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高血圧内科

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はじめに

ご存知のように、血液は心臓というポンプにより全身の血管の中を循環しています。循環器科は、心臓や血管の不具合に起因した病気を扱う科です。ただし、脳血管疾患は、脳の障害により、さまざまな神経症状を呈するため一般に神経科に分類されています。循環器科で扱う病気には先天性心疾患(生まれつきの心臓の異常)、心臓弁膜症、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心不全、不整脈、心臓の膜や筋肉の病気、心臓腫瘍、血圧異常(高血圧、低血圧)などがあります。
これらのうち最も頻度が多いのが血圧異常で、そのほとんどが高血圧です。高血圧は日本の国民病ともいえるもので、50歳以上の方の約半数が高血圧と言われています。高血圧が恐ろしいのは、放置すると結果として心筋梗塞などの心臓病のみならず、脳卒中(脳出血、脳梗塞など)を引き起こしてしまうことです。
当院では循環器疾患一般を取り扱いますが、とくに国民病ともいえる高血圧に力を入れた診療を行っています。

高血圧とは

高血圧とはなんらかの原因により血圧が基準値より高くなった状態です。高血圧になっても自覚症状はほとんどありません。ときに、頭痛、肩こり、めまい、顔のほてりなどを感じる程度です。しかし、血圧が高いほど脳卒中、心筋梗塞などの心疾患、最後は透析が必要になる慢性腎臓病などの罹患率、死亡率が高いことが分っています。そのため高血圧の治療が行われるのです。
高血圧の基準値は以下のようになっています。

成人における血圧値の分類(mmHg)(高血圧治療ガイドライン2009より引用)
分類 収縮期血圧 拡張期
至適血圧 <120 かつ <80
正常血圧 <130 かつ <85
正常高値血圧 130-139 または 85-89
I度高血圧 140-159 または 90-99
II度高血圧 160-179 または 100-109
III度高血圧 ≧180 または ≧110
(孤立性)収縮期血圧 ≧140 かつ <90

(注:診察室血圧値の場合)

これらの値のうちいわゆる高血圧は、従来全世界的にⅠ度高血圧以上の場合でした。すなわち収縮期血圧140以上、または拡張期血圧90以上の場合です。しかし、実際には至適血圧(収縮期血圧120未満、拡張期血圧80未満)で最も脳卒中などの発症率が低く、それ以上の値では段階的に心血管病のリスクが高まっていくことが明らかになっています(久山町研究)。そのため、以前に比べより厳格な対応が求められるようになり、正常高値血圧(収縮期血圧130-139、拡張期血圧85-89)であっても、後述のように状況により治療の対象となります。
高血圧診療の基本的な進め方は、1、血圧レベル、罹病期間の評価、2、本態性高血圧か二次性高血圧かの鑑別診断、3、心血管病の危険因子の評価、4、臓器障害/心血管病の評価、を経て治療方針を決定します。

拡張期高血圧について

高血圧に関して「血圧の上の値と下の値の差が小さく、血圧の下の方の値だけが高いのですが、大丈夫なのでしょうか。下の値が高いのは良くないと聞いたことがあるのですが。」という質問をよく受けます。この質問に順を追って分かりやすく回答したいと思います。
まず、血圧とは動脈という容器の中に入っている血液の圧力です。高血圧の方の動脈に針を刺すと噴水のように勢いよく血液が噴出してきます。一方、低血圧の方の場合、チョロチョロと弱々しく血液が漏れてくるのをイメージしてください。
血圧の上の値は「最高血圧」のことで、「収縮期血圧」とも言います。心臓は血液を循環させるためのポンプで、動脈の中に血液を送り込んでいます。心臓は1分間に60回程度、すなわち約1秒毎に1回収縮します。具体的には、1秒間の前半で大動脈弁を開放し、左心室を収縮させ動脈の中に血液を送り込みます(下図、心臓の断面(NATOM IMAGES ©Callimedia))。

拡張期高血圧

この前半の時期を収縮期と呼びます。動脈という容器の中に心臓から大量の血液が送り込まれるわけですから、一気に動脈圧が上昇します。そしてその頂点の血圧値が最高血圧で、収縮期の血圧ですから、収縮期血圧とも呼びます。後半は大動脈弁を閉じ、動脈から血液が逆流して来ないようにしつつ、収縮した心臓を拡張させ、心臓の後ろにある肺から血液を受け取り、次の心拍に備え心臓の中に血液を充填します(下図、循環系および心周期(NATOM IMAGES ©Callimedia))。

