過去最高となりました。通院患者さんから、何度となく「先生はよく休みますね。海外旅行ですか?」と厭味?っぽく質問されました。しかし、待合室に長蛇の列で並ぶ診察待ちの患者さん(電子カルテの画面では、診察室にいながら、待合室に何人の患者さんが待っているか判ります)のことを思うと、下手に事情説明しようものなら診察時間が長引きかねないため、ひたすら忍の一字で厭味を聞き流していました。せめてこのコラムを御覧頂いた患者さんは、私が事情を説明したくとも次に待っている患者さんのことを思い、誤解を甘受していることご理解下さい。出来うることならば、待合室で他の患者さんに「次に待っている具合の悪そうな患者さんのことを思い、松先生は無駄話しないようにしているらしい。」と私の気持ちを代弁してもらえると有り難いです。
 さて、今回の大会メインテーマは「高血圧診療・研究の原点と将来−心血管病の抑制を目指して−」です。これは高血圧診療の原点である「高血圧治療ガイドライン2014」が2014年に上梓されたこと、高血圧における交感神経系の役割が再評価されたこと、高血圧治療の目的、原点である心血管病の抑制へ向けたさまざまな討論の場としたいという大会長の思いを反映したものです。今回も十分な時間がありませんでしたが、希望した「よくわかる教育シリーズ」のうち「薬剤誘発性高血圧」「治療抵抗性高血圧の診断と治療法の実際」「女性の高血圧治療法」「腎血管性高血圧の診断と治療法の実際」の四つのセッションを拝聴することが出来ました。ただ、残念だったのはディベートセッションの「血圧の『基準値』を考える:日本高血圧学会の見解・日本人間ドック学会の見解」を聞けなかったことです。2014年5月14日の院長コラム「日本人間ドック学会が発表した高血圧基準範囲が誤って報道され困っています。」(その1)(その2)でもお話したように、本年4月4日日本人間ドック学会「新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会と健保連による150万人のメガスタディー」をプレスリリースしたことに端を発し、高血圧の基準値が変更になったとの誤報が日本中を駆け巡り、外来診療に大きな混乱をきたしました。この討論は、高血圧基準値の問題を総括するためセッションです。人間ドック学会の見解を述べた抄録を見る限り、人間ドック学会はプレスリリースする前に十分な配慮が不足していたと思います。詳細は、先述の院長コラムを御覧下さい。
 さて、先述の「よくわかる教育シリーズ」のうち「薬剤誘発性高血圧」について少し述べます。高血圧を主訴で来院される方に、時々見られるのが薬剤誘発性高血圧です。高血圧の中には本来高血圧でない方が、薬の副作用として血圧上昇をきたしている場合があります。こういった方を、本態性高血圧(遺伝的素因に塩分過剰摂取、運動不足、肥満、ストレス、過剰飲酒などが加わり高血圧を発症するもので、一般的な高血圧。これを通常略して、高血圧と呼んでいます)と誤診し、漫然と降圧剤を投与している例を時に認めます。血圧上昇をきたす薬物としては、非ステロイド性抗炎症薬(略してNSAIDと呼びます)、甘草の主たる有効成分であるグリチルリチンを含む漢方薬、肝疾患治療薬、健康食品等、副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイド等です。NSAIDは一般の方がいわゆる鎮痛剤として理解しているものです。アスピリンが主成分であるバファリン、イブプロフェン(商品名イブ)、ロキソプロフェン(商品名ロキソニン)等の名前をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。処方箋がなくとも薬局で購入することが可能な薬剤です。頭痛、歯痛、膝痛、腰痛等の関節痛、大概の痛みに有効です。腰痛等の持病で継続的に内服している方も珍しくありません。また、グリチルリチンは慢性肝炎や蕁麻疹などで使用しますが、やはり継続的に内服されている方は珍しくありません。さらに、甘草はさまざまな種類の漢方薬のうち、約7割に含まれています。ですから、漢方薬を継続的に服用されている方の約7割で、血圧上昇の可能性があります。このように血圧上昇をきたしうる薬剤は決して珍しくありませんから、高血圧で初診された場合、服用中の薬を薬手帳などで必ず確認する必要があります。でなければ、高血圧でない方に漫然と降圧剤を服用させることになりかねません。
 奇しくも学会に参加した翌日18日に薬剤誘発性高血圧と思われる方が来院されました。41歳のその方は、以前より健康診断で軽度の血圧上昇を指摘され、家庭血圧を測定していました。その値が122/92程度と極軽度なため、職場医務室の医師より、降圧剤を服用せず経過観察するよう指示されていました。当院初診6日前に喉の痛みを感じ、職場医務室を受診、咽頭炎の診断で抗生物質に加え、ロキソプロフェンを処方されました。その後5日間は135/100程度でしたが、ロキソプロフェンを毎日1日3回服用し続けたところ段々頭重感が出現、160/120まで上昇、当院を初診されました。血圧はストレスがあると上昇します。咽頭痛は大きなストレスです。ですから咽頭炎の存在が急激ない血圧上昇の一因となっていることは間違いありません。しかし、初診されたとき既に抗生物質が奏功し、咽頭痛は軽減していました。それにもかかわらず、血圧は160/120となっていました。御本人より、父親が高血圧性脳出血で倒れており、心配なので降圧剤を処方して欲しいとの申し出がありました。しかし、私は、ロキソプロフェンが急激な血圧上昇の一因となった可能性があり、咽頭痛が消失したのなら、まず、ロキソプロフェン服用を中止して、血圧値の推移を見てはどうかと進言しました。そして、宮古島から帰京する2週間後に来院するよう指示しました。私の見立て正しいか、今週再度診察するのを楽しみにしています。

2014/10/18 
「三鷹市医師会防災担当理事として三鷹市総合防災訓練メーン会場(大沢地区)での災害時医療救護所の設営、運営訓練を無事終えることが出来ました。」

 去る10月5日の日曜日午前10時から三鷹市立第七中学校で開催されたメーン会場での三鷹市総合防災訓練(大沢地区)に三鷹市医師会防災担当理事として初めて参加しました。1週間前に第四小学校で開催された駅前地区の防災訓練に続き2週連続の訓練です。10月7日の院長コラムでお話したような状況ですから、災害時医療救護所設営、運営訓練は初めての参加です。生憎当日は大型台風18号の影響でかなり強い雨となり、参加者数が例年の半分以下だったようです。台風シーズンに発災しないとも限りませんが、少なくとも高齢者の方は、足元の悪い状況で無理をして参加、怪我してしまっては元も子もありません。
 中学校庭で開催予定の訓練は大方中止となりましたが、医療救護所訓練は元々校舎内で実施する予定だったため、当初より多少の雨なら決行することになっていました。そのため予定通り、三鷹市医師会、歯科医師会、薬剤師会、接骨師会、助産師会、商工会と協力して設営、運営しました。
 今回の訓練には、三鷹市医師会からは、窪川良廣先生、高山俊政副会長、松ア正司先生、吉永陽子先生、若林研司会長、渡邉直幸先生(五十音順)、そして小職が参加しました。
 昨年までと異なり、本年度より三鷹市総合防災訓練は7住区(井の頭、東部、新川中原、三鷹駅周辺、連雀、西部、大沢)に分かれて9月から11月にかけ五月雨式に開催されます。10月5日には、メーン会場の他、新川中原地区の東台小学校でも同時刻に訓練が開催され、そちらには所澤安展先生、福島偉先生、古川秋生先生が参加しました。
 初めての救護所設営訓練、運営訓練であったことに加え、今回新しい試みとして、訓練に参加した市民の方に、模擬患者になってもらいトリアージ訓練も実施しました。
 一般市民の訓練開始時間は午前10時ですが、我々スタッフは午前9時より医療救護所設営訓練がありますから、午前8時30分に集合しました。第七中学はグーグルマップで見るとよく判りますが、周り何もなく畑〜雑木林の中にぽつんと孤立しています。発災直後周囲で出火しても類焼はなさそうです。誤解を招かないように確認しておくと、大沢地区の本来の医療救護所は大沢台小学校になっています。今回の訓練は、本来医療救護所が開設される大沢台小学校が被災し、建物が使用不能となったと設定されています。
 既に市民の方は十分理解されていると思いますが、三鷹市内で震度6弱以上の地震が発生した場合、三鷹市医師会、歯科医師会、薬剤師会、接骨師会、助産師会に所属する医療関係機関はすべて閉鎖となり、その施設の医療関係者は、市内7病院(医療拠点)または災害時医療球救護所に参集、災害時医療救護活動を行うことになっています。(左図)
 市内7住区の医療救護所は、
1、井の頭地区 第五小学校
2、東部地区 高山小学校
3、新川中原地区 中原小学校
4、連雀地区 南浦小学校
5、駅前地区 第三小学校
6、西部地区 井口小学校
7、大沢地区 大沢台小学校
となっています。
 また、市内7の医療拠点は、武蔵野病院、三鷹病院、篠原病院、野村病院、井之頭病院、三鷹中央病院、長谷川病院です。(中図、東京都医師会ホームページより転載)ちなみに、杏林大学病院は、東京都の災害拠点病院に指定されており、重症者を収容して高度医療を行います。よって軽症者の治療は行いません。
 歩けるような軽症の方は医療救護所へ、歩けないような重症の方は病院へ行くようにして下さい。
 発災直後、怪我をされた方にまったく情報がない場合、怪我の軽重にかかわらず、とりあえず市内7病院に患者さんが集中するのではないかと予想されています。そうすると7病院の機能がパンク、本来発揮するべき重傷者への治療ができません。予め出来るだけ軽症の方が病院ではなく災害時医療救護所を受診するよう周知徹底を図っているわけです。
 私にとって医療救護所設営、運営訓練はまったく初めてのためまごまごとしていると、高山副会長が手際よく会場設営の配置、参加スタッフの業務分掌を指示してくれました。来年からは、しっかりリーダーシップを発揮できるよう勉強させていただきました。次回、10月25日には、井の頭地区と連雀地区の訓練があります。生憎私は娘の学校行事であるトライアスロンのエイド役として10月20日から25日まで宮古島に滞在しているため、防災訓練には参加できません。まだまだ経験不足ですが、来年までの1年間でしっかりと力を付けていきたいです。

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2014/10/17 
「日本尊厳死協会〜リビング・ウイル」(その1)

 先月、日本尊厳死協会の担当者が来院、当院受付カウンターに置いてある協会作成の案内チラシ「いのちの遺言状」(左図、表)(中図、裏)の様子を写真撮影されていきました。そしてその写真が日本尊厳死協会会報の2014年10月号(右図)の表紙に使われました。(続く)

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2014/10/17 
「日本尊厳死協会〜リビング・ウイル」(その2)

 私自身は、大学院生だった約25年前に日本尊厳死協会の終身会員になっています。卒業し、研修医として救急医療に携わっていた頃、毎日のように人の死に接していました。その当時、患者さんがまさに臨終を迎えようとするとき、必ず心肺蘇生を実施していました。兎に角患者さんの命を一分一秒でも生き永らえさせること、それが医者の使命であると教育され、私自身もそう考えていたからです。皆さんもいろいろなところで心肺蘇生法、とくに「ABCD法」について見聞きしたことがあるのではないでしょうか。先日行われた三鷹市総合防災訓練でも、日本医師会が作成したABCD法のリーフレット(左図)が配布されていました。これは、あくまでも屋外など何もないところで救急患者に遭遇したことを想定した一般の方向けのリーフレットです。救急病院など医療設備の整った医療機関で実施するABCD法とは大分違いします。
 まず、「A」、Airway気道確保では、単に下顎を挙上、後頭部を後屈させ空気の通り道を確保するだけではなく、気管挿管(中図)といって直径1cm前後のチューブを気管内に挿入します。こうすることにより、確実に空気を肺に送ることが出来るようになります。「B」、Breathingでは、口を使った人工呼吸ではなく、AMBUバッグ(右図)を直接気管内チューブに装着し、バッグを握ったり放したりして換気〜呼吸をさせます。TV番組の手術時の映像で、患者さんの口から透明なチューブが出ている様子を御覧になったことあるのではないでしょうか。あのチューブが気管内チューブです。「C」、Circulation心臓マッサージは同じ方法で体力勝負です。「D」、Defibrillation除細動は、市中ではまったく医学的知識の不要なAED(自動体外式除細動器)を使用しますが、医療機関では、医師が心電図波形を見てその要否を判断し除細動器(DCショック)を実施します。さらに、「D」には、Drug薬品という意味もあります。心肺蘇生時、アドレナリン、アトロピン、メイロン等の強心剤等を使用します。
 さて、こういった心肺蘇生処置を受けると止まった心臓も大抵はまた動き始めます。旧来、人の死は三徴候(呼吸停止、心停止、瞳孔散大)によって定義付けられてきましたから、一旦死にそうになった患者さんもまた生き返ったようになります。しかし、大抵の場合は、もちろん意識もなく、家族と言葉を交わすこともありません。こうして再び動き始めた心臓は、人工呼吸器(何時間、何日間と医師がバックを押し続けることはもちろん不可能ですから)を装着、強心剤を持続的に点滴し続けると、どんな病気の方でも数日から1週間動き続けることも珍しくありません。大抵はICU(集中治療室)に入室、気管内チューブ、中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル数本、動脈カテーテル、尿道カテーテル、心電図モニターの電線その他さまざまなチューブが全身に挿入され、いわゆるスパゲティー症候群の状態になります。スパゲティー症候群での数日、確かに心臓は動いていますが、脳死状態だった方も多数いたはずです。当時、脳死という言葉は存在しましたが、その定義は曖昧ですし、もちろん判定基準も作成されておらず(日本で脳死判定基準が確立したのは1997年です)、「脳死≠人の死」との考え方が一般的でした。ですから、研修医の私としては、医師として瀕死の患者さんを精一杯治療しているという誇りと使命感で一杯でした。
 ここで注意して欲しいのは、上述の心肺蘇生処置後のシナリオはすべての病気に共通ではありません。心臓発作による一時的な心配停止のように心肺蘇生により快復、元気に歩いて退院することもある病気もあります。一方、癌や神経難病の末期のようにたとえ心肺蘇生で心拍が再開しようと何れ近々再停止が免れない病気もあります。ですから、心肺蘇生がすべて徒労なわけではありません。
 さて、そんな生活を3年余り続けていくうちに、自分のやっていることが本当に患者さんのためになっているのが段々疑問を持つようになっていきました。確かに、一度止まった心臓がまた動き始めたときの家族の歓喜に満ちた面持ちに医師としての充実感、達成感を実感することができました。しかし、スパゲティー症候群が1週間続くうち、毎日毎日チューブだらけの肉親を見る家族の目が、期待感から悲しみ、苦しみに変わっていくのを容易に感じとることができました。患者さんの基礎疾患が上述のような癌や神経難病の末期、重症の脳出血などの場合、主治医の私の口からは、「もって後数日だと思われます。」「また家族の方とお話できるようになることは99.9%ないと思います。」「医学的には生きている状態ですので治療に全力を尽くします。」という絶望的な言葉しか語られないのですから、期待できなくなるのも当然です。「医学的」に生きているということは、換言すれば、家族など一般人的には死んでいるのも同然ということです。このような医療が、患者さんのために本当になっているのか疑問を持ったとき、先輩医師からは「これはセレモニーなのだ。この1週間があるから家族は肉親の死を受け入れられるようになるのだ。」と諭されました。確かに、昨日まで元気で会社に行っていた夫が、交通事故で突然瀕死の状態になったとき、その死を受け入れるのは容易なことではありません。「99.9%無理」という医師のことばを、妻は「0.1%可能性がある」と理解することでしょう。その理解が「99.9%無理」という理解に変わるにはある程度の時間が必要なのだと思います。しかし、人の死の中には予定された死もあります。癌や神経難病などで余命半年、1年と宣告された場合等です。こういったケースでも、病室で患者さんの心臓が止まったとき、当時、変わらず心肺蘇生を実施していました。そして人工呼吸器を装着、数日延命した後心臓が再度停止、死亡宣告をするといったことを繰り返していました。この医師としてのルーティンワークを全力で取り組めば組むほど、反動的に喪失感が増幅されていきました。このことが、救急医療を離れ、大学院で研究することになった一因でもありました。臨床の現場を離れたとき、一人の人間=患者として、何の迷いもなく日本尊厳死協会の会員になりました。
 確かに尊厳死に対しては一定の反対意見があるのも確かです。99.9%無理は100%ではありませんから、最後最後まで諦めない姿勢こそが医師の使命であり、尊厳死を認めることは職場放棄という考え方もあります。とくに最期の1週間の終末期医療に多額な医療費が費やされることを抑制しようとする厚生労働省の意図もあり、国家の医療費を助かりそうな人に回し、絶望的な人には使わないという考えは、いのちの選別に繋がる可能性もあります。ですから、私として尊厳死を希望する私が正しくて、希望しない人が間違っているなどという考えはありません。他人はどうであれ、せめて自分の最期は自分で決めたいという思いだけです。最期のときは、数十年の人生のうち、ほんの数日のことなのですから。

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2014/10/13 
「向精神薬多剤投与制限について」

 平成26年度診療報酬改訂に際し、平成26年10月1日より精神科を標榜する医療機関(メンタルクリニック等)の医師以外は、1回の処方において、3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬の投与(向精神薬多剤投与)が実質的に制限されることになりました。当院は精神科を標榜していませんし、精神科専門医でもありませんので、制限の対象となります。対象となる薬剤は下表のようなものになります。そのため、平成26年10月1日以後は、厚生労働省の定める例外事例を除き、上記規定に抵触する処方はいたしません。上記向精神薬の多剤投与が必要と判断された場合、ご相談の上適切な精神科標榜の医療機関にご紹介します。

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2014/10/07 
「防災担当理事として三鷹市総合防災訓練の初仕事を無事終えることが出来ました。」

 去る9月28日の日曜日、三鷹市立第四小学校で開催された駅前地区三鷹市総合防災訓練(下図)に防災担当理事として初めて参加しました。防災担当理事は今春拝命しましたので、今秋が最初の総合防災訓練です。昨年までと異なり、本年度より三鷹市総合防災訓練は7住区(井の頭、東部、新川中原、三鷹駅周辺、連雀、西部、大沢)に分かれて9月から11月にかけ五月雨式に開催されます。9月6日に開催された東部地区防災訓練では、医師会に協力要請がなかったため、実質的に9月28日の駅前地区防災訓練が今秋最初の訓練となりました。今回の訓練には、秋山千枝子先生、菊池健先生、品沢聡先生、土屋正己先生、松ア正司先生(五十音順)が参加されました。
 私は開業7年目になりますが、それ以前は約15年間野村病院に勤務していました。野村病院時代は毎年開催される院内の防災訓練に参加していましたが、開業後は開業1年目に自院のある駅前地区の三鷹市立第三小学校で開催された総合防災訓練に一度参加したきりでした。うろ覚えですが、その防災訓練には品沢聡先生、高山俊政先生、三木孝師先生、松ア正司先生が参加していたように記憶しています。そして訓練内容は、今回同様、三鷹市災害時医療体制やトリアージの説明だったと記憶しています。勤務医時代は大震災が発災すれば、自身が勤める病院に行きさえすればよいだけのことですから、その当時、三鷹市の災害時医療体制に関する知識など全くなく、先輩諸先生方の説明をただただ拝聴するだけだったと記憶しています。
 今春、まったく基礎知識のないまま防災救急対策委員会のメンバーでもない私が防災担当理事を拝命、付け焼刃で防災の勉強を重ねてきました。理事となり頻繁に開催される防災関連の会議、講演会に参加、急速に防災関連の知識が豊富になっていくのを実感しています。しかし、それは取りも直さず、今までまったく防災について無知だったということです。見方を変えれば自業自得、勉強する機会を与えていただいたと捉え鋭意取り組んでいます。
 そもそも福岡出身の私は、30歳で上京するまでほとんど地震を経験したことがありませんでした。上京後、頻繁に発生する地震に最初はおっかなびっくりでしたが、何時の間にか慣れっこになっていました。そして私にとっての防災訓練は、ただ形式的なもの、恒例の年中行事、ルーティンでしかなくなっていました。しかし、3年前に東北大震災、加え福島第一原発事故を経験、強い危機感を持つようになりました。私の存命中か否かは別にして、何れこの東京に大震災が発生することは疑いようがありません。「備え有れば患い無し」防災訓練に本気で取り組むようになしました。
 さて、今回の訓練に参加して下さった先生方は日頃より防災意識の高い先生方ばかりです。ですからこそ訓練に参加されているわけです。訓練開始に先立ち、当日の段取りをご相談すると、例年の経験を踏まえ、松ア先生や品沢先生が手際よく準備、アドバイスしてくれました。訓練が始まると真っ先に松ア先生が訓練に参加した市民への説明役を買って出てくれました。続いて説明役を買って出てくれた品沢先生も松ア先生同様、「立て板に水」時折冗談や経験談を交えながら分かりやすく三鷹市災害時医療体制やトリアージについて説明、訓練参加者の質問に丁寧に答えてくれました。聞くと両先生とも10年来毎回参加、説明する内容も完全に頭の中に入っているとの事でした。一方。私はその横でトリアージの説明が書かれたパネルを高く掲げ、耳学問で一夜漬けならぬ10分漬けの勉強をさせてもらい、両先生に続き、たどたどしい話し方ながらも何とか訓練参加者に説明することができました。今回防災担当理事として無事防災訓練の初仕事を終えることが出来たのも、訓練に参加、協力して下さった先生方の御陰です。改め御礼申し上げます。
 防災訓練終了後、同日午後は日比谷公会堂で開催された平成26年度東京都薬局災害対策講習会に参加、また防災漬けの一日となしました。この1年精進を重ね防災のプロフェッショナルを目指します。(本原稿は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」平成26年11月号の原稿を改変、転載したものです。)

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2014/09/16 
「三鷹八幡大神社例大祭」

 平成26年9月13日土曜日から14日日曜日にかけて三鷹市内各所で三鷹八幡大神社例大祭がありました。私の所属する南銀座商店街でも例年お神輿が出ます。開院当初一度だけ担いだことがありますが、その後は学会などとバッティングしてなかなか参加できません。本年も防災訓練の準備で参加できませんでしたが、お祝いだけは届けることが出来ました。南銀座会の半纏を着て、会場のNTT三鷹ビルの駐車場でアライ薬局の荒井正雄南銀座会会長にお祝いを渡してきました。折角ですので、私同様残業するスタッフに記念写真(下図)を撮ってもらいました。来年こそ参加したいです。

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2014/09/07 
「福岡国際会議場で開催された第55回日本人間ドック学会学術大会に9月4日参加してきました。」

 平成26年9月4日から5日にかけて、福岡赤十字病院 病院長寺坂禮治学術大会長のもと福岡国際会議場で開催された第55回日本人間ドック学会学術大会に参加してきました。水曜日午前診療を終えた後、木曜日終日クリニックを休診にして参加してきました。休診中、30件以上電話転送で携帯が鳴りましたが、幸い通院中の方の急変はなかったようでホッとしています。今回の大会テーマは「福岡発 平成の養生訓〜Lessons for the Nation〜」です。
 誤解を恐れず申し上げれば、人間ドック学会の講演には新知見が少なく、他の学会の焼き直しの内容が多いため、残念ながら医学的にはexciteすることが少ないのが現状です。ですから、やはり、人間ドック学会ならではの内容、他の学会では聞けないsessionの講演を例年拝聴するようにしています。
 さらに、2014/05/14の院長コラム「日本人間ドック学会が発表した高血圧基準範囲が誤って報道され困っています。」でもご報告したように、不用意な発表によって現場を混乱させたプレスリリースに関するセッションがなかったのも残念でした。あれほど大問題になったのですから、しっかりと総括していただきたかったです。
 しかし、そういった中、九州大学病院前病院長久保千春名誉教授の基調講演「病気は素因と人生体験の結晶−心身医学の立場から−」は大変感銘深いものでした。久保先生は、九州大学医学部心療内科教授から大学組織改組に伴い九州大学大学院医学研究院心身医学教授となられた方です。九州大学心療内科といえば、日本の心療内科の草分け的存在である故池見酉次郎九州大学名誉教授の著書「心療内科」(中公新書)を30年以上前の学生時代にexciteしながら熟読したのを覚えています。このとき、ヒトの病気は、心と身体が密接に関連しあって発症することを知りました。病気は素因(遺伝的体質)と生活習慣を重ね合わせた結果として発症することを、診察室で私は患者さんにお話しています。しかし、後天的因子としては、単なる生活習慣のみならず、

病気=素因(遺伝的体質)
+環境因子(細菌やウイルス等の微生物、放射線、排気ガス、紫外線、気温)
+生活習慣(食事、睡眠、運動、喫煙)
+身体的要因(年齢、性別)
+心理的要因(生き方、考え方、人生経験)
+社会経済的要因(収入、勤務時間、家族構成、景気、政治、行政施策、治安等)

というように、より広範囲な要因、というより患者さんを取り巻く周辺のすべて、患者さんの過去の歴史、人生経験が病気の発症に影響しています。
 今回のメインテーマ「養生訓」(左図)は江戸時代の福岡藩の藩医、貝原益軒(右図)が1713年に上梓した健康な暮らし方の解説書です。原文は、福岡県にある中村学園大学のホームページで読むことができます。また、その現代語訳もWeb上(森下ジャーナル)で読むことができます。さっと斜め読みしてみましたが、どれも的を射た内容が数百も並んでいます。お時間のあるとき是非お読みになって下さい。診察室での舌足らずな私の説明より、よっぽど皆さんの健康に寄与しそうです。第二巻の中に、「養生訓の要点」が書いてありますので転記します。
「養生の道は多言を必要としない。実行することは、大食せず、体に悪いものを食べず、色欲をおさえ、悩み事をなくすことである。心を平静にし、言葉を少なくし、まわりの環境に合わせた生活をし、適度な運動を行い、食後にすぐ寝ないように心がけることが大切である。」
 健康的な生活は今も昔も変わらないようです。

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2014/08/03 
「2014年7月27日日本アレルギー学会主催の舌下免疫療法講習会に参加、舌下免疫療法を始められる体制になりました。」

 2014年3月25日の院長コラム「スギ花粉症に対する舌下免疫療法について。当院では本年6月から始めません。」でご報告したように、舌下免疫療法はアナフィラキシー等の重篤な副作用の可能性があるため、厚労省の指導により「舌下免疫療法講習会を受講し、確認試験に合格した医師のみ舌下免疫療法薬を処方できる」ことになっています。昨年11月開催された第63回日本アレルギー学会秋季学術集会、本年5月京都で開催された第26回日本アレルギー学会春季臨床大会に参加、講習会を受講するつもりでいましたが、タッチの差で定員に滑り込めませんでした。しかし、2014年6月27日の院長コラム「スギ花粉症に対する舌下免疫療法は、日本中どの医療機関でも10月以降でなければ始まりません。」でご報告したように日本アレルギー学会主催の7月27日(日曜日)東京国際フォーラムで開催された舌下免疫療法講習会に無事参加、講習を終了することが出来ました。受講証明書が郵送されてくるのは9月初旬予定です。その後その受講番号を使いe-ラーニングを受講、試験に合格すると晴れて処方資格が得られます。ただ、気懸かりなのが、アレルゲン免疫療法薬「シダトレン」発売の遅れです。既にご報告したように2014年1月スギ花粉舌下液のシダトレンの製造販売承認を取得した鳥居薬品は、5月に薬価収載(保険診療時の薬品の価格表)を予定していました。しかし、薬価について厚労省と調整がつかず(鳥居薬品が希望するような薬価を厚労省が認めなかった)、5月薬価収載を見送っています。現在、10月以降の発売に向け調整を行っており、結局、日本で舌下免疫療法が始まるのは本年10月以降にずれ込むことになっています。
 来年1月頃から始めるスギ花粉症に対応するためには10月頃から舌下し始めなければ間に合いません。今回、折角舌下免疫療法の講習会に参加できたのですから、来シーズンのスギ花粉症に向け、何としても10月からシダトレンを販売してもらいたいものです。

2014/08/03 
「2014/02/10の院長コラム『三鷹市民の皆さん、平成26年度より三鷹市が実施するすべてのがん検診が有料になります。抗議の声を上げて下さい。』を削除しました。」

 2014年2月10日の院長コラム「三鷹市民の皆さん、平成26年度より三鷹市が実施するすべてのがん検診が有料になります。抗議の声を上げて下さい。」を不本意ながら諸般の都合により削除しました。諸般の都合はご説明できません。三鷹市医師会において、行政職の最大の理解者と自任していただけに残念でなりません。
 その内容に私自身不備を感じませんでしたし、直接何等抗議も頂いていませんでした。内容に異議あれば直接お問い合わせいただき、議論したかったです。もちろん、読み物ですからある程度扇情主義的な表現があったことを否定しません。しかし、記述内容に関して間違いはなく、その事実をどう捉えるか、どのように考えるかいろいろな立場でいろいろな意見があって当然で、互いに意見を戦わせ理解を深めることが出来ればよかったのですが、叶わず残念です。
 私は、トップページの医院紹介や「医師のご紹介」のページに記載したように、山口大学を卒業後は、市中病院で研修医として臨床研修、とくに救急医療に携わってきました。3年間余りの研修中、1987年ノーベル生理学・医学賞を日本人で初めて受賞した利根川進博士の「Tonegawa S. "Somatic generation of antibody diversity." Nature. 1983 Apr 14;302(5909):575-81.」という受賞論文を読み感動、自分も基礎研究をしたいと思い基礎医学の大学院に進みました。当時の基礎研究は、小保方さんの研究不正問題で取り沙汰されたような厳しい研究競争はなく、比較的自由な雰囲気で研究していました(それでも実験ノートが2冊などありえない話です)。時間に余裕もあり、基礎研究の根源的な問題を考えるうちに視点と興味が広がり、イデオロギー、政治、経済、哲学の勉強まで始めてしまいました。特にその当時(25年前)始まったテレビ朝日の「朝まで生テレビ」の熱心な視聴者となり、FAXで私見を送ったりしていました。因みに思想、経済システムとしてフリードリヒ・ハイエク(1974年ノーベル経済学賞受賞)を信奉し、人間としては坂口安吾が最も好きです。
 私は、お役所仕事、事勿れ主義、前例主義、官僚主義が嫌いです。しかし、それらを担うお役所の方々は嫌いではありません。それは、私も役所という職場に就職すると否が応でもそれらに陥りがちなことを知っているからです。役所で働いている方々は何等特殊な方々ではありません。私のような民間で働く人間と何等変りません。ただ、税金を収入源として運営されているという経営構造ゆえ、生活を豊かにする≒事勿れ主義となりがちなだけです。役所の隠語に「休まずサボらず働かず」という言葉あると聞いたことがあります。「親方日の丸」の職場環境ではだれもがそういった働き方になりがちなのです。
 職場環境の違いこそあれ、どのような職場にもいろいろな人がいるのは同じ、真面目で熱心な人もいれば不真面目で不熱心な人もいます。特別役所に不熱心な人が集まっているわけではありません。むしろそのような職場環境にもかかわらず、三鷹市職員には、他自治体と比べ強い正義感、自制心、勤労意欲で地域住民の暮らしを守っている方々が多いと私は感じており、頭が下がる思いでいます。
 「私のような民間で働く人間」と上述しました。しかし、これは正確ではありません。私の生業、医療のうち保険診療や国策としての予防接種は、国による明確な価格統制があります。ですから、計画経済、統制経済下にあります。資本主義、自由主義経済国家日本にあって、数少ない統制経済の布かれた分野です。そしてその財政基盤、医業収入の1〜3割は受診者本人に窓口で直接支払ってもらいます(自己負担)が、残り7〜9割は後々公的医療保険から支払われます。公的医療保険は国民の保険料が主たる財源ですから、我々医療人も7〜9割方役人なのです。私自身このこと肝に銘じて診療に当らねば、行政批判をする資格がありません。
 清原慶子市長をトップとして三鷹市は市民の参加と協働による自治体運営を進めています。この考えに私も賛成です。医療機関も行政と協働して三鷹市民に対して良質な医療サービスを提供できる体制を構築していかなければなりません。ただ、私の考える「協働」は一定の緊張感の下、力を合わせたり批判しあったりするものでなければならないと思っています。馴れ合いの関係であってはなりません。互いの評価や批判を受けいれる姿勢でなければならないと思っています。

2014/07/29 
「平成26年度の三鷹市の高齢者肺炎球菌ワクチン接種費用助成事業について」

 2013/07/13院長コラム「三鷹市がやっと高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種費用助成事業を始めました。」でご報告したように2013年7月から始まった三鷹市の高齢者肺炎球菌ワクチン接種費用助成事業が本年度も継続されます。
 申込期間は5月19日から9月26日迄で、先着1,000名までとなっています。接種期間は6月1日から9月30日迄です。助成対象者は本年度4月1日時点で65歳以上の三鷹市民で、5年以内に肺炎球菌ワクチンを未接種(肺炎球菌ワクチンは5年間効果が持続する上、また5年以内に再接種すると副反応が強く出る可能性があるため)の場合です。以前お話したように、都内全ての自治体において公費助成制度がありますから、三鷹市以外にお住まいの方は、各々地元の役所にお問い合わせ下さい。
 自己負担額は5,000円です。助成のない場合、当院では8,110円です。他の医療機関も8,000円前後のようです。いずれにしても自己負担5,000円で接種できます。
 ここで少しはなしがややこしくなってくるのが10月1日以降です。三鷹市は助成制度を終了しますが、一方、10月1日以降、国策として高齢者肺炎球菌ワクチンは定期接種化(B類疾病として、高齢者インフルエンザワクチンと同じ扱いになる)され、まったく同額5,000円で接種できるようになります。ならば、あわてて先着1,000人に滑り込まなくとも、10月1日以降ゆっくり接種すればよいのではと思われがちですが、国の制度には三鷹市の制度にないいくつかの制限つけられる予定です。具体的には、

一つ、対象者が平成26年度中に、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳以上に到達する方。換言するとこの5歳刻みの間に位置する年齢の方は、例え65歳以上でも接種できません。この制度はこの条件で5年間継続、6年目から65歳に到達する方だけを毎年助成する予定です。ですから、例えば本年度86歳になる方は、4年後に90歳となるまでは助成を受けられません。3,000円ほどの助成のため86歳から90歳になるまでの4年間、肺炎になるリスクを放置するのは、ナンセンスではないでしょうか。
二つ、過去に肺炎球菌ワクチン接種歴のある方は、たとえ前回接種から5年以上経ていようとも対象外です。あくまでも初回接種のみの助成です。

以上をまとめると、対象者は以下のように判断するのがよいのではないでしょうか。

1、過去に接種歴のない方で、4月1日時点で65歳以上である方は、三鷹市の制度を利用する。
2、過去に接種歴のない方で、4月1日時点で65歳未満だが本年度内に65歳となる方は、10月1日以降の国の制度で接種する。
3、過去に接種歴のある方で、前回接種から本年9月30日迄に5年以上経過する方は、三鷹市の制度を利用する。
4、過去に接種歴のある方で、前回接種から本年9月30日迄に5年以上経過していない方は接種できない。

 となります。そうすると唯一「過去に接種歴のある方で、前回接種から本年9月30日迄に5年以上経過していない方」は公費助成が受けられないことになります。このうち、昨年の三鷹市の制度を利用されて接種した方は、既に一度助成を受けているのですから不利益を被ったとはいえません。しかし、前回全額自己負担で接種した方は、一度も助成制度の対象者とならなかったことになり不公平です。このような助成制度を制定する場合、出来るだけ万人に公平な制度となるよう配慮すべきだと思います。因みに、国の制度では、「過去に予防接種歴ある方を対象外」とするのではなく、「過去に予防接種助成歴のある方を対象外」とすべきだったのではないでしょうか。想像するに過去の助成歴を一々確認するのはかなり煩雑な作業です。特に以前三鷹市以外に居住、その地の助成制度を利用した方が、三鷹市に転入してきた場合、他の自治体に問い合せ、接種助成歴を確認するなど手間が掛かりそうです。ですから諦めたのかもしれません。しかし、よく考えると「過去の予防接種歴」を把握する方がもっと困難です。助成歴はまだ役所などに記録があるかもしれませんが、全額自己負担で受けた肺炎球菌ワクチン接種歴は行政とはまったく無関係の行為ですから、役所が確認する方法は皆無です。あくまでも自己申告に頼るしかありません。とすると、前回全額自己負担で肺炎球菌ワクチンを接種した方が、自己申告せずに初回接種者として国の助成制度を利用し接種することを前提としているとも勘ぐれます。こうすると国民全員が一度は助成を受ける機会を得たことになりますから。よって、上記の4の助成対象外となった方は、以下のように読み替えることが出来るかもしれません。

4、前回の肺炎球菌ワクチン接種から本年9月30日迄に5年以上経過していない方で、すでに三鷹市などの地方自治体の助成制度を利用し接種した方は接種できない。
5、前回の肺炎球菌ワクチン接種から本年9月30日迄に5年以上経過していない方で、三鷹市などの地方自治体の助成制度を利用したことがない方は、10月1日以降の国の制度で、初回接種者として偽り接種する。

 もちろん、この行為は国の制度に不備があるとはいえ違法行為であり、大いなる遵法精神をお持ちの読者の方々がなすべき行為でないこと、重ね重ね申し上げておきます。

2014/07/22 
「武蔵野赤十字病院膠原病・リウマチ内科宇都宮雅子先生の『高齢化社会のcommon diseaseリウマチ性多発筋痛症/RS3PE』という演題名の講演会に参加してきました。」

 平成26年7月2日開催された「高齢化社会のcommon diseaseリウマチ性多発筋痛症/RS3PE」というタイトルの講演会に参加してきました。最近、忙しくなり講演会や勉強会に参加する頻度が極端に少なくなっています。以前は、他に所用がなければ必ずと言っていいほど毎晩参加していました。そのため1週間連日夜は講演会といったことも珍しくありませんでした。しかし、最近多忙となり、かなり厳選して参加するようになりました。今回その晩も二つの講演会が重なってしまいました。しかし、この講演会の方に参加した理由は、演題タイトルを見て、常日頃感じている疑問に答えが出るかもしれないと思ったからです。
 2011年11月13日の院長コラム「珍しい病気の知識」でリウマチ性多発筋痛症(PMR)2例、RS3PE症候群2例を発見したお話をしました。その後PMRは2例増え合計4例になっています。これらの疾患の罹患率(1年間に発症患者の割合)は10万人当り1.5人程度といわれていました。つまり、三鷹市の人口が約18万人ですから、三鷹市内で1年間に3人程度発症する病気です。当院開院後6年間で4例のPMR、2例のRS3PE症候群を診断しました。これらは稀な病気ですから、本人都合の1例を除き全例杏林大学病院や武蔵野赤十字病院の専門医に紹介、診断していただきました。ですから誤診して多く見積もっているなどということはありません。三鷹中で3人×6年=18人発症が予想されるPMRとRS3PEのうち、4例と2例が当院に集中したことになります。三鷹市内に100近い医療機関があることと考え合わせると余りに多すぎます。この病気、実際はもっと高頻度、もっと高い罹患率なのではないかと感じていました。
 今回の講演会のタイトルは「高齢化社会のcommon diseaseリウマチ性多発筋痛症/RS3PE」です。「common disease」とは一般病、よくある病気、ありふれた病気のこと。つまり風邪等のことです。講演ではタイトル通り、50歳以上、ほとんどが60歳以上で発症するPMRやRS3PEは昨今の高齢化社会では、必ずしも稀な疾患ではなくなったとの骨子でした。以前の院長コラムでもお話したように、これらの疾患に関して「この病気の診断の第一歩は、医師がこの病気のこと知っておくことである。」とか「医師がこの病気のことを知っておくだけで多くの患者が救われるはずである。」等としばしば記述されています。これらの病気は、副腎皮質ホルモンを投与すると劇的に症状が改善します。あれほど苦しんでいた患者さん、特に強烈な痛みを伴うPMRの患者さんは本当に楽になります。副腎皮質ホルモンが劇的に奏功する様を表現した言葉として、「kiss and hug sign」(接吻して抱擁する徴候)という慣用句まであるとのことでした。すなわち、副腎皮質ホルモンを投与された患者さんが、激しい痛みから解放され、感謝のあまり医者にキスして抱擁する様を表しています。私自身が治療した1例でももちろん副腎皮質ホルモンは奏功、1週間後お会いしとき接吻や抱擁こそされませんでしたが、両手でしっかりと私の手を握り「こんなに楽になるとは思いませんでした。本当に有難うございました。」と涙を流さんばかりに感謝されたのを鮮明に覚えています。宇都宮先生に「kiss, hug and shake hands sign」と改名すべきではと冗談を言ったくらいです。
 宇都宮先生からは、これらの疾患は決して稀ではなく、また、副腎皮質ホルモンが奏功することより、日赤にまず紹介するよりも積極的に掛かり付け医で治療して欲しい、そして、治療が上手くいかなかった場合に紹介して欲しいと要望されました。今回私自身が治療した1例は、当院の目と鼻の先にお住まいになる目の不自由な高齢者で、遠くて待ち時間の長い杏林大学や日赤に通院するのはとても無理とのことで、当院での治療を希望されました。今回の講演まで、PMRやRS3PE症候群については、それらを疑った場合膠原病類縁疾患として基本的にリウマチ内科や膠原病内科の専門医に紹介する方針で診療してきました。しかし、リウマチ性多発筋痛症やRS3PE症候群の疾患概念、病態、治療法等を充分に理解した今後は、当院でも積極的に治療するつもりです。
 薬がこれほど奏功し、症状が和らぐ病気はそうそうありません。すなわちこれほど感謝される病気は稀です。医者になって本当によかったと実感できる病気です。不謹慎かもしれませんが、私自身で治療したいという誘惑に駆られる病気です。

