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総合診療内科

内科全般の幅広い医療

内科全般について、例えば発熱、急性上気道炎(かぜ症候群、感冒)、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、咳喘息(CVA)、気管支喘息、COPD(肺気腫や慢性気管支炎)などの呼吸器疾患、心不全、不整脈、狭心症・心筋梗塞などの循環器疾患、腹痛、胃・十二指腸潰瘍、ピロリ菌感染(除菌治療)、下痢、ノロウイルス等の感染性胃腸炎過敏性腸症候群B型やC型ウイルス性肝炎、胆石、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変)などの消化器疾患、緊張型頭痛、片頭痛、薬物乱用頭痛、良性発作性頭位めまい症、脳梗塞や脳出血後遺症、認知症(認知症のある初診患者さんの診療は致しておりません。認知症の方には専門医療機関への受診をお勧めしています。なお、認知症発症以前より当院に通院されている方が認知症を発症した場合、ご希望により引き続き当院で診療致します)などの神経疾患、骨粗鬆症、サブクリニカルクッシング症候群、原発性アルドステロン症などの代謝内分泌疾患、貧血、腎臓や前立腺疾患、膀胱炎、尿路結石、インフルエンザ帯状疱疹風しん手足口病、デング熱(デング熱診療ガイドライン)、梅毒などの感染症、リウマチ性多発筋痛症、RS3PE症候群などのリウマチ性疾患、複数の病気を抱える方に対しても、適切な診断・治療・アドバイスをします。様々な疾患の原因・診断・治療の十分な説明はもちろんのこと、体質や生活習慣等をふまえ、より健康的な暮らしができるようお手伝いします。病気のことだけでなく、健康上の些細な心配事でも遠慮なくお尋ねください。
不明な点があれば情報端末を使いその場で調べることもできます。
皆様方に安心して信頼される“かかりつけ医”を目指し、地域に根付いた医療に貢献していきたいと考えています。
なお、毒蛇ヤマカガシ咬傷は診療していませんが、2016/12/11の院長コラム「毒蛇ヤマカガシ咬傷について」に詳しく解説しています。そちらをご参照下さい。

過敏性腸症候群について

各駅停車症候群

2011年12月13日の産経新聞に「『トイレに行かせて』江ノ電バス運転手が乗客残しファミレスへ」といった見出しの記事が掲載されました。「申し訳ないのですが、トイレに行かせてください」とアナウンスし、エンジンを切り車輪に輪留めをかけて、バス停前のファミレスに駆け込んだ」との内容です。この記事に鬼気迫るものを感じた方は、私同様各駅停車症候群だと思います。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome;IBS)とは、大腸・小腸に器質的異常(がん、潰瘍や腸炎など視覚的に判別できるような形態的な異常)がないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常、腹痛、腹部膨満感や腹部不快感などの症状を呈する症候群で、症状の発現や増悪にストレスが密接に関係しています。ストレス社会の現代においてIBSの罹患率は増加の一途を辿っています。IBSは良性疾患であり生命的予後良好(寿命は健常者と変わらない)ですが、生活の質(quality of life;QOL)を害するため、苦痛を感じ医療機関を受診すると病気とみなされます。

IBSの成因、病態生理

IBSの成因は不明です。ただ、消化管運動異常、内臓知覚過敏、心理的負荷の3つの要素が複雑に絡み合って、病態を形成しています。そのため、最近では、これらの病態を説明する考え方として、「脳-腸相関」(下図、アステラス製薬ホームページより転載)という概念が提唱されています。

IBSの頻度

IBSは、最も頻度の高い消化器疾患の一つで、日本の有病率は10~20%に達するといわれています。つまり、少なくとも日本に約1,200万人の患者さんがいると推定されています。とあるIBSの講演会で、講師が参加者の医師達に、IBS症状の有無を尋ねたところ、私を含め約半数の医師が挙手しました。IBSが如何にありふれた疾患であること、また、医師が大きな精神的ストレスを抱えていることを示唆しているようです。IBSの男女比は男:女=1:1.6で、有病率は20~30歳代で高く、加齢とともに減少します。約50%の患者さんでは35歳前に発症し、50歳以上の初発患者は10%程度しかいません。日本では、特に受験期にIBSを発症する人が多いようです。当院でも中高生の患者さんが増えています。病型として下痢型、便秘型、混合型および分類不能型がありますが、下痢型は男性に多く、便秘型は女性に多く見られます。軽症は70%、中等症は25%、重症は5%程度です。男性に多い下痢型IBSは急に大便を催す上、下痢便のため一歩遅れると便失禁しかねません。そのため、トイレのない電車に長時間乗れず、各駅停車症候群と呼ばれています。