拡張期高血圧

この後半の時期を拡張期と呼びます。一方、拡張期、血圧測定用のマンシェットを巻いた上腕の動脈の中にあった血液は、上腕から肘、前腕、手首、指先へと流れ去って行きます。拡張期、心臓から血液の補充はありませんから、上腕の動脈の中に血液の量はどんどん減り、圧もどんどん減少していきます。そしてその底の血圧値が最低血圧、拡張期血圧です。このように動脈の中の血圧は最高血圧と最低血圧の間を1秒毎に行き来しています(下図、動脈圧波形)。下図の3~6段目の波形が右上腕、左上腕、右足首、左足首の血圧値の波形です。

拡張期高血圧

正常域血圧の範囲は、診察室では140/90mgHg未満、家庭血圧では135/85未満です。ですから、頭書のような質問は、120/95といったような拡張期血圧のみ高血圧の方から受ける質問です。収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧と呼びます。この方の場合、脈圧は120-95=25です。心臓の循環ポンプ機能が低下した状態を、心臓機能不全、略して心不全といいます。心不全になると心臓から血液がわずかしか駆出されないため、動脈圧は余り上昇せず、収縮期血圧は低くなります。一方、上腕の中の血液も末梢へ循環していきませんから拡張期血圧の低下は少なめです。そのため心不全の方の脈圧は小さくなります。実際、臨終間際の方の脈圧はわずかです。ですから、脈圧が小さいのは心臓ポンプ機能の低下、心不全を連想させ悪いイメージを持っている方が多いようです。
しかし、通常外来を歩いて受診されるような方にそのような重篤な心不全の方はいません。脈圧が低下するような重篤な心不全になると、労作時呼吸苦が酷く、とても歩いて通院できません。バス停から距離のある当院まで歩いて通院できる程の心機能を有している方の脈圧はむしろ動脈の弾力性、柔軟性を反映し、反比例します。動脈の柔軟性が高い方の場合、収縮期に心臓から血液が送り込まれ、血圧が上昇していくとそれに伴い血管も拡張し、圧上昇を吸収していきます。動脈という容器が拡張すれば、心臓から送られてくる血液量が増えても圧は余り上昇しません。一方、拡張期に血液が末梢に流れ去り血管の中がすかすかになっても、血管も圧低下に従いどんどん収縮するため圧は余り低下しません。このように柔軟性のある動脈では最高血圧は低く、最低血圧は高くなり、脈圧は小さくなります。ですから、動脈硬化のない若年者の一般的な血圧値は110/80といったように小さな脈圧になります。そのため若年者が高血圧になると収縮期より先に拡張期血圧が140/90の高血圧の基準に達してしまいます。
一方、動脈の柔軟性、弾力性の低下した固い血管の場合、収縮期に心臓から血液が送り込まれ、血圧が上昇していっても血管は拡張できず、圧はどんどん上昇していきます。一方、拡張期に血液が末梢に流れ去り血管の中がすかすかになっても、血管は収縮しません。ですから最低血圧はどんどん低下していきます。このように柔軟性、弾力性のない動脈では最高血圧はより高く、最低血圧はより低くなり、脈圧は拡大していきます。ですから、動脈硬化の目立つ高齢者の一般的な血圧値は135/65といったような大きな脈圧の血圧値になります。そのため高齢者が高血圧になると拡張期より先に収縮期血圧が140/90の高血圧の基準に達してしまいます。
以上の説明は一般論ですが、例外もあります。例えば心臓弁膜症である大動脈閉鎖不全では、大動脈弁が完全に閉じず、拡張期に血液が動脈から心臓に逆流します(下図、大動脈閉鎖不全(NATOM IMAGES ©Callimedia))。

拡張期高血圧

そのため上腕動脈内の血液は、拡張期に通常の末梢側に加え逆方向の心臓へも逆流、最低血圧は極端に低くなります。一方、心臓は拡張期に後にある肺から血液を受け取るだけでなく、一旦収縮期に送り出した動脈からの逆流によっても血液を受け取ります。そのため通常以上に大量の血液を拡張期に充填させます。通常以上に大量に充填された血液を次の収縮期で一気に動脈内に駆出します。結果、最高血圧は通常以上に高くなります。以上の如く、大動脈弁閉鎖不全の方の場合、例え若年者で動脈硬化が進行していない方であっても150/50といったような血圧値となります。
また、拡張期高血圧のイメージが悪い理由の一つは、降圧剤を服用した場合、拡張期血圧が収縮期血圧ほど低下しないことがあると思います。一般に、降圧剤による拡張期血圧の低下幅は収縮期血圧低下幅の60~70%程度です。つまり、収縮期血圧が10mmHg低下したとき、拡張期血圧は6~7mmHg程度しか低下しません。例えば、血圧値135/100という拡張期高血圧患者と150/85という収縮期高血圧患者がいた場合、140/90という基準値まで血圧を低下させるためには、一般に前者の方がより多くの降圧剤が必要になります。このように拡張期血圧は収縮期血圧に比べ下がりにくいため、難治性といえます。
以上の如く一般に脈圧が小さいのは動脈の柔軟性、弾力性が保たれていることを示唆し、脈圧が大きいのは血管が硬くなっていること、つまり、動脈硬化の存在を示唆しますし、拡張期高血圧は動脈硬化の進んでいない方、一般に若年者の高血圧の特徴であって、必ずしも良くないことと考える必要はありません。