2014/07/20 
「京王プラザホテルで開催された第46回日本動脈硬化学会総会・学術集会に7月10日参加してきました。」

 平成26年7月10日から11日にかけて、自治医科大学学長永井良三会長のもと京王プラザホテルで開催された第46回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。10日木曜日の午後診療を休診にし、午後のみ参加しました。今回の大会テーマは「総合科学としての動脈硬化学」です。
 以前院長コラムでご報告したようにこの4月から三鷹市医師会理事に就任しました。日曜日も含め相当時間を割かれるようになり、最近午前2時前後の就寝時間が4時、5時になるのも珍しくなくなっています。その理由の一つに私事ですが6月12日、13日に杉並区久我山に転居、いまだ屋内が片付いていないこともあります。今回マイホームを新築したのですが、工期が遅れに遅れ、仮住まいを追い出される羽目に。残工事が残る中、取り敢えず雨風凌げて住める状態になったため転居しました。そのため電話が開通したのが転居1週間後、ネットが10日後となってしまいました。電話は携帯電話があるため何とかなるのですが、ネットに関してはE-メールが使えず本当に困りました(私は携帯メールはやらないので)。また、ネットはスマートフォンがあるためある程度は閲覧できますが、パソコンのようにキーボードを使えないため、平生利用しているWeb上のスケジュール帳が使えず本当に不便でした。今回、如何に自身がネットに依存した生活をしているか痛感させられました。
 新築先を久我山にした理由の一つは、子供たちの学区の変更がないことや井の頭線の急行電車停車駅で便利のよい点があります。さらに久我山と三鷹駅南口の間を京王バスが運行しているメリットです。始点と終点が自宅と勤務先ですから確実に座れます。また、井の頭線、JRと乗り換える必要もありません。運賃も井の頭線+JR総武線=247円に対しバス代は206円と割安です、通勤時間も10分程度短縮されました。
 いい事尽くめなのですが、最近になりマイナス面にも気付きました。それは三鷹駅南口発久我山行きバスの最終便発車時間が午前1時30分と相当遅い時間まで運行している点です(下図)。そうです。バスの便利さを享受したため、積極的に深夜1時20分頃までクリニック残って仕事をするようになったことです。1時30分の最終便まで腰を落ち着けて残業するようになってしまいました。通勤が便利になった分だけ帰宅が遅くなるというparadoxに陥ってしまいました。
 秋には長女が学校行事として宮古島で開催されるトライアスロン大会に出場します。主催側として学校関係者とともにエイド役を担います。今年は旧盆の1週間(8月10日から18日)は休まず、8月27日から31日を夏休みとしました。短めにしたのは10月19日から26日までトライアスロン大会本番のため1週間臨時の休診にするためです。さらに、旧盆を避けたのは8月27日から31日まで土佐の本校でトライアスロンの打ち合せがあるためです。ちなみ明日は朝から長女の寄宿する光の村養護学校秩父自然学園に草刈りに行ってきます。
今年は本当に忙しい1年です。という事で、今回の学会は出席だけとり、とっととクリニックに戻り、引き続き書類の山と格闘しました。

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2014/06/27 
「スギ花粉症に対する舌下免疫療法は、日本中どの医療機関でも10月以降でなければ始まりません。」

 はじめに。6月13日に転居しました。引越し後の整理に加え(我が家は、男手は私一人のため結構大変です)、電話やネット開通に1週間近くを要し、執筆する時間が取れませんでした。6月になり三鷹市の各種健康診断、がん検診も始まり、急激に業務量が増えてきました。おかげさまで新規に導入したマンモグラフィー(乳房X線検査)希望者が予想以上に多く、嬉しい悲鳴です。以前お話したように医師会理事職も加わり、最近の就寝時間はさらに遅くなり、午前3時から5時が平均で、夜が空けてから床に就くことも珍しくありません。こういった生活が4月以降続いているためさすがに体がきつくなってきました。愚痴はさておき。
 本年3月25日の院長コラム「スギ花粉症に対する舌下免疫療法について。当院では本年6月から始めません。」でお話したように、本年6月より、スギ花粉症を対象とした舌下免疫療法(商品名;シダトレン)が保険適応になる予定!でした。この舌下免疫療法の特徴を簡単に説明すると、1、昔からあった注射による減感作療法(アレルゲン免疫療法)の経口版、つまり根治療法である、2、対象はスギ花粉症のみ、3、毎日舌下する、4、治療機間は3〜5年、5、花粉症が完治するのは10%程度、効果のあるのは70〜80%程度で、症状が軽くなり、抗アレルギー剤の使用量が減るが、20%程度の方には効果がない、6、アナフィラキシー等の副作用の可能性がある、7、薬価収載後1年間(2015年6月まで)は他の薬剤同様、2週間の投与期間制限があるため、患者さんは2週間毎に通院しなければならない、等です。
 アナフィラキシー等の重篤な副作用の可能性があるため、厚労省の指導により「舌下免疫療法講習会を受講し、確認試験に合格した医師のみ舌下免疫療法薬を処方できる」ことになっています。私も、本年5月京都で開催される第26回日本アレルギー学会春季臨床大会に参加、講習を受講する予定でいました。かなり話題の治療法ですから、申し込み多数で混乱が予想されたため、学会事務局も3月24日(月曜日)10:00より先着1,000名を定員とし、ネットでのオンライン登録のみを唯一の申し込み方法としていました。18時の診療終了後、申し込んでみると既に定員に達しており、受講できなくなりました。関東圏での講習会次回開催は10月の横浜のため、少なくとも本年10月までは、当院では舌下免疫療法は実施できない状況に陥ってしまいました。
 受講希望にもかかわらず受講できない医師が多数いる状況を鑑み、日本アレルギー学会では急遽追加の講習会を7月に開催することになりました。今回は、6月25日14:00の申込開始時間にパソコンの前に鎮座、産業医勤務に出かける直前ネット申込を即行敢行、7月27日の日曜日、東京国際フォーラムで開催される講習会に参加することができるようになりました。受講証明書が郵送されてくるのが9月初旬のため、順調にいけば10月から当院でも舌下免疫療法を始めることができます。
 一方、既にこの講習会の受講を終えられた医師も未だに舌下免疫療法を始められずにいます。というのは、2014年1月スギ花粉舌下液のシダトレンの製造販売承認を取得した鳥居薬品は、5月に薬価収載(保険診療時の薬品の価格表)、発売を予定していました。しかし、薬価について厚労省と調整がつかず(鳥居薬品が希望するような薬価を厚労省が認めなかった)、5月薬価収載が見送られました。現在、10月以降の発売に向け調整を行っており、結局、日本で舌下免疫療法が始まるのは本年10月以降にずれ込むことになっています。
 来年1月頃から始めるスギ花粉症に対応するためには10月頃から舌下し始めなければ間に合いません。今回、折角舌下免疫療法の講習会に参加できることになったのですから、来シーズンのスギ花粉症に向け、何としても10月からシダトレンを販売してもらいたいものです。

2014/05/23 
「大阪国際会議場で開催された第57回日本糖尿病学会年次学術集会に5月22日参加してきました。」

 平成26年5月22日から24日にかけて、大阪医科大学内科学T教授花房俊昭大会長のもと大阪国際会議場その他で開催された第57回日本糖尿病学会年次学術集会に参加してきました。水曜日午前診療を終え、木曜日の診療を休診にして一泊二日で24日の1日のみ参加してきました。3日間通して参加できればよかったのですが、毎度のことながら診療を3日間休むのはなかなかできません。今回の大会メインテーマは「糖尿病とともに生きる〜夢から実践へ〜」です。これは「将来の“夢”を追う研究と、患者の心に寄り添う“実践”の橋渡しを行い、糖尿病患者を勇気付ける成果を得たいという花房大会長の思いを反映したものです。
 最近、特に忙しく就寝時間が4時前後と睡眠不足が続いていました。ホテルでは珍しく午前1時には床に就き、7時まで熟睡、朝食のビュッフェを食べた後、学術講演の始まる9時30分頃まで二度寝して、十分睡眠を確保したのにもかかわらず、1日中強い睡魔に襲われました。自己分析するに相当疲労が蓄積しているのかもしれません。
 さて、そういった中でも今回どうしても聞きたかった東京大学名誉教授で建築家の安藤忠雄氏の特別講演「人生100年 考えて生きる」、Controversy「低炭水化物は有益か有害か?」、順天堂大学河盛隆造教授の「いつ、なぜ血糖値を測ってもらうの?」などの講演を拝聴することができました。とくに、昨今話題の低炭水化物ダイエットの功罪を検証するControversy講演は昨年に引き続いての拝聴です。推進者側の「副次的食事療法としての緩やかな糖質制限食は百利あって一害なし」とする発表では、蓄積する低炭水化物食の有益性に関するさまざまな研究結果と、一方これまで低炭水化物食に問題ありとした研究がコホート研究(観察研究)のためエビデンスレベルの高いものではないことを確認することができた。とくに、糖質制限食はカロリー無制限の条件で指導しても、結果としてカロリー制限を得られることが多く、体重、血糖、血圧、脂質改善の有効性が示されているとの研究結果には強いインパクトを受けました。反対側の意見としては、低炭水化物食を完全否定するものではなく、糖質制限実施上の注意点として、1、肥満者、摂取エネルギー過多の症例に勧め、栄養不良をきたす可能性のある痩せ型の症例には勧めないこと、2、実施期間は半年から1年程度とすること(長期では死亡率が増加?)、3、必然的に高タンパク食、高脂肪食になるため、腎機能低下例、動脈硬化進展例、膵炎既往例では勧められないこと、4、骨粗鬆症、サルコペニア(2012/06/19院長コラム「サルコペニア(筋肉減少症)について」を御参照下さい)、うつ病の発症が報告されていることより高齢者には勧めないこと、などの意見でした。
 私自身、何時から炭水化物ダイエットを始めようかと迷っていましたが、以前、三鷹市医師会で講演(2013/04/21院長コラム「新しい創傷治療〜消毒がガーゼの撲滅を目指して」を御参照下さい)して頂いた夏井睦先生の糖質制限食の話を、出勤中のラジオで聞いてついに先週決心をしたところでした。この先生、本来形成外科医で、創傷・熱傷の湿潤療法の考案者として有名な方ですが、最近はむしろ糖質制限食の伝道師と化しています。加藤整形外科医院の加藤謙二先生の真似をして「日本人のソウルフード、ラーメンとすごく美味しいものだけを除外品目とした炭水化物ダイエット」(2013/11/15院長コラム「11月14日和歌山市で開催されて第56回日本甲状腺学会学術集会に参加してきました。和歌山ラーメンも食べてきました。」を御参照下さい)を先週始めたところです。これぞまさに「緩やかな糖質制限食」です。
 ちなみ今朝のビュッフェでも、大量のサラダ、和食の惣菜(塩しゃけ、サバの照り焼き、納豆、冷奴、味噌汁、切干大根、ひじきの煮物、佃煮、明太子、温泉玉子、玉子焼き、オクラ胡麻和え)、ベーコン、ソーセージ、トマトジュースでした。画像がないのが残念です。

2014/05/19 
「『地域包括ケアシステム』の理解を深めるため岡山コンベンションセンターで開催された第5回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に5月11日参加してきました。(その1)」

 平成26年5月10日から11日にかけて、社会医療法人清風会岡山家庭医療センター奈義ファミリークリニック松下明所長大会長のもと岡山コンベンションセンターで開催された第5回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加してきました。土曜日午前診療を終え、一泊二日でクリニックを休診することなく参加しました。今回の大会テーマは「家族の力と地域の力−これからのプライマリ・ケアの姿を求めて−」です。
 以前院長コラムでご報告したようにこの前任者の突然の転職に伴い4月から急遽三鷹市医師会理事に就任しました。就任後早速与えられた仕事として、1、防災・救急対策担当理事、2、三鷹市医師会班再編成担当理事、3、三鷹駅周辺地区地域ケアネットワーク全体委員などがあります。これらの会合に参加し始めて頻繁に耳にするようになった言葉が「地域包括ケアシステム」です。この言葉、今回理事に就任するまでほとんど意識することはありませんでした。
 この言葉、厚労省が提唱しているもので、厚労省のホームページに解説が掲載されています。自身の勉強の意味も含めて要約を転載しますのでしばらくの間お付き合い下さい。

1.地域包括ケアシステムの実現へ向けて

 日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しています。
 65歳以上の人口は、現在3,000万人を超えており(国民の約4人に1人)、団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年(平成37年)以降は、国民の医療や介護の需要が、さらに増加することが見込まれています。
 このため、厚生労働省においては、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

・地域包括ケアシステム
 団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。
 今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が重要です。
 人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差が生じています。地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。(左図、中図参照)

・地域包括ケアシステム構築のプロセス
 市町村では、 2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じて、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築していきます。(右図参照)(続く)

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2014/05/19 
「『地域包括ケアシステム』の理解を深めるため岡山コンベンションセンターで開催された第5回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に5月11日参加してきました。(その2)」

2.地域包括支援センターについて

 地域包括支援センターは、地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関として市町村が設置しています。
 現在、全国で約4,300か所が設置されています。三鷹市にはコミュニティ住区(日常生活圏域)毎に7ヶ所設置されています。(左表参照)

3.地域ケア会議について

 地域包括ケアシステムを構築するためには、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時にすすめることが重要です。厚生労働省におきましては、これを実現していく手法として「地域ケア会議」を推進しています。(中図参照)

4.医療と介護の連携について

 疾病を抱えても、自宅等の住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を続けられるためには、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが必要です。
 厚生労働省においては、関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するための取組を推進しています。(右図参照)(続く)

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2014/05/19 
「『地域包括ケアシステム』の理解を深めるため岡山コンベンションセンターで開催された第5回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に5月11日参加してきました。(その3)」

5.生活支援サービスの充実と高齢者の社会参加

 今後、認知症高齢者や単身高齢世帯等の増加に伴い、医療や介護サービス以外にも、在宅生活を継続するための日常的な生活支援(配食・見守り等)を必要とする方の増加が見込まれます。
 そのためには、行政サービスのみならず、NPO、ボランティア、民間企業等の多様な事業主体による重層的な支援体制を構築することが求められますが、同時に、高齢者の社会参加をより一層推進することを通じて、元気な高齢者が生活支援の担い手として活躍するなど、高齢者が社会的役割をもつことで、生きがいや介護予防にもつなげる取組が重要です。(左図参照)

 以上です。
 以上の地域包括ケアシステムは、コミュニティ住区(日常生活圏域)を基本単位として進められています。三鷹市は、大沢住区、東部住区、西部住区、井の頭住区、新川中原住区、連雀住区、三鷹駅周辺住区の7コミュニティ住区によって構成されています。(中図参照、三鷹市ホームページより転載)
 今回、私に与えられた仕事も7コミュニティ住区と密接に関係しています。
 例えば、防災・救急対策委員会で話し合われる震災発災時の災害時医療救護所は、このコミュニティ住区毎に7ヶ所設置されています。
 また、三鷹市医師会班再編成も同様です。三鷹市医師会の50年近い歴史において、従来医師会は大沢班、上連雀班、三鷹駅前班、むらさき橋班、中央班、井の頭班、牟礼班、新川班の8班で構成されていました。しかし、今回、若林研司三鷹市医師会長の決断により、7住区に合わせ班を再編成しました。これは、厚労省ホームページの如く団塊の世代(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者となる2025年問題への取り組みとして地域包括ケアシステム、また上述の如き災害時医療を強力に推進しようとする会長の決意の現れです。
 さらに、三鷹駅周辺地区地域ケアネットワーク全体委員の就任も、まさに、三鷹市の1コミュニティ住区である三鷹駅周辺住区の高齢者、子育て、障がい者を地域で支援していく取り組みです。
 プライマリ・ケアとは、簡単にいうと「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療」のことです。病気や障害を持つ人が「生活していく上で何が困難か、それに対してどうすればよいか」ということを考えていくことも大切です。その際欠かせないのがそれぞれの地域の医療・福祉・介護・保健のネットワークです。障害のある方が地域で安心して生活していくためには、医療福祉保健の専門家だけでなく、地域住民が共にチームを組んで支援していくことが求められます。このような視点を持ちながら、みなさんの身近な立場で健康をサポートする医療、介護、福祉、保健をまとめて「プライマリ・ケア」と呼びます。
 ですから、まさにプライマリ・ケア学会こそが、地域包括ケアシステムについて学ぶよい機会と考えました。学会では、「プライマリ・ケア医のミッション−医師会、行政と協力し地域を結ぶ−(地域包括ケア委員会企画)」「「つながる」−地域包括ケアを進めるために−(地域包括ケア委員会企画)」などのシンポジウムに参加しました。
 また、ランチョンセミナーでは、慶應義塾大学環境情報学部教授医学部兼担教授、渡辺賢治先生の「逃げない医療〜漢方の力〜」と題するセミナーに参加しました。このセミナーでは、まさに2025年問題、超高齢化時代を乗り切るためのツールとして、漢方薬の有用性を説くものでした。機会がありましたら、また、別の機会に詳しくお話します。
 最後に。学会では、当法人の監事を勤める梶井信洋先生と旧交を温めることができました。梶井先生は山口県下関市で梶井内科医院を開院しています。遠距離である上、互いに忙しい身のため、普段は書類や電話での遣り取りだけになっていました。幸い学会開催地が両者の間の岡山だったための、土曜日の夕方に岡山で合流、久しぶりに一献傾けることできました。一献と言うより久しぶりに痛飲しました。公私に渡り情報交換、親交を深めました。翌日曜日一緒に学会に参加、夕方再会を誓って互いの帰路に就きました。公私に渡り充実した1日となりました。

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2014/05/14 
「日本人間ドック学会が発表した高血圧基準範囲が誤って報道され困っています。(その1)」

 私は、日本人間ドック学会、日本高血圧学会、両学会の学会員です。その立場から、タイトルに記した問題に関して意見を述べさせていただきます。
 平成26年4月4日、日本人間ドック学会「新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会と健保連による150万人のメガスタディー」というタイトルのプレスリリースを行いました。その背景は、従来血圧や血液検査などの基準範囲が健診機関によってまちまちなため、受診者が翌年健診機関を変更すると同じ検査結果値でも正常異常の判定が変わることがあり、受診者に混乱を招いていたためです。そのため人間ドック学会は、全健診機関に適用可能な基準範囲を設定する研究事業を始めたわけです。その方法は、人間ドック受診者150万人の中から健康と思われる人、具体的には既往歴に悪性腫瘍や慢性肝疾患、B型肝炎、C型肝炎、腎疾患がなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの薬を常用せず、喫煙、1日1合以上の飲酒習慣がない人々34万人を抽出、潜在値除外法という方法でさらに異常のありそうな人を除外し、最終的に30 歳〜64 歳の1万人余りの超健康人に絞込み、その方々の検査結果の平均値を導き出したわけです。その中の血圧値が147/94mmHgだったわけです。
 ですから、147/94mmHgという血圧値は、一見健康そうな壮年、中年期の方々の血圧値を測定してみたら、平均値がこの程度だったという意味で、血圧値がこの値だったら問題ない、つまり将来高血圧による臓器障害、合併症などが出現しない、もっというなら血圧が原因で早死にすることがないというようなものではありません。そもそも高血圧も含めて生活習慣病は自覚症状がありませんから、一見健康そうな方の中にも高血圧の方は紛れ込んでいるはずです。さらに前提条件として降圧剤を常用している方は除外していますが、たまに内服している方は除外していません。つまり、この値は、高血圧の持病はあるが大病なく一見健康そうな方の値も含まれているのです。ですから、そもそもこのプレスリリースの中で、日本人間ドック学会も「今回設定した基準範囲は各専門学会が推挙する基準値とは定義や設定方法が異なるので、同一に比較はできない。したがって、ここで示した基準範囲はいわゆるスーパーノーマルの人はこの検査値の範囲である事を意味するものであり、専門学会がガイドラインで示している疾患判別値とは異なる。」と述べています。さらに、駄目を押すように「(今回発表した)基準範囲とは、・・・最終的には約1 万〜1 万5 千人の健康人の集団の検査値である。これに対し、健診などに使用される臨床検査の判断値は、基準範囲とは異なり疾患の疫学的研究によって得られた成績を基に、専門学会などで設定されたものである。したがって両者は互いに異なるものであるが、一般的には基準範囲イコール正常値あるいは疾患判別値と理解されるケースがしばしばある。そのため、基準範囲が一人歩きし、疾患の診断や治療に影響を与える可能性がある。ここで設定した基準範囲はあくまで上記定義に基づいて、人間ドック受診者の検査データを用いて予防医学的な観点から設定したものである事をよく認識して頂きたい。したがって今回の基準範囲の人間ドックに於ける運用に関しては今後の本学会及び健保連にて充分議論した後に進めていくべきと考える。さらに今回のいわゆる健康人のデータを5〜10 年間追跡調査を行い、基準範囲の妥当性を検討する必要がある。」と最後段に記しています。上述の内容を解りやすく簡略化して説明すると、「今回導き出した基準範囲は、健康診断などで使用する正常値とは異なるもので、この基準範囲が一人歩きしてもらっては困る。」ということです。しかし、残念ながら新聞などのマスコミで誤報(左図、朝日新聞2014年4月5日記事参照)され誤った理解のもと一人歩きしてしまいました。この誤報を受け、日本人間ドック学会では、4月7日「4月4日報道機関へ公表した内容について」と題した追加のプレスリリースを発表、「今すぐ学会判定基準を変更するものではなく・・・」と火消しに回っています。
 一方、高血圧を専門的に扱う日本高血圧学会もこの誤報を受け、4月14日「人間ドック学会と健康保険組合連合会による小委員会の新しい「正常」の基準値に関する報道を受けて、高血圧学会から国民の皆様へのお願い」と題する人間ドック小委員会基準発表に対する日本高血圧学会の見解を発表しました。この中で、私が上述したように、「高血圧の判定基準は、140/90mmHg以上で変更ありません。・・・今回の報道により、多くの方々が「正常」という値が複数存在することで混乱されているのではないかと懸念いたします。・・・(筆者注:人間ドック学会の)今回の「正常」の基準値は、・・・この値の範囲であれば大丈夫ということを示す「正常」ではなく、正常と思われる人の検査の基準値というのが正確な表現です。・・・ドック調査研究小委員会の発表についての報道記事に示されている血圧値の「正常」の一部には「要再検査、要治療」が含まれているとご理解頂くのが正確です。・・・高血圧治療が必要な方におかれては、医師の指導のもと、適切に血圧が管理されることを期待いたします。」と記しています。
 今回このような騒動になった背景の一つに、日本高血圧学会自身が2014年4月1日に高血圧治療ガイドラインを5年ぶりに改訂、一部降圧目標値を甘くしたこともあります。具体的には、新しいガイドラインJSH2014では従来65歳未満の方の降圧目標値130/85mmHgだったのを140/90未満に、冠動脈疾患患者においては従来130/80未満だったのを140/90未満に、後期高齢者(75歳以上)は従来140/90未満だったのを150/90未満(ただし、忍容性があれば140/90未満)に変更しました(中図:JSH2009から2014への降圧目標値変更点、出典:medical.nikkeibp.co.jp)。偶然、4月1日に発表された「血圧値が甘くなった」との情報が混同され、混乱を招いた一因にもなりました。
 さらに、一般紙が誤報したのに加え、週刊現代などの週刊誌がセンセーショナルな記事(右図:52〜53ページ)を掲載したことが一層拍車をかけました。(続く)

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2014/05/14 
「日本人間ドック学会が発表した高血圧基準範囲が誤って報道され困っています。(その2)」

 週刊現代掲載記事の全文は下図のごとくです(左図:54〜55ページ、中図:56〜57ページ、右図:58〜59ページ)。この記事にある多数の問題点を時間の許す限りいくつか指摘します。
 まず、第1部における、近著に「高血圧はほっとくのが一番」がある松本光正医師の「上が130を超えると高血圧という今までの基準は厳しすぎます。」との談話です。因みにこの先生、週刊現代の医療特集では何度となく登場される方です。2012年の3月17日号では、「死にたくなければ病院に行くな」という対談記事の出演者です。余談はさておき、私は、上が130を超えると高血圧になるとは聞いたことがありません。WHOも日本高血圧学会、もちろん上述の最新版ガイドラインJSH2014でも以前からずっと高血圧の基準は140/90mmHg以上(家庭血圧は−5で135/85)です。130というのは、厚労省が国策として進めている特定健診、いわゆるメタボ健診での高血圧予備軍の基準値で、高血圧の基準ではありません。
 さらに松本医師は、「高齢者であれば、慢性的に190や200くらいあったって元気な人は一杯いますよ。私が診た患者で95歳で亡くなった男性は、60歳頃から最高血圧は220もありましたからね。」と述べています。確かに血圧が高いと100人が100人早死にするわけではありません。昨年まで歩いて当院に通院されていた102歳の女性は、98歳まで高血圧を放置、眼底出血のため片目の視力が急激に低下し、眼科医に指示されついに当院を受診しました。家庭血圧を測定したところ最高血圧が常時200以上だったため、対側の眼底出血による重大な視力低下を危惧し、さすがに降圧剤を開始しました。102歳になり老人ホームに入所しましたが、血圧が200以上あっても結構元気で長生きする方がいるのをつくづく実感させられました。一方、先日テレビ出演した前日、当院を糖尿病で通院されている方から以下のような話を伺いテレビインタビューの時、エピソードとしてお話しさせていただきました。勿論ご本人の許可を頂き披露します。「薬が切れたのに来院できなかったのは、43歳の弟が急逝したからです。弟は血圧が相当高かったのに医者嫌いのため放置していました。そうしたら、2週間前脳幹出血(筆者注:脳内出血の中でも最も危険で死亡率の高い部位の出血)になり、2歳の幼子を残してポックリ逝ってしまいました。そのため、私が葬儀一切を取り仕切ることになり2週間来院できなかったのです。病院に行かせればよかったです。」血圧が高いのを放置すると長生きできない人もいるのです。この方も「高血圧はほっとくのが一番」だったのでしょうか。
 さらに「完全保存版 この数値が『病気のボーダーライン』」と題する第2部において、熱心な記者が「いったい『健康』とは何なのか?いったいどこから『病気』なのか?本誌は正常と異常、健康と病気を分かつ真の分岐点を探るべく、総力取材を行った。」そうです。2014年3月2日の院長コラム「facebook小倉高校30期エッセイー。若気の至りです。」で述べたように私の大学時代、我が家は決して裕福ではありませんでした。さぞかし大変だったとは思いますが、今回の総力取材によって「健康と病気を分かつ真の分岐点」が見つかるのなら、私も無駄に大学6年、博士課程4年合計10年間も授業料を払い続けるのではなかったとつくづく後悔させられました。
 さて、第2部において松本医師は、「なぜか血圧を下げる薬を飲んでいた患者さんばかり、脳梗塞になるのです。・・・薬で無理に血圧を下げると、血流の勢いが弱いので血栓が流れていかず、脳梗塞を引き起こす。・・・」と薬害を主張されています。その通りで、上記の高血圧ガイドラインJSH2014でも、「・・・両側頸動脈狭窄が75%以上である症例で降圧により脳卒中のリスクが増すという報告」あるいは、「・・・6メートル歩行を完遂できない人では、むしろ高血圧群で生命予後がよかった。・・・少なくとも歩行速度がきわめて遅い場合、140mmHg以上の高血圧基準で降圧薬治療を開始することはむしろ危険かもしれない。」等と記載され、高齢者では過度の降圧がむしろ脳梗塞を惹起する可能性が示唆されています。松本医師が高血圧を治療し脳梗塞になった患者さん達は、降圧剤を処方され過ぎていたのではないでしょうか、心配でなりません。
 さらに松本医師は、「昔に比べて栄養状態が良くなった現代人の血管は、めったなことでは破れませんから、血圧が上がっても脳出血は起きづらい。それよりも、ムリに血圧を下げることによって脳梗塞になることを心配すべきです。」と述べています。幼子を残し、脳幹出血で急逝された43歳の弟さんも、脳梗塞を心配し、やはり高血圧を放置したままの方がよかったというのでしょうか。私には言えません。
 「十人十色」動物の中でもとりわけヒトは個体差が大きく千差万別(マウスは個体差が小さいので動物実験に利用されてしまいます)なので、高血圧を放っておくと100人が100人早死にするわけではありません。また、高血圧を治療すると100人が100人長生きするわけでもありません。降圧剤も含めて全ての薬には副作用があります。副作用の全くない薬などありません。しかし、疫学研究により、高血圧を放っておくより副作用のリスクはあるかもしれませんが、治療した方が長生きする人が多いから、長生きする確率が高いから高血圧治療を勧めているのです。ただそれだけです。
 また、「医師でジャーナリストの富家孝氏も、こうした見解に賛同している。『少し前までは、年齢に90を足したのが血圧の正常値というのは内科の常識でした。日本高血圧学会などが「正常」とする130は、あまりに厳しい値です。』」と記されています。この方も勉強不足か勘違いしています。もう一度言いますが、日本高血圧学会では、もちろん上述の最新版ガイドラインJSH2014でも以前からずっと高血圧の基準は140/90mmHg以上です。130というのは高血圧学会分類の正常域血圧中の正常高値血圧で、特定健診いわゆるメタボ健診での高血圧予備軍の基準値で、高血圧の基準ではありません。
 さらに引き続いて記者は、「実は、WHO(世界保健機関)が定める高血圧の国際基準は、’99年以降ずっと140のままだ。しかし、日本の医療関係者はこれを黙殺し、「日本では130以上が高血圧ということになっています」としか言わない。」と記しています。私も医師で、日本の医療関係者の端くれですが、高血圧は130以上などと言ったことはありません。
 さらに、最終ページには、「総力取材」の結果、「正常と異常、健康と病気を分かつ真の分岐点」を探り出したらしく、「従来の基準値」「(筆者注:日本人間ドック学会が発表した)新しい基準値」「現場医師による『妥当な基準値』」を併記した一覧表を提示しています。右図の左側のページを御参照下さい。
 その表中、高血圧の欄では、現場医師による「妥当な基準値」として、「年齢+90(40代以下は気にしなくてよい)」と記されています。この現場医師とは記事の中で同様の主張をされている松本光正医師と富家孝医師のことのようです。しかし、両医師とも現在は専ら講演活動や執筆活動を生業としている医師のようです。松本医師は関東医療クリニック院長先生とのことですが、ネットでいくら検索してもクリニックの診察時間が記載されていません。ただ、講師派遣の「講演会なび」では、講演料10〜30万円グループに登録されており、講演活動でお忙しいのではないでしょうか。また、富家孝医師はご存知のように、ウィキペディアでも政治家、医療ジャーナリストと表現されている方です。むしろ、私のような町医者の方がいかにも現場医師ですので、「週刊現代」の記者には、記事を掲載する前に私にも取材に来て欲しかったです。
 さて、このように今回の週刊現代の記事を皮肉っぽく批判してまいりましたが、我々医療界にも反省する点が多々あると思っています。一つがこの記事の中でも取り上げられているディオバン、ブロプレスに代表される医学データ捏造の問題です。両薬剤とも降圧剤の一種ですが、これら両者にまつわる問題から、日本の高血圧診療に対する患者さんの信頼が低下したことは否めません。さらにデータ捏造の中心となった先生方は皆さん、高血圧学会の役員として名を連ねていた方々です。高血圧学会役員自ら自浄作用を発揮、この問題をしっかりと総括し、再発を防ぐ施策を示さなければ信頼は快復しません。高血圧学会が作成した高血圧治療ガイドラインは、これら捏造された論文も引用し作成され、それに基づき現場の医師は患者さんに投与する降圧剤を選択したのですから。現在、未だ調査中で総括は終わっていません。
 さらに、私は「高血圧を放っておくと100人が100人早死にするわけではありません。また、高血圧を治療すると100人が100人長生きするわけでもありません。降圧剤も含めて全ての薬には副作用があります。副作用の全くない薬などありません。しかし、疫学研究により、高血圧を放っておくより副作用のリスクはあるかもしれませんが、治療した方が長生きする人が多いから、長生きする確率が高いから高血圧治療を勧めているのです。」と上述しました。確かに平均すると高血圧治療群の方が放置群より長寿です。しかし、十人十色ですから、高血圧放置群の中に治療群より長寿の方が存在します。逆に高血圧治療群の中に放置群より短命な方が存在します。それは、高血圧合併症としての臓器障害や心血管病(心筋梗塞、脳卒中など)は血圧値だけで決まるわけではないからです。その方の年齢、喫煙歴、脂質異常症、糖尿病、心血管病の家族歴、肥満、メタボの有無により異なります。これらの項目は既に疫学的に検証され高血圧治療ガイドラインに掲載されている危険因子です。さらに、未解明の項目として、ストレス(配偶者や上司との関係、仕事が上手くいっているか)、気質(短気か暢気か)、病院嫌いか好きか(正確には大嫌いではないか)、収入〜治療費の支払能力、病院へ通うだけの時間的余裕〜仕事の忙しさ、睡眠時間、配偶者や家族の有無、介護の必要な親がいるか、病気の子供はいないか、規則正しい生活か不規則な生活か、夜遅くまでテレビを見ていないか、オリンピックやサッカーワールドカップを深夜に観戦していないか、国内出張、海外出張の頻度、旅行好きか、趣味の有無、日々の飲酒習慣、運動習慣、犬を飼っているか、それは上げたらきりがないほど個々人毎に無数の因子が重なり合い予後は異なるはずです。
 誤解を恐れず申し上げれば、月収10万円で生活している患者さんを毎月通院させ、私の大して為にもならない話を聞かせ、食費代を削って数千円の治療費を払わせる。そのような高血圧治療が、果たしてその患者さんの寿命が延び、さらにはQOL(生活の質、どれだけ幸福を感じながら生活できているかということ)上昇に繋がることになるのでしょうか。その患者さんのためになっているのでしょうか。通院を止め、治療費で体に良いものを食べ、通院時間を利用し運動をした方がよほどその患者さんのためになるということはないのでしょうか。現場の医師は、すべての方に血圧が高いからといって十把一絡げに降圧剤を処方してはいないでしょうか。
 私は、「疫学研究により、高血圧を放っておくより副作用のリスクはあるかもしれませんが、治療した方が長生きする人が多いから、長生きする確率が高いから高血圧治療を勧めているのです。ただそれだけです。」と上述しました。そのことは見方を変えれば、高血圧の治療をすると長生きする人が多いだけなのです。平均すると長生きする確率が高いだけなのです。ですから、高血圧を治療すると目の前にいる患者さんが長生きするとは限らないのです。だから、それだけではダメなのです。現場の医師は今自分が向き合う患者さんの生活のすべてをできるだけ把握、理解し、治療費を払ってでも高血圧治療を受けることでその患者さんが幸福になれるかどうか精緻に検討、判断を下さなければならないと思います。私はそのような姿勢で診療に当っています。
 なお、割愛しましたがコレステロールや血糖値に関する考え方も同様です。

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2014/05/03 
「医者の弱点です。『セイブル』でググってみたら恥ずかしいことになりました。」

 インターネットが自由に使えるようになり本当に便利になりました。私も診察室でさまざまなことに活用しています。その一つが薬の確認です。ときどき患者さんから「先生あの紫色の包みに入っている糖尿病の薬が余っているので今日は減らして下さい。」等と頼まれることがあります。医者は、薬の名称、分量(1錠あたりの成分量)、用量、用法、適応疾患などは覚えていますが、実際のその薬の色、形(剤形)、包み(シート)の色等を記憶していないことが多いです。とくに昨今、当院のように医薬分業している医療機関では、薬そのものを院内に置かないため、薬の実物を見る機会は非常に少ないのです。実際、薬そのものの色、剤形、シートの色がどうであれ、薬の効果には無関係ですから、医者は敢えて記憶する気もないのです。一方、患者さんは逆に、薬の形、色、包みの色で表現する場合が多いです。つまり、少なくとも自身が服用している薬の形、色、包みの色に関しては、患者さんの方が医者より詳しいのです。ですから、上記のような質問をぶつけられると医者は返事に困ってしまいます。そんな時、以前は近所の薬局に電話し、「AとBとCの糖尿病の薬の中で、紫色のシートに入っているのは何ですか。」と尋ねて教えてもらっていました。当たり前ですが、薬剤師の方は、日々薬を調剤しているので薬の色や形、シートの色等を記憶していることが多く、たとえ覚えていなくとも薬局にある薬の実物を見て確認してもらえます。
 しかし、インターネット端末を診察室に導入(左図の赤色の矢印が私の診察室のインターネット端末です)してからは、そのような電話をすることは皆無になりました。というのは、上述のように質問された場合、その患者さんに処方している糖尿病治療薬の名前を、ネット端末を使いグーグルで検索、検索結果の「画像」を選択すると、その薬の写真が多数出現します(中央図は「セイブル75mg」をグーグル検索した結果です)。その中にはシートから取り出した薬のみの写真や、シートに入った状態の写真も大抵あり、御覧のように「セイブル75mg」が紫色のシートに入っている薬だとすぐに判ります。
 しかし、今日はこのことがあだになり、ちょっと恥ずかしい思いをしました。患者さんから上述のような質問を受け、「セイブル」で検索してみたところ、セクシーな水着姿の金髪女性(右図)が大量に現れてしまいました(この女性、米国のプロレス団体WWEの女子プロレスラーらしい)。このような検索をする場合、私はいちいち患者さんに、「では、紫色の包みの薬が何か調べてみますね。」等と説明せず、その他の問診(体調その他)をしながら、ほぼタッチタイピング(「ブラインドタッチ」は和製英語です)で検索します。ですから、患者さんに「もう少し歩いてお腹周りの脂肪を落としましょう。」等と説教をしている最中、いきなりモニター画面にウェストのくびれたセクシー女性が現れると、患者さんに「診療中のこの医者は何をやっているんだ。患者さんがいないときこんなもの見ているんだ。私への当て付けなら嫌みなヤツだ。」と勘違いされかねません。不幸中の幸い、今日質問した方はかなり高齢女性のため、なんだかよく見えなかったのではないかと思います。
 製薬メーカーの方には、新薬開発の折、このような点にも配慮し薬の名称を決めていただきたいものです。
(本原稿は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」平成26年5月号に掲載された記事を改変し転載たものです)

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2014/05/03 
「三鷹市医師会理事就任にあたってのご挨拶」

 野村病院三浦靖彦先生のご栄転に伴う理事退任の後を受け4月1日より三鷹市医師会理事に就任しました松慶太と申します。総会でご挨拶させていただきましたように、曲がりなりにも三鷹の地で医療人として活動してこられたのも、医師会活動における諸先輩方のご尽力の賜物と感謝いたしております。感謝と同時にこれから三鷹の地域医療を支えていこうとしている後進の諸先生方の礎となるようはなはだ微力ではありますが、与えられた務めを全うする所存です。どうぞご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。
 さて、昨年4月より1年間オブザーバーとして理事会に参加させていただいております。その間、予想はされましたが、それにしても懸案事項が斯くも多数あることに驚かされた1年でした。
 開業し小さいながらも個人事業主となり、また、医療法人化しようともオーナー経営者ですら、勤務医時代と違いdecision making必要な事案が急激に増加、心理的ストレスを感じていました。開業し大いなる自己決定権を手に入れましたが、同時に結果責任というそれに見合う大きな自己責任を負うことにストレスを感じていました。昨今、患者の自己決定権擁護の論調をしばしば目にしますが、価値観を共有できる本当に信頼できる主治医を見つけることができたなら、難しく専門的な問題に時間や労力を割くより、主治医に一任した方がどれほど楽なことか、自分を患者に置き換えると私自身はそのように感じています。
 理事会で取り扱われる諸問題は、医師会員諸先生方の日々の診療や生活に直結する問題ばかりです。大所高所から判断しなければならない問題が多数あります。bottom upで会員諸氏のご意見を吸い上げるだけでは決められない、決まらない問題も多数ありました。とくに緊急事態などでは、役員のtop downによる決断が必要な場合もありました。さりとて、理事長、理事の上意下達による独断専行では、三鷹市民への地域医療や会員諸氏に最大限の利益をもたらすようなベストな解を得られない可能性が増します(「三人寄れば文殊の知恵」)。今後発生するさまざまな懸案事項において、TPOを考慮しつつtop downとbottom upをうまく使い分け、与えられて責務を全うするよう頑張ります。
(本原稿は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」平成26年5月号に掲載された記事を改変し転載したものです)

2014/04/05 
「平成26年度の三鷹市の先天性風しん症候群予防対策事業が大幅に変更になります。」

 平成25年4月15日から始まった三鷹市の先天性風しん症候群対策予防事業の実施方法が今年度より大幅に変更になります。
 昨年度は、妊娠を予定または希望している女性(すでに妊娠中の方は、副反応の可能性があるため接種できません)と、妊娠をしている女性の夫(風しんウイルスを家庭に持ち帰る可能性があるため)を対象としてワクチンを接種、その費用の一部を助成(自己負担額は、麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)で5,000円、風しん単体ワクチンで1,545円)していました。
 しかし、今年度から、対象者は19歳以上の妊娠を予定または希望している女性のみとなりました。つまり、妊娠している女性の夫は助成の対象外となりました。さらに、予防接種に先立ち、まず、抗体検査(血液検査、風しんに対する免疫の有無を調べる)を実施、免疫が不十分であった場合のみ予防接種を実施、その費用の一部を助成することになりました。風しん抗体検査は自己負担なく無料ですが、予防接種を実施する場合の自己負担額は、麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)は5,000円、風しん単体ワクチンは1,447円と昨年よりわずかに安くなりました。風しんワクチンの代わりにMRワクチンを接種した場合、麻しん(はしか)にも免疫が得られることと、費用が高くなる(1,447円→5,000円)こと以外違いは無く、単体ワクチン同様風しんに対する免疫が得られます。
 申込書は当院にあります。保険証や運転免許証等三鷹市民であることを証明できるものを持参の上ご来院下さい。なお、未成年(=19歳)の方は保護者の同伴が必要です。
 風しん抗体検査の実施期間は平成26年度4月1日から平成27年3月20日ですが、風しん予防接種は平成27年度3月31日まで受けられます。
 詳細は市報また三鷹市ホームページを御覧下さい。都内では、ほとんど〜全部の自治体で同様の費用助成を実施しています。三鷹市外在住の方はお住まいの自治体にお問い合わせ下さい。なお、2013/04/06の院長コラム「風疹(風しん)ワクチンが入手困難に!」でお話したようにすでに風しん単体ワクチンは入手困難なため、麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)しか接種できません。風しんワクチンの詳細については、「風疹と先天性風疹症候群について」を御参照下さい。