IBSの症状

IBSは、腹部症状(腹痛、腹部不快感、腹部膨満感、腹鳴など)を伴った下痢や便秘が続き、ストレスによって症状が出現したり、増強したりします。患者さんの多くはそれら腸症状のみならず、嘔気・嘔吐、食欲不振などの他の消化器症状、心悸亢進、四肢冷感、発汗、顔面紅潮、肩こり、頭痛などの自律神経失調症状や不安感、不眠、無気力、緊張感、全身倦怠感などの精神神経症状などを訴えることもあります。
IBSは、器質的疾患ではなく機能的疾患ですから、大腸がんや炎症性疾患でみられるような血便や体重減少、発熱はみられません。また、ストレス負荷により症状が発現・増悪しますので、睡眠中やリラックス状態の時には症状は出ません。
また、IBSには同様の機能性消化管障害として、顎関節症、機能性ディスペプシア、胃食道逆流症、機能性直腸肛門痛などが高率に合併します。また、うつ病、不安障害、パニック障害、心臓神経症、線維筋痛症、慢性疲労症候群なども併存することが多いです。
IBSでは精神的ストレスが増悪因子になっていても、患者自身が必ずしもストレスを自覚しているとは限りません。腹部症状と、試験や仕事など生活上のエピソードとの因果関係を具体的に確認する必要があります。
また、IBS患者のライフスタイルは健常者よりも不規則な食生活を送り、睡眠も不規則なことが多いようです。

IBSの診断

IBSの診断基準に関しては、世界的にはRomeⅢ診断基準(2006年)がグローバルスタンダードとして使用されています。
IBSは、RomeⅢ基準において「過去3ヶ月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、

  1. 排便によって症状が軽減する、
  2. 発症時に排便頻度の変化がある、
  3. 発症時に便形状(外観)の変化がある(軟便・水様便になったり、硬便や兎糞状になったりする)(下図)

ブリストル便形状スケール

の3つのうち2つ以上の症状を伴うもの」と定義されています。
下痢や便秘、腹痛等は、日常診療において頻繁に遭遇する消化器症状ですが、その原因と病態は多種多様です。その多くが急性、一過性の疾患ですが、IBSでは病悩期間が3ヶ月以上と慢性の経過を辿ります。しかし、慢性の器質的疾患も存在しますから、

  1. 理由のない体重減少がない
  2. 血便がない
  3. 夜間に腹痛や下痢で目が覚めない
  4. 50歳未満

という点を確認することが重要です。

腸炎後IBS

腸炎に罹患してから3~6ヶ月後にIBSを発症する症例が10%前後あります。腸炎後にIBSが発症した場合には、臨床像がやや異なる面があるので、腸炎後IBSと称しています。腸炎後IBSのリスク要因は腸炎の罹患期間、重症度、女性、若年者などです。乳酸菌製剤による治療が有効な場合が多いようです。
自験例として東南アジアに海外旅行に行き、現地で下痢になり、帰国後も半年以上IBS症状が持続した女性がいました。

IBSの検査

IBSと推察される患者さんに対して、大腸がん、感染性腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、膵炎、甲状腺機能異常症など器質的疾患を除外するための尿検査や血液検査、便潜血検査、便細菌検査、便虫卵検査など非侵襲的な検査を実施します。直腸指診で直腸がんも否定します。もし、それらの検査で異常があればIBS以外の疾患が考えられるので、大腸内視鏡検査など精密検査を勧めます。
簡単な検査で異常がなければ、IBSとして治療を開始し、この治療に反応すれば治療を継続し、反応しなければ器質的疾患を疑って消化管精密検査を実施するという「診断的治療」を行います。
IBSは問診だけでも診断可能な疾患ですが、ある程度の検査は実施した方が患者は安心します。患者は「自分はがんなどの重篤な疾患ではないか」と疑って来院するケースが多いので、検査をして器質的疾患の可能性を否定すると、安心してIBSに対する治療に専念し、治療効果も上がります。