血圧レベルの評価

従来、血圧は医療機関でしか測定できませんでしたから、上述の高血圧の分類は、医療機関内で測定した値(診察室血圧と呼びます)を前提としています。クリニックを受診するのは月に1回程度ですから、年間たった12回しか血圧を測定しないことになります。血圧は心臓の拍動により血管内に駆出された血液の圧力です。ですから血圧は一拍一拍の拍動毎に変化します。心臓は1日24時間365日休まず動き続けます。心拍は1分間で約70回ですから、1年間で70×60×24×365=36,792,000回拍動します。なのにたった12回の血圧測定値で高血圧を評価するのはあまりに大雑把です。また、クリニックで血圧を測定した場合、白衣現象といい過度の緊張から日頃の血圧値よりかなり高くなってしまう方がいます(白衣高血圧)。その値を鵜呑みにすると健康な方を高血圧と誤診し、不必要な降圧剤を服薬させることになりかねません。
一方、従来高価だった家庭用血圧計が今では電気製品量販店で3,000円足らず購入できるようになりました。そのため、高血圧あるいは高血圧が疑われる方には、必ず家庭用血圧計を購入、下記の如く起床直後と就寝前の血圧をご自宅で測定していただき、その値で高血圧のレベルを評価しています。なぜ起床直後と就寝前かというと、1日24時間のうち最も血圧が高いのは起床直後で、最も低いのが就寝前(平均で15mmHg朝の方が高いです)だからです。119番に電話で救急車出動要請が寄せられるのが最も多い時間帯は朝です。それは朝に心筋梗塞や脳卒中が多いから。朝に心血管事故が多いのはこの早朝高血圧が原因なのです。外来を受診するのは午前9時から夕方までの間で早朝受診することはありません。そのため、外来で測定した血圧は1日24時間の中で比較的低い時間帯の血圧値です。そのような昼間の血圧のみ測定し、問題ないと判断していた方の起床時の血圧が実は著しく高血圧(早朝高血圧といいます)で、それを見逃していたなどということは日常診療にしばしば経験することです、実際、最近の研究でも診察室血圧値より家庭血圧値の方がより優れた生命予後の予知因子であることが明らかになってきました。つまり、家庭血圧値の方が診察室血圧値より、患者さんの血管への悪影響の程度をより正確に評価できるのです。ですから当院では必ず家庭血圧を測定していただいています。しかし、就労していたり、専業主婦(夫)であっても小さなお子様のいる家庭だったりすると、患者さんの中には毎日の血圧測定が負担になる方もいます。また、測定することで逆に神経質になり過ぎて、ストレスが溜まることもあります。そのストレスのため血圧が上がるようなことがあれば、本末転倒です。家庭血圧測定の目的は、日常生活の血圧を測定することにより、より正確に患者さんの血圧値を評価、適切な治療に継げ、心血管事故を未然に防ぐことにあります。日々の家庭血圧の測定が患者さんの負担になっていると判断した場合、私は「降圧剤を飲み忘れれば血圧は上がりますが、血圧を測定し忘れても血圧は上がりません。時間に余裕のあるときだけでよいですから測定してください。面倒だと思ったら測定しなくてかまいません。その代り24時間血圧測定(下記)を受けてください。」とお話しています。
家庭血圧測定上の注意点を列記します。

  1. 上腕カフ血圧計を購入、測定する(手首、指と心臓から遠ざかるほど誤差が大きい)
  2. 厚手のシャツ、上着の上からカフを巻かない。厚手のシャツをまくし上げて腕を圧迫しない
  3. 初めは両腕で測定し、左右差がないことを確認したら、どちらの腕で測定してもかまわない
  4. 1日2回朝(起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前、朝食前、座位1~2分安静後)と晩(就寝前、座位1~2分安静後)測定する
  5. 1回の測定機会で、複数回測定する。通常1回目が最も高く、その後徐々に低下、3回目くらいで測定値は安定する。連続した血圧値の差が5mmHg未満となった2回の値の平均値を血圧値とする(のが、正式な方法ですが、面倒な方の場合、2回目の値を記録してもらっています)
  6. 測定したすべての血圧値を血圧手帳に記録する(ときどき、患者さんからどの値が正確な血圧値ですかと質問されますが、どの値も本物です。血圧計が誤作動しているわけではなく、その方の精神状態による血圧の変化を表しているのです)
  7. 脈拍数も必ず記録する(脈拍数の速い人ほど心血管事故の発症率が高く、短命なのが明らかになっています