2014/03/25 
「スギ花粉症に対する舌下免疫療法について。当院では本年6月から始めません。」

 本年6月より、スギ花粉症を対象とした舌下免疫療法(商品名;シダトレン)が保険適応になるため、最近、ときどき問い合せがあります。詳細は後日アップしますが、とりあえず簡単に説明すると、1、昔からあった注射による減感作療法(アレルゲン免疫療法)の経口版、つまり根治療法である、2、対象はスギ花粉症のみ、3、毎日舌下する、4、治療機間は3〜5年、5、花粉症が完治するのは10%程度、効果のあるのは70〜80%程度で、症状が軽くなり、抗アレルギー剤の使用量が減りますが、20%程度の方には効果がありません、6、アナフィラキシー等の副作用の可能性がある、7、薬価収載後1年間(2015年6月まで)は他の薬剤同様、2週間の投与期間制限があるため、患者さんは2週間毎に通院しなければならない、等です。
 アナフィラキシー等の重篤な副作用の可能性があるため、厚労省の指導により「舌下免疫療法講習会を受講し、確認試験に合格した医師のみ舌下免疫療法薬を処方できる」ことになっています。私も、2013/11/29の院長コラムでご報告したように第63回日本アレルギー学会秋季学術集会で開催された講習会に参加したかったのですが、生憎他の勉強会とバッティングし参加できませんでした。そのため、本年5月京都で開催される第26回日本アレルギー学会春季臨床大会に参加、講習会を受講する予定でいました。かなり話題の治療法ですから、申し込み多数で混乱が予想されたため、学会事務局も3月24日(月曜日)10:00より先着1,000名を定員とし、ネットでのオンライン登録のみを唯一の申し込み方法としていました。診療中のため当然10時に申し込むことは出来ませんが、24日中に申し込めば1,000人に入るだろうと高を括っていました。ところがどっこい18時の診療終了後、申し込んでみると既に定員に達していました。関東圏での講習会次回開催は10月の横浜です。よって、少なくとも本年10月までは、当院では舌下免疫療法は実施しません。

2014/03/19 
「n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA;エイコサペンタエン酸、DHA;ドコサヘキサエン酸)の効用」(その3)

 全国的に見ても、食生活の欧米化等により脂質摂取量が増加していますが、逆に魚摂取量が減り、EPAの摂取量が急激に低下しています。それと反比例するように、脳梗塞や虚血性心疾患の死亡率が増加しています(下図、持田製薬ホームページより転載、厚生統計協会:国民衛生の動向,厚生の指標36:48,1989)
 このような疫学データに端を発した最近の研究において、実際EPA製剤を内服すると虚血性心疾患が減少することが明らかになりました(2009年、JELIS試験)。
 では、一体このEPAの心血管イベント抑制効果はどのような機序でもたらされるのでしょうか。研究によりEPAには、@コレステロールやトリグリセライドを低下させる、すなわち高脂血症改善作用、A血小板凝集抑制作用〜血液をさらさらにして凝固しにくくする作用、B血管の弾力性を保持する作用〜動脈硬化改善作用等があることが明らかになっています。
 一方、DHAはEPAと似た物質ですが、EPAとは異なった特徴を持っています。それは脳や網膜(眼にある光を感じるための膜)にはEPAはほとんどなくDHAしかないことです。摂取したEPAは脳内ではすぐにDHAに変化するため、結局脳内のn-3系脂肪酸はほとんどがDHAです。脳の約60%は脂質です。そして実にその約20%がDHAなのです。DHAは脳内ではリン脂質として存在します。リン脂質は上述の脂質の分類うち複合脂質です。細胞膜などの生体膜を構成したり、生体内での情報伝達を担ったりしています。DHAには神経細胞の新生、分化誘導促進作用があります。そのような特徴があるため、脳、中枢神経系に対するDHAの効用に関するさまざまな報告がなされています。DHAの記憶や学習機能向上作用が報告されています。「魚を食べると頭が良くなる」とか「日本人の学力が高いのは魚食中心の生活をしているからだ」といった話を聞いたことはありませんか。これは余りに単純化した結論のため額面どおり受け取るわけにはいきません。いくらDHAをたくさん摂っても、自然に頭が良くなることはありません。脳を使わなければ脳内の神経ネットワークは発達しないはずです。つまり、いくらDHAをたくさん摂っても勉強しなければ成績は上がりません。しかし、不足するとさまざまな障害をきたします。とくに乳幼児期の脳の発達には必須であることは間違いないようです。妊娠中DHAが不足すると網膜の成長が阻害され視覚障害をきたします。また、発達障害や学習障害のある児童にDHAを投与すると改善したとする報告があります。
 また、DHAのアルツハイマー病の予防改善効果を示す研究結果が幾つか報告されていますが、まだ確定していません。日本、フィンランド等で、魚食量の多いヒトの方が少ないヒトより、うつ傾向、自殺が少ないとする研究結果も報告されています。アルツハイマー型認知証やうつ病の一部の方では、脳のとくに海馬(新しい記憶の形成をつかさどる部位)が著しく萎縮することが報告されています。海馬は脳の他の部位に比べ2倍以上DHAを多く含みます。そのため、魚を多く摂取すると萎縮した海馬の容積が増大することが報告されています。また、統合失調症に対する有効性の報告もあります。完全に解明されていない点も多数ありますが、脳神経系に対するDHAの効用はかなり確かなようです。

必須脂肪酸EPA とDHAの上手な摂り方

 n-3系、n-6系多価不飽和脂肪酸とも、ヒトは体内で合成することができず、必ず食品から摂取しなければなりません。そのため必須脂肪酸と呼ばれています。ちなみに、生体内で生合成できないため個体の成長や維持のため食物によって摂取しなければならない栄養素で、不足するとさまざまな欠乏症状をきたす微量活性物質を必須栄養素と呼びます。一般に、18種類のビタミンと20種類のミネラル、そして8種類のアミノ酸を合わせ合計46種類といわれていました。しかし、最近、これら多価不飽和脂肪酸も必須栄養素であることが解ってきました。摂取したα-リノレン酸からEPA、DHAに代謝されるのは10%程度な上、多価不飽和脂肪酸は生体内で合成できないため、生体内でのn-3系とn-6系の比率は、食品からの摂取量に依存します。つまり、食物中のn-3系とn-6系多価不飽和脂肪酸のバランスがそのまま生体内のn-3系とn-6系の比率に反映されるのです。
 n-6系は、コーン油、マーガリン、大豆油、ひまわり油、紅花油、クルミ、サラダ油等に多く含まれます。n-3系の内、α-リノレン酸はシソ油、エゴマ油、アマニ油等に、EPAやDHAは、魚油、肝油、海藻類、オキアミ油等に多く含まれます。多くの食用油はn-6系脂肪酸を多く含み、n-3系はほとんど含まれません。
食生活の欧米化に伴い上述の図の如く現代人では、EPAに代表されるn-3系脂肪酸の摂取量が著しく減少しています。
 実は、ヒト同様、魚類も含め動物はEPAやDHAを体内で合成することはできません。海藻や植物性プランクトン内で合成されたn-3系脂肪酸がオキアミ等の動物性プランクトン、魚類と順次食物連鎖により蓄積しているのです。そのため、魚類には多くのn-3系脂肪酸が含まれています(下図、持田製薬ホームページより転載、五訂増補 日本食品脂溶性成分表(2005年))。
 図の如く、n-3系多価不飽和脂肪酸は、魚と言っても青背の魚、いわゆる青魚、赤身魚、寿司ネタの光り物に多くに含まれます。ひらめ、かれい、きす、たら等の白身魚はそもそも脂質含有量が少ないためn-3系脂肪酸も少ししか含まれません。青魚が回遊魚であるのに対し、これらはみな岩場や砂場に棲み付いている魚、底物です。
 青魚も獲れた時期で極端にn-3系脂肪酸含有量が異なります。例えば、かつおは春獲り(初鰹)と脂の乗った秋獲れ(戻鰹)では含有量の差は10倍以上です。魚の部位でもかなり異なり、本マグロの赤身は脂身に比べ、EPAは約50分の1、DHAは約25分の1しか含んでいません。DHAは目玉の裏のゼリー状の部分、眼窩脂肪に最も多く含まれます。
 また、調理法によっても脂肪酸の摂取効率はかなり違います。焼魚や煮魚にすると約20%脂肪酸は減ります。天ぷらやフライに至っては約60%減少します。やはり、生食(マリネ、酢の物)、刺身、あるいはホイル焼き等が最も効率よく脂肪酸を摂取できます。
 また、不飽和脂肪酸は、不飽和結合を持つため酸化されやすいという弱点があります。脂肪酸が酸化されると、変色したり固化したりし、本来の作用を発揮できません。ですから、新鮮な食材を加熱し過ぎないよう調理するのが大切です。また、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール等の抗酸化物質を含む、緑黄色野菜、果物、お茶、コーヒー、赤ワイン等も食べ合わせるとよいでしょう。ちなみに後述する処方せん医薬品のEPAやDHA製剤は、ビタミンEを配合したり、包装内に窒素ガスを充填し酸素と触れないようにしたりして、酸化されないよう工夫されています。EPAやDHAのサプリメントメーカー各社ホームページで、n-3系脂肪酸を効率よく摂取するレシピが多数紹介されています。参考にされてはどうでしょうか。
 厚生労働省は、年齢にもよりますが、EPAやDHA等を合わせたn-3系多価不飽和脂肪酸を1日当たり1〜2g摂取することを推奨しています。サバの水煮缶詰には実に2370mg(可食部100g当たり)もDHAが含まれます。EPAやDHAを効率よく摂取するには、脂の乗った青魚を旬の時期に刺身で頂いたり、兜煮や兜焼で頂いたりするのがベストですが、あまり難しく考えずに隔日(1回で二日分)で青魚を頂くようにすればよいのではないでしょうか。私自身も、昼食は緑黄色野菜サラダ、ゆで卵、サバ水煮または味噌煮缶詰のお弁当を定番で持参しています。

魚介類の摂取と水銀汚染について

 魚介類の中に水銀が含まれていることをご存知でしょうか。魚介類過剰摂取による水銀の健康への影響にてついて、厚労省でも「これからママになるあなたへ」と題するパンフレットを作成し注意を促しています。妊婦以外の方では問題はありませんが、妊婦に関しては胎児への影響が懸念されており注意が必要です。妊婦の方はパンフレットをお読み下さい。

EPA とDHAの過剰摂取について

 これまで、EPA、DHAの効用についてばかりお話してきました。しかし、上述の水銀汚染の問題のみならず、マイナス面もあります。n-3系脂肪酸は適量摂取すると血液さらさら効果がありますが、逆に1日3g以上過剰摂取すると、血液凝固能が極端に低下し、出血傾向(出血しやすい、出血が止まりにくい)をきたす可能性があります。実際、薬としてEPA製剤を内服されている方は、服用を中断した後でなければ内視鏡検査を受けられません。とくに、血栓症に対するワーファリン等抗凝固剤、アスピリン等血小板凝集抑制剤の投与を受けている方は、一層出血しやすくなるため注意が必要です。服用前に主治医にご相談されることをお勧めします。
 EPA、DHAの功罪に関して詳しく知りたい方は、独立行政法人国立健康・栄養研究所「健康食品」素材情報データベースでEPAやDHAを検索してみて下さい。

脂肪酸4分画(EPAやDHA血中濃度)測定と投薬治療について

 最近、EPA、DHAのサプリメントの宣伝をよく見かけます。「DHA」でググって見ると、「サントリー」「キューピー」「富士フィルム」「味の素」「大正製薬」「DHC」などなど有名どころの公告が真っ先に出現、挙ってサプリメントを発売しているのが分ります。商品によりEPA、DHAの含有量がかなり異なりますが、EPA、DHA両者合わせて1日摂取量500mg程度のサプリメントで一1ヶ月分が2,000〜8,000円前後(1日1g換算で一月4,000〜16,000円)のようです。
 このようなサプリメントが多数販売されているのは、上述のように、@EPA、DHAが健康によいこと、Aそれらが必須脂肪酸でヒトの体内で合成できないこと、B食生活に欧米化により、現代日本人では不足しがちなこと、C青魚が食べられない方が珍しくないこと、等が主な理由です。
 実は、EPAは既に処方せん医薬品として認可されています。閉塞性動脈硬化症や高脂血症の治療薬としてエパデールという商品名で発売されています。一月の薬品代は7,830円ほどですが、上記疾患に罹患中の方は保険適応のため、780円(1割負担)〜2,350円(3割)となります。さらに、ジェネリック医薬品ではかなり安く一月2,930円(1割負担で290円、3割負担で880円)ほどです。
 さらに、EPA+DHA合剤が処方薬として2013年1月認可されました。高脂血症治療薬としてロトリガという商品名で薬価収載になっています。一月の薬品代は7,620円ほどですが、上記疾患に罹患中の方は保険適応のため、760円(1割負担)〜2,290円(3割)となります。この薬剤は新薬のためジェネリック医薬品は発売されていません。もちろん両薬剤とも診察料等があるため、医療費はこれだけではすみません。しかし、既に慢性疾患で通院治療中の方は、診察料等二重に請求されることはありませんので追加費用は薬品代だけとなります。
 健康増進目的の方はサプリメントを購入し服用するのがよいでしょうし、現に閉塞性動脈硬化症や高脂血症を患っている方は、主治医に服薬治療すべきかご相談下さい。
 なお、当院では、高脂血症で通院されている方で、狭心症・心筋梗塞等の虚血性心疾患、脳梗塞、頸動脈超音波検査で動脈硬化症を認めた方には、EPAやDHA投与前に必ず、「脂肪酸4分画」検査(採血)を受けて頂きます。この検査では、n-6系のDHLA(ジホモγ-リノレン酸)、AA(アラキドン酸)、n-3系のEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)を測定し、n-3系脂肪酸の不足程度を評価、その上で投薬治療の要否を判断しています。EPA、DHAは過剰投与で出血傾向という副作用がありますから、むやみ内服すべきではありません。
 閉塞性動脈硬化症、高脂血症をお持ちの方は是非当院を受診して下さい。

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2014/03/19 
「n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA;エイコサペンタエン酸、DHA;ドコサヘキサエン酸)の効用」(その2)

n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA;エイコサペンタエン酸、DHA;ドコサヘキサエン酸)の有用性

 EPA有用性の発見は、1970年代、デンマーク領グリーンランドでの疫学調査で、本国の白人に比べグリーンランドのイヌイットは、狭心症や心筋梗塞による死亡率が非常に低いと報告(下図、持田製薬ホームページより転載)されたことがきっかけでした。
 本国の白人、イヌイット両者とも総カロリーに占める脂肪摂取率が同程度であったにもかかわらず、本国の白人に対しイヌイットは総コレステロールや中性脂肪が低く、逆にHDLコレステロールが高値でした。摂取脂肪の内容を調べると漁師を生業とするイヌイットの主食が魚やアザラシ等の海獣(魚を主食とするためn-3系多価不飽和脂肪酸が豊富です)であったのに対し、白人は牛肉や豚肉が中心でした。そのため、n-3系とn-6系の脂肪酸摂取比を調べると、イヌイットは白人に比べ10倍近くn-3系の摂取比率が多かったのでした。さらに、デンマーク本国の都市部に移住したイヌイットも食生活が白人化すると、狭心症や心筋梗塞による死亡率が上昇しました。
 同様千葉県沿岸部(勝浦市周辺)と内陸部農業地域(柏市周辺)で行われた疫学調査(下図、持田製薬ホームページより転載、平井愛山, 日本内科学会雑誌 1985;74:13-20より改変)においても、漁業地域では虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳血管障害の死亡率が低いことが明らかになりました。
 さらに、グリーンランド同様、EPA摂取量が漁業地域で明らかに多いことが判明(下図、持田製薬ホームページより転載、平井愛山, 日本内科学会雑誌 1985;74:13-20より作図)、その動脈硬化予防作用が示唆されました。

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2014/03/19 
「n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA;エイコサペンタエン酸、DHA;ドコサヘキサエン酸)の効用」(その1)

そもそも脂質とは

 コレステロール値の高い患者さんに、高脂血症について説明していると、ときどき「先生、中性脂肪が正常でもコレステロールが多いのは高脂血症ですか?」「トリグリセライドと中性脂肪は同じものですか?」「こんなに痩身体型で皮下脂肪がないのに高脂血症なのですか?」「っこいものが嫌いでほとんど食べないのに高脂血症なのですか?」「オリーブオイル魚油なのに高脂血症に良いのですか?」「DHAやEPAのサプリメントは脂肪酸と書いているのに高脂血症の私が摂っても大丈夫なのですか?」等と素朴な疑問をぶつけられることがあります。
 これらの疑問は、脂質にまつわる用語が多数あるため混乱されているのだと思います。そこで、まず、その辺を整理してみたいと思います。

1、「脂質」とは、生物内に存在する水に溶けず有機溶媒に溶ける有機化合物の総称
2、「脂質」を分類すると下記の3種類になります。
@単純脂質:アルコールと脂肪酸のみがエステル結合してできているもの
A複合脂質:分子中にリン酸(リン脂質)、糖(糖脂質)やタンパク質(リポ蛋白)を含む脂質
B誘導脂質:単純脂質や複合脂質から、加水分解にて誘導される疎水性化合物

 @単純脂質のうち、生体内ではアルコールとしてグリセロール(=グリセリン、浣腸に使う物質)を持つものが多く、それらはグリセライド(=グリセリド)と呼ばれます。グリセロールには3つの水酸基があるため、エステル結合した脂肪酸の数により、モノグリセライド(脂肪酸1個)、ダイグリセライド(2個)、トリグリセライド(3個)の3種類が存在します。生体中のグリセライドのほとんどがトリグリセライドです。トリグリセライドは脂肪として生体内に蓄えられ、エネルギー貯蔵や組織保護(クッション、肉布団)を担っています。
 A複合脂質は細胞膜などの生体膜を構成したり、生体内での情報伝達を担ったりしています。
 B誘導脂質には、脂肪酸、イコサノイド(プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン等)、ステロイド(コレステロール、胆汁酸、ステロイドホルモン)、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)等があり、身体の構成、エネルギーの貯蔵、ホルモン等の生理活性物質として働いています。
 このように、体内の脂質には多種多様なものが存在しますが、高脂血症といえばコレステロールやトリグリセライドが高値の場合です。
 では、脂質と脂肪はどう違うのでしょうか。脂質は上記の通りです。一方、「脂肪」という言葉は広義には有機溶媒に溶ける物質、すなわち脂肪=脂質として使われますが、狭義では「脂肪」は「脂(あぶら)」とも呼ばれ、動植物に含まれる栄養素で、糖質、たんぱく質と合わせ三大栄養素を構成するものです。その実態は、上述のごとくグリセライドです。純粋なグリセライドは無色、無味、無臭、中性のため中性脂肪とも呼ばれています。血液中のグリセライドのほとんどが「トリグリセライド」であるため、一般に医学の世界では中性脂肪というとトリグリセライド(トリグリセリド、TG)と同義です。すなわち、「脂肪」(ステーキ肉周囲の脂身、霜降りの松坂牛のさし、肥満者のお腹に付着した皮下「脂肪」)は中性脂肪(トリグリセライド)がその実態です。
 さらに、「脂肪」は栄養学上「油脂」とも呼ばれ、常温で液体のものを脂肪油(単に「油」、oil)、固体のものを脂肪(単に「脂」、fat)と呼び分けます。

脂肪酸

 脂肪酸とは上述の如く誘導脂質の一種で、グリセロールとエステル結合し中性脂肪を構成します。脂肪酸には、下図(持田製薬ホームページより転載)の如く分類されます。
 不飽和度(炭素鎖に二重結合や三重結合等の不飽和結合があるかないか、難しく考えず聞き流して下さい)により不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に分類されます。飽和脂肪酸は、動物性脂肪、ラード、バター、鶏卵、ヤシ油等に多く含まれ、不飽和脂肪酸に比べ融点(溶け出す温度)が高いため常温では固体のことが多いです。出血時、止血させる血液凝集作用がありますが、過剰になると動脈硬化を促進させることになります。ですから、食事中の脂質は基本的に下記の一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸でまかなうことが推奨されています。
 一方、不飽和脂肪酸は、不飽和結合の数によって一価と多価不飽和脂肪酸に分類されます。不飽和脂肪酸は、逆に飽和脂肪酸より融点が低いため常温では液体のものが多いです。一価不飽和脂肪酸は、オリーブ油、ベニバナ油、ナタネ油、サラダ油等に多く含まれます。その代表がオレイン酸でオリーブ油の主成分です。オレイン酸の名前の由来はオリーブ(Olea europaea)です。飽和脂肪酸は体内に取り込まれた後、不飽和脂肪酸のこのオレイン酸に変換されますが、それは一部のため結果として動脈硬化を促進させます。
 多価不飽和脂肪酸は、メチル基末端から数えて3番目の炭素の位置に最初の二重結合があるものをn-3系(ω-3系、オメガ3系)、6番目にあるものをn-6系(ω-6系、オメガ6系)として分類します(ここも聞き流して下さい)。
 n-6系の代表的脂肪酸がリノール酸ですが、その代謝産物アラキドン酸からはトロンボキサン類やロイコトリエン類の脂質メディエーターが放出されます。これらのn-6系脂質メディエーターは、動脈硬化、喘息、関節炎、血栓症などの病気に関与しています。血管内皮の炎症を惹き起こし、結果、n-6系多価不飽和脂肪酸は動脈硬化を促進させます。一方、n-3系の代表的脂肪酸はα-リノレン酸です。その代謝産物エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は動脈硬化を抑制したり、中枢神経系疾患(認知証、うつ病、統合失調症等)の改善作用が示唆されたりしています。つまり、n-6系とn-3系多価不飽和脂肪酸は互いにアクセルとブレーキの関係です。

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2014/03/02 
「facebook小倉高校30期エッセー。若気の至りです。」

 いきなりですが、「facebook」という言葉、ご存知ですか。最近ではほとんどの方がご存知のことと思いますが、あまり、パソコンをやらない方のために一言でいうと「世界最大のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)」のことです。そしてSNSとは、「人と人がインターネット上で交流するサービス」のことです。とくにこのfacebookは実名でなければ登録できません。他のバーチャルなSNSと違い現実世界での人間関係同様の交流ができるため現実性が高く、ビジネスなどに利用されています。現在世界中で約10億人の利用者がいるそうです。2010年チュニジアに始まった「アラブの春」において、デモや抗議活動もfacebook上での呼び掛けがその大動員に繋がったことは有名です。
 斯くいう私も、実は約1年前に始めたばかりです。それも友人が手続きを代行してくれました。高校の同窓会グループ参加のために。
 私は、福岡県北九州市にある県立小倉高校学校を昭和53年に卒業しました。母校卒業生で医療界における有名人といえば、何と言っても久史麿日本医学会長でしょうか。県内では有数の進学校です。そのため、約450人の卒業生のうち、相当数が関東圏の大学を卒業、現在も東京近郊で暮らしています。毎月月例会と称し、OB、OGを講師に招き、都心で勉強会を開催しています。私自身は一度も参加したことはありません。
 さて、小倉高校は1908年旧制中学として開校しましたが、私は高校30期の卒業生です。同期生の一人が、数年前facebookに「小倉高校30期」と称する高校30期卒業生交流の場を設立しました。同級生から何度となく参加を促されていましたが、忙しくて放置していました。そしてついに見兼ねた友人が登録手続きを代行してくれたわけです。しかし、案の定幽霊会員でfacebookを覗き込むことはほとんどありませんでした。そうしたところ、年頭に同級生からfacebookでのエッセー執筆を依頼されました。話を聞くと、ある同級生の発案で、平成24年1月1日から高校時代の思い出話、裏話、暴露話のリレーエッセーが綿々と続いているとのことで、前走者の友人が私を次の走者に指名してきたのでした。彼は、数年前まで府中市の某病院に勤務、その後北九州市に帰り、実家の医院を継いだ医者です。医者繋がりということで、私を指名してきたのでした。そういったわけで、私も高校時代の暴露話を披露する羽目になってしまいました。どの先生方も脛に一つや二つの疵をお持ちのことと思いますが、私もご多分に漏れず脛に疵持つ身です。50歳を過ぎ、とみに昔の記憶が薄れつつあるこの頃、何れ認めたいと思っている自分史の一章として記憶を辿りつつ書き上げてみました。個人情報保護に配慮し内容を改変、醫人往来に投稿させていただきました。
 「僕は1年は山広、2年は大塚、3年は小林先生が担任でした。現在、東京都三鷹市でクリニックを開業し7年目になります。近況や人となりはホームページやその中の院長コラムをよろしかったら御覧下さい。目下仕事と家庭が無茶苦茶忙しく、年末も最終日は朝6時まで仕事をしていました。HPの原稿で既にあっぷあっぷしている有様で、一応、このfacebook高校30期のメンバーに入ってはいますが、まったく発信せず幽霊会員です。入会手続きも幼馴染の細○(旧姓、遠○)さんが代行してくれましたし、今回投稿の手順も彼女に教えていただきました。僕自身はまったくfacebook(Twitterも)をやらないもので。失礼な話ですが、執筆前にこれまでの皆さんのエッセーを拝見しようと思ったのですが、どういうわけか昨年8月頃迄めくるとフリーズしてしまいます。未だにXPで粘っているためでしょうか。画像もありますし、古いPCには重たすぎて開けないのでしょうか。どなたかお知恵をお貸し下さい。
 さて、幽霊会員もさることながら、卒後、同窓会にはほとんど参加していません。高木先生の叙勲のお祝いと、もう1回位何かの折に参加した程度です。宴席以外お酒も飲みませんし、タバコも吸わず(禁煙しました)、ゴルフも麻雀もしません(趣味はあります)。あまり社交的でない上、高校時代、不登校の劣等生だったため、なんとなく皆さんに顔を合わせ難く感じています。卒後35年が経ち皆さん同様色々なことがありましたが、こんな僕が医者になるまでを少し?お話します。何せ古い話のため多少盛っているかもしれませんが。
 僕は日明小、思永中を経て倉高に入学しました。自宅は板櫃川を挟んで倉高向いの山の上、板櫃町で通学は8分程でした。倉高志望の動機は近いからと安易です。中学時代はバスケット部で、部からは松○善○君、松○章君も倉高に入学しています。高校でも早速バスケット部に入部しましたが、練習についていけず安易に退部、高木先生に睨まれていました。自分で近所の少林寺拳法の道場に通ったりしていましたが、高2迄は平凡な高校生活だった気がします。高3の6月頃から不登校になり、1学期の残りはまったく登校していません。実家はオイルショック以後の不況で鍛治町にあったクラブ(部活でもなければ、六本木のクラブ↓でもありません。ホステスのいるクラブ↑です)を廃業、雀荘を始めたり、小倉駅前で小料理屋(甲子園準優勝投手畑先輩の焼鳥屋の2軒隣です)を開店する準備をしたりしていました(余談ですが、私が大学合格後、小林先生が頻繁にお店に出入りしていたのは想像に難くありません)。小林先生から「高校を中退して何になるんだ?」と聞かれ、その頃尊敬していた田中角栄や松下幸之助が尋常小学校しか出ていないことを引き合いに出し、「中学を卒業していれば十分、大人物に成れます」などと嘯いていました(当時真剣にそう考えていましたが、何とも子供っぽい)。ちなみに、就職先は親の知己でロサンゼルスに住む日系二世の植木屋さん(Gardener)に弟子入りするつもりでした。この方、ハリウッドのお金持ちの豪邸に日本庭園(その頃米国のお金持ちの間では日本庭園がブームだったそうです)を作り、結構羽振りがよく、たくさんのお土産を抱え頻繁に日本に遊びに来ていました(志望動機がやはり安易です)。そうこうしているうちに夏になり家出、東京山谷に向かいました。数日木賃宿に滞在しましたが、とても肉体労働は無理だと悟り、なんとなく南下、沖縄宮古島まで辿り着きました(この辺もいかにも安易です)。途中いろいろ危ない目にもあいましたが、夏ですし野宿も楽で、無事に暮らしていました。後日談ですが、その間、学校からは事件でも起こし新聞沙汰になると困るので、自主退学するよう両親は迫られていたそうです。両親が最後まで突っぱねてくれたおかげで今があります。その後生活資金が底を尽き(溜め込んでいたお年玉)2、3週間で家に戻りました。小林先生から、「これ以上欠席すると自動的に留年になる。植木屋になるのはお前の勝手だが、高校くらい卒業してアメリカに行ったらどうだ。」と諭されました。ただ、1学期の期末テストはすべて欠席のため0点ですし、6月からとんと鉛筆を握ったこともない有様で2学期の定期テストで赤点を免れるなど、想像だにできませんでした。小林先生が「お前に卒業する気があるなら、化学は白紙答案でも100点をやるから、他の教科だけ勉強しろ。そして何とか卒業しろ。」と叱咤されました。一方、戸畑区の親族宅に寄留し倉高に通っていた林○隆○君が、「ケイタ、高校くらい卒業しろ。お前このままじゃダメだ。俺の下宿に一緒に住め。俺が勉強教えるから。」と言って無理やり僕を下宿に引っ張って行ってくれました。御存知の方もいると思いますが、林○君は田川や博多にある大病院グループの御曹司です。医学部進学のため田川から寄留している身、心配した御両親がわざわざ田川から素っ飛んで来て「一体どういうことなんだ。」と彼に詰め寄りました。彼は下宿先で両親を前に畳に手を着き、「自分は絶対に医学部に現役合格するから、こいつと一緒に下宿に住まわせて下さい。こいつを卒業させたいのです。こいつは悪いヤツではないのです。」と土下座し頼み込んでくれました。そのとき、僕も「こんなことをしていてはダメだ。せめて高校くらい卒業しなければ。」と思い、9月半ば林○君の下宿先からまた登校するようになり、残り1日というところで出席日数は足りました。その後、林○君の猛特訓と化学0点の御陰で、滑り込みで卒業できた次第です。
 8組には医学部を受験するクラスメートがやたら多かったこともあり(そのように記憶しています)、見栄で新設の佐賀医大に願書を提出しました。卒業が決まった後、こっそり北方自動車教習所に通い(そういえば加○君来ていました)運転免許を取得、フェアレディを乗り回していた僕がもちろん合格するはずもなく、佐賀へ「旅行」には行きましたが欠席し受験はしませんでした。私大は受験料も高いですし、もちろん行く気もなく受験していません。卒業後はアメリカへと考えていましたが、両親から「中途半端な勉強しかできなかったが、もう一年しっかり勉強して志望の農学部を受験してみてはどうか。それからアメリカへ行くのも遅くないのでは。」「生活は苦しいが予備校の費用は出せるから。」と言って貰い、一念発起し1年間だけ予備校に通うことにしました。両親とも高校しか卒業しておらず、とくに父は貧しくて大学を諦めていたので、僕には大学に行ってもらいたかったようです。予備校選びも、明陵、北九州予備校辺りでは遊んでしまいそうなため、博多にあった全寮制の全○本○進○園なる「特殊な」予備校に入学入寮しました。ここは、碌でもない金持ちのボンボンを缶詰状態にして何とか医学部や歯学部に入学させるための予備校です。北は大阪、南は沖縄出身の最年長40歳位を筆頭に、1〜10浪の学生80人程度のうち半分位はリーゼント頭で、予備校近所の駐車場にはシャコタン(車高短)や外車がずらりと並んでいました。僕と違いモノ本です。予備校の入学試験では偏差値が50に届かず、講師から本当に小倉高校卒業なのかと疑われましたが、幸いスポーツ刈りの髪型が好印象だったのか、ヤンキー向けクラスではなく、勉強する気あり!の進学クラスに入れてもらえました。予備校と地続きの3階建て某スーパーマーケットの屋上に造設された寮(今考えれば明らかに違法建築で未登記のはずです)では、屋上からロープを垂らし夜な夜な中洲に抜け出す者(一人転落し脳挫傷のため救急車で運ばれて行きました)、階下のスーパーの公告看板の照明から盗電し消灯後も電気を自由に使う者などに加え、態度のデカイやつが時々夜半に呼び出され締められたりもするため、僕はワルに目を付けられないよう黙々と勉強しました。10時消灯6時起床の規則正しい生活の中、毎週階下のスーパーから7本のボールペンを購入、必ず1週間で使い切る(1日1本)と心に決め、視覚、聴覚、手の位置覚を使った英単語の暗記などに使い切りました(正直、消灯時間迄に使い切れず、紙に無駄に線を描きインチキしたことはあります)。因みにこのエピソードは翌年の予備校のパンフレットに掲載され宣伝に使われました。今思うとこの予備校の授業が僕には合っていたのだと思います。数学がまったく解らなくなっていた僕は、あえて数学のみヤンキー向けクラスで授業を受けることにしました。数学の先生は福岡工業大学の若い助教授でしたが、応用ひいては難問は基本問題を組み合わせただけだから、教科書と練習問題をやれば十分といった理念の元、また、受講生の多くがまともに学校に通ったことのない者達のため、授業では数1の教科書を一学期に、数2を二学期に、数3を三学期にとひたすら教科書と付属のドリルだけを使った学習で受験問題を一切やらない先生でした。数1もまったく忘れていた僕にとっては願ったり叶ったりの授業で、見る見る成績が上がっていきました。結局最後まで赤本などの受験問題は一切せず、教科書だけで勉強しました。また、共通一次試験の初年度で、少なくとも一次試験は難問というより広くまじめに勉強していた方が高得点の取りやすい試験だったことが好都合だったのだと思います。そんな折、陣中見舞いに来てくれた林○君から、そんなに成績が伸びたのなら、医学部を受けてみてはどうだと勧められました。「自分は医者の家に育ってきたが、医者は本当にいい仕事だと思っている。」と率直に話してくれました。「医者になればお金も稼げて、散々迷惑をかけた親に孝行もできるし、200万円の授業料(寮費と合わせ)も返すことが出来るなあ。」となんとなく思うようになり、十分合格ラインに達していた山口大学の医学を受験しました。受験したのは結局後にも先にもこの一校だけです。もし、落ちれば初志貫徹アメリカに行くと決めていましたから。結局合格、そのまま医者の道を歩むことになりました。後日談ですが、現役合格後一年留年した林○君と結局卒業年度が同じになり、卒業後に会った折りに「あんなに勉強の面倒をみたケイタと揃って医者になるなんて、なんだか不公平だなあ。」と冗談交じりにぼやかれ、酒を奢らされたことを覚えています。大学卒業後4、5年経った頃、林○君が新妻を連れて上京、赤プリで実家の一○松病院への就職を打診されたときは、東京医科歯科大学博士課程でエイズやC型肝炎の研究中で、そのまま医者を辞め研究者になるつもりでいたので、丁重にお誘いをお断りしました。
 僕の後にバトン渡す北○直○君は、不登校になった1学期、毎日のように学校帰りに拙宅を訪れ、「学校に出て来いよ。」と熱心に誘ってくれたクラスメートの一人です。山大医学部には同級生は一人もいませんでしたし、ほとんどのクスメートとは上記のような理由からある意味意図的に音信普通になっていました。しかし、エイズ研究でアフリカを訪問した様子がテレビ放送され、僕が医者になっているのを知った北○君がビックリ仰天、そのことを彼の御内儀のひとみさんを介して伝え聞き、最近彼とはなんとなく年に数回お酒を酌み交わす仲です。
 目下、リタイア〜死ぬまでにどうしてもやり遂げたい目標があり走り続けています。小学校同級生の秋○亨君に熱心に誘っていただき、久しぶりに2月8日の新年会に参加します。それから、細○(旧姓、遠○)直○さんとは小学校1年の時のクラスメートで僕の初恋の人です。相当意地悪なことをしていたため、嫌われていましたが。卒業後も皆さん同様さらに波乱万丈でしたが冗長になってきたので止めときます。
 末筆ですが、高3のとき受験勉強の忙しい最中、学校帰りわざわざ拙宅に遠回りし、励ましてくれたクラスメートの皆さんに遅れ馳せながら心から深謝申し上げます。」
(本原稿は三鷹市医師会雑誌「醫人往来」平成26年3月号に掲載されたものを改変し転載したものです)

2014/02/20 
「神戸国際会議場で開催された第47回日本痛風・核酸代謝学会総会に2月20日参加してきました。」

 平成26年2月20日から21日にかけて、兵庫医科大学内科学糖尿病・内分泌・代謝科、森脇優司会長のもと神戸国際会議場で開催された第47回日本痛風・核酸代謝学会総会に参加してきました。水曜日午前診療を終え、一泊二日で20日のみクリニックを休診にして参加しました。今回「尿酸、プリン体・ピリミジン体等の核酸関連物質を科学的に研究し、内外各学会との学術交流をはかることにより、我が国の医学および関連分野の発展に寄与し、基礎研究とあわせて痛風・高尿酸血症に関する臨床の知識の発展普及を促し、国民の健康の維持に貢献する」という理念の下に開催されました。この理念、一大会の理念、テーマとしては長すぎませんかねえ。ありとあらゆる考えが天こ盛のような。
 さて、従来、尿酸値の増加、すなわち高尿酸血症は、痛風発作や尿管結石の原因として治療されてきました。両者は激痛を伴う病気ですが、一般に後遺症を遺すことなく治癒し、生命への危険はありません。そのため、医療従事者は高血圧、高脂血症(両者とも脳卒中や心筋梗塞などを併発します)、糖尿病(それらに加え糖尿病性昏睡をきたします)に比べ、必ずしも大きな臨床的意義を感じていませんでした。しかし、昨今、高尿酸血症が腎機能低下〜慢性腎臓病の重要な危険因子であることが明らかになってきました。そして、慢性腎臓病は脳卒中や心臓発作の重要な危険因子であることが明らかになっています。すなわち、高尿酸血症は生命予後に影響を与える病態と考えられるようになっています。現在、尿酸の基準値は男女とも尿酸値7.0mg/dl以下で、これを超えると高尿酸血症と診断されます。この「7.0」という数字の理由は、血中尿酸値が7.0を超えると結晶化し、関節包などに沈着し始めるからです。尿酸値が7.0をわずかに超えても関節包に沈着する尿酸結晶はごくわずかで、すぐに痛風発作を発症するわけではありません。そのため、ガイドラインでは、特に合併症のない場合、尿酸値9.0mg/dl以上を薬物療法の対象としています。しかし、最近、尿酸は6.0〜7.0mg/dl程度の基準値以内の値であっても、その腎毒性を示唆する知見が得られています。すなわち、高尿酸血症の診断基準が尿酸値7.0mg/dlのままでよいのか、議論の的になっています。
 一方、尿酸には活性酸素除去作用があります。体内では、1、尿酸、2、間接ビリルビン(そのため間接ビリルビンの増加するGilbert症候群は健常人よりむしろ心筋梗塞が少ないという報告もあります)、3、ビタミンC、4、ビタミンEが主要な抗酸化物質です。ですから、血清尿酸値の低い人に心血管イベントが多い、尿酸値が高いほどパーキンソン病になり難い、多発性硬化症の患者さんの尿酸値を増加させると症状が改善した、腎性低尿酸血症の患者さんに運動後急性腎不全が発症しやすいなど、尿酸の抗酸化作用の効用を示唆する報告が多数あります。尿酸は多すぎても少なすぎてもいけないようです。
 さらに、約40年ぶりに新しい尿酸降下薬「フェブキソスタット」「トピロキソスタット」が一昨年、昨年と立て続けに発売され、治療の選択肢が広がったことも大きな話題です。いずれも日本で開発された新薬です。
 痛風、高尿酸血症の詳細は、よろしければホームページの高尿酸血症・痛風内科の欄をご覧ください。
 帰路は深夜のため富士山はまったく見えませんでしたが、往路かろうじて薄暮の中、富士山を見ることができました。九州で生まれ育った私は、富士山を見るといつも気持ちが高ぶります。先日の大雪により、静岡側から見る富士山も山全体が雪景色となっていました。先日の記録的な大雪で反対側の山梨県では今なお孤立している方々が多数いるようです。ご無事を祈念し、筆を擱きます。

2014/02/09 
「2014年2月9日、子宮頸がん予防(HPV)ワクチン副反応のその後」

 平成25年4月から子宮頸がん予防(HPV)ワクチンは定期接種化されたにもかかわらず、厚労省は6月14「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛がヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン接種後に特異的に見られたことから、同副反応の発生頻度等がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」との勧告を出していました。詳しくは当院HPの「子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて」の項目中、「●ワクチン副反応について」の段落を御覧下さい。その後、厚労省内の「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」で審議を重ねてきました。12月25日開催の第6回部会、1月20日の第7回部会の審議結果概要を下に示します。
 その結果を纏めると、HPVワクチン接種により広範な疼痛または運動障害をきたした症例は10万回接種あたり約1.5件と極めて稀でした。また、接種と発症時期の時間的関係性も不定で、疼痛や運動障害のメカニズムとして脳の障害によるものではないと考えられました。海外でも同様の症例報告がありますが、副反応の発症時期・症状・経過等に統一性がなく、やはりワクチン安全性に問題があるとは考えられていません。2剤を比較すると、接種による局所の疼痛はガーダシルよりサーバリックスの方が明らかに強かったですが、広範な疼痛及び運動障害に関しては、明らかな差はありませんでした。広範な疼痛及び運動障害発症のメカニズムとして、@神経学的疾患、A中毒、B免疫反応、C心身の反応が考えられますが、Cの心身の反応によるものと考えられました。たしかに、子宮頸がん予防ワクチンは他のワクチンに比べ局所疼痛の強いワクチンのため、接種時の痛みや不安感が心身の反応を引き起こしたきっかけとなったことは否定できません。しかし、接種後1ヶ月以上たってから発症している症例などは、ワクチンとは因果関係がないようです。また、副反応が慢性に経過する症例も、接種以外の要因が関与しているようです。
 私見ですが、やはり、HPの「●ワクチン副反応について」の段落で述べたように、他のワクチンより局所の疼痛が強いことと、感受性の強い12〜16歳の女子が接種対象者であるという特殊性が相俟って副反応が大きくなったと思われます。HPの「●ワクチン副反応について」の段落をお読みになり、ご自身で接種の必要性を判断するのがよいと再度申し上げます。また、失神などの副反応を予防するようベッドに横たわりながら接種するのがよいと再認識しました。