IBSの治療

IBSの治療には、食事指導、生活習慣是正に加え、薬物療法として高分子重合体、消化管機能調整薬、乳酸菌製剤、抗コリン薬、下剤、セロトニン5-HT3受容体拮抗薬、漢方薬、抗うつ薬、抗不安薬などがありますが、かなり奏功します。また、心理療法、精神療法などもあります。軽症、中等症、重症に分類した「心身症診断・治療ガイドライン(2006)」が作成されており、詳細は割愛します。いずれにしても、QOLが改善、症状をセルフコントロールでき、社会生活上も適応できれば治療のゴールとなります。
患者に対して、ライフスタイルの是正を含めた生活指導や内科的治療を行っても症状が改善しない場合があります。上述の如くIBSではうつ病、不安障害なども合併している症例がしばしば見られますが、患者は身体症状を前面に訴え(仮面うつ病、心身症)、精神症状がカムフラージュされているからです。このような患者に対して抗うつ剤や、抗不安剤などにより心理面の治療を行って精神症状が改善すると、患者は便通異常や腹痛、腹部不快感が多少残存していても「具合がよくなった」と自覚的に改善されることが多いのです。
治療を成功させるためには、良好な患者-治療者関係を築くことが大切です。そのためには、患者の苦痛を傾聴し、受容すること、検査結果を丁寧に説明し、IBSの病態生理をわかりやすく解説すること、IBSは機能性疾患であり予後良好であること理解させること、などにより精神的ストレス→IBS→精神的ストレスといった悪循環から解放することも重要です。

当院でのB型及びC型ウイルス性肝炎の診療について

この数年のウイルス性肝炎治療法の進歩は目を見張るものがあり、知識量が爆発的に増大、非常に複雑化しています。患者さんにとって最も適切な肝炎治療を行うためには、生半可な知識ではダメで、非常に高度な専門性が必要になっています。大学院時代C型肝炎ウイルスの研究に携わり、ある程度基礎知識のある私も、年々複雑化する内容を完全に把握するのが困難になりました。都内に二つしかない「肝疾患診療連携拠点病院」の一つ(もう一つは国家公務員共済組合連合会虎ノ門病院)である武蔵野赤十字病院消化器科泉並木部長のお話では「非常に複雑なため専門医でも常に勉強していないと正確な診断、判断を下すことができない。」程だそうです。
B型やC型のウイルス性慢性肝炎における新知見をまとめてみると、

  1. 外来種の遺伝子型AのB型肝炎ウイルスが日本に蔓延化、成人感染のB型肝炎の約10%が慢性化するようになった。
  2. B型肝炎ウイルスは稀ではあるが、尿、唾液、鼻汁、汗、涙などでも感染しうることが明らかになった。
  3. 成人発症のB型急性肝炎が慢性化せず完全に治癒したと考えられていた場合も、実際にはB型肝炎ウイルス遺伝子は生体内に遺残、免疫抑制剤や抗がん剤投与時で再活性化し、重篤な肝炎を再発する可能性のあることが明らかとなった。
    以上の詳細は、「B型肝炎の疾患概念のパラダイムシフト~是非、B型肝炎ワクチンを接種してください!」をご参照ください。
  4. B型肝炎治療では、従来の肝庇護剤、インターフェロンに加え、経口剤である核酸アナログ(ラミブジン、アデホビル、テノホビル、エンタカビル)という肝臓がんを予防する薬を使用できるようになった。
  5. C型肝炎に対するインターフェロン治療は、経口の抗ウイルス剤を併用することにより著効例が著しく増加、かなり確率で完治するようになった。
  6. C型肝炎治療において、完治させうる経口剤の抗ウイルス剤が続々と上梓された。その著効率はきわめて高く(95~99%!)C型肝炎は副作用の強いインターフェロンを使用しなくとも飲み薬で治せる時代になってきた。そのため副作用でインターフェロンを使用できなかった患者さんも完治のための治療を受けることができるようになった。さらに、肝硬変や高齢のためインターフェロンを使用できなくなった患者さんにも治療の適応が広がった。
  7. これらC型肝炎に対する経口治療の新薬は事前に遺伝子検査を受けることにより、有効か無効か判るようになった。無効なものを投与すると薬剤耐性化が広がり、その後の治療をむしろ難しくするため事前に遺伝子検査が必須になりつつある。
  8. 次々と有効性の高い新薬が開発されるため、患者さんによっては有効率の低い治療をすぐに始めるより、むしろより有効な新薬の開発を待って治療を始めた方がよいと判断される場合(治療待機)も出てきた。つまり、現時点では、治療しないことが最適な判断と考えられる場合もあるようになった。
  9. 肝臓移植が行われるようになった。
  10. 行政的には東京都では「B型・C型肝炎治療医療費助成制度」「東京都肝炎ウイルス重症化予防推進事業(精密検査費用の助成)」という医療費助成を行っており、積極的に活用すべきである。
  11. 東京都では肝炎診療ネットワークを構築、「肝疾患診療連携拠点病院」や「幹事医療機関」(都内12医療機関)、「肝臓専門医療機関」を指定、医療費助成の受けられる医療機関が限定されるようなった。