上述したように心臓は1日約10万回拍動します。家庭血圧を測定していただいくと診察室血圧で得られない多くの診療情報を得ることができます。それでも朝と晩の血圧だけでしかありません。たとえば夜間寝ている間の血圧はまったくブラックボックスです。そこで最近30~60分間隔で24時間連続して測定できる24時間自由行動下血圧測定(ABPM)が行われるようになりました。最近の研究では、診察室血圧や家庭血圧よりABPMの結果の方が、高血圧による臓器障害の程度とより密接に関係、心血管病の発症を予想できることが明らかになりました。ABPMにより明らかになった睡眠中の血圧推移のパターンが非常に重要で心血管病の発症に関係していることが明らかになっています。複雑なのでここでは割愛しますが、非常に大切な検査のため、当院では必ず24時間自由行動下血圧測定(ABPM)の検査を受けていただいています。
家庭血圧測定では診察室のような緊張感がないため、おおよそ5mmHg低くなります。また、ABPMでは血圧は夜間低く昼間高くなるため下記の如く独自の基準が設定されています。

異なる測定法における高血圧基準
  収縮期血圧 拡張期
診察室血圧 140 90
家庭血圧 135 85
自由行動下血圧    
24時間 130 80
昼間 135 85
夜間 120 70

(mmHg)(高血圧治療ガイドライン2009より引用)

以上のような方法で血圧を測定することで、患者さんの高血圧のレベルを判定しています。
また、たとえ高血圧のレベルが同程度であっても罹病期間によって臓器障害の進み方は違います。たとえば今年初めて高血圧を指摘された方と10年前から指摘されていたが放置している方では、当然後者の方が、高血圧による臓器障害が進展、心血管病を既に併発している可能性が高くなります。罹病期間を確認するため、健康診断や人間ドックの受診歴のある方は、その結果を持参していただきます。

本態性高血圧か二次性高血圧かの鑑別診断

高血圧の約90%は明らかな原因のない本態性高血圧です。これを略して通常「高血圧」と呼んでいます。遺伝的体質(家系)に食塩過剰摂取、肥満、アルコール多飲、運動不足、喫煙、ストレスなどの悪しき生活習慣が加わり発病すると考えられています。
一方、残り10%は二次性高血圧といい高血圧をきたす明らかな原因のあるもので、下記のようなものがあります。

主な二次性高血圧(高血圧治療ガイドライン2009を改変)

原因疾患 示唆する所見
腎実質性高血圧 蛋白尿、血尿、腎機能低下、腎疾患既往
腎血管性高血圧 若年者、急な血圧上昇、腹部血管雑音、低K血症
原発性アルドステロン症 四肢脱力、夜間多尿、低K血症
クッシング症候群 中心性肥満、満月様顔貌、皮膚線状、高血糖
褐色細胞腫 発作性・動揺性高血圧、動悸、頭痛、発汗、神経線維腫
甲状腺機能低下症 徐脈、浮腫、活動性減少、脂質、CK、LD高値
甲状腺機能亢進症 頻脈、発汗、体重減少、コレステロール低値
副甲状腺機能亢進症 高Ca血症
大動脈縮窄症 血圧上下肢差、血管雑音
脳幹部血管圧迫 治療抵抗性高血圧、顔面けいれん、三叉神経痛
睡眠時無呼吸症候群 いびき、昼間の眠気、肥満
薬剤誘発性高血圧 薬物使用歴、治療抵抗性高血圧、低K血症

その原因によっては適切な処置により完治し、降圧剤が不要になる場合もあります。一旦、降圧剤により治療を始めてしまうと、検査結果に影響が出るため二次性高血圧の診断が難しくなる場合があります。そのため、高血圧の初診の方には、治療を始める前に二次性高血圧鑑別診断の検査を受けていただきます。これらの多くは、詳細な病歴聴取と身体所見だけで鑑別できるため、検査を網羅的に実施する必要はありません。また、二次性高血圧鑑別診断のための検査は、比較的高価なものが多いため、費用対効果(支払ったお金対して、その患者さんにとってどれだけ有意義な情報が得られるか)を考慮して実施します。当院は大学病院ではありませんので研究目的に実施することもありません。
とくにNHK放送の「ためしてガッテン」でも取り上げられたように原発性アルドステロン症は二次性高血圧の中で最も多く(5~20%)、必ずその検査を受けていただきます。当院でも多数の患者さんが発見され手術を受けられました。