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2014/02/06 
「院長松慶太は、2014年東京都知事選挙において細川護煕さんを支持しています。」

 2012/06/14の院長コラム「放射性ヨウ素による放射線被曝のヨウ化カリウムによる予防」でお話したように、私は原発全廃に賛成です。原発全廃することにより一時的に経済へのマイナス影響があるかもしれませんが、「窮すれば通ず」原発がなければなくてどうにかなるものです。実際一昔前まで原発はなかったではありませんか。原発がなくなれば、却って新しい代替エネルギー開発の呼び水になります。現在既にドイツなどから相当遅れてはいますが、これから頑張れば環境技術先進国のトップランナーになる可能性さえあります。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」福島第一原発事故があれほど甚大な被害を及ぼしたこと、いや、現在も及ぼし続けていることを日本人はもう忘れてしまったのでしょうか。浪江町や飯館村等福島第一原発北西方向に位置し、放射能汚染の最も著しい地域の方々には大変失礼かもしれませんが、誤解を恐れず申し上げると、原発事故直後南東の風が吹かず、いきなり北西の風が吹いていたら日本の中枢部、首都圏の放射能汚染は現状(下図)とは比ぶべくもなく、日本の経済は相当期間(放射能汚染の持続期間)立ち直れなかったと思います。その経済的損失は、原発全廃による損失と比ぶべくもありません。原発存続による日本崩壊のリスクと原発全廃による一時的経済損失、どちらを選択すべきか、考える余地などありません。明日、東南海地震が発生しないなどと一体誰が保証できましょうか。むしろ、東大地震研などの発表ではその確率は相当高いと発表されているではないですか。
 日本人の水に流して根に持たない気質について私は肯定的ですが、今度ばかりはそのマイナス面に辟易しています。我々のように40歳を過ぎ放射線障害の影響を受けにくい人間、すでに少なくとも人生の半分は楽しんだ人間は、目先のことより、放射線障害を受けやすい、いまだ人生の半分さえも生きていない後世の者たちのことを優先的に考えるべきです。

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2014/01/21 
「都内でも既にスギ花粉が飛散しています。」

 年頭から花粉症の症状を訴え、抗アレルギー薬の処方を希望され来院される方が増えています。
 本日、「アレルギー性鼻炎の基礎と臨床」というテーマで東京大学大学院耳鼻咽喉科学近藤健二先生を講師としてお招きした講演会に参加してきました。下図は環境省が発表した平成26年スギ花粉飛散開始時期予測(第1報)です。今年の都内スギ花粉飛散開始日はほぼ例年通り2月中旬と予想されています。講演でも述べられていましたが、そもそも「花粉飛散開始日 」の定義は、環境省花粉観測システムにて1平方センチメートル当り1個以上の花粉が2日以上連続して観測された最初の日のことです。ですから、隔日で飛散したり、飛散量が平均1個以下だったりすると飛散開始日とはみなされません。つまり、「花粉飛散開始日」以前に実際には少量の花粉が舞っていますし、あるいは1日限りですがかなり多量の花粉が舞っている日もありうるのです。さらに、晩秋に小春日和が続くと、杉の木が狂い咲きし、秋に花粉を飛散させることさえあります。ですから、かなり敏感な花粉症の方は、ときどき年が明ける前に症状を訴え来院されます。そういえば我が家の枇杷の木も昨年11月頃一旦開花、その後間をおいて1月にまた開花していました。
 さて、花粉飛散開始日も然る事ながら、肝心な花粉飛散量ですが、幸い例年より多少少なめの予想です(下図)。例年猛暑の翌年は、スギ花粉飛散量が増加します。それは、夏の気温が高く日照時間が長いと雄花が多量の花粉を付けるからです。昨年は高知県四万十川で41.0度の国内観測史上最高気温を記録するなど猛暑でした。ですから、本来、今年の花粉飛散量は多いはずです。しかし、一昨年猛暑だったため、昨年はスギ花粉が大量に飛散しました。杉の木も他の果樹同様、1年置きに収穫量が大幅に増減するため、昨年猛暑であったのにもかかわらず、今年の花粉飛散量は減少するのです。一般にこういった現象を「隔年結果」といいます。昨年我が家の枇杷の木の収穫量はあまり多くありませんでした。ということは、今年は豊作になりそうです。

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2014/01/21 
「三鷹市医師会の防災・救急対策委員、三鷹駅周辺地区地域ケアネットワーク全体委員、三鷹市障がい者福祉懇談会担当役員を拝命しました。」

 昨年6月より三鷹市医師会理事会のオブザーバーに就任したことを昨年8月1日の院長コラム「TRY-Fチャリティーボクシングマッチで初めてリングドクターを務めました。」で御報告しました。右も左も分らぬまま毎月2回午後8時より開催される理事会に参加、最近漸く会議の流れや全体像が見えてきたところです。あくまでもオブザーバーではありますが、生来の気質、ついつい黙っていられず、「私の意見は・・・です。」と時々自説を吹聴していました。そうこうしていると、野村病院の三浦靖彦理事が年頭より東京慈恵会医科大学附属柏病院総合診療部診療医長として栄転することが急遽決まり、その後任として三鷹市医師会防災・救急対策委員に指名されてしまいました。三浦先生は防災・救急対策委員長として五師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会、助産師会、接骨師会)を巻き込み、三鷹市とも協力し、三鷹市の大規模震災時の医療体制構築に精力的に取り組んできたようです(失礼を承知で申し上げると、杉並区在住で4人娘の親としては、正直、我が家の娘達と妻の安否、安全の方がよほど気になり、三鷹市内の震災救護所に大きな関心はありませんでした)。他方、一防災委員にさえなっていなかったそんな私がいきなりその後任を拝命しても・・・。当分の間は防災委員の一人である高山俊政医師会副会長が委員長代行としてフォローしてくれるようで取り敢えず、胸を撫で下ろしました。
 さらに、若林医師会長より、三鷹駅周辺地区地域ケアネットワーク全体委員就任を依頼されました。三鷹市では、子供からお年寄りまで、誰もが地域で安心して生活を続けられるよう、平成16年度から地域ケアネットワーク推進事業を展開、すべてのコミュニティ住区において「地域ケアネットワーク」を立ち上げる予定だそうです。そして、三鷹駅周辺地区に市内6番目の「地域ケアネットワーク」を本年2月設立する予定で、その全体委員の推薦を医師会に依頼してきました。会長判断で、三鷹駅南口で開業する私が推薦されました。先週三鷹市健康福祉部地域福祉課地域ケア担当課長と同統括参事が挨拶と設立総会の案内に来院されました。設立総会とパーティは2月8日午後1時30分から4時30分までの予定です。その日、6時から渋谷で高校同窓会の新年会が予定されており、タイトなスケジュールとなりそうです。
 さらに、2月に開催される三鷹市障がい者福祉懇談会と三鷹市医師会との懇談会の担当役員に任命されました。これまで医師会は、高齢者福祉(認知症患者や寝たきり老人に対する在宅診療)や児童福祉(乳幼児健診や予防接種)に関しては深く関わってきましたが、障害者福祉について、心身障害があっても医療を必要としない場合も多く、関わりが少なかったと言えます。今回、同懇談会より、医療的ケアを必要としている方への相談支援などについて懇談したいとの申し入れがあり、障害者を家族に持つ(長女はダウン症です)私が推薦されたのだと思います。
 従来の多数の役職に加え、ここのところ立て続けに新しい役職を仰せつかり、ますます多忙を極めそうです。正直あっぷあっぷしていますが、どれも皆重要な責務、三鷹市住民の医療福祉に少しでも貢献できるよう頑張ります。

2014/01/04 
「今、B型肝炎の疾患概念にパラダイムシフトが起きています。是非、B型肝炎ワクチンを接種して下さい。」

 今、B型肝炎疾患概念にパラダイムシフトが起きています。早くこのことをお伝えしたかったのですがボリュームが大きく、執筆に時間を要してしまいました。冬休みの時間を利用し上梓したので早速アップしました。
 
ウイルス肝炎について

 肝炎ウイルス感染が原因で起こる肝臓の炎症をウイルス肝炎といいますが、急激に発症するものを急性肝炎、6ヶ月以上炎症が持続しているものを慢性肝炎と呼びます。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、E型まで現在5種類が発見されています。各々の特徴は下表を御覧下さい。
 急性ウイルス肝炎は、基本的に予後良好な病気です。しかし、1〜2%の患者さんが劇症肝炎という重篤な状態に陥ります。激症化した場合、50%以上の方が亡くなります。
 A型とE型肝炎は表の如く急性肝炎の感染形態しか取らず、慢性化することはありません。よって、激症化しなければ、後遺症もなく完治します。とくにE型はインド、ミャンマー等の熱帯、亜熱帯に蔓延するもので日本ではほとんど見られません。D型は少し特殊でB型肝炎とセットでしか感染しないので臨床上大きな問題になりません。一方、B型とC型は、急性肝炎として完治することもありますが一部は慢性化し、一旦慢性化(持続感染)すると簡単には治癒せず、高率に肝硬変、肝臓癌を発症するため臨床上重要です。上表の如くA型やE型の感染経路は糞口感染で腸管より排泄されたウイルスが水や食べ物を介し口から腸管内に侵入することで発症します。一方、B型やC型は経皮感染で、ウイルスに汚染された血液が皮膚防御バリアを突破し体内に侵入しなければ感染しません。現在問題になっているB型肝炎訴訟は、幼少期の予防接種やツベルクリン検査で注射器を連続使用した結果、感染している患児の血液が他の子供の体内に入り、B型肝炎が集団発生したことによるものです。

B型とC型肝炎の違いについて

 以上の如く、B型肝炎とC型肝炎は臨床上の類似点がありますが、異なった点もあります。B型肝炎は3歳以上で感染すると上記の如き激症化例を除けば一過性感染となり、その後は完治、HBs抗体を獲得し、風疹や麻疹(はしか)のように終生免疫が成立します。しかし、出生時に母子感染すると高率に慢性化、後々肝硬変、肝癌発症のリスクを背負うことになります。これは、3歳未満の小児では免疫が未発達なため、体内に侵入してきたB型肝炎ウイルス(以下、HBV)を排除できず、ウイルスが肝臓に棲み付いてしまうためです。胃のピロリ菌と同じです(「健診センター」のページ「ピロリ菌、ペプシノゲン法とABC検診〜胃癌は早期発見の時代から予防する時代になりました!」を御参照下さい)。
 しかし、国のB型肝炎母子感染防止事業として、現在既にHBVキャリア(保菌者、持続感染者)妊婦の出産におけるワクチン等の予防法が確立しており、95%以上の確率で感染を予防できるようになっています。そのため、現在日本のHBVキャリア率は0.9%程度まで低下しています。
 一方、C型肝炎はB型と異なり、どの年代においても一旦感染すると60〜80%程度が慢性化します。すなわち、成人感染において唯一慢性化する肝炎ウイルスです。そして約20年後肝硬変へ進展、高率に肝癌を発症します。また、現在C型肝炎にはB型肝炎のようなワクチンがありません。そのため日本のキャリア率はHBVより高く1〜2%と推定されています。ですから、日本におけるウイルス肝炎の主役はHBVからC型肝炎ウイルス(HCV)に取って代わられたと考えられていました。しかし、近年インターフェロンなどの治療法が格段に進歩、高率に完治できるようになっています。一方、B型肝炎はC型ほど治療成績が良くなく、なかなか完治しないのが現状です。

B型肝炎の疾患概念におけるパラダイムシフト

 上述の如き知見がこれまでのB型肝炎に対する考え方でした。近年これらの考え方を改めなければならないような知見が集約されてきました。
 HBVは経皮感染ですが、具体的には、性行為、消毒不十分な医療器具による観血的医療行為(現在、こういった医療器具はすべて使い捨てになっているため、御安心下さい)、鍼治療、刺青、ピアスの穴開け、剃刀や歯ブラシの共用、麻薬や覚醒剤等の注射器の回し打ち等です。性行為を除けば普通に生活している方が感染することはほとんどありません。新婚旅行から帰って数ヶ月間の潜伏期を経てB型急性肝炎を発症したケースを「ハネムーン肝炎」と呼びますが今でもまれに見かけます。上述のごとくたとえ急性肝炎を発症しても、激症化せず、また、免疫抑制剤や抗癌剤による治療中、後天性免疫不全症候群(AIDS)のように免疫力が低下した特殊な状態でもなければ慢性化することもなく、予後良好で完治していました。
 最近、HBVは遺伝子配列の違いからさらにA〜Hの8遺伝子型に分類されることが明らかになりました。このようにHBVの予後良好なのは従来日本に蔓延していた遺伝子型B、Cの特徴でした。一方、欧米、アジア、アフリカに多い遺伝子型Aは20〜30%の確率で慢性化、持続感染することがわかってきました。そして2000年頃から従来ほとんど見られなかった外来種の遺伝子型Aが性感染症として日本で蔓延してきました。結果、従来の「B型肝炎の場合、思春期以降の感染は一過性感染で、慢性化せずその後は完治する」といった考え方は通用せず、「昨今B型肝炎は成人感染でも約10%は慢性化し、持続感染することがある」と改めなければならなくなりました。下図(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎情報センターホームページより転載)の「急性肝炎」から「キャリア(保菌者)」への10%の表示がそのことを示しています。遺伝子型Aの蔓延はさらに広がっているため、B型急性肝炎が慢性化する確率はさらに増加しています。
 次に、上述の如くB型肝炎は3歳未満で感染した場合、キャリア化する確率が高いわけですが、この持続感染の感染経路は専ら母子感染と考えられていました。しかし、最近の研究では、父子感染も珍しくないことが明らかになってきました。具体的にはHBVキャリアの父親の子供は約25%がHBVに感染し、約10%が持続感染していることが報告されています。HBVの母子感染予防が確立された現在、父子感染によるHBVキャリア発生数は母子感染と同程度ではないかと推定されているほどです。母子感染はおもに出産時、新生児が産道出血に暴露されるために起こります。一方、父子感染は何らかの理由、例えば父子の傷口と傷口が触れ合う、鼻出血、歯肉出血時の歯ブラシの共用、噛み付き、口移しの食事等による血液感染に加え、尿、唾液、鼻汁、汗、涙等からHBVが検出され、実際感染源となっている可能性が報告されています。成人を対象とする介護施設等の共同生活の場では、常識的な生活習慣を守っていれば感染する危険性は低いと報告されていますが、体液暴露や身体的接触が多いと推定される保育所では、実際数%のHBV感染率が報告されています。とくに、3歳未満児が通う保育園では、園児同志の水平感染によりその多くがHBVキャリア化しており、看過できない状況です。HBe抗原(血液中のHBV量が多いことを示す血液検査マーカー)陽性の園児が通う場合、保育園はHBV感染の機会となりうるため、HBVワクチン接種をすべきであると報告されています。一方、HBVキャリアであることを理由に、入所、入園、入学を拒否することはHBV保菌者の人権にも関わるため、難しい問題になっています。
 本小論において、「B型肝炎の場合、思春期以降の感染は、激症化しなければ一過性感染で、慢性化せずその後は後遺症も残さず完治する。」さらには「完治すると風疹や麻疹(はしか)のように終生免疫が成立する。」とまで再々述べてきました。実際、約20年前には「B型肝炎の治癒を表す血清マーカー、HBs抗体陽性は、激症化することもなくB型肝炎が完治した証であり、今後二度とHBV感染することもなく、未だHBV未感染の者より安心でいられる。」とまで学生に講義をしていました。しかし、この常識を覆す知見が集約されてきています。下表「急性ウイルス肝炎各型の特徴」中、「ウイルスの特徴」の欄に各肝炎ウイルスの遺伝情報を担う核酸の種類が記載されています。HBV以外はすべてRNAですが、唯一HBVのみヒトと同じDNAが遺伝子媒体となっています。この特徴のため、HBVは一旦感染すると、従来一過性感染として完治したと思われていた患者の肝細胞のヒト遺伝子中にわずかに組み込まれて残存していることが明らかになったのです。これは、HBV抗体陽性でB型肝炎完治後と思われていた生体肝移植ドナー(臓器提供者)の肝臓を移植されたレシピエント(臓器受容者)のほとんどが、その後HBVに感染してしまったことが端緒となり明らかになりました。ドナー血液中にはHBVを見つからなかったことより、HBVはドナーの肝細胞に潜んでいたようです。移植のためレシピエントは免疫抑制剤を投与されており、このためわずかに潜んでいたHBVが再活性化し、顕在化したのでした。同様、B型肝炎一過性感染の既往者が、その後関節リウマチや悪性腫瘍に罹患、治療目的で免疫抑制剤や抗癌剤を投与中に、B型急性肝炎を発症する症例が報告されるようになりました。しかも、このような症例では免疫力が極端に低下していることもあり、HBV再活性化による肝炎は重症化しやすいことが報告されています。このように一旦治癒したB型肝炎既往感染者から新たに肝炎を発症した場合、de novo肝炎と呼びます。結局、HBVに一旦感染すると、急性肝炎の一過性感染のであれ、慢性化した持続感染のであれ、ヒトはHBV遺伝子を生体から完全に排除することはできず、ときとして再活性化による重篤な肝炎を再発しかねないということが明らかなになりかした。
 以上のごときB型肝炎の特徴をまとめると、下記のようになります。とくに赤字の部分は新しい知見です。

1、3歳以上のHBV初感染では急性ウイルス肝炎を発症、激症化しなければ基本的に予後良好で完治するが、B型は肝炎ウイルスの中で激症肝炎発症率が最も高く、さらに、激症化した場合、他のウイルス肝炎より、救命率が低い。
2、C型肝炎同様持続感染(キャリア化)した場合、肝硬変に進展、肝臓癌を併発しやすい。
3、B型肝炎はC型と違い既にワクチンが開発され予防法が確立している。しかし、一旦、感染し持続感染するとC型と異なりインターフェロン療法等が効きにくく完治しにくい。
4、3歳以上の初感染では、従来慢性化することなく完治していたが、最近外国に多く慢性化率の高い遺伝子型亜型Aが輸入、性感染症として日本国内に蔓延したため、HBV成人感染でも約10%の人が持続感染し慢性化、肝硬変、肝臓癌のリスクを負うことになった。
5、HBV母子感染は予防法の確立や国のB型肝炎母子感染防止事業により95%以上減少したが、一方、口移しの食事、尿、唾液、鼻汁、汗、涙等の関与が推定される父子感染の存在が明らかになった。また、体液暴露や身体的接触が多い保育所では数%の確率で水平感染し、3歳未満では持続感染による慢性化も報告されている。
6、3歳以上のHBV初感染では急性ウイルス肝炎を発症、激症化しなければ予後良好で後遺症も残さず完治し、終生免疫が成立すると考えられていたが、実際には、一旦HBVに感染すると、急性肝炎の一過性感染のであれ、慢性化した持続感染のであれ、ヒトはHBV遺伝子を生体から完全に排除することはできず、免疫抑制剤や抗癌剤投与時にときとして再活性化による重篤な肝炎を再発しかねないということが明らかなになった。

B型肝炎ワクチンをユニバーサルワクチンに

 上述のごときHBVに関する知見の集積により、HBV感染予防の重要性がますます高まっています。そのため、1992年WHOはすべての出生児にHBワクチンを接種することを推奨しました。それを受け2011年までに世界193ヵ国中、実に179ヶ国で小児全員に対するHBワクチン接種が定期接種化されています。一方、現在、日本でHBワクチンに公費負担があるのは、上述のB型肝炎母子感染防止事業の対象者のみです。その他、医療従事者等の希望者に対して実施される場合は任意接種(セレクティブ・ワクチン)であって定期接種ワクチン(ユニバーサル・ワクチン)になっていません。(「診療案内」のページ中「予防接種」の欄の「子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて」の段落中「子宮頸がんと予防ワクチン」のアニメのChapter3「予防接種とワクチン」を御覧下さい。)日本は、世界179ヵ国に入れないほどワクチン後進国なのです。この理由は、「ワクチン・ギャップについて」の段落でご説明したとおりです。国民が皆HBワクチンを受ければ、保育園等集団生活の場で、HBVキャリアの者を意識する必要もなくなります。医療従事者である私自身は、既にHBワクチン接種を終えていますが、家族は未実施です。これ以上リスクを犯して定期接種化を待つことはできません。これを機に、家族全員にHBワクチンを接種することにしました。

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2013/12/28 
「12月23日開催されたTRY-Fチャリティボクシングイベント1周年記念大会“エレクションデイ”に参加してきました(その3)。」

元日本や元世界チャンピオンとの記念撮影の写真をアップします。元東洋太平洋・日本スーパーウェルター級1位「タンタン」こと川嵜左記タツキ選手との記念撮影です。

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2013/12/28 
「12月23日開催されたTRY-Fチャリティボクシングイベント1周年記念大会“エレクションデイ”に参加してきました(その2)。」

元日本や元世界チャンピオンとの記念撮影の写真をアップします。左から、元WBA世界スーパーフライ級チャンピオン清水智信選手、元日本ジュニアバンタム級チャンピオン小池英樹選手、元日本スーパーフライ級チャンピオン川端賢樹選手との記念撮影です。

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2013/12/28 
「12月23日開催されたTRY-Fチャリティーボクシングイベント1周年記念大会“エレクションデイ”に参加してきました(その1)。」

 7月15日に続き、12月23日東京新宿FACEで開催された「TRY-F」主催のチャリティーボクシングイベント(下図)でリングドクターを務めてきました(2013年6月23日院長コラム「TRY-Fチャリティーボクシングマッチ」を御参照下さい)。その検診風景(下図)と名だたる元日本や元世界チャンピオンとの記念撮影の写真をアップします。今回、試合に先立ち行われた開会式で生まれて始めてリングに上がりました。リング上で国歌斉唱を聞き、選手でもないのにやたらアドレナリンが出るのを感じました。試合もバッチリ、リングサイドのかぶり付きで観戦しました。幸い怪我をする選手もなく無事大会は終了しました。

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2013/12/22 
「ホテル・マジェスティック in サイゴン」

 三鷹市医師会の同好会に一つにウォーキング同好会があります。ここ数年ウォーキング同好会では、ゴールデンウィークの連休を利用し診療を休まずにすむ海外旅行を企画しています。来年の企画である「診療を休まずに行く3泊4日カンボジア、アンコールワット」と題する案内を頂きました。私はウォーキング同好会の定例メンバーではありません。しかし、このツアーを始め同好会主催の企画は何れも医師会関係者ならどなたでもwelcomeな企画です。来年のゴールデンウィークは現在新築中の自宅への引越し時期に重なるかも知れず、参加を見合わせる予定ですが、昨年家族5人で参加したベトナムホーチミン2泊4日間の旅行についてお話します。この企画は、当初パリ4日間の弾丸ツアーとして計画されていましたが、さすがに年配の先生方から不評だったようで、結局参加者が集まらず、近場のベトナムに行き先が変更となったツアーです。
 我が家の4姉妹のうち、末の3人は当時まだ小学生です。海外旅行に連れて行っても有り難味が解らず、得るものも少なかろうと思い、この10年海外旅行に行くことはほとんどありませんでした。また、海外は国内旅行に比べ何かと不慣れな点が多いものです。さらに私は英会話が上手くありません。子連れ旅行では安全性が最優先です。その点からも海外旅行は敬遠されてきました。さらに海外のホテルには、和風旅館のように6人で泊まれる部屋はほとんどありません。6人一緒で寝るには、ツインの部屋にエクストラベッドを入れ、connecting roomを確保するしかありません。さらに、大方の海外旅行は子供割引がありませんから、しっかり6人分の旅費を払わなければなりません。コストを考えればマイカー一台で国内旅行が最も合理的です。
 従来そういった考えだったにもかかわらず、昨年参加したのにはいくつか理由があります。一つ目は、5月3日から6日の4連休を利用し、まったく診療を休む必要がなかったことです。勤務医時代は、休みの間は互いに代診を勤め合うため、比較的気軽に休むことができました。しかし、開業して4年、長期に休むのは勇気が要ります。当院では例年ゴールデンウィーク中は暦通り診療していますが、休診する必要のない日程だったのは有り難かったです。
 また、昨年の正月から相当ストレスが溜まり、一度しっかりとリフレッシュしなければと思っていました。当院では健診に力を入れているため、健診用のコンピュータシステムを導入しています。開業して4年、糖尿病、高血圧などさまざま疾患領域のガイドラインが改訂されていますが、忙しさゆえその改訂を組み込んだプログラム変更を行っていませんでした。昨年4月から委託臨床検査会社を変更することになり、多数の検査項目の基準値が変更になることをよい機会と捉え一念発起、全面的なプログラム改訂を行うことにしました。当然、日々の診療終了後の作業となるため、夜や休みの日に作業をせざるを得ません。1月以来土日もほとんど休みなくクリニックに閉じこもり、帰宅も12時前後になること、珍しくありませんでした。その作業もなんとか上梓、若干燃え尽き症候群になっていました。若い頃ならまだしも、50歳を過ぎると昔のような馬力も根気もありません。根を詰めた仕事は月単位が限界で、どこかで一度リフレッシュしないとモチベーションが上がってきません。旅行に参加し家族と朝から晩まで一緒に過ごし、心行く迄リフレッシュすることができました。
 次に長女の問題です。2012年3月2日の院長コラム「一泊二日の光の村養護学校秩父自然学園体験学習会に行ってきました。」で長女が全寮制の学校に入学する話を掲載しました。この学校では2週間毎に4日間帰省することになっています。4月の入学式で配布された年間行事計画で、5月3日から6日までの週末、長女が帰省しないことが判り、今回家族5人で参加できることがわかりました。
 さらに、なんといっても三鷹第一クリニックの宇井義典先生というツアコン同行だったからです。鉄研出身の宇井先生は毎年開催される三鷹市医師会旅行でも見所満載の緻密な旅程を企画してくれます。いつもながらの気配り心配りで、旅先で陥りがちなトラブルを未然に回避できるよう適切なアドバイスをしてくれます。今回のようにリスクの高い海外旅行では一層安心感が増します。本来自身で手配しなければならない空港と自宅の往復も貸し切りバスをチャーター、楽をさせて頂きました。
 さて、旅行の見所をいくつか挙げたいと思います。
 ホーチミン(=サイゴン)での宿泊先は、「Majestic Hotel Saigon」でした。自由主義経済の導入等ドイモイ政策のもと、経済発展著しいベトナムにおいて、フランス植民地時代から営業されている数少ないコロニアル様式のクラシックホテルです。開高健の作品をいくつか読むうち彼がベトナム戦争取材中に定宿としていたことを知り、以前から一度は泊まってみたいと思っていた五つ星ホテルです。元来、真新しい現代風ホテルより伝統的建築のクラシックホテルの方が好きな私としては、アジアでは台北の圓山大飯店香港のザ・ペニンシュラザ・オリエンタル・バンコクシンガポールのラッフルズ(カクテルのシンガポールスリング発祥の地)グッドウッドパークホテルと同様のホテルと認識していました。今回宿泊先がマジェスティックと知り、家族5人二部屋に分かれるのを覚悟で参加するつもりでした。一応Connecting roomの希望を出していたところ、ツアコン宇井先生より、数千円の追加料金で、「COLONIAL PRESIDENT SUITE」という最高級の部屋に家族5人で泊まれるとの連絡を頂き、二つ返事でお願いしました。ホテルのホームページの画像では、部屋の広さを実感しづらいですが、優に40畳はあるリビング、15畳近くありそうな寝室が二つ、浴室も二つありました。リビングにはバーカウンターに加え、アップライト型ではありますがピアノもありました。娘達は皆ピアノ教室に通っていますので、日々の練習をサボらずに済みました。
 マジェスティックホテルは歴史があるため各国のVIPが多数定宿として利用しています。さっと有名人を列挙すると、秋篠宮親王、英国のアンドリュー王子等各国の王室ファミリー、フランスのミッテラン元大統領、シンガポールのリー・シェンロン首相(リー・クアンユー元首相の息子です)等各国政府首脳、フランスの女優カトリーヌ・ドヌーヴ等の著名人が私達の部屋に宿泊しています。これまでそういったVIPの方々が宿泊された部屋に泊まったことなど一度もなく、貴重な経験をしました。
 旅行中、サイゴン川でのディナークルーズ、メコン川クルーズ、手漕ぎボートによるジャングルクルーズ(下図)と三度も船に乗る機会がありました。ジャングルクルーズでは4、5人の客を乗せた小舟を船頭が櫂を手で漕ぎ、鬱蒼とした密林の沼地を進んで行きます。子供たちはジャングルクルーズというと真っ先に東京ディズニーランドのアトラクションを思い浮かべてしまいます。娘たちに本当のジャングルを見せることができました。
 また、ホーチミンツアー最大の見所はなんといっても、「クチの地下トンネル」観光です。ベトナム戦争中、南ベトナム解放戦線、いわゆるべトコンは、クチ地区に全長200kmにも及ぶ難攻不落の地下トンネル網を構築しました。米軍の火責め水攻めに対する備え、地下で煮炊きした煙の処理、糞尿の処理方法など見事な工夫がなされ、米軍は最後まで陥落させることができませんでした。私は以前から、唯一アメリカ軍を打ち負かした国民として、ベトナム人に対し畏敬の念を抱いていましたが、彼らの粘り強い精神と創意工夫に感嘆させられること頻りでした。日本出発前夜、地下トンネルや塹壕=タコツボに対する予備知識を与えようとTSUTAYAでレンタルしてきた映画「プラトーン」を娘たちと鑑賞していました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、真実のベトナム戦争をリアルに描いた映画として「プラトーン現象」と言われ、封切られた当時、社会現象にもなりました。余りに生々しかったため、娘たちが黙りこくってしまい、若干チョイスを誤った感がありました。しかし、娘たちには戦争の悲惨さ、不条理を充分に伝えることができたように思います。
 さらに、戦争証跡博物館では、米軍により散布された枯葉剤の影響で、ベトちゃんドクちゃんに代表されるような障害を持って生まれた子供たちの写真が多数展示されており、娘たちは強い衝撃を受けた様子でした。私自身も広島平和記念資料館を想起させられ、戦争の悲惨さを再確認することができました。
 機会が許せば是非また参加したいと思います。
 末筆ですが世話人の宇井先生、旅先で小銭の管理を引き受けてくださった加藤整形外科医院の加藤謙二先生、我が家の写真を多数撮影してくださった先生方、子供達の面倒を見てくださった先生方のご家族に心より感謝申し上げます。
(本文は三鷹市醫師会雑誌医人往来平成24年7月号掲載の記事を改変したものです)

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2013/12/22 
「薬物乱用頭痛について」

 外来診療をしていて最近しばしば見かけるのが「薬物乱用頭痛」(Medication overuse headaches, MOH、別名リバウンド頭痛)です。薬物乱用頭痛とは、鎮痛薬を過剰服用することで、逆に頭痛の頻度が増え、連日のように頭痛が起こるようになる病態です。患者さん自身は、頭痛薬の飲み過ぎが原因と理解していないため、漫然と頭痛薬を服用し続ける傾向があります。典型的には、中等度から重度の片頭痛や緊張性頭痛ため頭痛薬を過剰摂取し発生することが多いようです。市販の鎮痛薬が容易に入手可能なことも一因と思われます。頭痛持ちの方は極軽度の頭痛時や、さらにはイベントの前に予防的に服用したり、必要以上に過剰服用する傾向があります。
 薬物乱用頭痛の有病率は、一般に人口の1〜2%とされ、頭痛の中では緊張型頭痛、片頭痛に次いで3番目に多く、世界中で問題になっています。頭痛の罹病期間は約平均18年と長く、成人だけでなく小児や思春期においても見られます。典型的には中年女性の罹患率が高い傾向にあります。
 乱用の原因となる薬物は、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)等の鎮痛薬、エルゴタミン製剤(片頭痛治療薬、ジヒデルゴット)、トリプタン製剤(片頭痛治療薬、イミグラン、ゾーミック、レルパックス、マクサルト、アマージ)、オピオイド(麻薬様物質)などが挙げられます。最も多いのは市販の鎮痛薬を乱用しているケースですが、近年はトリプタン製剤の処方量が増えていることに加え、下記の如く、トリプタン製剤が他剤に比べ少ない服用回数でMOHを発症することより、トリプタンによるMOHが増えています。

MOHに至るまでの鎮痛剤平均回数、 期間
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トリプタン製剤  18回/月  1.7年
エルゴタミン製剤  37回/月  2.7年
鎮痛剤      114/回/月  4.8年
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 一般に、鎮痛薬を月に10〜15日以上、3ヶ月間以上継続的に内服している場合、乱用と判断します。
 MOHの原因についてはまだはっきりとは解明されていません。頭痛薬過剰服用に伴い痛みに対する感受性が過敏になる、つまり痛みの閾値が下がってしまうことが原因ではないかと考えられています。しかし、関節リウマチの患者さんも大量に鎮痛薬を使用しますが、薬物乱用頭痛は起きません。よって、片頭痛や緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛の発症要因となっている可能性があります。
 薬物乱用頭痛の治療の原則は、以下の3点です。
1. 原因薬物の断薬
2. 原因薬物中止後に起こる頭痛(反跳頭痛)に対する治療
3. 予防薬の投与
 当然ですが、まずは乱用の原因となった薬物の断薬です。徐々に減量するより即刻断薬する方が有効なようです。しかし、そのことにより薬物離脱症状〜リバウンド頭痛(反跳頭痛)が2〜10日間悪化します。典型的には約2ヶ月間離脱症状が持続しますが、その後は、頭痛の頻度や強度が以前より著しく軽減します。リバウンド頭痛に対して当該鎮痛剤を再服用すると頭痛は軽減しますから、反跳頭痛緩和の施策を講じなければ、過剰服薬行動を再強化しかねません。さりとて、反跳頭痛緩和の施策が過剰になればまた薬物乱用頭痛を招きかねません。このような理由で、リバウンド頭痛の軽減に、私は漢方薬(呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散等)を使用します。漢方薬の詳細はまた別の機会にお話しますが一つだけ。西洋薬は、同じ病気の同じ症状に対して万人に同じ薬を処方します。しかし、漢方薬は患者の体質や病期(初期なのか治癒期なのか)等で使用する薬が異なります。ですから、同じ薬物乱用頭痛でも患者さんにより使用する漢方薬が異なります。この見極めが肝心なのです。ピタッとはまると面白いように効きますが、外れると「まったく効かなかった。」と言われかねません。この数年、漢方にはまり勉強会に頻繁に参加、猛勉強中です。患者一人一人に合った最適な漢方薬選択の的中率が最近増し、漢方薬の処方が一層楽しくなっています。詳細はまた別の機会にお話します。
 頭痛予防薬として、抗うつ薬、抗てんかん薬、ステロイドホルモン、トリプタン製剤、消炎鎮痛剤等を投与します。MOH治療の成功率は70%程度といわれていますが、約40%の患者が再発しています。治療終了後1年以内の再発が最も多く、その後、再発リスクは減少していくため、頭痛薬使用頻度(月10日以内)、鎮痛剤の功罪についての患者教育の徹底が再発防止策となります。治療が成功するか否かは、患者さんの意識改革や忍耐力ですが、医師の話に耳を傾け、断薬を勧めるその言葉を信じてもらえるか否かは、やはり、医師と患者間の信頼関係の構築に掛かっています。

2013/11/30 
「12月23日開催のTRY-Fチャリティーボクシングイベントにリングドクターとして参加します。」

本年7月15日開催された前回大会に引き続いて12月23日新宿FACEで開催される「TRY-F」主催のチャリティーボクシングマッチ(下図)にリングドクターとして参加します。よろしければ御観戦下さい。収益金は「公益財団法人そらぷちキッズキャンプ」に寄付されます。

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2013/11/29 
「11月29日ホテルニューオータニで開催されて第63回日本アレルギー学会秋季学術集会に参加してきました。口唇裂傷を押しての参加です。」

 日本医科大学大学院医学研究科頭頸部感覚器科学分野大久保公裕教授大会長のもとホテルニューオータニで開催された第63回日本アレルギー学会秋季学術集会に11月29日1日だけ参加してきました。今回の学会テーマは「領域を超えたアレルギー疾患の治療」です。
 毎月毎月クリニック来院者数が増えてはいましたが、11月になり感冒流行とインフルエンザ予防接種が重なり一気に増加、昨日11月28日は99人が来院、当院の新記録となりました。19時50分から武蔵境で開催されるインフルエンザの講演会に出席予定だったため、遅刻しないかと冷や冷やしながら診療、定刻の1800より1時間30分近く遅れてようやく最後の患者さんの診察が終わりました。片付けもしないまま講演会に急ぎ駆けつけました。21時講演会が終了、急ぎクリニックに戻り、カルテに書き漏らしたり、診療上見落としたりした点はないか、その日来院された患者さんのカルテを一人一人チェック、終われば既に24時近くに。今週は毎晩、医師会理事会、産業医訪問、講演会、勉強会で埋まり、三鷹市民健康診査や健診センター受診者のレントゲンフィルム、心電図、眼底写真の読影や総合判定、紹介状や介護保険主治医意見書の作成等が押せ押せになっていたため一念発起、翌朝5時30分頃までかけて全て終わらせました。翌日のアレルギー学会参加を楽しみにしていたためテンションは高く、眠気を感じることなく一気に遣り上げました。
 帰路、松屋久我山店で以前から気になっていた「肉味噌茄子コンボ牛めし」の朝食をとり、朝6時に帰宅、取り敢えず仮眠しました。昼前に起床、寝ぼけ眼でまずはシャワーと廊下を歩いていると不覚にもドア枠の角に顔面を強打、ドア枠と自身の歯に挟まれた上唇を裂傷、タラコのように膨れ上がった上唇から大量に出血する羽目に。唇は血流豊富なため、傷の割に結構派手に出血します。写真を撮ってコラムにアップしようかとも思いましたが、写真撮影を依頼した四女から、「気持ち悪いから止めた方がいい。患者さんが減るよ。」と窘められ、写真は持重することにしました。
 さて、このような事態のため学会は午後からの参加になりました。もともと拝聴したかった演題は午後だったため、半日ですが大変有意義な学会となりました。19時のイブニングセミナー終了までに、「温度感受性TRPチャネル」「食物アレルギーの経口免疫療法」「気道リモデリング」「One Airway, One disease−好酸球性気道疾患−」などを勉強することができました。とくに、来年4月から舌下免疫療法(経口の減感作療法、花粉症などのアレルギーの根治療法)の保険収載が予定されていることもあり、アレルギー疾患の治療法はここ数年で大きく変化するはずです。30日土曜日夕方舌下免疫療法講習会が予定されていますが、生憎別の勉強会とバッティングし参加できません。上記の如く保険収載は来年4月のため、舌下免疫療法は来シーズンのスギ花粉症には間に合わないと思います。そういったわけで、来年5月京都で開催される日本アレルギー学会春季臨床大会の講習会の方に参加するつもりです。当院での治療の準備が整い次第告知します。

2013/11/25 
「婦人科医診察、子宮頸部細胞診(子宮頸がん検診)の運用が始まりました。」

 2013年10月17日より婦人科専門医による内診(内診台に上り、腟鏡を使い子宮頸部や腟内部の様子を眼で見て異常の有無を確認したり、子宮の形、大きさ、位置、表面の状態などを診察したりする)と子宮頸部細胞診(内診台に上がった状態で、婦人科医が子宮頸部をヘラやブラシなどで擦り細胞を採取、子宮頸がんの有無を調べる)が始まりました。今回婦人科専門医を招聘、検診受検者の御希望を伺いつつ日程を調整、当面不定期ですが運用を始めました。
 それ以前当院にはマンモグラフィ同様、婦人科診察がありませんでした。そのため、女性健診受診者の方々は他施設に回っていただき、御不便をお掛けしていました。今後は当院施設内でマンモグラフィ(乳房レントゲン)や婦人科診察(子宮頸がん検診)を受けて頂くことができます。なお、婦人科専門医による診察はあくまでも検診目的であり、他の産婦人科医院のごとく、婦人科疾患を患っている方に対する外来診療はいたしておりません。
 子宮頸がんは、ある種のヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因
(「診療案内」の「予防接種」の段落の「子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについて」を御参照下さい。)で、ウイルスは性交渉により感染します。よって、一度でも性交渉の経験のある女性は完全には予防できません。ですから、基本的にすべての女性は毎年子宮頸がん検診を受けるべきです。

2013/11/15 
「マンモグラフィ(乳房レントゲン)の運用が始まりました。」

 従来の乳房超音波検査に加え、マンモグラフィ(乳房レントゲン)を新規に設置「当院のご案内」の「設備紹介」を御参照下さい。)、運用を始めました。フィルムの読影は、特定非営利活動法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会の検診マンモグラフィ読影認定医の放射線科専門医に依頼するため、結果報告は、受検およそ1週間後となります。導入した機器は、島津製作所製のマンモグラフィシステムSEPIOです。また、マンモグラフィの画像は他のレントゲン検査画像より精密なため、今回、残債の残っているDirect Degitizerや画像ワークステーションのコンソールも買い換えました。結果また借金を増やすことになってしまいました。
 乳がんは1年間に約53,000人が発症します。胃がん、大腸癌と並び女性にとって最も多いがんです。とくに、30〜50代の女性では胃がん、大腸がんの数倍の発生率です。さらに、最近50年間その発生率も死亡率も増加の一途を辿っています。しかし、残念ながら日本の乳がん検診受診率は先進諸国の中で圧倒的に低いのが現状です。下表の50〜69歳女性のマンモグラフィ検診受診率の諸外国との比較を御参照下さい。
 乳がんの発生、増殖に女性ホルモンであるエストロゲンが関与しているため、乳房のエストロゲン暴露レベルを高める、妊娠や出産経験がない、授乳歴がない、初経年齢が早い(11歳以下)、閉経年齢が遅い(55歳以上)、初産年齢が遅い、月経周期が規則正しい、月経周期が短いことなどが発症リスクになります。また、経口避妊薬ピルの内服、閉経後のホルモン補充療法なども乳がんリスクを高めます。その他、飲酒習慣、喫煙、乳がん家族歴、シフトワークなどの不規則な生活、高脂肪食の摂取、閉経後の肥満、放射線被曝なども発症リスクです。これらに該当する方は少なくとも2年に1回は乳がん検診を受けて下さい。