以上のような状況のため、当院ではB型またはC型ウイルス性肝炎の方を発見した場合、その方にとって最も適切な治療法を判断するため、必ず、武蔵野赤十字病院を含めた肝臓専門医療機関の受診をお勧めしています。当院でウイルス性肝炎の診療を行うのは肝臓専門医療機関で指示され、連携して治療を行う場合に限定しています。

原発性胆汁性肝硬変について

代表的な自己免疫性肝疾患に自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis;以下AIH)と原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis;以下PBC)があります。開院後7年余りの間に当院でも、両者を合わせると10人近く発見された難病で、注意深く観察すると時々見つかる病気です。とくにPBCは国の特定疾患治療研究事業の56対象疾患の一つで、検査代、診察代、薬代など診療にかかわるすべての費用が公費負担となります。ですから、正しく診断し、公費負担の申請手続き方法を指導することは患者さんにとって大きなメリットです。現在AIHは10,000人程度、PBCは57,000人程度日本にいると推計されています。ということは人口約17万人の三鷹市内だけで90人程度自己免疫性肝炎と原発性胆汁性肝硬変の方がいることになります。診断されていない方もまだ多数いるでしょうから、実際にはもっと多いはずです。ここでは、頻度の多いPBCついてお話します。
免疫とは人間が病原体、がん細胞などヒトにとって有害なものから身を守るための体の中の仕組みです。そのため免疫システムは自己と非自己=病原体などの異物を明確に区別し、非自己のみを攻撃排除するようになっています。どのようにして免疫システムが無数にある非自己と自己を判別しているのか、その仕組みを解明したのが日本人で始めてノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士です。
自己免疫性疾患とはその免疫システムが間違って自己を攻撃することによって発症する病気です。自己免疫性疾患の中で最も有名なのが関節リウマチです。関節リウマチは、免疫が自分の関節を攻撃する病気で、関節が破壊され変形します。一方、自己免疫性肝炎は自分自身の肝細胞を、原発性胆汁性肝硬変は肝臓の中にある自分自身の胆管(胆汁を肝臓から腸管に流し出すための管)を攻撃、破壊する病気です。ちなみに、便の主成分は本来白色ですが、腸管に排出された胆汁の黄色に染まりあのような色になって排泄されています。
PBCは末期には胆汁が体の外に排泄できなくなるため、体内に胆汁が逆流、黄疸(黄疸で皮膚が黄色になるのは、胆汁が黄色いためです)をきたし、ついには肝臓病の終焉状態である肝硬変となります。PBCが発見された1950年当時、このような肝硬変の患者さんが端緒となって発見された疾患であったため、原発性胆汁性肝硬変と名付けられました。
PBCの特長を列記すると、

  1. 男女比は1:9で圧倒的に女性に多い。
  2. 20~80歳代まで幅広く発症するが、40~60歳代に圧倒的に多く発症する。まとめると、患者の多くは中年女性で発症する。下図(難病情報センターホームページより転載)を参照してください。

    男女別無症候性と症候性PBC

  3. 自覚症状を伴うのは患者の約30%程度で、残り70%は無症状(無症候性PBCと呼ぶ)である。自覚症状は皮膚掻痒感(胆汁の流れが滞ることにより血中に逆流してきた胆汁が皮膚を刺激するため)である。
  4. 血液検査で、血清IgM、胆道系酵素のALP、γ-GT、総コレステロールが上昇する。一方、AST、ALTの上昇は軽度にとどまる。
  5. PBCに特異的な抗ミトコンドリア抗体が陽性となる。