内なる海と原発性アルドステロン症

原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism;PA)は睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome;SAS)と並び二次性高血圧の中で最も頻度が多い疾患です。
両側腎臓の上に帽子のように被さる副腎(下図のピンク色の腎臓の上にある黄色の部分)という臓器でアルドステロンaldosteroneホルモンが作られています。

副腎イラスト画像

アルドステロンは、腎臓でカリウムを排泄、引き換えにナトリウム(塩)の再吸収を促進、血圧を上昇(維持)させる働きを担っています。
ところで、皆さんは地球上の最初の生命が塩水である海の中で誕生したことをご存知のことと思います。約46億年前に最初の生命は誕生したとと考えられています。その後生物は陸上に進出、長い進化の過程を経て人類は誕生しました。赤ちゃんは母親の羊水の中でたった一つの受精卵から約10か月をかけ成長します。ヒトの受精卵は胎内で人類の進化の過程、数十億年の歴史を10か月で経験、生まれてくるといわれています。そのため、個体発生の初期段階、胚子はすべての脊椎動物で形態学的に非常に似ており、妊娠後半の器官形成期を経て各動物固有の形態に成長していきます(下図、エルンスト・ヘッケルによる脊椎動物の胚の比較)。

エルンスト・ヘッケルによる脊椎動物の胚の比較

羊水の塩分組成、塩分濃度(約0.9%)は海水に非常によく似ています。現在の海水の塩分濃度は約3.5%ですが、約4億年前のデヴォン紀、脊椎動物が誕生した頃、原始の海の塩分濃度はその程度だったと推測されています。つまり受精細胞は海水の中で成長していくのです。出産後もヒトの細胞は細胞外液(血液、リンパ液、組織液など)の中で生命を維持します。やはり、この細胞外液の塩分組成、塩分濃度(約0.9%)は羊水同様海水に非常によく似ています。フランスの科学者ルネ・カントン(1866~1925)は、この様子を「内なる海」と表現、脊椎動物に生命維持のためこの内なる海の塩分組成、塩分濃度を保とうとする仕組みがあることを発見しています。現在、この仕組みを「ホメオスターシスhomeostasis(同一の状態、恒常性)」と呼び、生物が外的、内的環境の変化にかかわらず、生体の状態を常に一定範囲内に調整し、恒常性を保とうとすることを意味します。
アルドステロンホルモンはナトリウム濃度を低下させないため脊椎動物が進化の過程で獲得した機能です。古代、塩は貴重品で海辺で生活していれば別ですが、内陸部で生活する人にとって、むしろ塩分摂取不足による低ナトリウム血症のリスクの方が大きかったのではないかと推測されます。日々の労働も現代とは違い肉体労働が中心ですから、発汗のため低ナトリウム血症をきたし熱痙攣(熱中症の一型)を発症することも多かったと想像されます。そのような状況下、このアルドステロンは生命維持のため必須のホルモンでした。しかし、現代社会では発汗量も少なく(エアコンもありますし)、むしろ塩分過剰摂取が喧伝される中、このホルモンの重要性は極端に低下しています。
原発性アルドステロン症(PA)は、副腎にアルドステロン産生腫瘍ができたり、過形成がおきたりしてアルドステロンが過剰分泌され、体内にナトリウム(塩)が貯留、血圧が上昇(ナトリウムが過剰になると塩分濃度を下げるため喉が渇き、飲水します。すると循環血液量が増加、血管の中の圧力=血圧が上昇します)する一方、カリウムの排泄が促進され、低カリウム血症をきたす疾患です。低カリウム血症が進行すると四肢の脱力、周期性四肢麻痺、多尿、多飲などの症状がでます。しかし、近年、低カリウム血症をきたさない程度のPAが多く存在、本態性高血圧と鑑別が困難であることが明らかになってきました。そのため、これまで見逃されていた低カリウム血症をきたさないPAを考慮すると、PAはまれな疾患ではなく、高血圧患者の20%近くがPAであるとする研究報告さえもなされています。このように非常に高頻度で鑑別困難なため、日本内分泌学会、日本高血圧学会とも高血圧患者全例でのスクリーニング検査を推奨しています。