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2013/11/15 
「にんにく注射体験記」

 2013年11月15日よりにんにく注射の提供を開始する予定ですが、それに先立ち11月13日にんにく注射を自ら初体験しました。にんにく注射ベーシックを注射してみました。たしかに、注射を始めて1分足らずニンニクのような臭いを鼻の奥で感じました。しかし、その臭いも注射を打ち終わって1分ほどで消失、とくに口臭、体臭などは残りませんでした。血管注射ですが、注射時間は3分ほどです。薬剤の注入速度が早すぎると、一般に血管痛が出やすくなります。私の場合、3分程度の注入時間ではわずかに痛みを感じる程度のため、注射をしてくれた看護師にあえて注射速度を遅くするよう依頼しませんでした。
 注射時に血管痛がした場合、「注射をする看護師の技術に問題があるのではないか」とクレームを言われる患者さんがたまにいらっしゃいます。この血管痛は、注射針が血管の外にずれていような例外的なケース(看護師は、薬液を注入する前に一度注射器のピストンを引き、血液が逆流するのを確認、注射針の先端が間違いなく血管の中にあることを必ず確認しています。)を除き、血管痛の主たる原因は薬剤が血管壁に高濃度で触れるためです。血管壁は血液と同じような浸透圧、pH(酸性かアルカリ性か)の薬剤に対しては痛みを感じませんが、大きく異なる場合、血管内皮に傷がつくため血管痛が発生します。注射用薬剤は血液ではありませんから、同じ浸透圧やpHではありません。製薬メーカーはできるだけ血液に近づけるよう工夫していますが、かなり異なる場合もあります。そういった薬剤では血管痛が出やすいわけです。しかし、そういった薬剤でも、注射速度を遅くすると痛みを感じなくなる場合が多いです。ゆっくり注射すると注入された薬剤が血液に薄められ血液本来の浸透圧やpHと似通ってくるためです。
 また、絶妙なテクニックとして注射針の針先を血管内腔の端ではなくより真ん中に近い所に保持すると痛みが少なくなります。それだけ薬液が直接血管内皮に触れにくくなるかです。もともと注射する静脈の太さは2mm程度ですから、このテクニックは0コンマ数ミリの話で、看護師の技術には感心させられます。
 注射中、血管痛を感じた方は遠慮せず申し出て下さい。注射速度を緩めたり、針先を微妙にずらしたりして、当院看護師はきっと苦痛を取り除いてくれるはずです。
 ところで、肝心なにんにく注射の効果です。「自由診療コーナー」のにんにく注射Q&Aに書いてあるような症状は、少なくとも現時点では私にはありません。もともと私は元気です。ですから、にんにく注射をしてもとくに元気になったように感じませんでした。元気な人に注射するとますます元気になるというわけにはいかないようです。ただ、前コラムのように、前日の13日も残業で深夜0時過ぎに帰宅、翌14日和歌山で開催された第56回日本甲状腺学会学術集会に日帰りで出張、深夜0時過ぎに帰宅、疲れ知らずで原稿を執筆できていることから、それなりに効果があったのかもしれません。効果のほどは十人十色、皆が皆、効果があるわけではないはずです。是非、一度ご自身でお試になってみては如何でしょうか。

2013/11/15 
「11月14日和歌山市で開催されて第56回日本甲状腺学会学術集会に参加してきました。和歌山ラーメンも食べてきました。」

 和歌山県立医科大学内科学第一講座赤水尚史教授大会長のもと和歌山県民文化会館で開催された第56回日本甲状腺学会学術集会に11月14日日帰りで参加してきました。今回の学会テーマは「人材育成」「地域医療への貢献」「世界に情報発信」の三つです。14日前後にも外せない業務があったため、日帰りの参加になりました。学会では、国際分子甲状腺学シンポジウム、専門医教育セミナー、イブニングセミナーなどを聴講しました。最も勉強したかった「甲状腺結節取り扱い診療ガイドライン2013」のセミナーに参加できたのが有意義でした。甲状腺エコーを実施すると頻繁に結節性病変を認めます。その場合、良性の濾胞腺腫と濾胞腺癌の鑑別に悩むことが珍しくありません。さらに、過形成の腺腫様結節〜腺腫様甲状腺腫との鑑別も問題になることがあります。腫瘍を発見した場合それが良性であるか悪性であるか、一番肝心なところです。現在のベストな診療方針を確認できました。それから、イブニングセミナーでは、バセドウ病患者が妊娠した場合の治療方針も学ぶことができました。今回学習した知見を明日からの診療に生かしていきます。
 ところで、和歌山といえば皆さんはまず何を思い浮かべますか。私は「和歌山ラーメン」です。以前池尻大橋にあった和歌山ラーメン「まっち棒」の濃厚な豚骨醤油味にハマリ、家族で何度も通いましたが、ハワイ店も出すという拡大経営が失敗、閉店の憂き目に。そこでネットで検索し見つけた都内の某和歌山ラーメン店に行ってみましたが、私の中の和歌山ラーメンではなく、以来和歌山ラーメンを口にする機会がすっかりなくなっていました。今回、14日の昼食は和歌山ラーメンと心に決めていました。しかし、最近自身のメタボ化が気になり、減量を始めたばかりの身です。和歌山ラーメンのスープはかなり濃厚な豚骨で、高カロリーのこと疑いようがありません。一瞬逡巡しましたが、三鷹市内で開業するラーメン好き某整形外科医の「現在、炭水化物ダイエット中だけど、日本人のソウルフード、ラーメンだけは除外品目にしている。」(何だかTTP交渉みたいです。)の言葉を頂戴、和歌山ラーメンを食べることに決めました。ただ、1日摂取カロリーの帳尻を合わせるため、朝食はグリーンスムージーだけにし、行き帰り新幹線車中でもお茶以外一切口にしませんでした。和歌山駅に昼前に到着、早速駅の観光案内で和歌山ラーメンの情報を収集、ラーメンマップなるものをいただきました。係員に濃厚味のお勧め店を訪ねると駅ビルにある「丸美商店」は有名で十分濃厚とのこと。学会開会式に十分間に合いそうなので入ってみることにしました。確かに出されたラーメンどんぶりの下にはシルバーのお盆(下図)、カウンターには「早なれ寿司」(アセの葉で巻いた鯖寿司)(下図)とまっち棒を髣髴させる装いでした。しかし、その味は今ひとつ濃厚さに欠け、豚骨醤油というより豚骨に近いように感じました。いささか消化不良の私は、帰りの駅ビルで新横浜ラーメン博物館にも出店していた「井出商店」のラーメンをお土産にしました。ちなみに、クリニックスタッフへのお土産は梅餅にしました。多くの方にとって和歌山名物といえば、やはり、梅か蜜柑でしょうから。

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2013/11/10 
掲載したコラムは諸般の事情により一時的に削除しました。

2013/11/10掲載したコラムは諸般の事情により一時的に削除しました。

2013/11/04 
「口腔アレルギー症候群」

 口腔アレルギー症候群(Oral allergy syndrome;OAS)とは、食物、なかでも果実を食べた後15分以内に、食べ物が直接接触した口唇、舌、口の中や喉の粘膜が痒くなったり、ヒリヒリしたり、腫れたり、喉頭閉塞感を感じたりするアレルギー疾患です。口や喉の症状だけでなく、顔が痒くなったり、目や鼻に花粉症のような症状が出たり、咳、呼吸苦など喘息症状が出たりすることもあります。また、下痢、腹痛といった胃腸症状、さらにはアナフィラキシー・ショックが発症することも報告されています。花粉症の人が口腔アレルギー症候群を引き起こしやすいのは、花粉と果物や野菜に含まれるアレルゲンに交差抗原性(アレルゲンに共通の物質が含まれていること)があるためです。原因となる花粉と食物を下記の表で示します。
 北海道に多いシラカバ花粉症では30〜50%の患者さんが、りんごやさくらんぼなどのバラ科の果実を食べると口腔アレルギー症候群を起こすことが知られています。また、キウイ、メロンなどのように花粉症がなくとも口腔アレルギー症候群がみられる場合もあります。成人では花粉症に続いてOASを発症する場合が多いですが、年少児では原因食物の多食によって発症するようです。
 花粉症の増加とともに最近OASの方も増加、相談に来院される方が増えています。
 上述のような原因花粉や原因食物、果物などについて血液検査にてアレルギー体質の有無を調べることができます。しかし、実際に症状があるにもかかわらず、検出できないこともあります。遺伝性が報告されているので、血縁家族に同様の症状のある方はOASの可能性が高いです。
 治療法としては、まず、原因と考えられる食べ物の摂取を避けることです。そうすれば、まったく症状は出ません。誤って摂取し、OASの症状が出現した場合は、軽ければ経過観察でもかまいませんが、症状が強いようなら抗アレルギー薬や副腎皮質ステロイド薬を一定期間内服します。喘息発作、アナフィラキシー症状があれば必ず医療機関を受診して下さい。

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2013/11/03 
「にんにく注射について」

 にんにく注射とは、平石クリニックの平石貴久院長により命名されたビタミンB1を主成分とする静脈注射です。にんにく注射といっても、実際にニンニク(下図)のエキスが入っているわけではありません。注射をすると鼻の奥でニンニクのような香りがしてくるため名付けられました。 
 実際のニンニクには、ビタミンB1はあまり多くなく、むしろ、B6が豊富です。ニンニク臭のもとになる物質はアリシンといい、ビタミンB1と結合するとB1の吸収を高める効果があります。ですから、ビタミンB1の豊富な豚肉とニンニクを一緒に食べるとB1が効率よく吸収されます。ややこしい話ですが、ビタミンB1が主成分のにんにく注射には本物のニンニクは入ってなく、本物のニンニクにもビタミンB1はそれほど多く含まれませんが、B1の吸収を高めニンニク臭のもとになるアリシンが入っているのです。このアリシンとビタミンB1を事前に結合させ、B1の吸収を高め、体内での効果持続時間を延ばした薬剤が「アリナミン」(下図)です。アリナミンを注射すると、血中でアリシンの代謝産物硫化アリルが遊離し、ニンニク臭を感じるのです。
 にんにく注射は、有名スポーツ選手(朝青龍、清原和博、丸山茂樹など)や芸能人(SMAPのキムタク、浜崎あゆみなど)に愛好者が多く、メディアでも取り上げられ広くその効能が知られるようになりました。ビタミンB1は、1910年日本人の鈴木梅太郎博士が米糠から発見しました。糖質エネルギー代謝、アミノ酸代謝、アルコール分解、神経伝達に必須の物質です。ですから、いくら食事をしっかりと摂取しても、ビタミンB1が不足するとそれら栄養分を分解し体内で必要なエネルギーを取り出せません。さらにはそれらの栄養分は脂肪に変換され蓄積、肥満になってしまいます。また、B1は筋肉の疲労物質である乳酸を除去する働きがあるため、不足すると疲れやすくなります。ビタミンB1は、アルコール多飲、炭水化物過食(とくに白米、インスタント食品、清涼飲料水の多飲)、妊娠・授乳中(母乳に分泌されるため)、甲状腺機能亢進症、強い労作・運動(筋肉がもっぱら糖質をエネルギー源とするため)、体力を奪うような病気(がん、感染症、肝不全など)、高齢者(利用率の低下)で不足しがちです。白米食に偏りがちなわが国において、ビタミンB1欠乏による脚気は、かつて結核と並ぶ二大国民病でした。私も子供の頃は、白米に黄色のビタミン強化米を混ぜ合わせて食していたことを覚えています。
 脳などの中枢神経、心臓、胃腸を含めた筋肉は、エネルギー源として糖質を大量消費するため、真っ先に欠乏症状をきたしやすい臓器です。B1が欠乏してくると、全身倦怠感、食思不振、手足のしびれ、むくみ、動悸、体重減少、易興奮性、集中力低下、頭痛、不眠などの症状が出ます。さらに高度の欠乏症になると脚気に至ります。
 ビタミンB1は、食品としては豚肉、ハム、焼豚、ベーコン、たらこ、ウナギ(蒲焼)、小麦胚芽、玄米、ナッツ類、豆類、レバーなどに多く含まれます。ただし、加熱にて失活するので調理法を工夫する必要があります。にんにく注射は手っ取り早い方法ではありますが、これらの食品を積極的に摂取することが基本であることを忘れないで下さい。
 ビタミンB1が著しく欠乏し、脚気衝心などを発病していれば保険診療となりますが、それ以外の場合は保険外診療となります。保険外診療は自由診療のため、注射料は医療機関により異なり1,000〜5,000円程度のようです。ただ、後述の如く医療機関により中身が異なるので、一概に1,000円が安く、5,000円が高いとはいえません。
 以前より数人の患者さんからにんにく注射のリクエストいただいていました。マンモグラフィーや婦人科診察(子宮癌検診)導入で多忙を極め遅れていましたが、やっと準備が整い近々にんにく注射を始める予定です。現在点滴用ベッドを増やす準備も進めています。凝り性の性格ゆえ準備に準備を重ね当院独自のメニューを開発してみました。当院では、にんにく注射ベーシック(ビタミンB1単剤)が1回2,000円程度、B1に加えB2、B6、B12、ビタミンCを配合させた点滴が3,500円程度とする予定です。他の医療機関と同程度の価格ですが内容には自信があります。市販の栄養ドリンク剤で高価なものが3,000〜4,000円(ユンケルスター4,078円、リポビタンエース3,159円)することを考えれば、それほど高価とは思えません。詳細は近々ホームページにアップします。乞ご期待。

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2013/10/26 
「大阪国際会議場で開催された第36回日本高血圧学会総会に10月25日参加しました。」「追記 ノバルティスファーマ社の高血圧治療薬ディオバン錠の臨床研究におけるデータ改ざんについて。」

 平成25年10月24日から26日にかけて、国立循環器研究センター生活習慣病部長/高血圧・腎臓科部長、河野雄平会長のもと大阪国際会議場で開催された第36回日本高血圧学会総会に参加してきました。拝聴したい講演が最も多かった25日のみクリニックを休診にして参加しました。今回の学会テーマは「高血圧研究と診療の進歩:最先端のその先へ」です。
 従来、さまざまな病態の患者さんの血圧値を、悪しき生活習慣の是正や降圧剤の投与によりどこまで下げるかが検討課題でした。しかし、最近は単に高血圧の是正より、是正された血圧値の内容、降圧の質の重要性が明らかになっています。つまり血圧値の量より質への転換です。具体的には、従来クリニックに設置してある自動血圧計や私自身が使用する水銀血圧計で患者さんの血圧値を測定し高血圧を評価していました。降圧剤は1か月分処方することが多いので、1年間でたった12回しか血圧を測定しないことになってしまいます。心臓は約1秒毎に1回拍動しますから、1年間に60(秒)×60(分)×24(時間)×365(日)=31,536,000回拍動します。拍動が変われば血圧も変化します。にもかかわらずたった12回の測定でその患者さんの高血圧の質を正しく評価できるわけがありません。さらに白衣性高血圧といい、普段血圧値は適切な値なのにクリニックに来院すると緊張感から異常高値になってしまう方もいます。そこで昨今は、高血圧で通院中の患者さんには、1日2回、起床時と就寝前の家庭血圧を測定してもらうか常識になっています。このことにより、1、診察室でも家庭でも血圧の高い方=高血圧、2、診察室では高いが家庭血圧は正常な方=白衣性高血圧、3、診察室では正常血圧なのに、むしろ家庭血圧の高い方=逆白衣性高血圧、仮面高血圧、4、診察室、家庭血圧とも正常な方=高血圧のない方、に分類されるようになりました。意外に思われるかもしれませんが、特別なストレスがなければ、1日24時間のうち起床時の血圧が最も高いことが多く、仮面高血圧は決して珍しくはないのです。家庭血圧をきちんと測定しても、1日86,400回の拍動に対し、2回の測定でしかありません。そこで、最近は自由行動下血圧測定(ABPM)を行っています。これは、携帯用血圧計を患者さんの体に取り付け、就寝中も含め24時間連続して約30回程度血圧測定するものです。この装置の登場により、就寝中の血圧値も測定可能となりました。これらの知見により、従来の診察室血圧値<140/90未満の基準は高血圧診断のためスクリーニング値で、むしろ、24時間ABPM平均値<130/80未満、その日中血圧値<135/85未満、その夜間血圧値<120/70未満により高血圧症診断の確定を考慮すべきだと最近の欧米の学会では考えられるようになっています。特に就寝中の血圧のパターンは、高血圧によるさまざまな臓器障害、心臓病、脳卒中、腎臓病などの合併症と密接に関係していることが明らかになっており、ますますABPMの重要性が増しています。
 現在当院のABPMはネットワークの不備から故障中です。できるだけ速やかに修理し、ABPMを再開しなければと反省しました。

 追記 ノバルティスファーマ社の高血圧治療薬ディオバン錠の臨床研究におけるデータ改ざんについて
 「ノバルティスファーマ社の販売する降圧剤ディオバン錠の臨床研究において、同社社員が身分を伏せ共同研究者の一人として加わり研究データを改ざん、他社製薬メーカーのライバル降圧剤より狭心症や脳卒中などの発症を抑える効果が高いとする研究結果を捏造した。」とするマスコミ報道をご存知の方も多いと思います。
 私も、ディオバン錠を多数処方していますので、数人の患者さんからこの問題について質問を受けました。これら問題となった研究発表は、以前よりさまざまな研究会や学会においてデータが不自然だと囁かれていたもので、この報道がなされやはりといった感です。参加したある研究会では、研究結果を信用できないと露骨に批判する研究者もいました。誤解を招かぬよう御説明すると、ディオバン錠が降圧剤として効果がないわけではなく、他社製品より優れているわけではない、換言するとせいぜい他社並みの効果ということです。捏造された臨床研究以前のディオバン錠薬物特性データからは、むしろ他社製品より有効性が多少低いのではないかと想像されていたくらいです。ですから、この報道がなされても日本で発売禁止になっていませんし、欧米でもこれまで同様問題なく処方されています。マスコミ報道以前よりそのような認識を持ちながら、私自身がディオバン錠を処方していた理由は、他社製品より薬価が1〜2割安かったからです。ちなみに、下種の勘繰りかもしれませんが、厚労省のお役人は、天下り先になり難いノバルディスファーマ社のような外資系メーカーの製品には低い薬価をつける傾向があります。ディオバン錠はARBと呼ばれる降圧剤の中の1種ですが、ARBは、有効性は高いのですが一般に高価です。ですから、私自身は他の安い降圧剤より高価であっても高い有効性のあるARBで治療した方が良いと判断した患者さんで、健康保険が1割ではなく3割負担の方に処方することが多かったです。この報道があった後、御質問を受けた患者さんに、上述のようなご説明をしたところ、全員がディオバン錠の内服継続を希望するとの御返事でした。私自身としては、心情的に不快、不安で降圧剤変更を希望される方がいれば、当然変更するつもりでしたが、意外なくらい皆さん冷静に判断されたようでした。不安な気持ちはストレスとなり血圧を上昇させますから、不安な気持ちのまま薬を飲み続けても十分な効果が得られない可能性があります。さりとて、「羹に懲りて膾を吹く」がごとく、現に効果のある降圧剤を不必要に変更することで返って患者さんに不利益になるかもしれません。
高血圧学会では他学会同様、高血圧診療に関するガイドラインを発表しています。そのガイドラインでは、今回問題となった多数の捏造論文も引用しガイドラインを作成しています。ということは、学会の作成したガイドラインの信頼性が揺るがされています。ですから、学会としてもきちんと真相究明すべきです。しかし、この研究に関与した学会員である研究者が学会を退会し調査が屯坐、現時点ではいまだ真相究明に至っていません。現在立ち上げた調査委員会で調査継続中とのことですから、しっかりと最後まで見届けたいと思います。

2013/10/13 
「2価と4価の子宮頸がん(HPV)ワクチン、どちらを接種すべきか?」

 ちょうど2年前の2011年10月13日の院長コラム「新しいHPV(子宮頸がん)ワクチン、ガーダシルの接種が始まりました。」の中で、2種類ある子宮頸がんワクチンのうち、当院では今後、特別な事情がなければ4価のワクチン「ガーダシル」を接種する旨表明しました。しかし、下記の如き考えから方針転換します。
 子宮頸がんの原因となりうるヒトパピローマウイルス(HPV)には約100種類の亜型があり、そのうち、約15種類が子宮頸がんの発生にかかわっています。
 現在日本で使用できるHPVワクチンは、2種類あります。サーバリックスという2価ワクチン(16型、18型を標的とするので2価)とガーダシルという4価ワクチン(6型、11型、16型、18型を標的とするので4価)です。では、どちらを接種すればよいのでしょうか。非常に高価なワクチンですからしっかりと吟味する必要があります。
 4価のガーダシルに追加されている標的ウイルス6型、11型HPVは尖圭コンジローマという癌ではない病気を引き起こすウイルスです。尖圭コンジローマは、性器や肛門の周囲に数mm大のイボが多発する病気で、通常自覚症状はありません。自然治癒することもありますが、ニワトリの鶏冠のようにかなり大きくなることもあり、QOLを害します。また、妊婦が尖圭コンジローマを発症していると、出産時に産道でHPVが新生児に感染(母子感染といいます)、新生児の喉にイボができる再発性呼吸器乳頭腫症を発症してしまうこともあります。しかし、最近治療薬も開発され、臨床上大きな問題になることはありません。
 4価ワクチンが単に2価ワクチンに+αの効果だけを付与したものなら迷わず4価ワクチンを接種すべきでしょう。その考えから2年前にはガーダシルを推奨しました。しかし、肝心な発癌性HPV16型、18型に対する抗体価は2価ワクチンの方が4価ワクチンより勝っているようです。そのため、前癌病変の予防効果、円錐切除術(前癌病変や初期の子宮頸がんに行う手術)施行人数減少効果においても2価ワクチンが4価ワクチンに勝っていることが報告さました。
 2年前お話したように、副反応については2価ワクチンの方が4価ワクチンより局所の疼痛が強いようです。
 まとめると、尖圭コンジローマも含めたQOL改善を期待するなら4価ワクチン、より痛くてもよいから子宮頸がん予防を第一に考えるなら2価ワクチンを選択すべきでしょう。ここから先は皆さんご自身で判断して下さい。ちなみに、私なら娘に2価ワクチンを勧めます。
 なお、子宮頸がんワクチンの詳細について現在原稿を執筆中です。近々ホームページにアップします。

2013/10/12 
「東京国際フォーラムで開催された第34回日本肥満学会に参加してきました。」

10月11日、12日と東京国際フォーラムで東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の門脇孝教授大会長のもと開催された第34回日本肥満学会に参加してきました。肥満学会は毎年参加する多数の学会の中でいつも興奮させられる、換言すると毎年画期的な新しい知見が発表される学会の一つです。昨今それほど肥満学の分野は日進月歩なのです。しかし、残念ながら例年10月は健診のハイシーズンの上、今年10月から導入するマンモグラフィー(乳房レントゲン検査)や婦人科診察の準備で天手古舞なため、12日土曜日診療後に何とか半日だけの参加となりました。ただ、17時から高田馬場のリーガロイヤル東京ホテルで開催された別の脂質代謝異常症の研究会に最初から参加、新しい知見に触れることができ、達成感を得ることができました。来年第35回開催地は宮崎フェニックスシーガイアリゾート。何とか連休を取って参加したいものです。

2013/10/12 
「子供のインフルエンザ予防接種について」

当院の主たる診療科目は内科で、小児科は標榜していません。小児科と内科の区切りは一般に15歳です。つまり、中学生までは小児科、高校生以上は内科とされています。しかし、最近の子供は大柄です。小学6年生位になると、大人とほとんど遜色ない体型のお子さんも多く、その境は曖昧になっています。ただ、体格に拘らず小児期には大人では稀な小児特有の疾病もありますから、やはり「餅は餅屋」、小児科が診た方がいいと思います。
 そうはいっても、近所に小児科がなければ、小児も診てくれる近所の内科に子供を連れて行くのが親の常。例えばインフルエンザなどで高熱を出した子供をわざわざ遠方の小児科に連れて行くより、御近所の掛かり付けの内科開業医で診察してもらうのが一般的な親御さんの行動です。それを見越して、「内科小児科」と看板を掲げる医院も珍しくありません。たとえ、小児科の看板を掲げなくとも熱を出した小児が来院するのは想像に難くありませんから、大抵の内科開業医は小児科の勉強もしています。
 私は子供が嫌いなわけではありません。実際、四人の子供がいます。我が子のため小児科の勉強もしています。私がいくら子供好きでも、当院に来院する大人は子供好きとは限りません。子供嫌いの方も居るはずです。外来の待合室、具合の悪い大人の隣で子供に騒がれれば、余計具合が悪くならないとも限りません。当院の診療のメインは「生活習慣病と健康診断」です。外傷や怪我はなく、血を見ることはほぼ皆無です。激痛や高熱でうなり声を出すような方は極稀で、外来で静かに順番待ちをしている方がほとんどです。そうなったのも、開院時より小児が受診されれば必ず拝見はしますが、小児をできるだけ診ないで済むように小児科医院の隣で開業したからです。そして思惑通り、当院を病気で受診する小学生以下のお子さんは年間10人にも達しません。
 このように病気で当院を受診する小児は本当に少ないのですが、どういうわけかインフルエンザの予防接種で来院される小児が毎年多数います。数年前新型インフルエンザが大流行した折、ワクチンが不足したため、国が接種対象者に優先順位を決め、妊婦や小児などから優先的に接種した騒動を御記憶の方も多いと思います。確かにあの時は、小児科でワクチンが手に入らないため内科に小児が流れてきたのは尤もな話です。しかし、実際はその騒動以前から毎年当院で子供の予防接種を受けさせる親御さんが多数いました。どうして隣の小児科に行かず、当院で予防接種を受けるのだろうかとなんとなく不思議に思っていたとき、具合が悪くて当院を受診されたあるお母さんからこのような質問を受け、なるほどと納得しました。その母親曰く、「うちの子供は移植手術を受け、現在免疫抑制剤を服用しているため、感染症に対する抵抗力がとても弱いのです。冬の時期小児科の外来は、熱を出した子供が多く、待合室で風邪でもうつされたら大変なので、ここで子供の予防接種を受けさせたいのですが、連れて来てもいいですか。」
 確かに「生活習慣病と健康診断」をメインに診療する当院外来待合室は、感染症という点から言えば、非常に安全なクリニックかも知れません。
それでもインフルエンザの患者さんだって時々受診されます。そういったときのため、当院では待合室(下図)に隣接した「カンファレンスルーム」(下図)を発熱室とし、発熱して来院された方々はこの部屋で待ってもらうようにしています。このカンファレンスルーム(発熱室)には専用の換気扇が設置されており、作動させるとこの部屋が隣接する待合室より陰圧になるように設計されています。そのため、外来待合室の空気がカンファレンスルーム(発熱室)に流れ込むことはあっても、逆にカンファレンスルーム(発熱室)の空気が外来待合室に流れ込むことはありません。インフルエンザなどの感染症が外来待合室で順番待ちしている方々にうつらないように設計しているのです。
 来院されるお母さん方の要望に応えられるよう来年度はさらに多数の小児対象予防接種の受託医療機関となる予定です。お子さんの予防接種の折は是非当院を御活用下さい。

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2013/09/23 
「各駅停車症候群〜下痢型過敏性腸症候群」

 最近、立て続けに中高生の下痢型過敏性腸症候群を診療しました。過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome;以下、IBS)とは、大腸・小腸に器質的異常(ガン、潰瘍や腸炎など視覚的に判別できるような形態的な異常)がないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常、腹痛、腹部膨満感や腹部不快感などの腹部症状を呈する症候群で、症状の発現や増悪にストレスが密接に関係しています。IBSは良性疾患であり生命的予後良好(寿命は健常者と変わらない)ですが、生活の質(quality of life;QOL)を障害するため,苦痛を感じ医療機関を受診すると病気とみなされます。今回の学生も、ストレスのため毎回試験中にトイレへ離席、カンニングしているのではないかと疑われ困っていました。IBSは、最も頻度の高い消化器疾患の一つで、日本の有病率は10〜20%に達するといわれています。つまり、少なくとも日本に約1,200万人の患者さんがいると推定されています。とあるIBSの講演会で、講師が参加者の医師達に、IBS症状の有無を尋ねたところ、私を含め約半数の医師が挙手しました。IBSが如何にありふれた疾患であること、また、医師が大きな精神的ストレスを抱えていることを示唆しているようでした。有病率は20〜30歳代で高く、加齢とともに減少します。約50%の患者さんでは35歳前に発症し、50歳以上の初発患者は10%程度しかいません。日本では、特に受験期にIBSを発症する人が多いようで、今回も中高生でした。下痢型は男性に多く、便秘型は女性に多く見られます。男性に多い下痢型IBSは急に大便を催す上、下痢便のため一歩遅れると便失禁しかねません。そのため、トイレのない電車に長時間乗れず、各駅停車症候群と呼ばれています。2011年12月13日の産経新聞に「『トイレに行かせて』江ノ電バス運転手が乗客残しファミレスへ」といった見出しの記事が掲載されました。「申し訳ないのですが、トイレに行かせて下さい」とアナウンスし、エンジンを切り車輪に輪留めをかけて、バス停前のファミレスに駆け込んだ」との内容です。この記事を身近に感じる方は、私同様各駅停車症候群だと思います。今回来院された高校生も便失禁の経験があり、やはり、恥ずかしい思いを経験していました。私は診察中離席しなくて済むように、診察の前は必ずトイレに行くようにしています。
 ストレス社会の現代においてIBSの罹患率は増加の一途を辿っています。非常に頻度の多い疾患なので、その詳細について診療案内に掲載する予定で、現在原稿を執筆中です。来月にはアップしますので、思い当たる方は是非御参考にして下さい。

2013/09/22 
「2013年7月15日開催のTRY-Fチャリティーボクシングマッチ試合前診察風景」

7月15日東京新宿FACEで開催された「TRY-F」主催のチャリティーボクシングマッチ(下図)で生まれて初めてリングドクターを経験した(2013年6月23日院長コラム「TRY-Fチャリティーボクシングマッチ」を御参照下さい)ことを以前ご報告しました。試合に先立ち実施した診察風景の写真を頂きましたのでアップします。画像には往年の日本チャンプも写っています。

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2013/08/30 
「浜松市で開催された第54回日本人間ドック学会学術大会に参加してきました。」

8月29日から30日にかけて静岡県の浜松市で開催された第54回日本人間ドック学会学術集会に参加してきました。今回のメインテーマは「トータル・ヘルス・ケアとしての人間ドック」です。学術大会長は、社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷浜松病院の堺常雄総長です。静岡県下あらゆる診療科目において、まさにゆりかごから墓場まで医療サービスを提供する大規模医療機関ですから、メインテーマも肯けるものでした。
さて、私は30日朝5時過ぎに東京を出発、日帰りで30日の1日だけ参加して来ました。この間、携帯電話には30分間隔でクリニック留守番電話が転送されてきたようですが、生憎、講演会場内で応答できず、お電話いただいた方々にはご迷惑をおかけしました。
今回のプログラムを見ると、大学医学部が学会長として主催した大会と異なり、学問的には最新の知見は乏しく、むしろ「『検査値の読み方』と題するパネルディスカッション」「超音波エコーハンズオンセミナー」「人間ドック保健指導ロールプレイ」など、臨床的実践的な内容の多い大会でした。その中で私は「全身性疾患の危険因子としての口腔内常在菌」「『検査値の読み方』と題するパネルディスカッション」等に参加しました。このディスカッションでは、実際にあった7症例分の検査データを当日朝に配布、それぞれについて、キーポイントとなる検査項目、疑うべき疾患、追加すべき検査を回答の上、事前に提出、午後会場にて参加者みんなでディスカッションし、正解を導き出すまでの考え方を習得するといったものでした。医学の世界では、「患者を見たら甲状腺と思え」(甲状腺疾患は臓器特異的な症状がない一方、非常に頻度が多いためです)「女を見たら妊娠と思え」(妊娠に気付かず妊婦や胎児に浸襲性、障害性のある検査を実施した場合、後々問題となります。また、望まない妊娠の場合、意図的に妊娠の可能性を伏せて受診する若年女性〜未成年女性も珍しくありません)等、陥りやすいpitfallに対する格言がありますが、今回の前半4症例はいずれも甲状腺疾患に関するものでした。実際そのような症例が存在したのですから正解は間違いではありませんが、下記のごときデータでから「甲状腺機能低下症」を正解とするのは、奇をてらったようでいささか納得できませんでした。

症例1 50代 男性
一次検診結果   二次検診
AST    37     WBC   7200
ALT    22     RBC    403
γ-GT  12     Hb     13.4
TC    159     Ht     40.2
TG    111    MCV    99.8
RBC   386    MCH    33.3
Hb    12.9    MCHC   33.3
            PLT    19.9

 解説では、1、MCVの軽度高値に注目、2、その鑑別診断から甲状腺機能低下症を疑い、3、甲状腺ホルモンを測定する、といったものでした。フロアからも質問がでましたが、一般に甲状腺機能低下症ではTC(総コレステロール)は上昇します。本症例はむしろ低値です。それを無視してMCV軽度高値のみから甲状腺機能低下症は疑うのはかなり無理があります。まあ、そういうこともありえるといった勉強にはなりましたが。
いずれにしても、本日の得た知見を明日からの診療に生かしたいと思います。この一文を書き上げたところで、睡魔が襲ってきました。往路と違い帰りは東京終点で安心して寝入ることができます。おやすみなさい。

2013/08/28 
「元日本J.フェザー級1位・元日本フェザー級1位・元日本J.ライト級1位日本TRY-F打越代表の表敬訪問を受けました。」

一昨日行われたロンドン五輪、ボクシングミドル級金メダリスト、村田諒太のプロデビュー戦をテレビ観戦した方も多かったのではないでしょうか。何せ、48年ぶりのボクシング日本人金メダリストで、しかも注目度が最も高く、世界的に層の厚いミドル級です。層が厚いということは、言い換えれば最も金メダルの取り難い階級ということですから。
さて、ボクシングといえば、7月15日東京新宿FACEで開催された「TRY-F」主催のチャリティーボクシングマッチ(下図)で生まれて初めてリングドクターを務めたことを御報告しましたが、そのTRY-F打越昌弘代表が、8月8日当院を表敬訪問されました。打越代表は、元日本J.フェザー級1位・元日本フェザー級1位・元日本J.ライト級1位とチャンピオンこそなれませんでしたが、3階級でのトップコンテンダーです。今回の大会では試合に出場しませんでしたが、今でもジムで体を鍛えているとの事で、最近富にメタボ化の著しい小生とは違い、引き締まって精悍な顔つきです(下図)。次回開催は、12月23日天皇誕生日の祝日です。次回も、リングドクターとして参加するつもりです。それまでに、何とかもう少し引き締まった体にしておきたいものです。

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2013/08/01 
「院長コラム「三鷹市がやっと高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種費用助成事業を始めました。」の文中、三鷹市職員の退職金に関する記載について訂正の上、深謝します。」

院長コラムを見た某三鷹市職員の方から、2013年7月3日アップの院長コラム「三鷹市がやっと高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種費用助成事業を始めました。」の文中、三鷹市職員の退職金に関する記載に関して、三鷹市医師会長を介して苦情が寄せられました。御指摘の院長コラムでは、「退職金も4〜5,000万円はありそうで、うらやましい限りです。」と記載しました。確かにこの表現では、三鷹市職員の多くがこのように高額な退職金をもらっているかのような誤解を招きます。苦情を申し入れた職員の方自身もこのような高額の退職金を頂けないそうです。確かに勤続年数に従い支給率は異なりますから、中途採用の方などは、満額の59.20月分の退職手当を手にすることは出来ません。中途採用者を含めた平成23年度三鷹市職員退職者の1人当たり退職手当平均支給額は約2,655万円で、「退職金が4〜5,000万円の方もいる」と記載すべきでした。訂正の上、誤解を招いたことを、読者ならびに三鷹市職員の方々に深謝申し上げます。今後は誤解を招かないよう正確な表現に努めます。
なお、三鷹市職員の方の一人当たりの年間給与費721万円、退職手当などの資料は、こちらを御覧になり御自身で御評価下さい。
なお、前コラムで十分御理解いただけたと思いますが、誤解なきよう重ね重ね申し上げますが、全国に1,719ある地方自治体の中で、最も給料の高いことを問題にしているのではありません。地方自治体が幾つあろうとどこかが1番でどこかが2番です。要は、効率的、戦略的運営によりそれだけの給料に見合った住民サービスを提供すべきであると申し上げているのです。都内62市区町村で、唯一肺炎球菌ワクチン予防接種助成がないのは三鷹市だけで、給料に見合った住民サービスとは思えなかったのです。今回の肺炎球菌ワクチン接種助成の定員は1,000人で、一人当たり3,000円の助成ですから、総助成額は300万円になります。総職員数960人、一人当たりの給与費721万円、総支給額69億2,418万円の職員給与、歳出額626億2,490万円の地方自治体が捻出できないというのは小生の感覚では理解できなかったのです。
三鷹市役所職員の方も、院長コラムを御覧になっているとお聞きし、院長コラム執筆のmotivationがますます上がってきました。これからも頑張ります。

2013/08/01 
「第45回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。」

7月18日から19日かけて京王プラザホテルで開催された第45回日本動脈硬化学会総会・学術集会に参加してきました。この学会は動脈硬化(血管の傷みで、血管が詰まったり破れたりする状態)、とくに脂質代謝異常〜コレステロールや中性脂肪(=トリグリセライド)等の異常による動脈硬化を研究する学会です。当院は脂質代謝異常の診療に力を入れていますので、学会に参加、出来るだけ最新の知見を吸収してきました。今回参加して意外に興味を引かれたのが広島大学大学院医歯薬保健学研究院医化学教室教授浅野知一郎先生による「キサンチンオキシダーゼ阻害剤による動脈硬化予防の可能性」と題する講演です。キサンチンオキシダーゼ阻害剤とは、コレステロールを下げる薬ではなく、痛風の原因となる血中尿酸値を下げる薬です。私は、当院ホームページ「生活習慣病外来」のページ、「高尿酸血症・痛風内科」中、「痛風腎とは〜ここだけは必ず読んで下さい!」の段落で、尿酸は単に痛風予防ではなく、腎機能低下、ひいては腎不全を念頭に置いて治療しなければならないことを強調しました。浅野先生の研究データは、それらを裏付けるものでした。現在、血清尿酸値の基準値は7mg/dl以下となっています。この値は7mg/dlを超えると尿酸が結晶化、関節面に沈着、痛風発作を引き起こすという知見に基づいて決められたものです。つまり、痛風関節炎予防のための基準値です。しかし、先生のデータでは、たとえ尿酸値が6.0〜7.0mg/dlと現在のガイドラインの基準値内であっても、腎機能障害や動脈硬化は進行するといったものでした。私自身、ほとんど基準値に近いごく軽度の高尿酸血症患者の中に多数の慢性腎臓病の方を発見、日々危機感を抱いていたことを科学的に裏付けるものでした。今後もこのような視点に立ち、出来るだけ最新の知見を取り入れ、患者さんに最もよいと考える診療を提供します。先生の講演に意を強くした私は、質疑応答時間を利用し質問と謝辞を述べさせていただきました。
なお、末筆ですが、外来休診により御迷惑をお掛けした患者さんにお詫びすると同時に、予約時間を変更して下さった方々に御礼を申し上げます。

2013/08/01 
「TRY-Fチャリティーボクシングマッチで初めてリングドクターを務めました。」

久しぶりの院長コラムです。この間、看護師がアキレス腱を切り、シフト勤務表を組み直したり、兼ねてより幹事を依頼され、準備に奔走していた光の村養護学校秩父自然学園親の会主催の宿泊親睦会を7月27日から28日にかけて、秩父市の民宿山里で開催したりと兎に角無茶苦茶に忙しく、就寝は毎晩2〜3時といった状態でした。親睦会は30人規模で、父兄の居住地が愛知県から千葉県まで跨り、連絡の遣り取りでかなり手間取りました。さらに、10月のマンモグラフィー(乳房レントゲン検査)導入に向け、PACS(レントゲンなどの画像サーバーのこと)の買い替え、マンモグラフィー撮像装置の機種選定、それらの価格交渉、同様10月開始の婦人科検診の電動検診台の機種選定(本日無事搬入されました)、婦人科医招聘、婦人科診察の見学の準備と次から次にextra業務が噴出してきました。おまけに、7月に検体検査委託会社を変更したところ、当初の検査会社の説明とは違い、検査データが私の希望通りの形式で電子カルテに取り込まれないといったトラブルが発生、連休の日曜日7月14日に朝から晩まで1日クリニックに閉じこもり、電子カルテを修正する羽目に。虚しいことに、1日缶詰になって作業した挙句、結局修正出来ず、達成感ならぬ喪失感で疲労感は無限大に。結局2ヵ月近く休み無く働き続けています。最後の駄目押しに、現在新築中の我が家の工期が遅れたため、住宅ローンが再審査となってしまい、当初の段取りで資金が振り込まれないことになったと昨日某銀行より連絡がある始末です。この件に関しては、当初の銀行の説明と余りに齟齬が大きく、銀行も支店長自ら謝罪に赴きたいと申し入れがありました。しかし、いくら謝られても本店のローン担当部署の決定が覆るわけも無く、当方としては会うだけ時間の無駄、その時間を有効利用した方が、幾ばくか資金繰りに寄与するわけで、丁重にお断りしました。さらに、工期の遅れのため、定期借家していた現在居住中のマンションを来年1月7日に追い出される羽目に。新居竣工予定が2月7日のため、たった1ヶ月のために余分な引越し、仮住まい探しをすることになってしまいました。オーナーに何とかもう1ヶ月賃貸期間を延長できないか申し入れていましたが、無碍に断れてしまいました。当初9月竣工予定が約5ヶ月遅れの翌年2月ですから、さすがに某有名建築設計事務所も陳謝の上、引越し費用、仮住まい費用の負担を申し出てきました。それから、本年6月より三鷹市医師会理事会のオブザーバーを仰せつかり、月2回夜8時からの開催される理事会に出席しており、ますます多忙を極めています。さらにさらに、三鷹市医師会駅前班の班長も仰せつかっている(2012年1月14日の院長コラム「三鷹市医師会駅前班の班長になりました。」を御参照下さい)のですが、この度、班員で新しい研究会の立ち上げ構想が持ち上がり、班長としてその準備も始めています。
愚痴ばかりになってしまいましたが、そもそもこのコラムを始めたのは、言いたい(胃痛い)事を思いっきり吐露し、ストレスを発散させようと考えたのが理由の一つ。皆さんに愚痴を聞いていただき、スッキリしました。妻からよく言われますが、このように気持ちの切り替えが早いのが私の長所の一つです。
さて、このように忙しい日々でしたが、7月15日東京新宿FACEで開催された「TRY-F」主催のチャリティーボクシングマッチ(下図)で生まれて初めてリングドクターを務めました(2013年6月23日院長コラム「TRY-Fチャリティーボクシングマッチ」を御参照下さい)。当初、試合後のメディカルチェック担当として協力することになっていましたが、リングドクター担当の医師が手伝えなくなり、当日、急遽リングドクターを依頼されました。以前、ラスベガスで開催されるUFCに参加する総合格闘技家の五味隆典選手が、UFC指定の試合前健康診断を当院で受診したことがあり、格闘技におけるメディカルチェックのポイントを理解していたので、すんなりと務めることが出来ました。リングサイドかぶり付きでのボクシング観戦、エキジビションゲームとはいえ、名だたる元日本や元世界チャンピオン、K1ファイターの試合に興奮しました。また、会場では、当院外来をほんの数日前に受診された御夫婦とばったり遭遇、聞けば何でも今回参加した元日本チャンピオンの現役時代のマネージャーをしていたとのこと、本当に世の中狭いものだなあと思いました。先日、リングドクターを依頼してきた別の患者さんより、経費を除き都合100万円余りの寄付金が集まったと報告を受けました。このように忙しい日々ですが、達成感で心の疲れを吹き飛ばすことが出来ました。これからも出来るだけ協力していきたいと思います。