となります。

このうち、4のうち、AST、ALT、γ-GT、総コレステロールは三鷹市民健康診査の検査項目に含まれています。ですから、三鷹市民健康診査を受診すると、性別、年齢、AST、ALT、γ-GT、総コレステオロール値からPBCの可能性のある方を拾い上げることができます。実際、当院で発見されたPBC患者の多くが、三鷹市民健康診査が端緒でした。
γ-GTは飲酒によって増加します(例外的に飲酒しても上昇しない方が存在します)。また、飲酒習慣のある方はメタボや肥満の方が多いため総コレステロール値も高い方が多いです。換言すると、飲酒習慣がないにもかかわらず、γ-GT、総コレステロール値高値の場合、積極的にPBCを疑い、高ミトコンドリア抗体、血清IgMなどの追加採血を進言しています。
治療にはウルソデオキシコール酸やベザフィブラートが有効で、検査データが改善されるとともに、生命予後も改善します。無症候性PBCの方は、一般人と寿命は変わらず、天寿を全うします。一方、症候性PBCは徐々に進行、肝硬変に至り、肝不全や合併する食道静脈瘤の破裂が死因となることが多いです。そのため、末期のPBCの方に対しては肝移植が行われることもあります。無症候性PBCの方の一部は症候性PBCに移行しますので、無症候性PBCの方も定期的に検査を受ける必要があります。
AIHもPBCも同じ発症機序の自己免疫性疾患ですから、両者が合併(PBC-AIHオーバーラップ症候群)することもあります。また、肝臓以外の自己免疫性疾患、例えば関節リウマチ、シェーグレン症候群、慢性甲状腺炎(橋本病)、CREST症候群などがPBCの約20~30%に合併します。
ところで、上記の如くPBCの約70%は無症状です。無症候性PBCの方は、一般人と寿命は変わらず、天寿を全うします。こういった方々に原発性胆汁性“肝硬変”といった病名を付けることは問題です。歴史上、この病気のため肝硬変に至った方が端緒となり発見されたため、当初付けられた病名「原発性胆汁性肝硬変」が現在まで変わりなく使用されてきました。しかし、現在、ほとんど健常人とかわらないくらい健康なPBC患者のいることが明らかになり、さらにそういった方の方がむしろ多いことも明らかになっています。にもかかわらず、未だにそういった方々に“肝硬変”の病名を使用しています。
私自身、三鷹市民健康診査でPBCを疑ったとき、患者さんに「まったく無症状かもしれませんが、検査データから『原発性胆汁性肝硬変』という病気が疑われますので、追加で採血してはどうでしょうか?」と進言すると、皆一様に「肝硬変ですか!」と驚かれます。そのため、毎回原発性胆汁性肝硬変の歴史的な背景などをお話し、肝硬変でない方にも肝硬変という病名を使用していることをご説明しています。でないと、患者さんは検査結果が出るまでの間、不安な気持ちで数日間を過ごさなければならないからです。原発性胆汁性肝硬変という病名はPBC患者像の実態と乖離しており、すでに「原発性胆汁性胆管炎」といった病名に改めようといった議論がなされています。

薬物乱用頭痛について

外来診療をしていて最近しばしば見かけるのが「薬物乱用頭痛」(Medication overuse headaches, MOH、別名リバウンド頭痛)です。薬物乱用頭痛とは、鎮痛薬を過剰服用することで、逆に頭痛の頻度が増え、連日のように頭痛が起こるようになる病態です。患者さん自身は、頭痛薬の飲み過ぎが原因と理解していないため、漫然と頭痛薬を服用し続ける傾向があります。典型的には、中等度から重度の片頭痛や緊張性頭痛ため頭痛薬を過剰摂取し発生することが多いようです。市販の鎮痛薬が容易に入手可能なことも一因と思われます。頭痛持ちの方は極軽度の頭痛時や、さらにはイベントの前に予防的に服用したり、必要以上に過剰服用したりする傾向があります。
薬物乱用頭痛の有病率は、人口の1~2%とされ、頭痛の中では緊張型頭痛、片頭痛に次いで3番目に多く、世界中で問題になっています。頭痛の罹病期間は約平均18年と長く、成人だけでなく小児や思春期においても見られます。典型的には中年女性の罹患率が高い傾向にあります。
乱用の原因となる薬物は、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)等の鎮痛薬、エルゴタミン製剤(片頭痛治療薬、ジヒデルゴット(R))、トリプタン製剤(片頭痛治療薬、イミグラン(R)、ゾーミック(R)、レルパックス(R)、マクサルト(R)、アマージ(R))、オピオイド(麻薬様物質)などが挙げられます。最も多いのは市販の鎮痛薬を乱用しているケースですが、近年はトリプタン製剤の処方量が増えていることに加え、下記の如く、トリプタン製剤が他剤に比べ少ない服用回数でMOHを発症することより、トリプタンによるMOHが増えています。