日本内分泌学会によるPAガイドライン

本態性高血圧とは下記のごとき違いがあり、そのような症例ではPAを疑い必ずスクリーニング検査を実施する必要があります。

スクリーニング検査が推奨されるPA高頻度の高血圧群
  • 低カリウム血症(利尿剤誘発性も含む)合併高血圧
  • 若年者の高血圧
  • Ⅱ度以上(中等症・重症)の高血圧
  • 治療抵抗性高血圧
  • 副腎偶発腫瘍を伴う高血圧
  • 40歳以下で脳血管障害合併例

(高血圧治療ガイドライン2014から転記)

初診時未治療の患者さんでは、まず採血でPAC・PRA同時測定を実施します。一方すでに降圧剤を服薬していた場合、検査データに影響を及ぼしにくい降圧剤(Ca拮抗薬、α遮断薬、ヒドララジン)を服用中なら早速採血しますが、それ以外の降圧剤(βブロッカー、利尿薬、MR拮抗薬)を服用している場合は、一旦降圧剤を中止するか、上記薬剤に降圧剤を変更し採血します。ただ、降圧剤の変更が患者に著しい悪影響を及ぼす危険のある場合、そのまま採血することもあります。採血結果が、PAC/PRA比(=ARR;Aldosterone to Renin Ratio)>200を満たす場合、当院では翌月(保険診療では、同一月内に2回のPAC・PRA測定は査定を受ける可能性があるので)に30分安静臥位を保持後再度採血しています。ARR,PAC,PRAは測定間変動が大きいことから,適宜,再検査の実施が推奨されているからです。その結果、やはりPAを疑う結果が得られた場合、高次医療機関(杏林大学病院、武蔵野赤十字病院など)へご紹介しています。高齢者の場合、PAでなくとも低レニン血症の方が多く、たとえPAC値が低くとも、極端な低レニン値の場合、ARR>200(PAC=50、RPA=0.2では、ARR=250となる)となってしまいます。そのため、日本高血圧学会では、、PAC>150pg/mL(日本内分泌学会は>120)の条件が付記されています。しかし、PAC<120でもPA症例が存在(当院でも経験しました)するため、この条件には敢えて固執していません。ここまで「スクリーニング検査」です。紹介された高次医療機関では、1~3種類の負荷試験(カプトリル試験、立位フロセミド試験、生食負荷試験、フルドロコルチゾン試験、迅速ACTH試験、経口食塩負荷試験のうちいくつか)による「機能確認検査」を実施しPAを確定診断、さらに副腎CTによる「病型・局在診断」を行います。ここまでは入院の必要はありません。
PAは本態性高血圧と異なり、脳、心血管系、腎臓等の臓器障害を合併しやすいことが分かっています。また、PAの副腎病変が一側性の場合(多くは腺腫)、腹腔鏡下副腎摘出術(副腎は両側にありますが、卵巣同様片方は予備で一方を摘出しても生活上支障ありません)により高血圧が根治可能です。ただ、本態性高血圧も合併していると、術後血圧値は低下しても完全に正常にはならず、降圧剤の服用を継続しなければならない場合もあります。さらに最近、横浜労災病院内分泌内科では、超選択的副腎静脈採血により片側副腎の中の腫瘍局在部位を同定、片側副腎を全摘出する必要のない単孔腹腔鏡下副腎部分切除術という患者さんにより侵襲の少ない術式も開発されています。副腎腺腫は必ずしも片側とは限らず、両側性(多くは過形成)の方が3~4割程度います。そのような方は手術できませんので、PA内服治療として最適な抗アルドステロン剤による治療となります。副腎病変が左右どちらか、あるいは両側か確定するには、入院による副腎静脈サンプリング(AVS;Adrenal Venous Sampling、鼠径部の大腿静脈からカテーテルを刺入、左右の副腎静脈に各々カテーテルを挿入、左右別々に採血し、どちらの副腎からアルドステロンが過剰分泌されているか調べる方法)が必要となります。副腎病変は小さいことも多く、副腎CTでは約50%程度しか確認できないからです。
患者さんの中には端から手術を希望されないか方もいます。当院では、たとえ手術を希望されなくとも確定診断のため「機能確認検査」「病型・局在診断」までは進言しています。内服治療を行うにしても、PA疑いのまま治療を行うのではなく、確定診断の上治療を進めた方が降圧剤選択や予後判定時、より正確に判断できると考えているからです。当院では現在(2017年4月現在)まで、24人の方が精密検査により原発性アルドステロン症の確定診断を受け、64人の方が検査中です。高次医療機関での「機能確認検査」や「病型・局在診断」検査は入院不要ですが、待ち時間の長い大病院に何度も通院する必要があり、年配の方にはかなりの負担です。そのため、当院では「スクリーニング検査」に加え、「機能確認検査」の中で最も簡便かつ安全なカプトリル試験を実施、その結果を見て、「機能確認検査」目的にご紹介することを現在検討しています。
高血圧の方で、PAスクリーニング検査未実施の方は、是非一度検査を受けて下さい。