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2013/07/07 
「高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種費用助成についての質問状に三鷹市から回答が寄せられました。」

7月3日付けの院長コラム「三鷹市がやっと高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種費用助成事業を始めました。」中でお話しました三鷹市に対する質問状に早速三鷹市から回答が寄せられました。全文を掲載します。

高松メディカルクリニック 
三鷹健診センター
院長 高松 慶太 様 

日頃より市の保健衛生行政にご理解、ご協力いただき、お礼申し上げます。
さて、メールにてご意見・お問い合わせがございました、高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種の件について、次のとおり回答いたします。
当該事業を開始するに当たっては、対象人数や開始時期等に関して医師会の先生方との協議を続け、最終的に6月26日に概要が決定しました。
それを受け、市と医師会との覚書等の事務手続きや事業実施に向けてスケジュールを立て、ホームページに掲載したとおり、7月19日までを申込期間、8月1日から接種開始といたしました。
周知については、HP(7/1アップ)及び7月7日号の広報みたかに掲載するとともに、チラシの配布(保健センター・高齢者支援課窓口及び介護予防教室参加者等)を行っています。
締切日については、定員を設けていることから、当選者に予診票・お知らせ・協力医一覧等を7月下旬に送付することを勘案し、接種開始日から逆算して7月19日を設定しました。
なお、定員の1,000人に達しない場合は、広報みたか8月18日号に掲載し、8月19日から再募集を行う予定です(申込期間8/19〜9/13、接種期間10/15〜1/31)。 
ネット利用率に関しては、市独自の詳細な調査結果はございませんが、総務省の調査
結果をお知らせします(5ページ右上資料番号4)。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000230980.pdf
今後とも、予防接種事業や健診事業など、市政にご理解、ご協力をお願いいたします。
                      三鷹市健康推進課長 佐野 光昭

以上です。

1、7月4日の質問に対し5日の回答はお役所仕事とは思えぬ迅速さ、高く評価したいと思います。
2、申込みが7月1日から19日と極端に短い件に関して、予定の1,000人に満たない場合、8月19日から9月13日まで再募集予定であることも納得しました。
3、周知方法に関して、御教授いただいた資料では70歳以上のネット利用率は48.7%とありますが、このような統計を鵜呑みするは軽率です。統計データを解析する場合、データ採取方法から吟味するのが常道です。そもそもインターネットを利用するようなアクティブな高齢者ほどアンケート回答率が高く、逆にインターネットを利用しないような高齢者はアンケート回答率が低い可能性が高いですから、利用率が過大評価されるBIAS(統計上の偏見)が加わっているのは容易に想像されます。
また、利用率といっても「利用(したことがある者の比)率」と理解するのが妥当でしょう。75歳以上の通院患者さんで「常態として」インターネットを利用されている方には滅多に会ったことはありません。本当に70歳以上の方の約50%がインターネットを使いこなしているのなら、私も診察室で、「後は御自分でネットを使いお調べ下さい。」と言ってすませ、楽なのですが。
7月1日から19日の間において75歳以上の高齢者のうち、一体どれくらいの方が三鷹市のホームページを見るのかが肝腎な点で、その率を持って対象者に対する周知が十分か判断すべきでしょう。
今回の応募者数が1,000人に達しないのは想像に難くありません。
三鷹市の担当部署には、引き続き周知徹底をお願いしました。

2013/07/03 
「三鷹市がやっと高齢者肺炎球菌ワクチン予防接種費用助成事業を始めました。」

欧米諸国では半ば常識化している高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの接種費用助成はこれまで三鷹市にはありませんでした。数年来三鷹市医師会として再々進言、陳情してきましたが、財政難との理由から実施されることはありませんでした。そのため、ついに東京都内にある62市区町村中、唯一三鷹市がワクチン接種費用助成のない自治体となってしまいました。無節操に懐具合も考えず、住民サービスをばら撒くことに私自身も反対です。しかし、以前、院長コラム「三鷹市が緊急事業として始めた先天性風しん症候群対策予防接種費用助成事業の助成額を1,000円増額しました。」でお話したように、全国に1,719ある地方自治体のうち、三鷹市職員は栄えある第1位の高給取り(平均約760万円)です。中途採用者を含めた平成23年度三鷹市職員退職者の1人当たり退職手当平均支給額は約2,655万円で、退職金が4〜5,000万円の方もいるようです。(2013/07/03の記載内容を訂正しました)人件費率は、他の市町村自治体(平成20年度平均20.4%)に比べとくに高いわけではない(三鷹市は平成22年度で17.4%)のでむしろ少数精鋭で効率的な業務をしているのかもしれません。ただ、こういった統計は、人件費を第3セクターの職員や派遣職員に付け替え、勘定項目を変更し間引きするなどの操作が横行していますので鵜呑みにすることはできません。
今回の助成では、申込み期間が7月1日から19日までとわずか19日間しかありません。しかも、助成が決定したのが6月28日で、ホームページで公報されたのが7月1日当日です。今回の助成対象者は65歳以上の高齢者です。若い世代に比べインターネットの利用率は極端に低いはずです。特にワクチン接種が強く推奨される75歳以上の後期高齢者になれば尚更です。三鷹市民の高齢者のうち、いったい何人がこの助成制度に気付くというのでしょうか。高齢者がこの助成制度に気付かないよう意図的に申し込み期間を短くしたとしか思えません。日本一能力のある三鷹市職員が策定した助成制度とは思えません。微力ながら、ネットを使い三鷹市に質問状を投書いたしました。その回答が寄せられたら、また、ご報告します。

2013/06/23 
「TRY-Fチャリティーボクシングマッチ」

7月15日東京新宿FACE「TRY-F」主催のチャリティーボクシングマッチ(下図)が開催されます。私も試合後のメディカルチェック担当の医師として協力させて頂くことになりました。TRY-Fという団体は、元日本ジュニア・フェザー級1位、 打越昌弘氏(帝拳)の呼びかけで、チャリティ・ボ クシングをするプロボクサーOBを中心とする“集まり”です。昨年12月15日第1回のイベント(下図)を開催、成功裏に終わらせ、102万円を「公益財団法人そらぷちキッズキャンプ」に寄付しています。そらぷちは、聖路加国際病院副院長細谷亮太小児科部長を中心として難病と闘う子供たちに自然体験、野外キャンプの経験をさせるため北海道滝川市にキャンプ場を建設、運営する団体です。
昨年、当院に通院するある患者さんから、12月15日に開催された第1回イベントのポスターを掲示してもらえないかと依頼されました。通常、医療に無関係なポスターはお断りしているのですが、内容がチャリティーボクシングマッチで、その売り上げを上記のような法人に寄付するということを聞き、例外的に院内に掲示ずることにしました。そして今年の春頃、7月15日海の日に開催される第2回イベントのリングドクターを打診されました。実は、丁度その日は、長女の寄宿する光の村養護学校秩父自然学園の父兄による草刈りボランティアの日でした。しかし、この草刈ボランティアは年3回実施されますし、私が不参加でも他のご父兄方で何とか人員が足ります。娘と同じく難病と戦う子供たちを応援する企画と聞き、協力させて頂くことにしました。私にリングドクターを依頼した患者さんは若い頃、帝拳ジムに通っていたそうで、ジムの先輩の打越氏とともにTRY-Fのスタッフとして頑張っているとのことでした。一方私自身は格闘技の経験はありませんが、格闘技観戦は大好きです。10年位前、日テレで月1回日曜深夜に「ダイナミックグローブ」の番組名で放映するボクシング中継を欠かさず見ていました。私は野村病院時代月1〜2回土日当直(土曜日朝から月曜日夕方までの56時間連続勤務)を担当していました。その当直と放映日が重なったときは、深夜当直室のテレビでこのボクシング中継を見ることが、勤務中の唯一の楽しみでした。私の記憶では、打越昌弘代表と今回参加する高橋ナオト氏のタイトルマッチもこの番組で放映され観戦した記憶があります。
さて、今回のチャリティーマッチでは、下のポスターを御覧になると解るように元世界チャンピオン、元日本チャンピオン、トップコンテンダーの面々加え、K-1 JAPAN GP 2004チャンピオンの天田ヒロミ氏も参加、ボクシングファンなら垂涎のマッチメイクとなっています。ご興味のある方はこの機会に是非御来場頂ければ幸です。院内にチラシも置いてあります。御利用下さい。

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2013/06/19 
「麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)も入手困難に!」

風しん大流行のため風しん単体ワクチンが入手困難であること(院長コラム「風疹(風しん)ワクチンが入手困難に!」をご参照下さい。)を兼ねてよりお知らせしていましたが、風しん単体ワクチンの代用品として使用されていた麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)も一部マスメディアで報道されているように予想通り入手困難になってきました。まだ、メーカーに在庫はあるのですが、このままのペースで使用すると夏以降に欠品を生じる恐れが出てきたため、製薬メーカーが薬品卸問屋から一旦ワクチンを回収、一部の医療機関にワクチンが偏って供給されないよう従来の実績に合わせて均等に再供給することになったそうです。厚労省も、妊婦の夫などの同居家族や周囲の人、10歳代後半から40歳代女性の妊娠する可能性のある方を優先して接種するよう指導を始めました。当院は従来通りワクチン接種は事前予約制ですが、今後は接種希望のお電話を頂いた後、ワクチンが確保されたことを確認してから、接種日を予約していただくことになりました。

2013/06/19 
「吉祥寺第一ホテルで開催された医療法人財団慈生会野村病院創立60周年記念式典・交流会に出席してきました」

去る6月15日吉祥寺第一ホテルで開催された医療法人財団慈生会野村病院創立60周年記念式典・交流会に出席してきました。私は、同院の元常勤医師であり、予防医学センターの元所長です。現在も産業医勤務を委託された非常勤職員であり、さらには2年前より評議員も拝命しているため、招待されたというより、なかば職員のような感覚で式典に参加させていただきました。60周年という非常に大きな節目ということもあり、日本赤十字社事業局長、東京都医師会会長、東京都看護協会会長、東京都病院会会長、三鷹市長、三鷹市医師会長などの野村病院に関係の深い御歴々の御挨拶が続きました。「NOMURA60連携と協働」という今、野村病院が掲げるテーマにそったお話を伺いました。野村病院は今医療・福祉の地域完結を目指した街づくりに向け、努力しているそうです。
交流会では、パーティ会場に入りきれないほど参加者が多く、また、野村幸史理事長と縁の深い安倍晋三総理大臣や聖路加国際病院の日野原重明先生の祝電、国会議員の挨拶などに続き、現在の野村病院を支える各診療部門長の紹介がありました。思い出すと10年前の50周年の式典も吉祥寺第一ホテルで開催されましたが、交流会の司会は私が担当していました。当時、相当緊張し舞い上がっていたためか、何を話したか思い出せません。事前に用意した原稿を棒読みしたような気がします。交流会では現職員、元職員、大学関係者、医師会関係者、関係医療機関、行政機関、地元関係者、近隣施設や業界関係者など、最近あまり顔を合わせていなかった方々多数と旧交を暖めることが出来ました。
野村先生と知己になって約20年が経ちますが、「病院」の存在意義、とくに野村病院のような中規模病院の地域における役割といったものをこれほど真摯に追及されている方は他にいません。いい意味で既に医者ではなくなっています。職員数が400人近くなったとき、医者の片手間に病院マネージメントは出来ないと思います。私など、職員15人でも既にあっぷあっぷの状態ですから。

2013/05/28 
「三鷹市が緊急事業として始めた先天性風しん症候群対策予防接種費用助成事業の助成額を1,000円増額しました。」

風疹(風しん)が大流行していることは院長コラム「都内で風疹が爆発的に流行しています。」でご報告したとおりです。この事態を受け三鷹市では4月15日から、「先天性風しん症候群対策予防接種費用助成事業」を緊急決定しましたが、その助成額が6月1日から1,000円増額され、風しん単体ワクチンは1,545円で、MRワクチンは5,000円で接種できることになりました。詳細は市報または三鷹市ホームページをご覧下さい。都内には自己負担のない自治体が多数あるにもかかわらず三鷹市民の自己負担額は2,545円または6,000円と高額です。全国に1,719ある地方自治体のうち、三鷹市職員は栄えある第1位の高給取り(平均約760万円)ですから、その実力、実績は日本随一のはず。日本一能力のある三鷹市職員が策定した助成制度とは思えないあまりに高額な自己負担額にかねてより愕然としておりました。今後とも給与に見合う能力を発揮、三鷹市民を風しんから守っていただきたいものです。なお、院長コラム「風疹(風しん)ワクチンが入手困難に!」でお話したように既に風しん単体ワクチンは入手困難なため、供給が再開される9月頃までMRワクチンしか接種できません。対象者の方はお早目の接種をお勧めします。
なお、風疹と先天性風疹症候群、風疹ワクチンについての解説は、「予防接種」のコーナーを御参照下さい。

2013/05/19 
「第56回日本糖尿病学会年次学術集会と第4回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加して〜熊本宣言2013とワクチン・ギャップ〜」

5月16日から熊本市で開催された第56回日本糖尿病学会に参加してきました。実は、18日土曜日には仙台市で開催される第4回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会に参加する予定のため、すべて参加すると木曜日から土曜日まで3日間連続して休診になってしまいます。そのため、糖尿病学会に関しては、16日木曜日の初日のみ、一泊二日での参加になりました。また、今週金曜日午後は、東京都が府中市で開催するマンモグラフィ(乳房レントゲン検査)の講習会を受講することになっていて、同日午後の休診が以前から決まっていました。そのため土曜日も休診にするわけにはいかず、プライマリ・ケア学会も土曜日診療終了後出発することにしました。さらに、日曜日には秩父市で開催される第55回秩父宮記念ミューズの森チャレンジロードレース大会に、長女の通う光の村養護学校秩父自然学園の生徒たちが参加することになっています。もちろん長女も参加、6kmと長くはありませんがかなり高低差のあるコースにエントリーしています。この学校は全生徒数が32人と少ないため教員数も少なく、父母会としてサポートすることになっていました。当初、私が仙台の学会参加中に、妻が下の三姉妹を連れで参加することになっていました。運転のあまり上手でない妻を秩父まで行かせるのは不安なため、土曜日のプライマリ・ケア学会は宿泊をキャンセルし、急遽仙台を日帰りすることにしました。金曜日、土曜日の診療時間を12時で切り上げ、慌てて車や電車に飛び乗り、何とか飛行機や新幹線に間に合いました。妻からよく「あなたの人生は綱渡りのような人生だ。」といわれますが、今回もぎりぎりセーフでした。
糖尿病学会では、今回「熊本宣言2013−あなたとあなたの大切な人のためにKeep your A1c below 7%−」が発表されました。糖尿病を患っている方はご存知のことと思いますが、A1cとは血糖コントロールの指標であるHbA1c(グリコヘモグロビンA1c)検査のことです。HbA1cの測定方法には、日本式のJDS値と欧米式のNGSP値という二つがあります。この二つの違いは何かというと、NGSP値は、JDS値より平均して0.4程度高くなることです。このように欧米と日本では同一検体にもかかわらず違った値になってしまうため国際的な基準が決められません。そのため、昨年4月からJDS値の使用を止めてNGSP値を使い世界標準に統一することが糖尿病学会で決まっていました。ただ、特定健診、いわゆるメタボ健診は本年3月末までの5年間を一区切りとして実施されていましたから、途中で測定方法や基準値を変更するわけにもいかず、JDS値使用を継続することになっていました。そのためこの1年間に関しては両方の値を併記してかまわないことになっていました。このように一つの検査で異なった二つの値が記載されるのはどう考えても患者さんや受診者の混乱を招き、延いては医療事故に繋がりかねません。特に当院は健診センターがありますから、当院で人間ドックや定期健診を受けつつ外来通院されている糖尿病患者の方が多数います。ですから、当院では本年3月末まで以前同様、特定健診と齟齬のないようもっぱらJDS値を使用していました。そして、この4月1日より外来患者、健診受診者とも統一してNGSP値を使い始めました。今回熊本宣言で使用されたA1c値はNGSP値です。JDS値が廃止されHbA1c値が統一されたのに呼応して、糖尿病合併症予防のため、A1c値を7%未満にすることが宣言されたわけです。
プライマリ・ケア学会では、「どうすれば、ワクチンで地域医療を支えることができるのか?」と題したシンポジウムに参加してきました。皆さんは「ワクチン・ギャップ」という言葉をご存知でしょうか。これは、日本ではワクチン副反応への危惧から予防接種行政が著しく停滞、世界保健機関WHOが勧告するワクチンが予防接種法の対象となっておらず、先進諸国と比べて公的に接種するワクチンの種類が極端に少なくなっていることを指す言葉です。たとえば、はしか(麻疹)、風疹、ムンプス(おたふく風邪)など、海外から日本はそれらの流行地!とみなされています。最近も日本で麻疹に感染した子供が、渡航先の米国内で周囲の人を感染させ、「はしか輸出国」という不名誉な批判を受けました。日本は接種できるワクチンの種類も少なければ、接種率も極端に低いワクチン後進国なのです。今年の風疹大流行1995年以前は、男児が風疹ワクチンの接種対象者になっていなかったことが主因です。
確かにワクチンは完全無欠な万能薬ではなく、副反応がありえます。不幸にもワクチンの副反応と思われる重篤な障害〜後遺症に苦しんでいる方がいるのも事実です。にもかかわらず、ワクチンの有用性が喧伝されているのは、総合的に判断して利点が欠点に勝っているからです。種痘により天然痘で死ぬはずの何十万人、何千万人が救われたのは疑いようがありません。「羹に懲りて膾を吹く」が如く、不幸にもワクチン副反応で亡くなられた数人の命が、救われるべき数十〜数千人の命を道連れにしているのが今の日本です。シンポジウムでは、この原因を、1、行政が副反応に関連した訴訟などを危惧し、ワクチン推奨、義務化に対し腰が引けている、2、現在ワクチンの実施主体となっている地方自治体により公費負担制度が異なり、「必ず接種するもの」というメッセージ伝わっていない、3、医療従事者間でもワクチンに対する統一した見解、認識が確立しておらず、その説明内容が異なるため、対象者に不安を抱かせている、4、ネット上、ワクチン不要論、害悪論、懐疑論が流布されているが、専門家である医療従事者が積極的に否定するアクションを起こしていない、5、ワクチンを製造するのは製薬メーカーであり、金儲けのためワクチンを売っているのであろうという利用者の先入観がある、といった意見が出されていました。
当院では、ワクチンが接種者個人のみならず、地域社会communityを守るための医療技術であることを積極的に訴えていきたいと思います。
帰京の車中にて。

2013/04/21 
「新しい創傷治療〜消毒がガーゼの撲滅を目指して」

4月17日三鷹市医師会館で開催された夏井睦先生の「新しい創傷治療〜消毒とガーゼの撲滅を目指して」と題する講演会に参加してきました。先生は昨今話題の傷の湿潤療法を考案、提唱されている方です。先生の治療法は、今までの創傷、熱傷、褥創などの治療法を全面否定、極論すれば創傷被覆材で傷を覆うだけの単純な治療法です。創傷被覆材で傷を覆い細胞が再生しやすい最適の環境を提供することで創傷部の細胞分裂を促し、あたかもトカゲの尻尾の如く元の形に再生させる方法です。百聞は一見にしかず、下図は左から受傷2日目、31日目、153日目の写真です。欠損した指が完全の元通り生えています。内科医である私は、通常外科医が扱う創傷に接する機会が少なく、噂には聞いていましたがその実態はまったく理解していませんでした。今回先生の講演を拝聴、症例写真を多数拝見、感銘感動しこれ以外の治療法を選択できなくなりました。
また、消毒の無意味、さらには有害性について白日の下に晒しています。インスリン自己注射時のアルコール消毒が単なる儀式で医学的には無意味であること、つまりアルコール消毒をしなくとも感染しないことが認知され久しいですが、先生のお話では既に採血時のアルコール綿による消毒を廃止している病院も多数あるそうです。現在欧米では注射や点滴のとき消毒しないのが当たり前になっています(泥、土や血液など目で見える明らかな汚れは水道水で洗いますが)。当院も早速百害あって一利なしのアルコール消毒を廃止したいのですが、他の医療機関同様、不安感を抱かせないよう、まず、看護師、臨床検査技師などのスタッフ、さらに患者さんや受診者に新しい考え方を理解してもらう必要がありそうです。
先生の治療法は一般の方も自分ですぐにでも実践できる治療法です。治療法の詳細は先生のホームページに平易に解説されています。是非参考にし、ケガをした場合に活用して下さい。私自身もこの方法を実践するつもりです。
先生のホームページで先生の経歴を拝見(「まずここを(作者について)」)し、先生が旧態依然とした治療に固執する日本形成外科学会を脱会、在野で志を同じくする仲間とこの治療法の普及に日夜努力されている様子が伝わってきました。真に医師を突き動かすエネルギーは患者さんに喜ばれる医療をしたいという使命感です。Academismでの地位、名声ではありません。学会から認知されずとも、自ら考案した掌蹠膿疱症に対するビオチン療法で多くの方を救い続ける本荘第一病院の前橋賢先生を想起しました。医師を評価する者は患者さんであって学会のお偉いさんではありません。当院の「診療理念」の冒頭、「医学が不完全な学問であることを念頭に、常に知識の前に謙虚であることを忘れず、既成の医学知識に囚われることなく」と記載した一文を再確認した夜でした。

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2013/04/06 
「風疹(風しん)ワクチンが入手困難に!」

先日都内を含め全国的に風疹が大流行していることをお話しました。新型インフルエンザのときと同様に、今回も風しんワクチンが入手困難になっています。風疹流行のニュースを聞き、ワクチン接種する方が急増したためです。本日ストックしていた風しんワクチンを使い切りました。製薬メーカーからの情報では全国的に不足しており、次回入荷は9月頃まで待たなければならないようです。風疹ワクチンはウサギの初代腎臓培養細胞で増殖させるため、生きたウサギが必要です。ですから、ワクチン製造に先立ち健康なある特定腫のウサギを大量に用意しなければなりません。一般の薬のように製造ラインを昼夜フル稼働して日々製造するようなわけにはいかないのです。
 ワクチン接種後2ヶ月は妊娠できませんから、妊娠を9月+2ヵ月=11月まで待つのはさすがにストレスフルかもしれません。そのような方は、風しんワクチンの代わりに「麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)」を接種する方法もあります。麻疹(はしか)にまで免疫が得られることと、費用が高くなる(5,250円→8,400円)こと以外違いは無く、単独ワクチン同様風疹に対する免疫が得られます。このワクチンは、平成20度から5年間の時限立法で始まった3期・4期MRワクチン接種のため増産していましたが、3期・4期が昨年度で終了、余っているようです。まさか、この余剰ワクチンを使わせたいがために、製薬メーカーが風しん単特ワクチンを売り惜しみしているなどと疑いたくありませんが。余剰といっても未接種者の数はごくわずかですから、それほどたくさんはないはずで、いずれMRワクチンも品切れになる可能性があります。いずれにしても風しんワクチンを希望される方は、早めに接種した方がよさそうです。

2013/04/04 
「都内で風疹が爆発的に流行しています。」

都内で風疹が大流行しています。過去5年間で最多だった昨年1年間の発生数(下図の黄色の線が昨年の1週間毎の累積風疹患者数です)を、今年はわずか3ヶ月足らずで上回るという爆発的なハイペースで発生しています(下図の赤色の線が本年の累積患者数です)。その急激な増加ぶりが容易に理解できると思います。おもに関東、関西の都市部を中心として流行、全国に拡大しています。患者の8割近くが男性で、20〜40歳代がほとんどです。1995年以前は先天性風疹症候群の危険はないからと、男児は予防接種の対象者になっていませんでした。そのことが主因だと考えられています。2011年の調査では、20代男性の10%、30〜50代男性の20%が風疹に対する免疫を持っていませんでした。ご存知の方も多いと思いますが、妊婦が妊娠初期に風疹に罹患すると、先天性風疹症候群といって、先天性白内障、難聴、先天性心疾患、発達障害などの先天異常が高い確率で胎児に出現します。20〜40歳代の男性の配偶者は年齢的に妊孕性が高いため、先天性風疹症候群には十分注意する必要があります。夫が風疹に感染、キャリアとなり家庭内で妻に風疹をうつす例もあり、妊娠希望の女性とその夫は、妊娠前に予防接種することをお勧めします。これまで妊娠中に風疹ワクチンを接種し胎児に障害が発生したとの報告はありませんが、生ワクチンであるため理論的にはまったくないと断言することはできません。そのため、ワクチン接種を希望する場合、接種1ヶ月前より避妊し、接種後2ヶ月間は妊娠しないよう注意する必要があります。
なお、風疹ワクチンの詳細は後日ホームページに掲載します。

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2013/03/25 
「ピロリ菌、ペプシノゲン法とABC検診〜胃癌は早期発見の時代から予防する時代になりました!」(その2)

●胃癌のリスク検診、ABC検診について

 一方、上述のように萎縮性胃炎の原因は、ピロリ菌であることが明らかになり、

 「ピロリ菌感染→慢性萎縮性胃炎(ペプシノゲン法陽性)→胃癌」

といった病気の成り立ちが解明されてきました。下図のようにピロリ菌感染者と非感染者を10年以上観察したところ、ピロリ菌感染者の約5%から胃癌が発症しましたが、逆にピロリ菌に感染していなければ胃癌の発症はほとんどないことが明らかになりました。  
以上の知見を踏まえ、ピロリ菌検査とペプシノゲン法を組み合わせた胃癌検診が考案され、徐々にその有用性が認められ、自治体検診などに利用されてきています。具体的には、血清抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体と血清ペプシノゲン値を組み合わせその陽性陰性より下図(日本胃がん予知・診断・治療研究機構のホームページより)のように4群に分類します。この方法が考案された当初、C群とD群は単にペプシノゲン陽性のC群として一まとめに分類されていたためABC検診と呼ばれていました。そのためC群とD群に分類された現在も、慣習でABC検診と呼ばれています。
 A群はピロリ菌陰性でペプシノゲン陰性、すなわち胃粘膜の萎縮が見られない群です。胃は健康的で若々しい状態です。そのため、胃癌はほとんど発生しません。ほとんどであってまったくではないのは、A群の中には以前はピロリ菌が陽性でB群と判定されていた方が後述のようにピロリ菌が除菌され、今回A群と判定されている方も混在しているからです。逆にA群の方は胃酸分泌が最も盛んなため、過剰分泌された胃酸が食道に逆流するために発症する逆流性食道炎の発生頻度が最も多い群です。ちなみに私自身はA群です。
 B群はピロリ菌に感染していますが、未だ胃粘膜の萎縮が進んでいない群です。何れ胃粘膜の萎縮が進展するでしょうから、将来的には胃癌が発生しやすくなるはずです。現時点での年間胃癌発生頻度は1000人に1人、つまり、0.1%程度です。逆にB群はピロリ菌の粘膜障害性による胃潰瘍に留意すべき群といえます。
 C群はピロリ菌に感染し、胃粘膜の萎縮も既に進んでいる状態です。ですから年間胃癌発生頻度は増加し500人に1人、つまり、0.2%程度になります。C群では胃粘膜萎縮を発生母地とする胃腺腫や過形成ポリープなども発生します。
 D群は胃粘膜の萎縮が進展していますが、ピロリ菌に感染していない群です。胃粘膜の萎縮があるにもかかわらずピロリ菌に感染していないのは、胃粘膜の萎縮があまりにも進み過ぎ、胃粘膜がほとんどなくなり、ピロリ菌が逆に棲めなくなってしまったのからです。D群は胃粘膜の萎縮が最も進んだ状態ですから、最も胃癌の発生しやすい状態で、年間80人に1人、1.25%も胃癌が発生します。10年観察すれば8人に1人が胃癌を発症します。お年玉付き郵便葉書きの4等、お年玉切手シートの当選確率は2%です。つまり、D群は、お年玉切手シートが当ったことがある方ならありうる確率、かなり高い確率といえます。これらのデータは48から49歳の方を対象者としたデータのため、高齢者ではさらに高くなると思われます。
 BからD群の分類された方は2次精密画像検査として胃内視鏡検査を実施します。毎年実施するに越したことはないのでしょうが、これまでの研究でB群では3年毎、C群で2年毎、D群で毎年実施すると従来の胃X線検査と遜色ない胃癌発見率が得られるとの結果が出ています。なお、A群に関しては癌の発症がほぼ0なわけですから基本的にファローアップ不要です。しかし、実際には以前はピロリ菌に感染し、胃粘膜の萎縮が少し進んだ後、ピロリ菌を除菌された方などが紛れ込んでいる可能性があります。その点を考慮すると、5年に1度程度の内視鏡検査を受けるか、尿素呼気テストなどでピロリ菌陰性を再確認した方が良いでしょう。

●ABC検診の問題点

 ABC検診はこのように非常に有用な検診手段ですが、いくつか注意する点があります。
 ピロリ菌検査には上述のごとくさまざまな方法がありますが、ABC検診では血清抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体検査を使用しています。それは、1、胃内視鏡を受ける必要がなく非侵襲的〜受診者に負担の少ない、医療事故の発生しにくい検査方法であること、2、ペプシノゲン検査が血液検査であるため、1回の採血で検査が完了すること、などのためです。安全かつ簡便であることは受診率を向上させる上で非常に重要な点です。従来の胃X線検査はその有用性が実証されてはいますが、検査を負担に感じる方や嫌う方が少なからずいるため、どうしても受診率が上がりませんでした。当たり前ですが、どんなに胃癌発見率の高い素晴らしい検査法であっても、兎に角まず受検してもらわなければその効果は発揮できません。
 血清抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体検査は、免疫の発達が不十分な小児や、免疫が衰えてきた高齢者では偽陰性となる場合があります。また、上述のように胃粘膜の萎縮が進み過ぎるとピロリ菌が棲めなくなり、ピロリ菌抗体価は減少、陰性になることもあります。
 また、ピロリ菌に感染し、抗体価が上昇するのは1ヶ月程度を要します。ですから、感染後1ヶ月以内に受検すると陰性となります。
 さらに、除菌後抗体価は徐々に低下していきます。ですから、ピロリ菌抗体陰性といって、一度もピロリ菌に感染したことのない方と以前は感染していたが今は感染していない方が混在しているはずです。ですから、ABC検診実施時には必ず問診で過去のピロリ菌除菌の有無を確認する必要があります。

ピロリ菌除療法と胃癌の予防について

 ABC検診の結果、胃癌の高リスク群と判定され、早期発見のため定期的に胃内視鏡を受検することは大切ですが、

「ピロリ菌感染→慢性萎縮性胃炎(ペプシノゲン法陽性)→胃癌」
 
という病気の成り立ちが解明されているわけですから、当然、たとえピロリ菌に感染していようとも駆除することが出来たら胃癌を予防できるのではないかといった期待が沸いてきます。
 現在、ピロリ菌は2種類の抗菌剤と1種類の胃薬を1週間内服することで80〜90%の確率で駆除、すなわち除菌することが可能です。1回目の除菌治療が失敗しても、薬の種類を変えるとやはり90%程度の確率で除菌可能です。ですからほとんどの方で除菌可能です。副作用は下痢、味覚異常、皮疹、出血性腸炎などで治療を止めれば治ります。特に危険な副作用はありません。
 ピロリ菌を除菌すると胃や十二指腸潰瘍がほとんど再発しなくなります。また、胃MALTリンパ腫、過形成ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血なども改善することが既にわかっています。以上のように病気が治癒するかどうかを判定する場合と異なり、胃癌を予防できるかどうかはもう少し長期に観察しなければなりません。しかし、除菌により明らかに胃粘膜の萎縮は改善しますし、現時点でも既に、

1、胃癌の発症率が30%以下に減少する
2、若年で除菌したほうがより有効性が高い
3、高齢者においても胃粘膜の萎縮、老化を阻止するのに有効である
4、胃癌の早期発見に有用(胃粘膜がきれいになり、胃癌が発見されやすくなる)

が判っています。

 現在、ピロリ菌除菌療法のみならずピロリ菌の検査は、胃十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌内視鏡的粘膜下層剥離術後しか保険適用がありません。各種学会が保険適用の拡大を求め厚労省に要望していますが、医療費抑制政策のため認められていません。2009年日本ヘリコバクター学会がピロリ菌感染者はすべて除菌治療の適応者であるとのステートメントを発表、マスメディアでも報道されました。そのため、胃癌の家族歴のある方など、胃癌に対して意識の高い方が自費でのピロリ菌検査や除菌を希望し来院されています。
 当院では、健診センターを併設しているため、従来ABC検診を実施しています。ピロリ菌抗体陰性の場合、便検査での再検査をお勧めしていますので、4,200円〜6,300円で実施できます。さらに、B〜D群と診断された場合、自費で除菌治療を受けることも出来ます。当院は医薬分業しているため処方箋を発行するのみです。処方箋はどちらの薬局でもお薬に交換することが出来ます。自由診療のため薬代に定価はなく6,000〜8,000円程度のようです。なお、除菌後はさらに除菌の成否を確認する検査が必要です。除菌が失敗した場合、さらにもう1回同程度の費用が必要になります。おおよそ検査代から薬代まで含め一次除菌ですめば19,000円〜二次除菌まで行った場合31,000円程度です。保険証を使わずともこの金額で胃癌になる確率が激減するなら決して高い買い物ではないと思います。もちろん、除菌により胃癌の発生が完全に0になるわけではないので、除菌後も定期的に胃癌検診を受診されることを重ね重ねお勧めします。
 除菌成功後のデメリットとして、胃粘膜が再生するため胃酸の分泌が回復、逆流性食道炎を発症しやすくなります。すなわち、A群にもどっていくからです。食欲も旺盛になり体重が増加しやすくなります。お酒が以前より強くなって肝機能が悪化した方もいました。これらの点は必ずしもデメリットというべきものではないかもしれません。
 将来的にはABC検診が若年層にも普及し、胃粘膜の萎縮が進展する前のピロリ菌若年保菌者が皆除菌され、日本中から萎縮性胃炎が一掃され、胃癌検診そのものが不要な時代になることを切に望んでいます。
当院ではそれまでの間、胃癌の早期発見、さらには予防の観点から来院されるすべての方に折に触れ一度ABC検診を受診するようお勧めしています。

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2013/03/25 
「ピロリ菌、ペプシノゲン法とABC検診〜胃癌は早期発見の時代から予防する時代になりました!」(その1)

ヘリコバクター・ピロリ菌感染の人体への影響

 1983年胃に生息する細菌、ヘリコバクター・ピロリ菌(下図)がオーストラリアの二人の研究者により発見されました。それまで、胃液に含まれる胃酸は強酸で、金属をも溶かす塩酸が主成分のためとても微生物が生息できるような環境ではないと思われていました。しかし、このピロリ菌の発見により上部消化器疾患の概念が大きく変わることになります。なぜ、ピロリ菌が強酸性の胃酸の中で生息できるのかというと、ウレアーゼという酵素を産生し、胃粘液中の尿素を分解してアルカリ性のアンモニアを作り、自身の周囲の胃酸を中和して棲みよい環境に作り変えていたのです。
 ちなみにこの大発見を成し遂げた二人は2005年ノーベル生理学賞医学賞を受賞しています。明治乳業が2006年頃から自社の乳酸菌商品のTVコマーシャルにその一人マーシャル教授を起用したので御存知の方もいるのではないでしょうか。
 ピロリ菌が胃に感染すると、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、MALTリンパ腫、胃原発悪性リンパ腫などの消化器疾患、さらには特発性血小板減少性紫斑病、小児の鉄欠乏性貧血、蕁麻疹などの胃外疾患の原因となることが明らかになっています。数ある細菌の中で唯一悪性腫瘍の原因となりうることが明らかになっている病原体です。
 胃粘膜にピロリ菌が感染すると、胃粘膜の炎症、すなわち胃炎が発症します。ピロリ菌感染は持続するため、胃の炎症も慢性化、慢性胃炎になります。さらに、炎症が持続すると胃粘膜が菲く萎縮した状態になっていくため、慢性萎縮性胃炎と呼ばれるようになります。下図は正常胃粘膜皺襞と萎縮性胃炎を表したものです。深々とした絨毯の毛が使い古されて擦り切れた状態をイメージして下さい。胃の粘膜の萎縮は加齢とともに徐々に進行していくため、ピロリ菌が発見されるまでは、萎縮性胃炎は胃の老化現象と考えられていました。まれに萎縮性胃炎の見られない高齢者がいますが、その方々は実はピロリ菌に未感染だったのです。つまり、胃の老化=萎縮性胃炎はピロリ菌感染が原因であって、ピロリ菌に感染していなければたとえ高齢になっても、胃の粘膜は若々しい状態であることが明らかになりました。
 ピロリ菌の感染経路は完全には解明されていませんが、経口感染であろうと考えられています。具体的には胃の免疫機能が未発達な乳幼児期にピロリ菌保菌者の親との濃厚接触(接吻や口移しで離乳食を食べさせる:口口感染)、糞便に汚染された水や食物の摂取(糞口感染)による感染が有力視されています。成人になってからの感染は一過性に終わり持続感染しないことが多いと考えられています。以前は世界中のほとんどの人が保菌者でしたが、先進国などでは上下水道や衛生観念の普及とともに保菌率は急速に低下しています。日本も同様に高齢者ではほとんどの方が保菌していますが、20歳以下の人では既に保菌率は10%程度まで減っています。このように昔は日本人のほぼ全員がピロリ菌保菌者であったため、ピロリ菌による萎縮性胃炎は日本人のほぼ全員に発症していました。そのため、萎縮性胃炎=加齢現象と考えられていたのです。
 ピロリ菌感染の有無を検査する方法には大きく分けて内視鏡による生検組織を必要とする侵襲的方法と内視鏡検査を必要としない非侵襲的方法があります。侵襲的検査には、1、直接ピロリ菌を分離培養する方法(組織培養法)、2、胃粘膜組織を顕微鏡で観察し、直接ピロリ菌を観察する方法(組織鏡検法)、3、胃粘膜組織中のピロリ菌が有するウレアーゼ活性の有無を調べる方法(迅速ウレアーゼ検査)、非侵襲的検査には、1、検査薬を服用後の呼気を採取し、胃内のウレアーゼ活性の有無を調べる方法(尿素呼気試験)、2、ピロリ菌に感染すると体内で産生される血中または尿中の抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体を測定する方法、3、糞便中のヘリコバクター・ピロリ抗原、すなわち菌のかけらを調べる方法、などがあります。どの検査方法も一長一短があり、100%完全な検査方法ではありません。
 一つの検査方法で陽性となった場合、感染ありと診断して間違いありませんが、逆に陰性となっても検査感度が100%でないため、必ずしも未感染とは断言できません。必ず、別の方法で再検査して陰性を再確認する必要があります。