MOHに至るまでの鎮痛剤平均使用回数

一般に、鎮痛薬を月に10~15日以上、3ヶ月間以上継続的に内服している場合、乱用と判断します。
MOHの原因についてはまだはっきりとは解明されていません。頭痛薬過剰服用に伴い痛みに対する感受性が過敏になる、つまり痛みの閾値が下がってしまうことが原因ではないかと考えられています。しかし、関節リウマチの患者さんも大量に鎮痛薬を使用しますが、薬物乱用頭痛は起きません。よって、片頭痛や緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛の発症要因となっている可能性があります。
薬物乱用頭痛の治療の原則は、以下の3点です。

  1. 原因薬物の断薬
  2. 原因薬物中止後に起こる頭痛(反跳頭痛)に対する治療
  3. 予防薬の投与

当然ですが、まずは乱用の原因となった薬物の断薬です。徐々に減量するより即刻断薬する方が有効なようです。しかし、そのことにより薬物離脱症状~リバウンド頭痛(反跳頭痛)が2~10日間悪化します。典型的には約2ヶ月間離脱症状が持続しますが、その後は、頭痛の頻度や強度が以前より著しく軽減します。リバウンド頭痛に対して当該鎮痛剤を再服用すると頭痛は軽減しますから、反跳頭痛緩和の施策を講じなければ、過剰服薬行動を再強化しかねません。さりとて、反跳頭痛緩和の施策が過剰になればまた薬物乱用頭痛を招きかねません。このような理由で、リバウンド頭痛の軽減に、私は漢方薬(呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散等)を使用します。漢方薬の詳細はまた別の機会にお話しますが一つだけ。西洋薬は、同じ病気の同じ症状に対して万人に同じ薬を処方します。しかし、漢方薬は患者の体質や病期(初期なのか治癒期なのか)等で使用する薬が異なります。ですから、同じ薬物乱用頭痛でも患者さんにより使用する漢方薬が異なります。この見極めが肝心なのです。ピタッとはまると面白いように効きますが、外れると「まったく効かなかった。」と言われかねません。

頭痛予防薬として、抗うつ薬、抗てんかん薬、ステロイドホルモン、トリプタン製剤、消炎鎮痛剤等を投与します。MOH治療の成功率は70%程度といわれていますが、約40%の患者が再発しています。治療終了後1年以内の再発が最も多く、その後、再発リスクは減少していくため、頭痛薬使用頻度(月10日以内)、鎮痛剤の功罪についての患者教育の徹底が再発防止策となります。治療が成功するか否かは、患者さんの意識改革や忍耐力ですが、医師の話に耳を傾け、断薬を勧めるその言葉を信じてもらえるか否かは、やはり、医師と患者間の信頼関係の構築に掛かっています。

RS3PE症候群について

高齢化社会になり増加してきたとはいえ、従来その罹患率(1年間に発症する患者の割合)は10万人当たり1.5人程度で、三鷹市の人口を18万程度とすると、三鷹市内で1年に3人程度しか発症しない病気です。ですからその発症原因など十分に解明されておらず、不明な点も多々ある病気ですが現在までの知見を纏めると、

病気の概念

1985年にMcCartyらが、1.予後の良い(Remitting)、2.リウマチ因子陰性(Seronegative)、3.対称性(Symmetrical)、4.手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎(Synovitis With Pitting Edema)等の特徴を表す言葉の頭文字をとって、RS3PEの概念を提唱しました。発生頻度については、本邦では50歳以上の0.09%に認められたとの報告があります。現在、適当な日本語の病名がないため、日本リウマチ学会などで検討されています。ときに前立腺がん、胃がん、大腸がん、悪性リンパ腫、白血病の初期症状として出現する場合があります(腫瘍随伴性RS3PE)。その場合、発熱、全身倦怠感などの全身症状が強く、治療抵抗性の場合が多いようです。