心血管病の危険因子の評価

血圧が高いほど脳卒中、心筋梗塞などの心疾患、慢性腎臓病などの罹患率、死亡率が高いことをお話しましたが、高血圧患者さんの予後は血圧の高さのみで決まるわけではありません。併存する高血圧以外の危険因子や、高血圧による臓器障害の程度や心血管病の合併の有無で大きく変わります。

心血管病の危険因子(高血圧治療ガイドライン2009を改変)
高齢(65歳以上)
喫煙
収縮期血圧、拡張期血圧レベル
脂質異常症
低HDLコレステロール血症(<40mg/dl)
高LDLコレステロール血症(≧140mg/dl)
高トリグリセライド血症(≧150mg/dl)
肥満(BMI≧25)(特に腹部肥満)
メタボリックシンドローム
若年(50歳未満)発症の心血管病の家族歴
糖尿病
空腹時血糖≧126mg/dl
あるいは
負荷後血糖2時間値≧200mg/dl

想像してみてください。同程度の高血圧であっても「若くして心筋梗塞のため他界した親を持ち、コレステロールが高く、糖尿病もあり、タバコが止められない太った66歳の方」と「88歳まで長生きをした親を持ち、コレステロールも血糖も正常で、タバコを吸ったことのないスリムな50歳の方」、どちらの方が近々心筋梗塞でポックリ逝きそうでしょうか。ですから、当院では初診時に必ず上記のすべての心血管病の危険因子について、問診や血液検査などで確認しています。

臓器障害/心血管病の評価

上述したように、最近高血圧を発症した方ではまだ臓器障害は目立ちませんが、10年来の高血圧を放置された方では既に全身の臓器はガタガタになっており、非常に危険な状態です。ですからたとえ同程度の高血圧であったとしてもその予後は大きく違います。高血圧による臓器障害/心血管病には下記のようなものがあります。

臓器障害/心血管病(高血圧治療ガイドライン2009を改変)
脳出血・脳梗塞
無症候性脳血管障害
一過性脳虚血発作
心臓 左室肥大(心電図、心エコー)
狭心症・心筋梗塞・冠動脈再建
心不全
腎臓 蛋白尿(尿微量アルブミン排泄を含む)
低いeGFR(<60mL/分/1.73m2)
慢性腎臓病(CKD)・確立された腎疾患(糖尿病性腎症・腎不全など)
血管 動脈硬化性プラーク
頸動脈内膜・中膜壁厚(IMT)>1.0mm
大血管疾患
閉塞性動脈疾患(低い足関節上腕血圧比:ABI<0.9)
眼底 高血圧性網膜症

このような臓器障害や心血管病を既に発症している方は、高血圧以外の危険因子を複数持ち、高血圧を長い間放置したり、あるいは治療していてもこれまでの治療が不適切か不十分だったりした方がほとんどです。高血圧は、たとえ血圧値が同じであったとしても皆同じように治療するわけではありません。高血圧以外の危険因子が少なく、臓器障害/心血管病が併発していない方には、値が高くともできるだけ生活指導を優先し薬は飲ませないように努めます。一方、既に臓器障害/心血管病が発症している方には、たとえ軽度の高血圧でもおのずと食餌療法に加え積極的に薬物療法をお勧めします。
ですから、当院では初診時に、上述の二次性高血圧の鑑別診断のための検査に加え、必ず上記の臓器障害/心血管病の有無について、問診、血液検査、検尿、心電図、眼底カメラ、頸動脈超音波検査、腹部超音波検査、血圧脈波などで確認しています。

頚動脈解剖図

臓器障害検査の一例をご紹介します。頸動脈解剖図では、頭部へ血液を供給する血管の本管である総頸動脈が、頭皮へ血液を供給する外頸動脈と脳へ血液を供給する内頸動脈に分岐している様子を示しています。

20111205頸動脈超音波右内頸動脈縦断像

右内頸動脈狭窄超音波画像は60代男性の超音波画像です。長年高血圧を指摘されていたにもかかわらず軽度ということで放置していました。高血圧で当院を受診、頸動脈超音波検査を実施したところ、総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分岐した直後、黄色で示したようなプラーク(血管壁にコレステロールが沈着し隆起したところ)が生じ、内頸動脈の内腔はわずかに残っているのみでした。