●ペプシノゲン法について

 ペプシノゲンとは胃液の中に含まれる消化酵素ペプシンのもととなる物質です。ペプシノゲンにはTとUがありますが、胃粘膜の萎縮とともにその分泌量が変化するため両者を測定することによって胃粘膜の萎縮の程度を調べることができます。ペプシノゲンは胃粘膜細胞から血液中に少量移行するため胃液を採取しなくとも血液で測定することができます。つまり、血液検査であるペプシノゲン法により簡単に胃粘膜の萎縮度を調べることができるのです。
 萎縮性胃炎は胃癌の前癌病変、つまり、萎縮性胃炎になるほど胃癌になりやすいことが解っていました。そのため、血清ペプシノゲン検査を行うことにより萎縮性胃炎の程度、すなわち胃癌になりやすさを推定することができるのです。下図は日本の代表的な地域のペプシノゲン法陽性率と胃癌死亡率をグラフにしたものです。このようにペプシノゲン法の陽性者の多い地域ほど胃癌死亡率が高いことがはっきりと見てとれます。
 このようにペプシノゲン法は、胃癌になりやすさ、リスクを評価する検査です。ですから、ペプシノゲンが陽性だからといって今現在胃癌が発生しているとは限りません。ペプシノゲン陽性者に対して胃内視鏡検査などを実施、胃癌の有無を調べる必要があります。
 従来胃癌早期発見のための検査としてバリウムを使った胃X線検査が行われています。ペプシノゲン陽性者に限定して内視鏡を実施する方法と胃X線検査で異常を指摘された方に胃内視鏡検査を実施する方法を比べた場合、胃癌発見率においてペプシノゲン法は胃X線検査と同等以上であるとの結果が得られています。そのため、昨今ペプシノゲン法は胃癌検診で活用されています。しかし、厚労省は、ペプシノゲン検査は治療目的ではなく予防目的であるとして保険適用を認めていません。
 ペプシノゲンはいくつかの条件で検査値が変化するため正確に測定することができません。腎不全(血清クレアチニン値≧3mg/dlが目安)、胃十二指腸潰瘍や逆流性食道炎の治療薬である胃酸分泌抑制薬のプロトンポンプ阻害薬(タケプロン○R、オメプラール○R、オメプラゾン○R、パリエット○R、ネキシウム○R)を2ヶ月前以内に服用していた場合、ペプシノゲン値は高くなり、偽陰性になることがあります。逆に、胃切除術後の場合ペプシノゲン値は低くなり、偽陽性になることがあります。そのため、これらに該当する方は検査対象からはずすべきです。
 また、すでに食道、胃、十二指腸疾患で治療中の方や、胃や十二指腸疾患が疑われる症状のある方は、健診を受けるより、保険診療として医療機関で精密検査や治療を受けるべきです。
 ペプシノゲン値は成人では逐年測定しても5年程度ではほとんど変化しないため、一度測定したら次回検査まで5年程度間を空けてもかまわないと考えられていました。しかし、後述するようにピロリ菌の除菌治療が一般化すると、ペプシノゲン値が変動する症例が散見される可能性があり、この判断に関してはまだ流動的です。

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2013/03/17 
「超音波骨密度測定装置を導入しました。」

従来当院では、骨密度測定はX線を使用したMD法で行っていましたが、超音波を利用したQUS法による超音波骨密度測定装置(下図)を導入、運用を始めました。この装置はメーカー的には「超音波で踵の骨の骨量を調べる可般型の骨密度測定装置。骨代謝の早い海綿骨を多く含む踵骨を、短時間に正確で非侵襲的に測定でき、高精度と簡便性の両立を実現、加えて患者の負担を大幅に低減しました。」とのことですが、精度的には他の方法に比べやや落ちるようです。しかし、何と言っても放射線被曝が無く、妊婦さんも安心して測定できる点が最大のメリットです。何度測定しても被曝がないのは朗報です。また、保険点数が、MD法が140点なのに対し80点と低料金なのもメリットです。
当院では、測定後装置からプリントアウトされる結果値用紙を被検者の方が理解しやすいように下図のような台紙に貼付して結果説明を行います。
骨粗鬆症の危険因子としては、女性であること、閉経、痩身体型、家族歴、偏食、運動不足、アルコールやコーヒーの多飲、喫煙、日光照射不足、胃切除術後、糖尿病、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、原発性副甲状腺機能亢進症、腎不全などの既往、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)内服中、などがあります。これらに該当する方は一度検査を受けてみて下さい。

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2013/03/17 
「3月5日夜、開催された「北多摩糖尿病スモールミーティング「インスリン強化療法からBOTへの切り替えについての検討」の座長を務めました。」

3月5日夜、開催された学術講演会、北多摩糖尿病スモールミーティング「インスリン強化療法からBOTへの切り替えについての検討」の座長を務めました。前半は杏林大学糖尿病・内分泌・代謝内科の炭谷由計先生にインスリン強化療法からBOTへの切り替えについて症例発表していただき、後半の特別講演では、同じく杏林大学糖尿病・内分泌・代謝内科准教授の犬飼浩一先生に、病態に合わせた糖尿病治療薬の選択方法について御講演いただきました。最近、DPP-W阻害剤を始めてとして新しい経口血糖降下薬が次々に開発され、糖尿病治療の選択枝、オプションが増えたことは、患者さん、われわれ医師にとって福音です。私が研修医の頃は、SU剤というインスリン分泌を増加させる薬1種類しかなく、糖尿病の内服治療と言えば、血糖値を見ながら単にその薬の量を調節するのみで、医師としての腕の見せ所も無く、退屈な仕事でした(不謹慎ですいません)。しかし、今ではSU剤に加え、速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド系)、ブドウ糖吸収阻害薬であるαGI薬、インスリン抵抗性改善薬であるビグアナイド系、チアゾリン系、DPP-W阻害薬など多数開発され多岐にわたっています。さらにそれら複数の薬を一錠に混ぜ合わせた配合剤も開発されています。もちろん、これらに加えてさまざまなインスリン注射薬、さらには、同じく注射薬であるGLP-1受容体作動薬も上梓されています。また、今回の講演のテーマであるBOT(Basal Supported Oral Therapy)療法のようにインスリン注射薬と経口血糖降下薬を組み合わせた大変有効な治療法も開発されています。当院でも多数の患者さんがこのBOT療法により、良好な血糖コントロールを得ています。糖尿病治療薬にはそれぞれ特徴的な薬理作用があり、このように患者さんの病態に合わせ最適な薬の選択が求められるようなりました。選択枝が増えた分だけ最適な治療法の選択に際し知識と技術が要求され、われわれ医師はより一層日々の研鑽が求められるようになっています。ダイナミックな診療に遣り甲斐を感じること、医師冥利に尽きます。

2013/02/16 
「2月15日夜、開催された三鷹市医師会学術講演会「外来診療におけるニューキノロン薬の意義」の座長を務めました。」

本日2月15日夜、三鷹市医師会館で開催された学術講演会「外来診療におけるニューキノロン薬の意義」の座長を務めました。演者は杏林大学総合医療学教室感染症科の河合伸教授です。昨今のインフルエンザ流行から肺炎を患い亡くなられる高齢者が増えています。外来で肺炎患者を診断した場合の抗生物質、抗菌剤の治療戦略をわかりやすく御講演いただきました。当院でもこの冬感冒から肺炎を発症された患者さんが立て続けに来院されています。幸い皆さん快癒されましたが、肺炎は高齢者の死亡原因の最たるもの、非常に危険な病気です。今回御教授いただいた知見を今後の診療に生かしいきます。
それにしても、昨日の子宮頸がん講習会、本日昼間の第46回日本痛風・核酸代謝学会総会、夜の講演会座長と充実したバレンタインデーなりました。

2013/02/16 
「2月15日クリニックを休診にして第46回日本痛風・核酸代謝学会総会に参加してきました。」

本日、2月15日クリニックを休診にして新宿京王プラザホテルで開催された第46回日本痛風・核酸代謝学会総会に参加してきました。昨日本日と二日間の会期で開催されたのですが、昨日はやはりクリニックの看護師3人と一緒に東京都の主催する子宮がん検診従事者講習会「子宮頸がん検診―ベセスダシステムを中心に―」に参加し、午後の診療を休診にしていたため、本日1日だけの参加となりました。昨今、尿酸値の上昇が原因の痛風患者数は急速に増加、その臨床的意義が高まっています。さらに、高尿酸血症は単に痛風や尿管結石の成因のみならず、直接的に腎機能を悪化させ、慢性腎臓病の危険因子となることが注目されています。詳しくは、当院ホームページの高尿酸血症・痛風内科の欄をご覧下さい。ちなみに我が家のチョコレート好きの娘達からは、getするチョコが減らないよう、来年からはバレンタインデー前後は休診にしないようしてくれと頼まれました。食いしん坊で困った娘たちです。

2013/01/31 
「1月24日より仙台市で開催された日本総合健診医学会第41回大会に参加してきました。」

1月24日から25日まで仙台市で開催された日本総合健診医学会第41回大会に24日のみ参加してきました。24日の休診中は御迷惑をお掛けしました。当院では来年度より婦人科検診〜子宮がん検診、乳がんのためのマンモグラフィー検査導入に向けて準備を進めています。これら検診の実際の運営は、婦人科医や読影を御願いする放射線専門医に依頼しますが、たとえ内科医であっても責任者である私自身も専門医の先生方と議論できるよう基礎的知識を身に付けたいと思っています。ですからおもに子宮癌、乳癌のセッションを中心に聴講しました。あいにく風邪気味で体調が優れませんでしたが有意義な時間を過ごすことが出来ました。また、健診専門医資格更新のための単位も確保することができました。

2013/01/22 
「当院を御利用下さった方が1万人に達しました。」

 当院は昨年11月で開院5周年を迎えました。その間、御病気の方のみならず、健康診断、人間ドックを目的として受診された方が、1月22日1万人に達しました。この数は延べ人数ではなくあくまでも個々人の数です。持病のため毎週毎月通院されている方もいれば、年に1回だけ健診で受診される方もいます。受診者の方は必ずしも地元の三鷹市民とは限らず、西は山梨県から東は千葉県までいらっしゃいます。しかし、三鷹市の人口が17万人強程度であることを思うと本当にたくさんの方に御利用頂けたことと深謝いたしております。1万人の方を診察してきた経験は私にとって大きな自信と財産であり、また誇りでもあります。
 最近来院者の増加のためお待たせすることがかなり多くなってきました。先だってお知らせしたように(2012年11月23日院長コラム「11月23日より2Fクリニック拡張工事が始まります。」を御参照下さい)より効率的な診療が出来るよう現在拡張工事中です。創立理念のもとスタッフ一同で工夫し、当院を信頼し来院して下さる方をできるだけ多く診療できるよう、患者さん、私達スタッフで協力し合っていければ幸いです。御協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

2013/01/14 
「アナフィラキシー補助治療剤「エピペン」について」

●アナフィラキシーとアナフィラキシー・ショック

 学校医として新入生の健康調査票を通読していると、最近何らかのアレルギー疾患を有する生徒の多いことに驚かされます。アレルギー反応の中で急性かつ全身性の重篤な病態がアナフィラキシーです。
 具体的には原因物質に曝露後数分から2時間程度の間に、不安感、無力感、動悸、胸苦しさ、眼瞼浮腫、めまい、流涙、鼻閉、鼻汁、くしゃみ、口唇、舌の痒み、喉の閉塞感、咳、吐き気、腹痛、下痢、四肢冷感、蕁麻疹、皮膚の紅潮、痒み、失禁などの症状が出ます。特に全身に広がる蕁麻疹が初発症状のことが多いです。症状発症後は30分間のうちに急激に悪化、ときに血圧が低下、顔面蒼白、呼吸困難、呼吸音がゼーゼー、意識障害が出現、アナフィラキシー・ショックという危篤状態になることもあります。
 アナフィラキシー・ショックは日本で年間5,000〜6,000人発生しているといわれ、そのうち死亡例は50〜70人程度います。

 アナフィラキシーの原因としては右図(ファイザーホームページより転載)のごとく食物が原因となっている場合が最も多いです。そのほか薬剤やハチ毒が原因の場合が多数見られます。死亡例の原因としては薬剤が最も多く、よくニュースで耳にするようにスズメバチなどの蜂毒が次に多いです。アナフィラキシーはさまざまな抗原物質に対する血液中に存在する特異的IgE依存的に発現するため、事前に特異的IgEを測定し、アレルギー体質の有無を調べておくことも可能です。
 食物アレルギーのうち原因食物として最も多く約40%を占めるのが鶏卵です。鶏卵アレルギーの多くは乳幼児期に発症、成長とともに耐性を獲得、アレルギーは寛解する傾向にありますがまれに成人まで持続する方もいます。小麦は鶏卵、牛乳とともに食物アレルギーの3大原因食物となっています。2010年には「茶のしずく石鹸」に含まれた小麦成分により多数の方がアナフィラキシーを発症していたことが報道されました。また、小麦は食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として最も頻度が多いです。食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、特定の食物を摂取した後、運動負荷が加わることにより発症するアナフィラキシーです。小学生などが給食でエビフライ(小麦とエビ両方が含まれる)を食べた後、昼休みに校庭で運動をしてショック死した事故をニュースなどでご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。このようにエビやカニなどの甲殻類アレルギーも小麦に次ぐ食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として知られています。ピーナッツ(落花生)アレルギーは最近増加傾向にあり、そのほかのナッツ類のアレルギーを同時に持つことが多いです。鶏卵のように加齢に伴い改善する傾向が少なく一度発症すると重篤化しやすい傾向があります。このように重篤なアナフィラキシー・ショックを来しやすい原因食物である卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生を含む加工食品に関しては、食品衛生法上表示が義務付けられており、確認の上購入することをお勧めします
 薬剤アレルギーの中には、薬剤そのものに対するアレルギーではなく、卵白などを原料とするため取り除けなかった鶏卵成分のため食物アレルギーを発症してしまうものもあります。鶏卵や牛乳アレルギーのある方には当然投与禁忌となっています。このうち塩化リゾチームは市販の総合感冒薬にも配合されており、鶏卵アレルギーのある方は十分注意してください。

●アナフィラキシーの初期治療

 アナフィラキシーの初期治療としては、アレルギー反応の初期段階を抑制する働きのあるエピネフリンを筋肉注射することが最も有効です。エピネフリンは注射後数分で効果を発現、さらに気道を拡張させることによって呼吸困難を改善、心拍出量を増加させることによって低血圧をも改善します。
 アナフィラキシーでは抗原物質に曝露後分単位で発症、分単位でショック状態に陥る可能性があるため、アナフィラキシー・ショックの治療は時間との争いになることが多いです。死亡例において、アナフィラキシー発現から心停止までの時間は、薬剤で5分、蜂毒で15分、食物でも30分程度です(下図、ファイザーホームページより転載)。実際、アナフィラキシー・ショックが発症し30分以内にエピネフリンを投与できればほとんど救命できますが、30分を過ぎると救命率が低下していきます。ですからアナフィラキシー発症後医療機関を受診していたら間に合わない場合もあります。とくに林野庁職員は山奥で働いているのでスズメバチに刺された後30分以内に医療機関を受診することができず、死亡事故が相次いでいました。そのため1995年から林野庁職員を対象としてエピネフリン自己注射薬注射器一式を携帯することが認められるようになしました。さらに2003年から蜂毒によるアナフィラキシー補助治療剤として、2005年から食物アレルギーや薬物アレルギーによるアナフィラキシー補助治療剤として自己注射が認可されました。しかし、保険適用はなく1本12,000〜15,000円を全額自己負担しなければならない上、有効期限が1年程度のためたとえ未使用でも毎年買い替えなければならず患者負担の重さが問題となっていました。しかし、ようやく2011年9月より保険適用となり安価に入手できるようになりました

●アナフィラキシー補助治療剤「エピペン」について 

 エピネフリンは同じ注射薬であるインスリンと違い何時何時急に必要になるか事前に分からないため、注射針、容器、薬液が一体となった携帯型自動注射器「エピペン」として商品化されています。
 エピペンの携行が推奨される方としては、

1、 過去に何度もアナフィラキシーの既往のある方、微量の抗原物質でもアナフィラキシーが誘発される方、ショックを誘発させやすい食物アレルギーの方(ピーナッツ、ナッツ、魚介、牛乳、そば、卵、小麦など)
2、 喘息を合併している方、
3、 非選択性β遮断薬(高血圧、狭心症、不整脈などの薬の一種)を服用中の方(エピネフリンが効きにくい方)
4、 医療機関から離れた地域に居住している方、修学旅行や海外旅行時
5、 蜂刺傷後約20%の方が再刺傷によりアナフィラキシー・ショックを起こす危険性が高くなることが分かっています。林業、養蜂業などに従事する方で過去に蜂刺傷の既往のある方は携帯すべきです。


 以前は、注射は医療行為ですから、一部インスリンのように自己注射が認められているもの以外本人か保護者以外の者が注射した場合医師法違反に問われる可能性がありました。しかし、2008年文部科学省は、本人に代わって教職員がエピペンを打つことは医師法に違反しないとする初めての見解を示しています。食物が原因のアナフィラキシーは学童に多く、毎年20,000人程度います。2010年にはアナフィラキシー・ショックを発症した児童に対し学校側が保護者から預かっていたエピペンを使用せず救急車を要請、駆けつけた母親がエピペンを注射し危うく一命をとりとめるという事例も起きています。エピペンが保険適用となり、携行する児童生徒が急激に増加しており、今後は教職員もその使用方法に精通しておく必要性に迫られそうです。
 このようにエピペン注射は医師不在のもと自己判断で注射しなければなりません。ですから使用方法とともに注射のタイミングを理解しておく必要があります。その覚え方としてABCD法則というのがあります。下図(ファイザーホームページより転載)のように、全身のじん麻疹に加え、A;喉頭浮腫〜喉が腫れ、息が詰まる感じ、B;喘息〜呼吸音がゼーゼー、ヒーヒーいって呼吸困難に、C;ショック〜血圧低下による顔面蒼白、D;下痢、腹痛、嘔吐、などを認めた場合、迷わずエピペンを使用します。
 従来、その強力な交感神経刺激作用により心肺蘇生に使用されるエピネフリン注射薬である「ボスミン注1mg」は、薬事法上劇薬に分類されるほど使い方によっては命にかかわる副作用を持つ薬品です。「エピペン」では1本0.3mgとエピネフリン含有量を減じているため大事故につながる可能性は少なくなっています。しかし、それでも、ある種の向精神薬(ブチロフェノン系、フェノチアジン系)、α遮断薬、動脈硬化症患者、甲状腺機能亢進症患者、糖尿病患者、心室頻拍症等の重症不整脈患者、精神神経症患者等では禁忌〜原則使用禁忌となっています。エピペン乱用は事故に繋がりかねないため、処方に際し患者さんにしっかりと使用方法について説明、理解させる必要があります。そのため、エピペンを処方する医師も一定の講習を受講し、登録をした医師しか処方できません。エピペンを希望される患者さんは、エピペン処方登録医を受診して下さい(当然当院はエピペン処方登録医です)。
 なお、当院は医薬分業していますが、多くの薬局はエピペンの在庫を置いていないため取り寄せになることが多く、処方箋を持参してもすぐに薬は手に入りません。希望される方はそれを見越して早めに受診するようにして下さい。
 なお、エピペンを注射後は必ずすぐに入院施設のある病院を受診して下さい。エピペン注射はあくまでもアナフィラキシーの初期治療、補助的治療で症状を緩和するためのものです。たとえエピペン注射により病状が改善しても、アナフィラキシー・ショックの中には二峰性の経過をたどるものがしばしば見られます。すなわち一度症状が改善しても8〜24時間以内に再びショック症状が現れることがあるのです。ですから1〜2日間の経過観察入院が必要になる場合が多いです。たとえエピペン注射で症状が改善しても、必ず医療機関を受診して下さい。

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2013/01/03 
「帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について〜今、帯状疱疹は予防する時代です!(その3)」

●帯状疱疹後神経痛

 帯状疱疹の皮膚病変が消失、発症後3ヶ月経過しても皮膚分節に疼痛が残存する場合があり、帯状疱疹の後遺症として帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。
 帯状疱疹の皮疹が出現しているときの急性期痛と皮疹が消失した後も残存する帯状疱疹後神経痛ではその発生機序が異なります。急性期痛は神経の炎症による痛みで、帯状疱疹後神経痛は神経の不可逆的損傷が原因の神経因性疼痛です(下図)。温度感覚の異常や皮膚を軽く触れただけでも痛みと感じる場合(異痛症といいます)、神経が損傷されている可能性が高く、帯状疱疹後神経痛の後遺症が残る可能性が高くなります。
 その痛みの程度はごく軽度のものから、夜眠れないほど激しいものまでさまざまで、焼けるような痛み、刺すような痛み、電気が走るような痛み、締め付けるような痛みとしてしばしば表現されます。不可逆的に神経が損傷しているため痛みが完全に消失しない患者もおり、その場合薬物により痛みを軽減させるしかありません。60歳以上の方では帯状疱疹発症6ヵ月後でも約1割の方に帯状疱疹後神経痛が合併します。
 60歳以上、皮膚病変が重症、急性期痛が重症、異痛症がある、糖尿病患者、免疫不全の基礎疾患などの危険因子があると帯状疱疹後神経痛が出現しやすくなります。
 現在帯状疱疹に有効な抗ヘルペスウイルス薬が開発、使用されていますがその治療の目的は、帯状疱疹の疼痛を和らげ皮疹の治癒を早めるとともに重症化を防ぎ顔面神経麻痺などの合併症を発症させないことと帯状疱疹後神経痛の後遺症が残らないようにすることです。そのためには速やかに診断し、できるだけ早期に抗ヘルペスウイルス薬を投与することが最も重要です。抗ヘルペスウイルス薬はヘルペスウイルスの増殖を抑制する薬剤であってウイルス量を減らす薬剤ではありません。そのためウイルスが増殖している早期に投与しなければ効果がありません。皮疹出現後72時間以内の投与が望まれます。投与後効果が発現するのには2〜3日を要します。

●帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、顔面神経麻痺の予防〜帯状疱疹予防ワクチン

 帯状疱疹は平均寿命まで生きると平均3人に一人が生涯に一度は経験するありふれた病気です。
 水痘が流行した年に帯状疱疹が減少し、水痘が流行しない年は帯状疱疹が増加することが報告されています。また、帯状疱疹は水痘の流行しない夏に多く、流行する冬に少ない傾向があります。水痘が夏に少ないのは、子供たちが集う学校が夏休みのため、隔離期間となっているためです。
 水痘患者の90%以上が5歳未満であるのたに対し、帯状疱疹は10歳代で若干多く発症、30歳代で最も少なく、50〜70歳代で急増します。これは、30歳代が子育て世代のため水痘に罹患した小児に接する機会が多いためではないかと考えられています。実際、子供が水痘に罹患すると、母親がたとえ水痘を発病しなくともVZV抗体価が上昇することが知られています。
 人口動態の高齢化に伴い帯状疱疹が年々増加しているのは当然ですが、それに加え高齢者での発症率そのものも増加しています。やはり、水痘患児に接する機会が減少しているのが原因かもしれません。
 米国では水痘ワクチンが定期接種として導入されると水痘患者数は激減しましたが、それと反比例するように、帯状疱疹患者数は倍増しています。
 これらの事実は、上段で述べたように、1.一度獲得した水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫は一生涯続くことはなく、暫くすると低下してくること、2.免疫力が完全になくなる前にウイルスに触れると表面上は発病することなく再び免疫力が復活(ブースター効果と呼びます)すること、3.水痘帯状疱疹ウイルスの場合、免疫力が低下してくるともう一度水痘罹るのではなく、体内に既に潜伏しているウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症させることを示しています。
 日本、欧米では水痘ワクチン接種によって、水痘既往歴のある者においても、免疫賦活効果があることが報告されています。そのため、水痘ワクチンは、水痘既往歴のない者のみならず、水痘既往があっても水痘再感染の可能性の高い者、具体的には白血病患者、悪性腫瘍患者、免疫抑制剤投与中の者等も接種対象者に加えられています。しかし、日本では水痘ワクチンはあくまでも水痘予防が目的です。
 しかし、2005年米国で60歳以上の成人に水痘ワクチンを接種すると帯状疱疹が約半減、帯状疱疹後神経痛もその発症率が約3分の1に低下、発症してもその重症度が6割以上減少したことが発表されました。ワクチン以外に帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛を予防する代替療法がないため、今日日本以外の国では水痘ワクチンは帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛の標準的予防方法となっています。治療薬である抗ヘルペスウイルス薬アシクロビルは水疱が50%痂疲化する日数を1.5日早める程度の効果しかありません。帯状疱疹がありふれた病気で、かつ、時として重症化、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺などの後遺症を残す可能性があることを考慮すれば、日本でも水痘ワクチンの適応に帯状疱疹の予防が追加されることが望まれます。
 当院では、予防接種が元より保険適用がなく自費診療であることを踏まえ、国に先立ち帯状疱疹の予防目的に水痘ワクチンを接種することにしました。水痘の既往歴がない方は言うに及ばず、50歳以上の方は積極的に接種していただきたいのですが、とくに、帯状疱疹や原因不明の顔面神経麻痺の既往歴のある方、糖尿病、膠原病、ネフローゼ症候群、気管支喘息、ガン等の持病のある方、副腎皮質ホルモン等の免疫抑制剤を投薬されている方、日頃小児に接する機会の少ない方等には特に推奨します。価格は7,880円ですが、接種後約11年たっても抗体が維持されていることが確認されており、単純計算では1年当たり720円です。毎年接種しなければならないインフルエンザワクチンと比較してもが費用効果対比の高い割安なワクチンです。

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2013/01/03 
「帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について〜今、帯状疱疹は予防する時代です!(その2)」

 VZVが冬眠する神経節は脊椎の数だけ左右一対存在します(その他、頭部では三叉神経節等もあります)。それらの神経節が支配する領域、皮膚分節(下図)は人間みな共通です。複数の神経節に冬眠するVZVが偶然同時に覚醒することはまずないため、帯状疱疹は左右一方の皮膚分節の範囲に限局して水疱を形成(下図は右T9皮膚分節の帯状疱疹です)します。全身の皮膚分節の中で胸背部に発症する頻度が最も多く(下図)、このように胸背部に発症すると体を半周だけ帯を巻いたように見えるため帯状疱疹と呼ばれるようになりました。このような特徴を持った病気は他にないので視診で比較的簡単に診断できます。帯状疱疹は発症数日前に皮膚分節の領域に違和感や痛みが先行することが多いです。その後強い痛みとともに水疱が出現、約3週間後痂皮(かさぶた)を形成、痛みも消失、帯状疱疹の多くが自然治癒します。
 しかし、時として帯状疱疹は重症化し、入院治療が必要になることもあります。汎発性帯状疱疹といってVZVに感染したリンパ球が全身にまわり、全身に水痘様の水疱が散発する場合があります。また、複発性帯状疱疹といって同時に2箇所以上の皮膚分節に帯状疱疹が発生する場合もあり、これらの多くは免疫不全に伴って発症しますが、特に基礎疾患のない方に発症することもあります。さらに、顔面神経膝神経節のウイルスが再活性化した場合、外耳道、耳介周辺に水疱を生じ、浮腫んだ顔面神経が圧迫され顔面神経麻痺を合併することがあり、ビートたけしのような顔貌になります。加え、難聴や味覚障害を伴うこともあります(Ramsay Hunt症候群)。上述したように、帯状疱疹では皮疹が出現する3〜5日前から発症部位に痛みや感覚異常を自覚することがあります。しかし、この時点でVZVに対する十分な免疫が誘導されると、ウイルスは神経に沿って皮膚まで到達できず、疼痛だけで皮疹を伴わない帯状疱疹〜無発疹性帯状疱疹(zoster sine herpete)を発症します。皮疹を伴わない場合、VZVの再活性化〜帯状疱疹と診断するのは難しく、原因不明の顔面神経麻痺、すなわちベル麻痺(特発性片側性末梢性顔面神経麻痺)の中に少なからず無発疹性帯状疱疹が存在すると考えられています。
 また、三叉神経第1枝の領域(額、目の上)に発症した場合、視神経が障害され角膜炎、網膜炎、視神経炎、急性網膜壊死により最悪失明することもあります。陰部の帯状疱疹では、膀胱の動きが阻害され尿閉をきたすこともあります。さらに、帯状疱疹は約7%の方で再発、膠原病などの持病があると再発しやすいようです。

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2013/01/03 
「帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛や顔面神経麻痺ワクチン(予防接種)について〜今、帯状疱疹は予防する時代です!(その1)」

●はしかのようなもの

 「はしかのようなもの」という慣用句があります。この意味は、「誰もが一度は通る道」「誰もが若い時期に経験すること、失敗」を比喩したものです。この慣用句の成り立ちは、はしか(麻疹)という病気が、ほとんどの人にとって生涯一度だけ感染、発病する病気だからです。このように一度ある種の病気に罹ると二度とその病気にならないことを、医学用語で「終生免疫」「二度なし現象」と呼び、私が医学生の頃は、麻疹、風疹(三日はしか)、ムンプス(おたふく風邪、流行性耳下腺炎)、水疱瘡(水ぼうそう、水痘)などは一度感染し発病すると二度と罹らないと教わりました。この理由は、一度ある種の病気に感染、発病すると、その病気に対する抗体(その病気に対する抵抗力を司る血液中に存在する物質です)等が作られ、その病気に抵抗力を持つようになり、その抵抗力が一生涯に渡って維持され続けるためです。これを、免疫を獲得したと表現していました。
 しかし、最近この考え方は間違っていたことが判ってきました。すなわち、全ての病気において一度獲得した免疫は一生涯続くことはなく、暫くすると抵抗力は低下し、また、同じ病気に感染、発病するようになってしまいます。しかし、抵抗力が完全になくなる前にその病気に再び感染する(菌に触れる)と表面上は発病することなく再び抵抗力が復活(ブースター効果と呼びます)、免疫を獲得します。すなわち、予防接種を受けたのと同じような効果です。これを生涯何度となく繰り返すため、抵抗力が維持され二度と発病することなく一生涯を終えるわけです。つまり、表面的には最初の感染、発病しか認識されず、その後の感染は発病を伴わないため感染したことに気付かず、多くの方は「はしかは子供のときに罹ったきりでその後は、はしかに罹ったことはない。」と認識しているのです。
 ここで、「感染」と「発病」を区別して考えて下さい。感染とは病原体が体表面に定着、さらに、体に進入し増殖する状態です。しかし、体に菌が取り付いたからといって必ず症状が出るわけではありません(症状を伴う感染を「顕性感染」と呼ぶのに対し、症状を伴わない感染を「不顕性感染」と呼びます)。例えば誰でも大腸には無数の大腸菌が感染(365日感染しているため「常在菌」と呼びます)していますが、通常なんら症状はありません。さらに、ビフィズス菌や乳酸菌のように善玉菌と称し、有害物質産生菌の発育を抑制し、便通などを改善させる人体に有益な菌さえいます。ですから感染は必ずしも悪いことではないのです。感染し、何らかの症状を発症した場合が「発病」で単なる「感染」を「感染症」と呼ぶようになります。
 ごくまれに麻疹に二度罹った方にお会いすることがあります。これは幼少児に罹患、しかし、その後、偶然にも麻疹の患者に接する機会がなく、ほとんど免疫がなくなってしまった後、久しぶりに麻疹に感染したため、発病してしまったわけです。世の中に麻疹に罹患する子供が多かった時代、このような現象はごく稀でしたが、予防接種が励行されるようになり麻疹患者数が減少、昨今、麻疹ウイルスにさらされる機会が減ったため、稀なケースではなくなってきました。実際、平成19年から20年にかけて、10代から20代の若者の間で麻疹が大流行したことは記憶に新しいところです。

●水疱瘡(水ぼうそう)と帯状疱疹

 水疱瘡(水ぼうそう、水痘、下図はヘルペスウイルスの一種である水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)(下図)による感染症です。このウイルスによる感染症は麻疹、風疹、ムンプスとはだいぶ違った経過をたどります。麻疹や風疹などに罹るとごくまれに脳炎を合併、死亡することもありますが、ほとんどの場合完治し体内からウイルスは駆除されます。水痘帯状疱疹ウイルスVZVに初感染し水疱瘡を発症、しかし、抵抗力の源である抗体が誘導されると約1週間程度で水疱は痂皮(かさぶた)になって治癒しますがウイルスは体内から駆除されません。脊髄と体表を継ぐ脊髄後根神経節や三叉神経節に潜伏、感染し続けます。獲得した免疫力により閉じ込められ冬眠させられた状態になります。その後成人になり30〜40年を経て徐々に抗体価が低下、ストレスや疲労、心労、加齢、抗癌剤や副腎皮質ホルモンなどの免疫抑制剤の使用、日射などの刺激で免疫力が低下すると、冬眠していたウイルスが再活性化(回帰感染)、末梢神経に沿ってウイルスが体表面に到達、水疱を形成、帯状疱疹を発症させます。ですから50〜70歳代に多く発症します。帯状疱疹が発症したときは宿主の免疫力が低下した状態ですから、学生時代、「帯状疱疹患者では癌を疑え」と講義を受けたのを記憶しています。

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2012/12/10 
「振り込め詐欺が引き金となった発作性心房細動。許せません!」

先日、動悸(心臓がドキドキと脈打つ様子を強く自覚する症状)のため強い不安感を訴える高齢の女性が来院されました。心電図検査をしてみると発作性心房細動でした。心臓には洞結節という生体時計が埋め込まれています。そこから規則的に心臓に電気が流れるため、心臓は規則正しく脈を打ちます。簡単にいうと心房細動はその時計が壊れ、まったく不規則に脈を打つようになった状態です。その方は以前発作性心房細動に対するカテーテルアブレーション手術を榊原記念病院で受けていました。そのため同病院に電話し、緊急で診察していただく段取りをつけ、早速病院へ向かってもらいました。
その後、再び当院を受診された患者さんより、担当医から「ストレスが心房細動の大きな原因。動悸に対して不安を抱かないように。」と指導されたことを聞きました。確かに、不安などの精神的ストレスが交感神経依存型心房細動の誘因になります。しかし、「動悸→不安感→精神的ストレス→心房細動」の病態はもっともですが、はじめに存在する「動悸」の前に既に「心房細動」が存在していたはずです。つまり、「心房細動→動悸→不安感→精神的ストレス→心房細動」が正しい病態です。ということは、もともと心房細動発症以前に何か大きなストレスがあったはずです。そこでお話を伺ってみるとビックリ、動悸を感じる前日に、振り込め詐欺の電話が架かっていたのです。幸にもその方は怪しいと気付き金銭的な被害はありませんでした。しかし、警察に連絡、警察官が駆けつけ事情聴取を受け、相当な精神的ストレスとなったことを、ご本人から伺いました。つまり、今回の発作性心房細動の誘因は、振り込め詐欺だったのです。かねてより振り込め詐欺は高齢者を狙った破廉恥な犯罪(破廉恥でない犯罪等ありませんが)だと感じていましたが、たとえ金銭的な被害がなく、いわゆる未遂に終わろうとも、このような健康被害を高齢者にもたらしていたなど思いもよりませんでした。振り込め詐欺は傷害罪といえるのではないでしょうか。私は、刑罰に関しては死刑も含め厳罰主義者です。陪審員となった方々は、是非とも振り込め詐欺犯に対し厳罰を持って臨んで欲しいものです。

2012/12/09 
「高松メディカルクリニック開院5周年記念パーティを終えて」

当院は11月1日で開院5周年を迎え、12月5日新宿にあるパークハイアット東京のニューヨークグリル&バーで開院5周年記念パーティを開催しました。今回の参加者は職員だけです。これまでも折に触れお食事会などを開催してきました。小さなお子さんのいらっしゃる職員の場合、夜の宴席は参加しにくいものです。そのため、今回もできるだけ多くの職員の方が参加しやすいようにランチパーティにしました。その甲斐あって、鈴木マネージャーこそ集団健診の現場業務のため30分遅れでの参加となりましたが、初めて職員13人全員が一堂に会することができました(下図)。
パーティ当日の朝礼では、職員一同よりサプライズのお祝いの生花(下図)を頂きました。大人から見ると些細なことでも、子供達が大きな驚きと感動を得ている様子を見るにつけ、年齢を重ねるほど感性が鈍っていく自身を日々思い知らされています。そんな中、久しぶりに大きな感動と思い出を心に刻むことができました。お金では決して買えない宝物です。職員の方々と力を合わせ、一緒に5年間無事過ごせたことに感謝します。
当院の創立理念は「高松メディカルクリニックは、自身が健康を願う者であることから、医学を修得した者として、健康を願い、病を克服せんとする人々の協力者たらんことを目的として設立する。」です。この理念に基づき、今後も初心を忘れず頑張っていきます。
また、経営理念は「高松メディカルクリニックは、診療理念に基づく医療サービスの提供により、患者さん、地域社会に支持され続ける医療機関となることと、適正な利潤をあげ、経営理念のもと真摯に働く職員が経済的にも精神的にも豊かな生活を送ることを目指す。」です。「医療崩壊」という言葉に象徴されるように、昨今の医療を取り巻く経営環境は非常に厳しいものがあります。たとえ地域のニーズに応じた医療サービスを提供しても月並みな経営では、安定した経営基盤を確立できるとはかぎりません。そういった厳しい状況下にあっても、誠実かつ真摯に頑張るスタッフの生活を守れるよう、私自身不断の経営努力を重ねていかなければと再度肝に銘じています。理念の下、参集したスタッフと力を合わせ、恙無く撫子10歳の誕生日を迎えられるよう頑張ります。

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2012/12/01 
「第55回日本甲状腺学会学術集会に参加してきました。」

11/28〜29まで福岡市で開催された第55回日本甲状腺学会学術集会に参加してきました。今年は日本人医師の名がその由来となったHashimoto disease(橋本病、1912年九州大学内科医の橋本策先生が世界で始めて報告した病気です)が発見されて100年の節目のため、橋本病国際シンポジウムも一緒に開催され、盛大な大会となりました。橋本病については、来月「糖尿病・甲状腺内科」の欄に、詳細をアップします。

2012/11/25 
「当院の家具転倒防止策〜不動王ホールドについて」

10月に一泊二日で東日本大震災被災地の岩手県大船渡、釜石、大槌町、宮古の視察に赴いたことを10月28日の院長コラムで報告、今一度自院の防災体制を見直す機会としたい旨お話しました。
さて、これら沿岸地域での被害はもっぱら津波によるものです。一方、数年以内にその発生が予測されている相模トラフを震源とする海溝型地震である関東地震、ましてや津波の発生する確率の低い首都直下地震で、内陸部にある三鷹市が津波被害を受ける可能性はまったくありません。むしろ、阪神・淡路大震災で人的被害の原因の約4割が家具類の転倒・落下によるものであったように、三鷹市でも大荷重家具類の転倒や落下が、地震による人的被害の最大の要因になると思われます。
9月11日の院長コラムで御報告したように、当院事務室は同じビルの4階へ引越ししました。一般に、階上になるほど地震による揺れは大きくなり、家具類は転倒しやすくなります。震災被災地を視察し、当院に於もキャビネットやロッカーの倒壊から職員を守らなければと改めて決しました。そこで帰京後、家具転倒防止器具にはどのようなものがあるのかいろいろと調べてみました。それらは、1、家具と上面と天井の間に挿入するつっぱり棒タイプ、2、家具の下に挿入する転倒防止板やマットタイプ、3、家具と壁とを直接固定する転倒防止金具やベルト類、に分類されます。この中で私のお勧めは、「不動王ホールド」という商品です。これは、家具と壁をスポンジ状のダンパーを解して固定するものですが、1、震度7の激震に対応している、2、家具にも壁紙にも傷を付けず設置できる、3、家具を移動させる必要がなく、力のない女性でも簡単に設置できる、4、家具にも壁紙にも傷を付けず取り外すことができる、など他の器具にない特徴があります。そこで当院では、キャビネットなどの大荷重家具類の下部に、「家具転倒防止安定板ふんばる君」を挿入し、さらに、「不動王ホールド」上部に設置し固定することにしました。さらに、プリンター、サーバー類を設置するスチール製ラックは金具でがっちりと壁面に固定します。この原稿をクリニックで書いている最中、まさに、都内で震度4を記録する地震が久しぶりに発生しました。もちろん、当院のキャビネット類はびくともしていません。

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2012/11/23 
「11月23日より2Fクリニック拡張工事が始まります。」

当院は本年11月で開院5周年を迎えましたが、診療スペースが手狭になったため、現在の2階フロア診療スペース奥にある事務室、職員休憩室などがすべて4階フロアへ移動させました。そして空いたスペースに、男女別の受診者更衣室、婦人科診察室、マンモグラフィー検査室などを新設、また、点滴用ベッドを増やし、水分補給や抗生物質などの点滴が必要な患者さんに今以上に対応できるようにしたいと思っています。その工事がいよいよ11月23日より始まります。診療の妨げにならないよう大きな音の出る工事はできるだけ週末の休みに集中して行うよう配慮しますが、受診者には御迷惑をお掛けすることも多いと思います。よりよい医療を創出するための生みの苦しみと御理解頂き、御協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

2012/11/07 
「法人公用車にクリニック名をペインティングしました。」

9月に買い換えた法人公用車のキューブキュービックの車体にペインティングを施ししました。
10月三鷹市の狐久保交差点近くの日産プリンス西東京三鷹店に依頼し、まず、ディーラーオプションのネオンポールを左フロンドフェンダーに設置してもらいました。誤って左前方を擦らないようにするためです。当院の公用車は型落ちの中古車のため、全国のディーラーに当たり何とか在庫を見つけてもらいポールを設置しました。
その後、当院のおしゃれなパンフレットをデザインしてくれた三鷹の印刷会社、文伸にお願いし、車体に描く社名、ロゴマークなどを検討してきました。私が子供の頃は、看板屋さんが上手に車体に文字を描いているのをよく見かけたものですが、最近は、カッティングシートというのがあって、文字型に切り取ったシールを貼り付けるだけで完成です。
写真の如くかなり大きくクリニック名を記載しました。相当な近眼の方でもバッチリ読めます。本日早速産業医勤務に車で出かけると、信号待ちでの注目度満点でした。下の写真はその帰り、玉川上水沿いで私が撮影したものです。運転する当方としては少々恥ずかしいくらいです。気がついたら、気軽に声を掛け下さい。