臨床症状

比較的急な発症で,対称性の滑膜炎による末梢関節痛、両側手背・足背の圧痕を残す浮腫(ボクシンググローブハンドと呼ばれることもあります)が特徴です。RS3PE症候群27例の報告では、関節炎の部位は、中手指節関節81.5%、近位指節間関節70.4%、手首55.5%、肩48%、肘11.1%、膝33.3%、足首25.9%でした。炎症に伴う全身倦怠感や微熱、体重減少を認めることもあります。

検査所見

炎症を反映して赤沈が亢進、CRPが上昇します。リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体や抗核抗体は陰性、一部の症例で白血球が増加したり、補体が高値となったりします。血清VEGF(血管内皮増殖因子)が著明に増加、それによる関節周囲の血管透過性亢進が浮腫の原因と考えられています。

診断・鑑別診断

確立した診断基準はまだありません。McCartyらの推奨する診断基準は、以下の4項目すべてを満たすものとしています。

  1. 急性発症する左右対称性の四肢末端部の関節炎
  2. 手背及び足背の圧痕性浮腫
  3. 50歳以上の高齢者
  4. リウマトイド因子陰性

関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症の亜型とする意見もあり、その鑑別が重要です。
各々特徴を纏めると、

  関節リウマチ リウマチ性多発筋痛症 RS3PE症候群
発症年齢 20~60 50< 50<
性差 女>男 女>男 女<男
末梢関節炎 ++ -~+ ++
骨びらん
筋痛 -~+ ++ -~+
手足の浮腫 -~+ -~+ ++
炎症反応 ++ ++
リウマチ因子 ++
ステロイド反応性 ++ ++
発症様式 緩徐 突然発症 突然発症
予後 慢性経過 再燃率20~50% 予後良好、再燃まれ
治療

副腎皮質ステロイドに対して反応性は良好。通常プレドニゾロン10~15mgから開始し漸減していきます。症状が消失、炎症反応が正常化すると薬を中止しますが、再燃はまれです。

向精神薬

平成26年度診療報酬改訂に際し、平成26年10月1日より精神科を標榜する医療機関(メンタルクリニック等)の医師以外は、1回の処方において、3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、4種類以上の抗うつ薬又は4種類以上の抗精神病薬の投与(向精神薬多剤投与)が実質的に制限されることになりました。当院は精神科を標榜していませんし、精神科専門医でもありませんので、制限の対象となります。対象となる薬剤は下表のようなものになります。

別紙「向精神薬多剤投与制限について」

そのため、平成26年10月1日以後は、厚生労働省の定める例外事例を除き、上記規定に抵触する処方は致しません。上記向精神薬の多剤投与が必要と判断された場合、ご相談の上適切な精神科標榜の医療機関にご紹介します。

また、ときに睡眠薬のみを希望し初診される方がいます。昨今、薬物乱用が社会問題となり、先述のごとく厚労省からも厳しく指導を受けています。そのため、当院では睡眠薬等向精神薬の投与に関して、たとえ多剤でなくとも以下の如き診療方針で対応致しております。

  1. 初診患者さんに関しては1種類の薬剤を投与日数1週間分までしか投与しません。相当期間通院し、心身ともに問題ないことが明確になった場合のみ1週間分以上投薬します。
  2. 三鷹市への転入により、前医と同一処方の継続を希望される場合、前医からの紹介状を持参されなければ初診患者さんと同一の扱いとし、1種類1週間の投薬を限度とします。
  3. 持病にて既に長期間当院通院中の患者さんに関しては、法令に従い適宜判断、投薬日数を調整します。
  4. 向精神薬の違法な使用が疑われた場合、速やかに警察署を含め監督官庁に報告します。当方の事実誤認の場合もあると思いますが、あくまでも疑いとしての報告でありご理解のほど宜しくお願い申し上げます。

さらに、ときに睡眠薬を含め、ご自身に対して処方された薬を、家族を含め周囲の人に譲られる方がいます。たとえば、「夫が、寝つきが悪いというので自分の睡眠薬を3錠あげた」といったお話です。これは薬事法違反となります。さらに睡眠薬の場合「麻薬及び向精神薬取締法」違反となります。ご自身に対して処方された薬剤は何人たりとも譲渡できません。監督官庁への報告の対象となりますので、厳に慎んでください。

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