20120119右内頸動脈3D-DSAのRA像

狭窄部位の3D-DSA画像では砂時計のように狭窄しているのがわかります。早速連携医療機関にてステントグラフト内挿術を実施していただきました。
ステントグラフトとは金属製の網目が筒状になったもので、狭窄部位に挿入し、ばね圧で拡張させます。

20120119右内頸動脈DSAステント挿入前後

ステント挿入後のDSA画像では狭窄部位がしっかりと拡張しているのがわかります。このまま放置していたら、右大脳のかなりの部分が脳梗塞によって失われるため、助かっても寝たきりだったかもしれません。

右網膜静脈分枝閉塞症の眼底出血

次に眼底検査について一例をご紹介します。右網膜静脈分枝閉塞症の眼底写真は50歳代男性の喫煙者で、以前から健診で高血圧、糖尿病、脂質異常症を指摘されていましたが放置していた方です。ちなみに、眼底とは球体である眼球中、瞳の奥の一番遠い部分です。ですから、ただ、外側から目を見ても解りません。この方はある日突然眼底出血し視力が低下、某大学病院眼科を受診、高血圧を長年放置していたことによる動脈硬化が原因であると説明され、高血圧治療目的に当院を受診されました。

右網膜静脈分枝閉塞症の眼底出血発症2年後

現在投薬により血圧、血糖、脂質ともコントロール良好で、2年後には眼底出血は完全に吸収されています。しかし、残念ながら出血が黄斑部という視力を司る場所に及んでいたため、完全に視力は戻りませんでした。もう少し早く来院してくれていたらと悔やまれました。なお、動脈硬化により眼底出血が起こる仕組みは、後述の「脂質代謝内科」の「動脈硬化の評価」の段落をご参照ください。

左網膜静脈分枝閉塞症の眼底出血

左網膜静脈分枝閉塞症の眼底写真は60歳代男性の喫煙者で、以前から高血圧の治療をしていましたがしっかりと目標値まで低下していなかったそうです。この方もある日突然眼底出血し視力が低下、某大学病院眼科を受診、高血圧の治療をもっと厳格に行うよう指示され、当院を受診されました。

左網膜静脈分枝閉塞超の眼底出血発症1年後

現在投薬により血圧コントロール良好で、1年後には眼底出血はほとんど吸収されています。しかし、出血が黄斑部に及んでいたため、完全に視力は戻りませんでした。

生活習慣の是正について

日本で高血圧患者はおよそ4000万人に上るといわれています。国民病ともいえるものです。その最大の要因は、世界的に見て非常に多い日本人の食塩摂取量にあります(食塩過剰摂で血圧が上昇する仕組みは割愛します)。1950年代東北地方の食塩摂取量は1日25gに達していたと推測されています。最近では国民1人1日当たり約11gとかなり減ってはいますが、欧米人の6g前後と比べまだまだ多いです。ちなみに文明化が進み現在のように容易に塩が手に入るようになる以前の人類の食塩摂取量は0.5~3g程度だったと推測されています。いかに現代日本人が大量の食塩を摂取しているかお分かりいただけるかと思います。
また、危険因子として取り上げられているように肥満は高血圧患者さんの予後を悪化させます。体重1kgの減量でおよそ血圧1.7mmHg低下します。すなわち、10kg減量できれば単純計算で血圧が17mmHgも下がります。実際、体重減量で降圧剤が不要になる方も多数います。同様運動を始めたり、禁煙したり、晩酌の量を減らすことによって著しく血圧が下がり、降圧剤が不要になった方が数います。しばしば、「高血圧の薬を始めたら死ぬまで止められないのですか?」と患者さんから質問を受けますが、私は即座に否定しています。血圧は加齢により年々増加しますから、今まで通りの悪しき生活習慣をダラダラと続け一向に是正する気のない場合、血圧の薬を止めることはできません。しかし、自身の努力で克服可能な危険因子(食塩制限、野菜中心の食生活、適正体重の維持、運動、節酒、禁煙など)を是正すると驚くほど血圧が低下、降圧剤が不要になることしばしばです。当院の診療指針を是非お読みになってください。副作用がまったくないと断言できる薬などありません。できるだけ薬を使わず治療をするのが基本です。生活習慣の是正を待っていられないほど高リスクの場合も多々あります。まずは降圧剤で治療を開始したとしてもできるだけ生活習慣を是正し、降圧剤の量を必要最小限にし、できれば中止できるようにしたいものです。

最後に

今回薬物療法の種類や適応、治療目標値、さまざまな特殊ケースに関する治療方針などの説明は割愛しています。実際の外来診療において患者さんにご説明しながら診療を進めていきます。

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