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2012/11/07 
「伸びる人材、伸び悩む人材」

先日、野村病院創立60周年式典に出席しました。その折、今、日本で最も注目されている民間病院である相澤病院の相澤孝夫理事長の記念講演を拝聴し思ったことですが、先生の実践されてきたさまざまマネージメント手法や施策の目的は、「組織は人なり」という言葉に代表されるように、人材育成の大切さを説くものでした。
相澤病院のように職員数が2千人近い組織では、たとえ問題職員が一人いたとしても、組織に対する影響は限定的です。一方、当院の如く職員数高々10人余り組織においては、全体の1/10、1割を占める問題であり、相澤病院の200倍の影響が出てしまいます。場合によっては組織の屋台骨を揺るがしかねません。当院の如く小さな組織では、人材育成は緊要の課題といえます。
人材育成といっても当院では下図(株式会社スタンダードスキル研究所ホームページより)のようなPDCAサイクルに沿った特別な人材育成プログラムを実践するわけではありません。少人数ゆえトップである私と一般職員間の距離が短いため、むしろOJTで日々指導を行う方が実際的です。
小さな組織では大企業の人事部のような人材育成専従職員を配置する余裕はありませんから、入職後時間を掛けて指導するより、即戦力となる職員を採用するようにしています。しかし、1時間足らずの面接で応募者を正しく評価することは困難です。経歴を評価し、即戦力との触れ込みで採用した人材が、ほとんど初心者と変わらない有様だったり、積極的な姿勢を評価して採用した人材がただの厚かましい人だったり。前職場から数え15年以上、優に200人を超す一般事務職員の採用面接を経験してきましたが、それでも採用面接ほど神経を使う時間はありません。診察よりはるかに神経を使います。
昨今の如き不況で就職氷河期になると、当院のごとき小さな職場でも募集すると結構な数の応募があります。上述の如く即戦力を希望しますが、と言っても必ずしも希望通りにはいきません。自らの洞察力不足を嘆いてみても仕方ありません。仮にも雇用した以上、できるだけ職場の求める人材へ教育、育成していくしかありません。
採用してみると豈図らんや急速に力を付け、仕事をどんどん覚えていく人材もあります。一方、思いのほか仕事を覚えられない人材も。両者の違いは一体何故なのでしょうか。私の長年の経験では、その違いは病気と一緒で往々にして多因子の積み重ねです。例えば、積極的と消極的、熱心と不熱心、慎重と軽率、利発と愚鈍、てきぱきとマイペース、集中と散漫、記憶力の良い人と悪い人、合理的と非合理的、勘の鋭い人と鈍い人、一般的に両者を特徴付けるさまざまな言葉がありますが、意外にも伸び悩む人材も大抵は前者で、後者のような特徴を持つ人は面接で振り落とされているのかほとんどいません。採用した方は多少の違いはありますが、知能指数もよさそう(調べたわけではありませんの、「よさそう」と表現しました)で頭も悪くありません。にもかかわらず伸びる人材伸び悩む人材に分かれるのは、教わり上手か否かによるところが大です。
例えば、教えたり注意したりして素直に耳を傾けられない人は伸びません。例えば、「AではなくBですよ。」と教えて、自らの答えに確信があるのなら「でも、こうだからAでしょ。」と答えるのはよいことですが、教える側ががさらに、「それはこうだから間違いです。Bなのです。」とさらに教えても、また「でも、こうだからAでしょ。」と自らの間違いに気付かず、あるいは認めず確信と過信を取り違えて返事する人。このような堂々巡りを何回か繰り返して、やっと最後になって自分の間違いに気付く。一つ教える毎にこのような時間を費やしていたら教える側も嫌気が差してしまいます。教わることが教える側に迷惑を掛けているという意識が欠如しているのかもしれません。授業料を払って教わる学校と給料をもらっている職場を勘違いしているのかもしれません。上長に間違いを指摘され気付き改めた人は次回から間違わなくなります。しかし、指摘され素直に認められない人は、自ら能動的に正そうともしませんから同じ間違いを何度も繰り返し、一向に仕事を覚えられないのも当然と言えば当然です。さらに、最後の最後で遅ればせながらでも自らの間違いに気付き反省、以後改めようとするならまだしも、開き直ろうものなら職業人以前の問題です。基本的に間違いを指摘され自らの過ちを認められない人、頭を下げられない人に改心、すなわち成長を期待するのは難しいです。この手のタイプの人が成長するには、よほど自身が勉強好きで、他人に兎や角言われなくとも人の2倍、3倍と猛勉強する場合のみです。
また、話の聞き上手な方は往々にして教わり上手です。教える側を上手く載せ饒舌にさせ、多くの情報、教えを聞き出すことができます。話の腰を折るように口を挟むことはありません。頃合よく相槌を打ち、気持ちよく相手にしゃべらせます。聞き上手な習い手には教え手も労を厭わなくなります。ですから同じ質問を何度かしても嫌がられません。逆に自分の教え方が悪かったのではと自省させることもあるくらいです。
学校と違い職場は大人で社会人の集団。職場の同僚はよほどのことがない限り学校の友達のように自らのいけない所を注意したりしかったりしてくれません。しかってくれるのは上長のみ。ですから、日頃からものを言いやすい雰囲気を醸し出していないと成長を望めなくなります。
「実るほど頭が下がる稲穂かな。」
「三人行えば必ず我が師あり。」
といったところです。

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2012/10/31 
「医療法人財団慈生会野村病院創立60周年記念式典に出席してきました。」

10月27日土曜日開催された医療法人財団慈生会野村病院創立60周年記念式典に出席してきました。
私は自院を開院する前は野村病院に勤務していました。開業して4年が経った今年、野村院長より依頼され同財団の評議員として経営のお手伝いをさせていただくことになりました。お手伝いと言っても、評議員会の面々は私なんぞよりはるかに医療や経営管理に長けている先輩方のため、むしろ参加させていただくことによって私自身が勉強させられております。今回記念講演として社会医療法人財団慈泉会相澤病院(2010年開催のバンクーバー冬季オリンピックのスケートで銀メダルを獲得した小平奈緒選手が所属する病院です)理事長の相澤孝夫先生の御講演を拝聴することができました。
病院管理の方法論としてさまざまな施策を展開されていましたが、これらはあくまでも手段であって目的ではありません。何よりも印象に残ったことは、いかにして多様な価値観を持つ多職種の職員を一つの方向に向かわせるか、1本のベクトルに収斂させるかというお話です。そのためにはリーダーとして誰よりも熱い情熱と粘り強さを持ち、さらに組織が向かうべきミッションとビジョンを明確に示すことだと思いました。開院当初より当院のごとく職員数14人程度の小さな組織であっても医療機関としての憲法、理念を明確にする必要があると思っていましたが、今回再確認することができました。当院の「創立理念、診療理念、診療方針、経営理念」をご覧になっていただければ幸です。

2012/10/29 
「被災地北上(大船渡−釜石−宮古)に参加してきました。」

10月20日から21日にかけ一泊二日で東日本大震災被災地の岩手県大船渡、釜石、大槌町、宮古に旅してきました。思えは昨年3月11日の大震災直後、三鷹市医師会を通じJMAT(日本医師会災害医療チーム)の募集があった際、当院のスタッフともども参加したいと申し込みました。しかし、健診センターを運営するため当院の診療は予約制となっており、応募した他の先生方と被災地医療機関の調整の狭間で結局参加できないままJMAT派遣が終了してしまいました。そのため、内心忸怩たる思いでいたことはいうまでもありません。
三鷹市医師会広報委員会で医師会雑誌を編集する仲間にはJMATに参加した医師が多数います。その方々が一年を経て復興しつつある被災地を再度訪問する旅を続けているとお聞きし、参加させていただきました。今回、三鷹第一クリニックの宇井義典先生、加藤整形外科の加藤謙二先生、笹本医院の笹本浩先生の一行に同行、大船渡、釜石、大槌町、宮古などの岩手県沿岸部津波被災地をレンタカーで視察して回りました。
土曜の診療後に三鷹を出発したため、東北新幹線新花巻駅に着いたのはとっぷりと日も暮れた夕方でした。そこからレンタカーで同日の宿、鉛温泉藤三旅館に向い到着したのは6時をとうに過ぎていました。藤三旅館は湯治場としても知られていますが、その五つある内湯のうち、白猿の湯は日本一深い自噴天然岩風呂で、深さ1.25mのため立ったまま入浴(立位浴といいます)する珍しい温泉です。木造3階建ての天井までの吹き抜けを見上げながら入浴するとなんともゆったりした気持ちになりました。
夜部屋では、いつもの如く宇井先生がiPadで用意してくださった今回視察する地域の震災映像を、テレビ画面を使い予習してから床に就きました。
翌朝旅館を出発、東へ向かい、大船渡市で三陸海岸に達しました。そこから、海岸沿いを北上、宮古市までの沿岸部被災地を見て回りました。
御三方がJMATとして参加した頃に比べると、津波で倒壊した無数の家屋の多くが既に撤去され、空き地となっている区画が目立ちました。しかし、それでも1階、2階部分の開口部が打ち破られた家屋が未だ随所に放置されており、被害の甚大さを物語っていました。また、押し寄せた津波の高さを記録した標識があちらこちらに設置されており、改めて巨大津波の大きさに驚かされました。1番目の写真は、大船渡市に本社のある「かもめの玉子」で有名なさいとう製菓株式会社の本社ビルです。ビル屋上の角に青い看板が設置されています。画像を拡大すると分かりますが、この看板は津波到達水位8.5mを示したものです。本社ビル全体が津波に飲み込まれたのは言うまでもありません。
2番目の画像は大槌町役場です。ご存知の方も多いと思いますが、役場職員139名のうち、町長も含め33人が死亡または行方不明になり、幹部職員はたった3名しか生存しませんでした。多くの自治体公文書が流失、町民の安否確認もままならなかった地区です。全壊した庁舎は防災教育に役立てようと保存を求める署名運動も行われています。3番目の画像は庁舎の壁時計です。津波到達時間3時26分を指しているようでした。献花台で黙祷を捧げ哀悼の意を表しました。
被災地を初めて訪問し、月並みですが改めてその被害の甚大さを痛感しました。以前このコラム「放射性ヨウ素による放射線被曝のヨウ化カリウムによる予防」でもお話したように、首都圏直下型地震が数年以内に発生する確率は28〜50%ともいわれています。三鷹地区はまだしも東京湾沿岸部では津波被害も予想されています。今一度自院の防災体制を見直す機会とし、新しくオープンした4F事務室を含めたクリニック全体の防災体制を再構築する所存です。
その後盛岡に戻り、新幹線で帰京しました。職場のお土産はもちろんかもめの玉子です。

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2012/10/25 
「医療法人社団神緑会 いしだクリニックの院長先生その他の方々が当院を見学にいらっしゃいました。」

本日、当院顧問の会計事務所からご紹介のあった医療法人社団神緑会いしだクリニックの院長先生、事務長、スタッフの方々が当院を見学にいらっしゃいました。いしだクリニックは神奈川県川崎市麻生区百合丘で、脳神経外科、整形外科、内科中心の診療に加え、リハビリテーションにも力を注いでいる医療機関です。また、プールを備えた介護老人保健施設「アクアピア新百合」や訪問介護・居宅介護支援サービス「パレットケア」などを運営、総合的に介護や認知症などの問題に取り組んでいます。今回、予防医療の分野にも積極的に取り組もうと当院の健診センターを見学にいらっしゃいました。多少なりともご参考になり、地元地域での診療の一助となれれば幸です。神緑会は地域住民の信頼のもと20年以上も地域医療に貢献されてきた施設。むしろ若輩の当院が、教えて頂く事の方が多いと思います。このようなご縁を大切にしていきたいです。

2012/10/12 
「第33回日本肥満学会に参加してきました。」

10月11日クリニックを休診にして、京都で開催された日本肥満学会に参加してきました。
昨夜のテレビ(京都のホテルで見たテレビ番組のため、東京で放映されたか定かではありません)でも、体重300kgもある米国女性が減量していく奮闘ぶりを特集していましたが、皆さんも日本より欧米に圧倒的に肥満は多いといったイメージを持たれているのではないでしょうか。実際、肥満者(日本の基準BMI 25以上)の割合は、日本が男性30%、女性21%程度に対し、米国では男性73%、女性72%と著しく多く、OECD加盟国中、日本はもっとも肥満者の少ない国です。
しかし、世界的に見て肥満者の少ない国にもかかわらず、肥満研究において日本は世界のフロントランナーです。欧米では肥満の基準はBMI 30以上です。この基準でいくと、日本には男性3.4%、女性3.3%しか肥満者はいません。一方、米国では、男性33.3%、女性35.3%と実に国民の1/3が肥満です。ですから、一昔前まで欧米の研究者から、「日本には肥満者はほとんどいないのだから、肥満の研究などする必要はないではないか。肥満学会など不要だろう。」と揶揄されていました。ではなぜ、先進国中最も肥満者の少ない日本でこんなに肥満の研究がさかんなのでしょうか。
折角の機会ですから、肥満とは何か少し説明させて下さい。
まず、標準体重より体重の多い状態を「過体重」といいます。その前提となる標準体重は、身長(m)×身長(m)×22=標準体重(kg)で計算します。例えば、身長174cmの方の標準体重は、1.74×1.74×22=66.6(kg)となります。このように決まった経緯は、身長(m)×身長(m)÷体重(kg)=BMI(body mass index)と呼びますが、この数字が22の場合、最も病気になりにくいという統計結果に基づきある特定の身長における標準体重をBMI=22で計算した値としました(下図参照)。つまり、BMI=22となる体重より少なかろうが多かろうが病気になりやすくなるわけです。
しかし、過体重は必ずしも肥満なわけではありません。例えばプロレスラー。身長180cmで体重100kgのレスラーは珍しくありませんが、標準体重は71kgでしかありません。30kgも過体重になりますが、彼らの体脂肪率は10%前後でしかありません。つまり、彼らが標準体重より重いのは鍛え上げられた筋肉によるものです。そのようなスポーツマンはいくら過体重だからといって糖尿病や脂質異常症など肥満が原因の生活習慣病にはなりません。
つまり、「肥満」とはあくまで脂肪組織が過剰に蓄積したため過体重、具体的にはBMI≧25となった場合です。では、脂肪が過剰蓄積し体重が多くなったらみな病気なのでしょうか。相撲力士は筋肉も確かに多いですが、あんこ型の力士などはたっぷりと腹に脂肪をつけています。しかし、ほとんどの力士はなんら持病がありません。みな元気で毎日運動=稽古をしています。腹に脂肪をつけていた方が、職業上有利で出世も早いようです。つまり、脂肪が過剰に蓄積し体重が多いからといって必ずしも病気なわけではありません。
そこで、肥満が原因で病気になっている方を区別するために肥満症というようになりました。つまり、「肥満症」とは、肥満が原因で健康障害(下表を参照、オムロンヘルスケアホームページより転載)を既にきたしている、あるいはこれからきたすと予測される状態を言います。
ところで、日本の肥満の基準がBMI≧25であるのに対し、欧米ではBMI≧30であることを先述しました。具体的には身長174cmの場合、日本では1.74×1.74×25=75.7kg以上が肥満であるのに対し、欧米では1.74×1.74×30=90.8kg以上を肥満とします。つまり、日本では肥満の基準が欧米よりかなり厳しくなっています。この理由は日本でごく軽度の肥満、つまり欧米では肥満と呼ばない程度の肥満でも、容易に糖尿病、脂質異常症、高血圧など肥満関連疾患を発病してしまうからです。つまり、日本人は肥満に対して欧米人より脆弱なのです。この差異を研究する過程で、同じ肥満、つまり脂肪が過剰に蓄積した状態といっても、その脂肪の分布によって病気になりやすい肥満となり難い肥満があることが解ってきました。つまり、病気を発症しやすい内蔵周囲に脂肪が過剰蓄積するタイプの肥満、「内臓脂肪型肥満」と病気になりにくい皮下に脂肪が過剰蓄積するタイプの肥満、「皮下脂肪型肥満」が存在する(下図参照、日本マクドナルド健康保険組合ホームページより転載)ことがわかってきました。そして、日本人は病気になりやすい内臓脂肪型肥満の者が多く、欧米人には皮下脂肪型肥満の者が多かったのです。
つまり、確かに「肥満」は圧倒的に欧米に多く日本に少ないのですが、「肥満症」は欧米に劣らず日本に多く、病気になりやすい「内蔵脂肪型肥満」に至っては欧米よりも日本にむしろ多いのです。このbackgroundが日本で肥満研究が発達した大きな要因なのです。
ところで、流行語大賞にも選ばれたメタボ=メタボリックシンドロームとは何なのでしょうか。肥満とどこが違うのでしょうか。上述したように内臓脂肪型肥満とはあくまでも肥満、すなわち、BMI≧25であることが前提です。しかし、BMI<25であっても、つまり肥満がなくとも内臓脂肪が内臓脂肪型肥満の方と変わらないくらい蓄積している方がいることが解ってきました。実際こういった方々は内臓脂肪型肥満の方々と変わらないくらい糖尿病、脂質異常症、高血圧など肥満関連疾患を発病しやすいことも解ってきました。こういったか方々はたいてい手足やお尻がほっそりしている割におなか周りだけがぽってりとしています。すなわち、内臓脂肪型肥満では、体重が多いことや、単に脂肪がどれだけたくさん蓄積しているかが問題なのではなく、内蔵に脂肪が過剰蓄積していることが一義的な原因であることから、肥満の有無にかかわらず内臓に脂肪が過剰蓄積し糖尿病、脂質異常症、高血圧の肥満関連疾患のうち二つ以上を既に発症している病態をメタボリックシンドローム(メタボリック症候群)と呼ぶことになったのです。内蔵への脂肪の過剰蓄積の有無は下図のごとくCTで腹部横断面を検査すれば正確に測定できますが、放射線被曝することになってしまいます。メタボの有無を調べるために国民みなCT検査を実施していたらその医療費は莫大なものになってしまうこと容易に察せられます。そこで、CT検査に代わる簡便な内臓脂肪推測方法として、ウエスト周囲長が採用されました。因みにメタボの診断基準におけるウエスト周囲長は男性85cm以上、女性90cm以上です。小柄な女性の方が男性より基準値が大きいことに奇異を感じる方がたくさんいるかと思います。女性は生理的に男性より皮下脂肪が多いため、男性と同程度の内臓脂肪の蓄積があっても、その分ウエスト周囲長が長くなってしまうためです。
メタボ撲滅のための処方箋に関してはまた別の機会にお話します。帰京の新幹線車中にて。

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2012/10/07 
「余りに衝撃的なニュースです『マイクロソフトが発見! 中国製パソコンに出荷時からウィルス(2012年9月16日 01:00)』」 

マスメディアではなぜこんな衝撃的なニュースをもっと大々的に取り上げないのでしょうか。私は背筋が寒くなりました。
原文をそのまま転載します。

工場で不正ソフトをインストール

米パソコンソフト大手マイクロソフト社は、中国製パソコンについて、製造時に工場でウィルスなどのマルウェアがプリインストールされていることをつきとめた。
マルウェアの中には、ネット銀行のアカウントなどを抜き取るものもあった。

2割に出荷時からマルウェア

マイクロソフト社では、中国のマルウェアを調査するため「オペレーションb70」と名付けた調査活動をおこなってきた。
その一環として、中国のさまざまな都市でデスクトップパソコン10台、ノートパソコン10台を購入して調べたところ、このうち4台からウィルス感染が見つかった。感染が確認された中国メーカーは複数に及ぶ。

ビデオカメラも遠隔操作

工場でプリインストールされていたのは、Nitolと呼ばれるマルウェアなど。
パソコンの電源が入れられるとすぐにコントロールシステムに接続し、さまざまな情報取得や漏洩をおこなうもの。
ビデオカメラやマイクロフォンを遠隔操作する機能や、ユーザーのキーボード操作を追跡するキーロガー機能、サイバー攻撃を隠す機能なども持つという。

一般にウィルスなどのマルウェアはネット経由で感染、侵入するものと考えられてきた。
出荷時からプリインストールされているとしたら、ファイアーウォールなども無意味である。
中国製のパソコンや情報端末の購入には、慎重になったほうがいいようだ。


中国ならありえる話だとは思っていましたが、本当にこんなことが起きているなんて。当院では患者さんの個人情報保護の観点からもmade in ChinaのPCは一切購入しません。
Microsoftが訴えられないところを見ると、あながち流言蜚語ではないようです。

2012/10/03 
「三鷹市内でインフルエンザ発生!」

盛夏の季節でも散発的にインフルエンザが発生することはありました。しかし、9月下旬から1日1症例程度ペースで連続して三鷹市内においてインフルエンザが発生しています。急に寒くなったためでしょうか。もちろんまだ流行といえるほどではありません。今年は早めに予防接種を受けた方がよいかもしれません。

2012/09/23 
「クリニック社用車を買い換えました。」

古くなったクリニック社用車のフォードフェスティバミニワゴンを日産のキューブキュービックに買い換え、9月19日納車されました。フェスティバは5年前の開院時、走行距離約50,000km、10年落ちで購入した車です。毎年約10,000kmを走行、今では、走行距離計は100,000kmを超えています。10月に15年目の車検を迎えますが、その整備費用の見積もりが30万円以上と言われ、さすがに寿命と判断しました。そういえば、数ヶ月前から車体が揺れる度にサスペンションからギーコギートと異音が聞こえ、なんだか気味悪く感じていました。これまで故障することなく、良く頑張ってくれたと思います。
スタッフから新しい車に関して、もっとラゲージスペースの広い車を希望されていました。私としても、スタッフ総出でランチする時などを想定、3列7人乗りだと便利ではと思っていました。普段は3列目のシートを倒して広いラゲージスペースを確保できる車がベストな選択だと考えていました。また、今回、車体にクリニック名を表記しようと考えていましたので、車体の色もクリニックのイメージカラー、茶色の生える色味で検討しました。
その結果、スタイリッシュでカワイイ薄いベージュのキューブキュービックにしました。もちろん予算の都合から中古車です。車体に「高松メディカルクリニック」と記載された車を見かけたら声を掛けて下さい。なお、運転しているのは私とは限りません。私以外の男性、女性スタッフとも運転します。

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2012/09/23 
「第35回日本高血圧学会報告」

9月20日から22日まで第35回日本高血圧学会が名古屋市で開催されました。二日連続で診療を休むわけにも行かず、21日金曜日の午後診療のみ休診にし、21日から一泊二日で参加してきました。昨今多くの研究成果が集積、急激な変貌を遂げる高血圧治療、その最新の知見を習得できました。最近、話題となっている内容を列挙すると、1、高血圧をコントロールする時代から治療する時代へ〜腎神経アブレーション、2、心血管イベントに直結するのは中心血圧か末梢血圧か、3、患者の血圧評価法として優っているのは家庭血圧かABPMか、4、心房細動発症予防により有効なのはRAS系降圧剤〜いわゆるupstream治療か血圧コントロールか、5、日本と欧米各国の高血圧治療ガイドラインとの違い、6、高血圧と食塩摂取、利尿剤の使い方、その臓器保護効果について、7、高血圧におけるβブロッカーの功罪、使用方法、8、高血圧と慢性腎臓病〜心腎連関、9、体高血圧と肺高血圧、10、降圧剤の服用は朝と夜のどちらが望ましいのか、11、高齢者高血圧の治療法〜治療薬選択と降圧目標値、12、高尿酸血症は高血圧の原因か結果か、13、治療抵抗性高血圧の対策、14、原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、クッシング症候群、subclinicalクッシング症候群など二次性高血圧へのアプローチ、などなどがあります。とにかく、日進月歩で新しい研究結果がぞくぞくと発表されています。今後も精進し、新しい知見を今後の診療に生かしていきます。帰京の新幹線車中にて。

2012/09/11 
「9月4日クリニック事務室が同じビルの4Fに引っ越しました。」

8月28日の院長コラム「クリニック拡張工事進行中です。」でお伝えした通り、8月末にまず4F事務室、院長室、スタッフルームの工事が竣工しました。そこで、9月4日火曜日、外来を終日休診にして、私達自身の手でクリニック事務室機能を同じビルの4Fに引っ越しさせました。竣工後スタッフが空いた時間を見つけてコツコツと荷物を運び込んでいたので、当日はおもに机、本棚などの什器、健診用サーバー、PC端末、各種プリンター、コピー機などのOA機器の移動でした。そのため、経費節減目的もあり運送会社を依頼せず職員だけで引っ越しました。当院の女性職員はキャラ的には癒し系ですが、こと筋力に関してはパワフルな方が多いようで、台車を利用しつつてきぱきと荷物を運搬しておりました。頼もしい限りです。
当院では、1、電子カルテ、2、健診システム、3、インターネットに接続した一般事務用PCと3種類のLANがある上、一部のプリンターはローカル接続で他のLANと共有されており、かなり複雑な配線となっています。また、今回、3Fの他社を挟んで2Fと4FでLANを接続させるため、当日午後2時に予定されていた弱電工事までに配線を完了させる必要がありました。これらネットワークのうち、一つでも上手く機能しなければ、翌日からの診療に支障をきたすことが容易に想像され唯一このことが気懸かりでしたが、取り越し苦労に終わりました。
また、4Fで使用するキャビネットなどの什器の一部が当日間に合わなかったため、書類や書籍の収納ができませんでした。什器類も経費節減からネット通販のセコハンを購入していたため、なかなか希望した日時通りに配送してもらえなかったのです。今後、什器類が届き次第順次整理していく予定です。
外来、健診センターを休診にし、ご迷惑をおかけしましたが、気持ちのよい新しいオフィスを活用し、皆さんに満足していただける医療を提供するようさらに精進していきます。

2012/08/28 
「女優川島なお美さんの夫でパディシエの鎧塚俊彦さんが網膜中心静脈閉塞症のため左目視力を失いました。」

昨日、ホームページを改訂し、高血圧が原因で眼底出血を来たし、視力が低下した症例を提示しました。今回提示した2症例とも網膜静脈分枝閉塞症による眼底出血で、黄斑部という視力に関与した部分への出血だったため、視力は完全には回復しませんでした。今回の症例は高血圧のため動脈硬化を来たし、その動脈がそばを走る静脈の枝を圧迫したため静脈がつまり、その結果静脈が破裂して眼底出血しました。同じ現象が網膜の中心にある静脈の根元で起こった場合、網膜中心静脈閉塞症と呼び、眼底全体に大量に出血するため、ほとんどの場合、罹患眼は失明します。川島なお美さんのご主人は、網膜中心静脈閉塞症だったため、完全に左目視力を失ったようです。詳細は知りませんが、きっと高血圧や高脂血症の基礎疾患があり、放置されていたのではないかと思います。高血圧や高脂血症の持病のある方は是非当院で眼底検査を受けて下さい。

2012/08/28 
「クリニック拡張工事進行中です。」

当院は本年11月で開院5周年を迎えますが、診療スペース、事務室とも手狭になったため、当ビルの4階を賃貸することにしました。現在、4階に院長室、事務室、職員更衣室、休憩室などを施工中です。近々竣工予定ですが、現在の2階フロア診療スペース奥にある事務室、職員休憩室などがすべて4階フロアへ移動します。そして空いたスペースに、男女別の受診者更衣室、婦人科診察室、マンモグラフィー検査室などを設置予定です。また、点滴用ベッドを増やし、抗生物質などの点滴が必要な患者さんに今以上に対応できるようにしたいと思っています。現在院長室はなく、事務室で一般職員と机を並べて、仕事をしていますが、最近セキュリティーを確保しなければと感じることがあったため、施錠できる院長室を作ることにしました。

2012/06/19 
「サルコペニア(筋肉減少症)について」

一昨晩、三鷹市医師会主催の講演会に参加しました。これまでほぼ毎晩勉強会に参加する日々を過ごしてきましたが、院長コラムでもご報告したように年初からさまざまな所用が重なり、勉強会に参加する回数がすっかり減っていました。しかも、一昨晩はサッカーワールドカップブラジル大会アジア最終予選の山、日本対オーストラリア戦です。応援しないわけにはいきません。にもかかわらず、講演会に参加したのは、座長を頼まれていたからです。1ヶ月前、座長を依頼された折、オーストラリア戦の日などとは露知らず、二つ返事で引き受けてしまいました。いざ講演日が近づき、講演日時と試合の時間がしっかり重なっているのにはたと気付き、ひょっとして依頼してきた某先生、まさかサッカーの試合が見たくて僕に座長を依頼したのではと勘ぐりたくなっていました。
しかし、脂質異常症で高名な杏林大学高齢医学大荷満生准教授が、「高齢者の自立障害と栄養−サルコベニア(筋肉減少症)を中心に−」といったタイトルで御講演されるとあって、いったいどんな内容なのだろうか興味津々でした。とういのも本講演まで、私はサルコペニアという言葉を知らなかったからです。
サルコペニアは日本語では筋肉減少症と訳されています。医学書院出版の医学大辞典の最新版を含む「今日の診療プレミアムVol.22」という電子書籍で検索しても、「サルコペニア(sarcopenia)」という言葉が見つからないことから分るように、新しい言葉です。
サルコペニアは広義では、原因の如何を問わず、筋肉の減少する病態を指します。しかし、狭義には、サルコペニアは加齢による筋肉減少のことです。人間の筋肉は30歳をピークにその後は緩やかに減少していきます。1年で0.45kgの筋肉が減少するとのことです。脳卒中による麻痺、骨折による歩行障害、認知症が寝たきりの三大原因といわれていますが、実は高齢による衰弱が脳卒中の次に多い原因です。高齢による衰弱の本質がサルコペニアなのです。サルコペニアになれば歩行障害になるばかりでなく、嚥下筋、呼吸筋の減少により、嚥下障害、呼吸障害もきたします。そのことが高齢者の死因として最も多い肺炎~嚥下性肺炎の原因になっていると思われます。
筋肉減少を少しでも食い止める方法として、運動習慣は論を俟ちませんが、栄養として良質の動物性蛋白質の摂取と十分なエネルギー、すなわち食事量の摂取が推奨されているそうです。
ご存知のように当院は、脂質異常症を初め、生活習慣病を中心とした診療を行っています。これまで肉食より野菜中心の食生活を推奨、食べ過ぎないよう指導してきました。このことと矛盾しないのでしょうか。
私の中での理解は、40〜60歳代の中高年になり運動不足、過食などによる肥満、メタボのため脂質異常症等を発症している場合、心配すべきことはサルコペニアより脂質異常症等により促進される動脈硬化が原因となって引き起こされる脳卒中です。そして、脳卒中が原因で寝たきりになることの方が重要課題です。しかし、70から80歳代になると、むしろ将来の脳卒中より、筋肉減少症から段々足腰が弱り、転倒して骨折したり、徐々に動けなくなったりして寝たきりになる方を心配すべきです。つまり、一人の人間であっても、その時々、年齢によって、どういう治療、食餌療法がその人にとってベストなものか変化していくはずです。万人が、あるいは同じ人間であっても10年前と10年後で、同じような検査データだからといって画一的な指導、治療が最善の選択枝であるはずがありません。
そういえば、90歳で今なお現役のピアニストとしてコンサート活動を行う室井摩耶子さんは、週5日お肉を食べるそうです。元気で活動的な高齢者の食生活を尋ねると意外と肉好きが多いことを経験します。高齢になると必ずしも皆粗食が良いわけではなく、その方身体活動強度によっては、大豆、野菜、海藻など植物製品とともに、肉類、魚類、油脂類をしっかり摂取し、それに見合うよう充分に体を動かすことがよいようです。
この原稿を書いていて大学院時代にある先輩から聞いた話を思い出しました。その方はB型肝炎ウイルスの研究をしていた方です。B型肝炎ウイルスに感染し、慢性化すると感染後数十年を経て肝臓癌が発症、命を落とすことになります。B型肝炎ウイルスはその当時、日本よりもアフリカ諸国で大変感染率が高いことがわかっていました。そのため、日本の援助でアフリカの某国にB型肝炎ウイルスワクチンを供与、大々的に接種することになったそうです。しかし、予防接種を実施してもその国の寿命はまったく伸びませんでした。というのは、いくらB型肝炎ウイルスを撲滅しても、その国では怪我や栄養失調や結核、風土病などが原因で50歳未満で亡くなる方がほとんどだったからです。ですから、B型肝炎ウイルスのように60歳頃になって肝臓癌になって死ぬような病気を撲滅しても、その国の国民には実質的なメリットは少なかったのです。「木を見て森を見ず」
私たち医者は、目の前にした患者さんの全体、一生を、森を見るが如く見渡し、この患者さんにとって最も適切な治療法を選択しなければなりません。

2012/06/14 
「放射性ヨウ素による放射線被曝のヨウ化カリウムによる予防」

久しぶりのコラム執筆です。この間も講演を依頼されたり、クリニックの拡張計画が急遽持ち上がったり、新しいスタッフを雇用(当然、応募者の面接で時間を取られます)したりと、本当に多忙でした。気付くと四年前の開院当初5人だったスタッフも、今では非常勤も含め14人です。診療スペース、事務室、職員休憩室など全てが手狭になり、クリニック拡張が緊切の問題となっています。その辺のことは後日として、今日はヨウ化カリウムによる放射線被曝予防のお話です。
前回の院長コラムで東日本大震災に端を発した原発事故による放射能汚染に対する私の考え方を述べさせていただきました。これは、おもにセシウム137を想定したお話です。しかし、福島第一原発事故で飛散した放射性同位体は、原子力安全・保安院が公表した資料でさえ31種類あり、その他にもあるといわれています。これらの放射性物質による被曝は、放出量(どれだけたくさんの量が放出されたか)、物理学的半減期(放射能が半分になるまでに要する時間)、生物学的半減期(体内に取り込まれた放射性物質の量が半分になるまでに要する時間)、放射性崩壊の種類(アルファ線を放出するのか、ベータ線か、ガンマ線か)、揮発性などによって、人体への影響は異なります。
人体への影響が最も懸念されているのがセシウム137とヨウ素131です。セシウム137は、揮発性が高いので拡散しやすいこと、体内に取り込むとほぼ100%吸収されること、半減期が30年と長く汚染が長期に続くことなどが厄介な点で、各地の土壌汚染はセシウム137が主な原因です。東京近郊における奥多摩、湾岸地区、千葉県北部、袖ヶ浦や木更津の内房などがホットスポット(下図参照)となっているのは周知のとおりです。伊豆半島東岸もホットスポットとなっており、セシウム137は間違いなく東京まで到達していました。
一方、ヨウ素131は、半減期は8日と短いですが、やはり揮発性が高く、体内に取り込まれるとそのほとんどが甲状腺に集積します。それは、体内ではヨウ素のほとんどが甲状腺ホルモンの原料として利用されるからです。結果として甲状腺のみが集中的に被曝することになり、甲状腺癌を発生させます。実際、チェルノブイリ原発事故では、ヨウ素131による内部被曝により、約6000人の若年者に甲状腺癌が発生したといわれています。前回のコラムでも述べたように、大人より子供の方が放射線に対する感受性が高く、年齢の低い者ほど障害が出やすいことがわかっています。放射線は細胞分裂の盛んな細胞により強く障害を与えます。成長期の子供は細胞分裂が盛んですから放射線の影響をより強く受けます。これまでの研究では、0歳児の放射線感受性を1とすると30歳代では0.2程度で、私のように50歳を過ぎると少々放射線を浴びても、癌もろくにできない程度にしか細胞分裂は起きていません。チェルノブイリ原発事故でも40歳以上の者に甲状腺癌の増加はありませんでした
野田総理は福井県の大飯原発再稼動を進めようとしています。安全性が担保されていないことは周知ですが、産業界の靡き、夏の電力不足解消を優先するつもりのようです。また、5月26日細野原発事故担当大臣が水素爆発を起こした福島第一原発4号機を視察しています。テレビ放送では吹っ飛んだ原子炉建屋の中に養生シートごときもので覆われた燃料プールがむき出しになっている様子が放送されていました。そこでの放射線量は300μSv/hで、約4か月分の放射線を1時間で浴びる計算になります(下図参照)。前回のコラムでもお話したように福島第一原発4号機の最悪のシナリオが日米の専門家から指摘されています。そのシナリオでは、もう一度大地震が発生し、福島第一原発4号機の燃料プールが破壊された場合、放射性物質が大量に飛散、風向きによっては東京が完全に汚染され、立ち入り禁止区域となる可能性もあるとのことです。
また、福島第一原発同様、東南海地震が発生しようものなら、静岡県の浜岡原発の安全性など何人も担保できるわけがありません
最近発表された東大地震研の発表では、首都圏直下型大地震の発生確率は4年以内で50%以下、その後発表された京大防災研の発生確率は5年以内に28%とのことです。東京に住むわれわれにとっても浪江町や飯館村の人々の苦悩は決して他人事ではありません。明日は我が身です。
昨年の原発事故直後、利根川水系の東京金町浄水場の水から乳児向飲用基準の2倍の放射性ヨウ素が検出されたことを受け、ミネラルウォーターが買い占められスーパーの陳列棚から消えてしまったことは記憶に新しいのではないでしょうか。また、チェルノブイリ原発事故で、安定ヨウ素剤を小児に配布したポーランドでは甲状腺癌が増加しなかったのに対し、配布しなかったウクライナやベラルーシでは甲状腺癌の増加が認められたという知見から、ヨウ素の含まれるイソジンのうがい薬を代用品として購入したり、ヨウ素がたくさん含まれる昆布がスーパーで買い占められたりしました。斯く言う私も、仕事帰りスーパーに寄り、酢昆布の「都こんぶ」や日高昆布をたくさん買い込み帰宅しました。ただ、正確に申し上げると、ポーランドで甲状腺癌を予防できたのは、安定ヨウ素剤の配布に加え、放射性ヨウ素に汚染された牛乳の飲用を禁止し粉ミルクを緊急輸入したこと、ウクライナやベラルーシは内陸国であったため、国民は総じてヨウ素欠乏状態にあり、放射性ヨウ素を非常に吸収しやすい状態であったのに対し、ポーランドはもともと海沿いの国であったため日頃より海藻などからヨウ素を充分摂取していたことなどが相まって甲状腺癌の発生率に差異が生じたといわれています。
チェルノブイリ原発事故の教訓から、日本の一部地方自治体では、放射性ヨウ素による放射線被曝予防目的に、大量のヨウ化カリウム丸を備蓄しているようです。しかし、欧米のように各戸事前配布がなされているわけではないため、果たして肝心なときに住民、とくに小児に迅速に配布されるか甚だ疑問です。というのも、安定ヨウ素剤服用による甲状腺癌予防の成否は服用のタイミングによって大きく異なるからです。一般に、飛散してきた放射性ヨウ素吸入以直前であれば97%阻止できますが、放射性ヨウ素吸入1時間後で85%、3時間後で50%、24時間後では7%と予防効果はほとんどなくなります。昨年の福島第一原発事故でも、発電所周辺町村では安定ヨウ素剤が備蓄されていたにもかかわらず、ごく一部の避難住民に対して配布されたのみで、結局役場からヨウ化カリウム丸配布や服用の明確な指示は出されずじまいでした。福島第一原発より東京に近い浜岡原発で放射性物質が放出された場合、東京迄の距離が200kmですから、秒速5m程度の風でも11時間で都内に到達します。果たして、浜岡原発で放射能漏れ事故発生後11時間以内に放射性物質の放出・拡散の情報が公開され、それを受けた役場の備蓄倉庫から地域のすべての小児に安定ヨウ素剤が確実に配布されうるでしょうか。小学生の子供の親として非常に不安です。
日本で生産、販売されているヨウ化カリウム丸は、本来、甲状腺機能亢進症、気管支喘息、梅毒などの治療薬ですが、処方せん医薬品であるため医師の処方箋がなければ購入、服薬することはできません。よって、近所の薬局でアリナミンを買うが如く購入することはできません。小さな子供を抱える我が家としては、何としても欧米諸国のような政府や自治体によるヨウ化カリウムの各戸事前配布を希望するところですが、東京都、三鷹市、杉並区とも備蓄もなく配布予定もないようです。そこで、当院で独自にヨウ化カリウム丸を仕入れ、調剤することにしました。我が家では子供たちのランドセルに1錠常備させ、いつでも服用できるよう準備し、また、小さなお子さんのいる職員にも福利厚生の一環として配布することにしました。残薬は自由診療コーナーでご処方します。ご希望の方は御来院下さい。なお、ヨウ化カリウムによる放射線被曝の詳細については、国の原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会から発表された資料に詳細が記載されていますのでご参照下さい。
ヨウ化カリウムの予防内服は、そもそも大地震が発生しようとも原発がなければ無用のものです。原発全廃を切に願います

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2012/03/24 
「私の考える放射線被曝〜私は震災がれきの受け入れに賛成です」

昨年3月11日に発生した東日本大震災からあっという間の一年が経ちました。この間政治の遅滞?痴態?は相も変わらず、震災復興はままなりません。現場で孤軍奮闘する地元役場のスタッフを尻目に、欧米では考えられない高給取りの国会議員の先生方は、国民の血税から毎年300億円もの政党交付金という名の泡銭を懐に入れこの体たらく、その無能ぶりにはあきれるばかりです。国士としての志(はじめは持っていたと信じたいです)は消えうせ、いつしか保身、利権争い、権力闘争に専心しています。日本の政治家には行政からの独立性などなく、彼らもbureaucracy の帰趨、その頂点に君臨する国賊といわざるをえません。
さて、震災に端を発した原発事故による放射能汚染が社会問題になって久しいです。当初パニック気味の世論もこの一年でかなり落ち着きを取り戻した感があります。しかし、野田総理の原発事故収束宣言とは裏腹に、つい数日前にも福島第一原発4号機の最悪のシナリオが日米の専門家から指摘されました。そのシナリオでは、もう一度大地震が発生し、4号機の燃料プールが破壊された場合、放射性物質が大量に飛散、風向きによっては東京か完全に汚染され、立ち入り禁止区域となる可能性もあるとのことです。
また、福島第一原発を見ればわかるように、東海地震が発生しようものなら、静岡県の浜岡原発の安全性など何人も担保できるわけがありません(中部電力は絶対!安全と何度も説明してきたようですが)。
現在、被災地の震災復興における緊要の懸案は震災がれきの処理です。多くの自治体首長が受け入れ表明を検討していますが、一部住民の猛烈な反対にあい頓挫、ごく一部の自治体しか受け入れていません。反対住民が危惧しているのは、やはりがれきの放射能汚染です。原発安全神話ゆえ、放射能汚染に関してまったく無関心、無知であった日本人も、原発事故発生から一年が経ち、シーベルトだのセシウム137だの、今までまったく耳にすることのなかった用語にも慣れ、放射能汚染問題を冷静に判断できるようになったかと思っていましたが、いまだパニックは続いているようです。
私自身は放射線障害の専門家ではありませんが、医師として放射線障害を診断する立場ゆえ、一定の見識を備えているつもりです。さらに、我が家には成人に比し放射線に対する感受性の高い幼子がいます。放射線被曝に対する正しい知識の習得は他人事ではありません。今一度学生時代の放射線医学講座の授業を思い出しつつ、自らの知識を整理し、現状の放射線被曝に対する対処方法を検証してみました。
まず、間違いなさそうな事象としては、